『始祖の見る朝日』~ロリ鬼はなぜ、無惨様を太陽の下に連れ出したのか?~ 作:この俗物怪物くん
そして今回は、その愛が燃え尽き、灰になる物語です。
朱鷺(とき)は、鬼でありながら“人の心”を持っていました。
だが、人の心を持つ鬼にとって、この世界はあまりに残酷だった。
狛治と恋雪、慶蔵――
彼らを襲うのは、避けられぬ“固定イベント”という名の運命。
そして朱鷺は、
鬼であることを捨て、“人として”怒り、“鬼として”裁きを下す。
この回は、愛の終焉であり、朱鷺という存在の“再誕”です。
血と涙の祈り――どうぞ、心してお読みください。
花火の夜の告白イベントが終わり、狛治(はくじ)くんは恋雪(こゆき)さんとの祝言を決めました。朱鷺(とき)ちゃんは…はい、ステータス画面を見る限り、失恋のショックから立ち直り、『親友』として二人を祝福するモードに入ったようです。本当に泣ける子ですね…
祝言の日取りも決まり、狛治は「父の墓に、祝言の報告をしてくる」と言った。 朱鷺は、その門出に、笑顔で手作りの(ように見える)おにぎりと漬物を持たせて、彼を送り出した。
「(にこにこ〜)狛犬くん、いってらっしゃいませ〜。今日はお赤飯ですわよ〜」
「…おぅ。朱鷺、いつもすまないな。恋雪と慶蔵さんのこと、頼んだぞ」
「はい、お任せくださいな〜」
それは、彼らにとって、最も幸福で、穏やかな日常の一コマだった。 朱鷺も、このまま、この優しい世界が続けばいいと、鬼であることさえ忘れ、心からそう思い始めていた。
…そう、このゲームが、『鬼滅の刃RPG』でさえなければ。
…ああ。来てしまいました。このイベントだけは、何度やっても胸が痛みます。狛治・恋雪ルートにおける、強制・固定イベントです。どうあがいても、これは、避けられません
狛治が墓参りに出かけて、数時間が経った頃。 素流道場から、血相を変えた門下生が、朱鷺の屋敷(九条家別邸)に転がり込んできた。
「た、大変だ! 朱鷺様! 井戸に…! 井戸に、毒が…!」
朱鷺が道場に駆けつけた時、そこは、地獄だった。 慶蔵と恋雪が、口から血を流し、畳の上で苦しみもがいていた。
「(ぜえ…ぜえ…)こ…ゆき…! こゆきを…医者のところへ…!」
朱鷺が、持てる薬学の知識(暗殺術SSS)の全てを注ぎ込み、治療にあたった。 しかし、毒は、強力で、あまりにも深く、二人の命を蝕んでいた。
数時間後。 慶蔵は、娘の名を呼びながら、息絶えた。 恋雪もまた、狛治の名を呟きながら、長く苦しんだ末に、静かに冷たくなっていった。
朱鷺は、二人の亡骸の前で、ただ、呆然と立ち尽くしていた。 彼女の手は、治療に使った薬草と、二人の吐血で、赤黒く汚れていた。
…なぜ、こうなったのか。原因は、隣の剣術道場です。道場主が亡くなり、代替わりした跡取り息子が、例の試合の逆恨みと、恋雪への執着から、この暴挙に出た…というシナリオです。あまりにも、惨たらしい…
だが、朱鷺の心は、別の感情で支配されていた。 彼女は、自分の血塗れの手を、見つめていた。
「(…わたくしは…本当に、全力を尽くしましたの…?)」
「(恋雪さんがいなくなれば、狛犬くんは、わたくしのものに…?)」
「(そんなこと…思ってない…? 本当に…? わたくし、わざと、治療を怠ったのでは…?)」
心の奥底に、確かに存在した、恋雪への『嫉妬』。 その黒い感情が、今、彼女の全身を苛んでいた。 自分が全力を出していれば、助けられたのではないか。 自分が、恋雪の死を、どこかで望んでいたのではないか。
その疑念が、彼女の身体を、恐怖で震わせた。 狛治に、合わせる顔がない。
夕暮れ時。 何も知らず、墓参りを終えた狛治が、晴れやかな顔で、道場の門をくぐった。
「ただいま! 恋雪、慶蔵さん、朱鷺! 報告、無事に済んだぞ! …あれ? みんな、どうし…」
彼が見たのは、血の海に横たわる、愛する家族の亡骸と、 その前で、顔面蒼白になり、ガタガタと震えている、朱鷺の姿だった。
「…………あ…………?」
彼は、またしても、自分の留守中、傍にいない時に、大切な人を、全て喪った。
