【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる   作:大気圏突破

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「今日あま」編1話で終わりです。


立派に成長してくれて泣き叫ぶギャンブラー

ご唱和ください!実写ドラマの感想を‼

 

 

「「「「酷い‼」」」」

 

 ネット配信されている漫画原作の実写ドラマを店内で視聴する面々は同じ言葉を口にしていた。狡嚙は席を外し全員分の飲み物と片手でつまめるお菓子を戸棚から出してルビーに渡していた。

 

 

「素人の学芸会より酷い」

「これを公開出来るって逆に肝が座っているな」

 

 アクアの感想に父も同様の意見を述べる。ルビーはエンディングまで飛ばしキャスト欄で一時停止ボタンを押した。

 

 

「全然知らない人たちだね、えっとモデル出身?役者じゃないの?」

 

 スマホで名前検索をすると出演者紹介のページに案内されるが、登場人物を演じる若者たちはモデルや男性アイドルばかりで本業の役者は殆どいなかった

 

 

 

「この有馬かなって、昔売れてた子役の女の子じゃないの?」

「確か”重曹を舐める天才子役”で有名な」

「”10秒”だ!子役が重曹を舐めていたらホラーだろ」

 

 ルビーの間違いにアクアが辟易としながら答え右手に持っていたカップを、近くに座る眼鏡を掛けた女性に手渡した。

 

 

「ここまで酷い作品になるとは思いませんでした」

「SNSも荒れてる」

「原作を無理やり詰め込んでストーリーが破綻、役者も棒読みの素人集団じゃクソドラマの仲間入りだな!その中でも最下層レベルまで落ちるけど」

「吉祥寺先生、否定派から見てもこれは放送禁止級です。作者を侮辱しています」

 

 

 狡嚙の言葉に漫画家の吉祥寺も頷いていた。25年の秋競馬では1000勝をしているのにG1が勝てないと揶揄されていた騎手がスプリンターズステークスで大接戦を制し初優勝を飾ると、アメリカでフォーエバーヤングが名実共に世界一の称号を得た。そして年末の有馬記念は本命不在と言われ1番人気の単勝が5.3倍と人気が割れていたが15番人気のG3馬が大波乱を巻き起こす1年で締めくくられた。彼の記憶していた競馬知識は無くなり馬券師として大勝負することはなくなったが、中央競馬からエグイ額を抜いていたので老後は安心である

 

 

「そろそろ始まるから番組変えるね」

 

 店内テレビのチャンネルを持ったルビーが父親に尋ね、返事をもらうと電源ボタンを押して放送局を合わせ音量を上げる

 

 

 

「しかし漫画家が脚本を担当するなんて」

「どちらかと言うと脚本監修ですね。本職の人と顔を合わせて細部を突き詰めていくので」

「見て、お姉ちゃんの名前が出てる」

 

 オープニング画面で出演者や監督・プロデューサーと共に『吉祥寺頼子』のフルネームがモニターに映し出されていた。

 

 

「マスターが支えてくれましたから助かりました」

「開店時間から脚本家と机を占領して、夕食まで食べてましたからね」

 

 

 少し前のことを思い出す狡噛は、からかうように笑い視線をテレビの方に向けて彼女が手掛けたドラマを家族と見始めた

 

 

 

 

「『今日あま』の実写化ですか」

「えぇ以前からお伝えしてましたが、上の方もこれで話が決まりそうで先生の一存があれば確定になります」

 

 連載作品が完結した彼女に舞い込んできた実写化のオファーだが、狡噛に言われたことが気になっていて踏ん切りがつかない様子だった。

 

「出演俳優は私の方で選定しますので問題ありません」

「ですが…」

 

 

 目の前にいるプロデューサーを名乗る鏑木勝也は漫画業界内でも悪い噂が囁かれ、一部では原作クラッシャーと呼ばれていた。当然このことは吉祥寺の耳にも入っている。最初は断ろうとしていたが言葉を発する度に押し込められてしまう

 

 

「少女漫画は読まないのですが娘に勧められて全巻一気読みしまして、実写化するにはこれだ!と思いまして」

「娘さんが」

「えぇ特に最終巻で主人公がヒロインに告白シーンはとても」

 

 彼の娘が読者であることを知ると乗り気になっていたが、しかし鏑木が最後に口にした言葉を聞いて違和感を持ってしまい目を細めた

 

 

「へぇ~告白シーンを気に入ってくれたんですね」

「何度も読み返して―――」

最終巻に告白シーンなんてありませんよ!