「(崩れ落ちる)…あ…ああ…あああああああああああああああああ!!!」
朱鷺は、その絶叫を聞きながら、狛治の元へ這い寄った。 涙と鼻水で、彼女の美しい顔は、ぐしゃぐしゃになっていた。
「ごめんなさい…! ごめんなさい、狛犬くん…! わたくしが…わたくしが、ちゃんと、治療しなかったから…!」
「…朱鷺…?」
「わたくし、恋雪さんに、嫉妬してた…! 狛犬くんを取られちゃうって…! だから、わざと…わざと、薬を間違えたのかも…しれない…!」
彼女は、自らの心の闇を、全て吐き出した。
「だから、わたくしを怒って…! 殴って…! 殺して、ください…!」
狛治は、虚ろな目で、号泣する朱鷺を見た。 そして、その小さな頭に、震える手を、そっと置いた。
「…朱鷺。…お前は…お前は、そんなことする奴じゃない…」
「…ありがとうな…。最後まで、二人のそばに、いてくれて…」
その、あまりにも優しい言葉。 それは、朱鷺にとって、どんな刃よりも、深く、鋭く、彼女の心を抉った。
「(いやあああああああああああああああ!!)」
…つらい。つらすぎる。狛治くんの優しさが、朱鷺ちゃんの罪悪感を、限界まで増幅させています…。これが、固定イベントの、恐ろしさです…
狛治は、二人の亡骸を抱きしめ、天を呪った。 そして、朱鷺は、自らの心の闇と、狛治の絶望を前に、生まれて初めて、計算でも、投資でもない、純粋な『怒り』に、その身を震わせた。
「(…許さない…)」 「(狛犬くんの幸せを奪った奴らも、わたくしの心を汚した自分も…そして、こんな理不尽な『運命』を仕組んだ、この世界も…!)」
◇◇
絶望が、道場を満たしていた。 二人の冷たくなった亡骸を前に、狛治(はくじ)は、虚ろな目のまま、道着に腕を通し始めた。その瞳の奥には、父を失った時とは比較にならないほど、冷たく、燃え盛る怒りの炎が宿っていた。
「…殺す。…あいつら、全員、俺が殺す…」
彼は、素流の技を叩き込まれた拳を、血が滲むほど固く握りしめる。
その背中に、朱鷺が、そっと身を寄せた。 彼女は、涙で濡れた顔のまま、狛治の唇に、自らの唇を重ねた。それは、初めての、慰めでも、計算でもない、ただ悲しみを共有するための口づけだった。
「…ダメです、狛犬くん。今日は、ダメ…」
「離せ、朱鷺! 俺は、行かなきゃならねえんだ!」
「(首を横に振りながら)…貴方のやりたいことは、わかっています。わたくしも、同じ気持ちです。…でも、今日は、休みましょう。慶蔵さまと、恋雪さま…二人を、弔わないと…」
その言葉に、狛治の身体から、力が抜けていった。 そうだ。まだ、やるべきことが、残っている。
朱鷺は、震える手で(お祖父様である)老中の印籠を握りしめ、奉行所へと駆け込んだ。彼女の権限(わがまま)一つで、慶蔵と恋雪の葬儀は、大名行列さながらの、最高級のものとして執り行われることが決まった。
その夜。 朱鷺は、弔いを終え、魂が抜けたようになった狛治を、無理やり布団へと押し込んだ。
「…今夜は、わたくしも、ここにいますから。…だから、眠って、ください…」
狛治は、もう何も答えず、泥のように深い眠りに落ちていった。
朱鷺は、彼の寝顔を、じっと見つめていた。
(望んでいたはずなのに。…狛犬くんの隣で、こうして一緒に眠ることを、あんなに望んでいたはずなのに…)
(どうして、こんなにも、心が冷たくて、悲しいのですか…)
彼女の赤い瞳から、再び涙がこぼれ落ちた。
…朱鷺ちゃん…。彼女は、狛治の隣を手に入れるという望みが、最悪の形で叶ってしまった。そして、自分の心にあった『嫉妬』が、この悲劇の遠因になったのではないかという疑念…。彼女の罪悪感は、今、ピークに達しています
朱鷺は、狛治の寝顔をそっと撫でると、音もなく布団から抜け出した。 その顔から、涙は消えていた。 そこにあったのは、鬼としての、そして、暗殺者としての、絶対零度の「怒り」 彼女は、懐から、あの黒い暗殺ナイフ『かくあれかし』を抜き放った。
彼女は、決意しました。この復讐は、狛治くんにやらせてはいけない。彼の手を汚させてはいけない。 この『仕事』は、わたくし(朱鷺)が、やる、と
隣町の、剣術道場。 今夜は、跡取り息子の「大手柄」を祝い、門下生全員が集まって、馬鹿騒ぎの酒宴が開かれていた。 「これで、あの素流も終わりだ!」 「あの女(恋雪)も、邪魔なオヤジも消えて、せいせいしたぜ!」 下品な笑い声が、夜の闇に響き渡る。
その、道場の正門が、ゆっくりと開かれた。 そこに立っていたのは、月明かりを背負う、一人の可憐な少女。朱鷺。
「あァ? なんだ、テメェは。ガキの来る場所じゃ…」
「(にこにこ〜)…こんばんは〜。皆様、楽しそうですわね〜」
「…わたくし、皆様に、『罰』を与えに参りました〜」
次の瞬間、朱鷺の姿が、消えた。 『暗殺術(SSS)』。それは、もはや「術」ではなく、理不尽な「現象」だった。 酒宴の場が、一瞬で地獄と化す。
「ぐあっ!」「腕が!」「な、何が…!」
朱鷺は、殺さなかった。 ただ、彼女のナイフが閃くたび、門下生たちの腕の腱、足の腱が、正確無比に切断されていく。 わずか数十秒で、67人の男たちが、武器も握れず、立つこともできず、道場の床を醜く這いずり回る、ただの肉塊へと変えられた。
「(にこにこ〜)さて。皆様、お揃いですわね。…では、『告解』の時間ですわ」
彼女が、そっと目を閉じ、祈りを捧げる。
「血鬼術――告解ノ雨」
空が、白く濁り始めた。 乳白色の、静かな、静かな雨が、道場一帯に降り注ぐ。
きた…! 『告解ノ雨』! しかし、様子が違います。前回の『獲物まで溶かす』失敗を踏まえ、彼女は、完璧に術をコントロールしている…!
雨は、酸性を極限まで弱く設定されていた。 それは、触れた瞬間、肌がジュッと焼けるようなものではない。 じわ…じわ…と、まるで薄めた塩水が傷口にしみるかのように、ゆっくりと、しかし確実に、皮膚の表面を爛(ただ)れさせていく、地獄の苦しみだった。
「ぎゃあああああああああ!!!」 「熱い! 痛い! 助けてくれ!」 「水! 水を!」
逃げ惑うこともできず、男たちは、ただ地面を転げ回る。 朱鷺は、その阿鼻叫喚の中心で、穏やかな表情で、雨に濡れていた。 もちろん、彼女だけは、この雨に傷つかない。
「(…ああ、ダメですわ。これでは、まだ、足りません)」
彼女は、道場の出口へと這いずって逃げようとしていた、首謀者である跡取り息子の足首を掴んだ。
「ひぃぃぃ! た、助けてくれ! 悪かった! 悪かったから!」
「(にこにこ〜)…ええ。助けて差し上げますわ。貴方だけは、『特別』ですもの」
彼女は、跡取り息子を、雨が降り注ぐ中庭へと引きずり出した。 そして、その身体に、ゆっくりと、ナイフを突き立てた。
「…まずは、右腕の指から、一本ずつ。次は、左腕。その次は、足…」
「貴様など、喰ってやる価値もありませんわ。 わたくしの血肉にするのも、汚らわしい」
「ただ、死ね。苦しめ。 わたくしの大切な狛犬くんの、恋雪の、慶蔵さまの苦しみを、その身で味わいなさいな」
跡取り息子の、もはや悲鳴とも呼べない絶叫が、雨音すらしない、不気味な静寂(※血鬼術の音響吸収効果)の中に響き渡る。 朱鷺は、まるで精密な外科手術でも行うかのように、ゆっくりと、丁寧に、彼を「解体」していく。
…彼女の『復讐』は、夜明けまで、10時間かけて、ゆっくりと行われました
夜が明ける頃。 道場には、酸の雨で溶け爛れ、原型を留めない、67人分の亡骸が転がっていた。 朱鷺は、血鬼術を解除し、死体を消滅させなかった。 (…野鳥に食われ、野犬に食われ、貴方たちの罪が、塵になることさえも、許しませんわ)
朝日が昇る中、返り血(と酸の雨)で濡れた朱鷺は、静かに、狛治が待つ、あの絶望の道場へと、歩き出した。
朱鷺は、恋雪を救えなかった。
そして、自分の中にあった嫉妬が、
その死を“望んでいたのではないか”という恐怖に変わる。
狛治の「ありがとう」の一言は、
彼女にとって赦しではなく、呪いでした。
――あなたは、朱鷺のこの復讐をどう感じましたか?
「これは正義だった」
「赦されざる罪だった」
「それでも、彼女を責められない」
ぜひ、あなたの“告解”をコメント欄で教えてください。