「えっ?」

 

 その一言で室内の空気が一気に冷え込んでしまい、彼の額から大粒の汗が流れた

 

「間違えました。その1つ前の単行本で」

「それ何巻のことを指してます?最終巻の巻数は分かりますよね」

「えっと確か12巻だったような」

「『今日あま』は全14巻ですよ!ヒロインの名前を言ってくださいよ」

「えっとぉ、そのド忘れしちゃって、何だったかな~」

 

 既に鏑木のライフは0に等しく背中には汗の染みが大きく作られていた。しどろもどろになる彼に吉祥寺は最後に

 

「全14巻で主人公のカナタが彼女に向けて告白するシーンなんて存在しませんよ、信用出来ない人に任せることは出来ません。どうぞ出口はあちらですよ」

 

 

 キッパリと拒否の姿勢を見せる彼女に対して鏑木はガックリと肩を落として外に出て行ってしまった。吉祥寺はこのことをスピリタスのボトルに口をつけながら武勇伝のように狡嚙に伝えて酔い潰れて倒れてしまうが、回復魔法を施され翌朝は迎え酒をしていた

 

 

 

 

「捨てる神あれば拾う神ありとは違いますね」

「えぇまさか、その3日後にこれが舞い込んできましたから」

 

 

 吉祥寺がドラマに名を連ねている理由だが製作側のオファーである。テレビ局側がオリジナルドラマで学園恋愛モノを作ろうとしていたが脚本家の筆が進まず難航していた。監督は「『今日あま』みたいな作品を作りたい」と口にしていたら、スタッフの1人が

 

「じゃあ作者本人に依頼してみたらどうですか?連載もしてませんし暇だと思いますよ」

 

 

 そのひと言がきっかけで彼女に依頼が舞い込んできた。物書きだが漫画家と脚本家は全く別の職業であり不安に感じていたが、ドラマの脚本家も吉祥寺のファンであることが分かり、互いの得意を活かし出来ない部分を補う二人三脚で脚本を作り上げた。

 

 

 

 

「初めてのことで大変だったんですよ、私の我が強くなると『今日あま』になってしまいますし、向こうの圧が高くなると求めるモノではなくなります」

「自分の作品に活かせる良い経験になったんじゃないですか?」

「そうですね。あの女の子なんですけど実はルビーちゃんをモデルにして…」

 

 

 脚本完成から撮影まで時間は無かったが集まったスタッフや役者たちは、プロとして与えられた役割をこなしドラマを作り上げていき、視聴率も平均10.3%を記録しテレビ局の廊下にはデカデカと数字が貼りだされていた。なお彼らが最初に見ていたネットドラマは吉祥寺に断られた鏑木が予備でキープしていた漫画家の作品であり世間からの声は冷たく評価も星1のオンパレードだった

 

 

 

 

 

「似合ってるよ2人とも」

 

 春の季節を迎えアクアとルビーは高校生になり、双子は揃って陽東高校の普通科へ入学した。アクアは学力の高いところを目指せることが出来たがルビーの頭に合わせた。当人曰く

 

「兄妹が同じ高校なら面倒事が楽に済むでしょ、俺の学力ならどこからでも問題無いよ」

 

 その言葉に気を遣わせてしまったことを重く感じる父親であったが、アクアが優しく育ってくれたことに涙を流していた

 

 

 

「あら、姫川さんの」

「あっフリルちゃん!」

 

 校内の廊下でルビーはララライの舞台で顔を合わせた不知火フリルと出会った。マルチタレントの彼女は同校の芸能科に入ったが、知名度があり過ぎるせいで他の生徒と壁が出来てしまい教室内でボッチになっている

 

 

「ねぇルビーさん、今度あなたの店に伺ってもよろしくて」

「どうして?」

「あなたのお父さんに興味が」

「まさかフリルちゃん、パパのことが?ダメだよパパにはお姉ちゃんが…」

 

 顔を真っ赤にさせるルビーにフリルは頭に『?』マークを作り首を傾げている

 

 

「何か勘違いしているようだけど、お父さんの若さの秘訣を知りたいの」

「えっパパの若さ?」

「そうよ、40歳が近いのに見た目が20代前半に見えるなんて秘密があるはずよ」

「う~んでも特に何かやってる訳でもなさそうだし」

「あと気になったけど、お姉ちゃんって誰?」

 

 ルビーは”しまった”という顔をしていたが彼女に父親と吉祥寺の関係を話すと、恋バナに興味津々な女子高生は進展しない大人の関係にヤキモキするのであった

 

 

 

 

「アクアあれを見ろよ!」

 

 隣の席に座るクラスメイトは彼の肩を叩いて廊下の人物に人差し指を向けていた。そこには特徴的な赤髪の女の子が歩いていた。この位置からでも分かるレベルで不機嫌な様子が見てとれる

 

 

「あれって確か?」

「天才子役いや元天才子役の有馬かな、SNSや掲示板だとオワコン女や醜いアヒルって呼ばれてるな、ちょっと前にネットドラマ出てたけど不評の嵐だった」

「俺も家族と見てたが親や妹が口を揃えて『酷い』って」

「あれに星5を与える奴がいたら会ってみたいね。褒める要素なんてどこにもなかったぞ」

 

 

 こちらの声に気付いたのか睨みつける視線を向けて一瞥すると、肩で風を切るように大股で歩いていってしまった

 

 

「あそこまで落ちぶれると上がり目なんて無いな」

「昔は売れてたんだっけ?」

「あぁ”10秒で泣ける天才子役”って持て囃されて、ピーマン体操は大ヒットしたんだけど天狗になったのかテレビで殆ど見なくなったし」

「売れないなら辞めればいいのに」

「チヤホヤされていたことが忘れられないんだろ?50過ぎた元サッカー日本代表が現役にしがみついているのと同じだよ」

 

 彼の例えに頷いていいのか迷ったアクアは有馬がいた空間を見つめていた。小さい頃から遊んでいる姫川が彼女と同じ道を辿らないことを祈りつつ、放課後にアビ子に呼ばれていることを思い出していた。

 

 

 

 

 

「そうか1回こっちに戻ってきてくれ、そろそろ資金が危ういだろ」

『すまない!今回のことは郵送よりも電話で伝えたくて』

「いつもの方法で渡す」

 

 店内で公衆電話から掛けてきている壱護の声を聞いて狡噛はアイテムボックスからノートを取り出して彼の言葉を書き込んでいった。なおいつもの方法とは駅のロッカーに現金の入った袋を置いて鍵を閉めて、その鍵を指定した場所にカモフラージュして置いて壱護が受け取るようにしている

 

 

「(売春未遂か、しかも複数回)」

 

 双子を置き去りにしてしばらく経った後に『シャワーを浴びてる時に髪が紫色の女に現金を抜かれて逃げられた』という被害が起きていた。壱護は被害者の男と接触することが出来て写真を見せた結果、逃げた女が星野アイであることが分かった。しかも連続して行わず間隔をあけながら何度も行っていた

 

 

「(現金を抜いたとしてもたかが知れている。身バレの恐れもある)」

 

 ようやく掴んだ手掛かりだが情報が古い、彼は店のドアが開く気配を感じるとノートをアイテムボックスの中に入れて来客にいつものスマイルを作り、コーヒーを注ぐのであった

 

 

 




どう考えても有馬ちゃんを救うルートが見つかりません。執筆を始めた頃は五反田監督の撮影する映画のロケ地としてオリ主たちと出会い「あの時、箒で空を飛んでいたヤツ」で魔法を暴こうと子供ながらバレバレの尾行をする展開を考えてました。


「今ガチ」編は少し長くなると思います

感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます

執筆の励みになります。ありがとうございます

次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?

  • OK 原作を知ってるから問題無い
  • NG やっぱり最初から全部読みたい
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