【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる 作:大気圏突破
『今からガチ恋始めます』
通称『今ガチ』 恋愛リアリティショーで芸能の世界に身を置く学生が、放課後をコンセプトにした空間で青春を謳歌しカップル成立を目指すバラエティ番組である。プロデューサーには狡嚙家と吉祥寺から不評の鏑木勝也の名前が記載され
鷲見ゆき―――高校1年生・ファッションモデル
熊野ノブユキ―――高校2年生・ダンサー
黒川あかね―――高校2年生・女優
森本ケンゴ―――高校3年生・バンドマン
MEMちょ―――高校3年生?・YouTuber
鳴嶋メルト―――高校1年生・モデル
出演者にはララライの黒川あかねが名を連ね、酷い演技でお茶の間を爆笑と失笑の渦に巻き込んだ鳴嶋メルトが選出され、SNSでは『鏑木のお気に入りだから選ばれた』と言われている。狡噛は恋愛バラエティ作品は好まないが金田一に言われたことが気になり目を通している
『コウちゃん、ちょっと話せるか?』
「そっちから掛けてくるなんて珍しいな」
電話の相手は佐賀競馬に所属する調教師で、狡嚙が競馬場を巡る旅をしていた時に騎手だった彼と飲み屋で出会い意気投合した。重賞を勝ったことはないが度々大波乱を演出し穴男の異名を持っていた
『実は折り入って頼みがあるんだ!』
「なんだよ改まって、協賛レースをやってほしいから金を出せってか?」
『金か…ちょっとそれに近いかも』
「厩舎の立替え費用か?」
歯切れの悪い言葉に嫌な予感が頭の中を駆け巡った
『コウちゃんに馬を買ってほしいんだ!』
「はぁ…?馬を?ちょっと待て、いったい?」
混乱する狡嚙に調教師は世知辛い現実を語ってくれた。
「売り上げの減少か」
『いつ赤字になってもおかしくないんだ』
地方競馬は中央競馬の2軍と呼ばれ、3歳未勝利戦を勝てなかった馬やピークアウトした実績馬が流れ落ちてくるが、能力がある馬は南関東や園田へ向かい中央再転入を狙う。脚に不安のある競争馬は砂が深くケア施設が整う高知に行くので佐賀に良血馬なんてやって来ない。更に厄介なのは地元を代表する馬がいない!門別には3冠馬のベルピット、金沢の女傑ハクサンアマゾネス、岩手の英雄メイセイオペラなど名馬が誕生していたが佐賀には存在しない
「それで、なんで俺が馬を買う話になるんだよ?」
『今度のセールに出てくる1歳馬に気になっているのがいて、もしかしたら化けると思うんだ』
「なら懇意にしている馬主に頼んで落としてもらえばいいだろ?そもそも俺は馬主資格を持ってないぞ」
『最低落札額でも予算オーバーになりそうで、つまり…』
「金だけを出せって、オイッ!」
簡単に言えば狡嚙にはパトロンになってもらい資金援助をしてほしいということだ。実はこの調教師に酔っぱらった勢いで”09年のエリ女で大儲けした”と口を滑らせてしまっていた
『強い馬が活躍して他場の競走馬と鎬を削れば、競馬場に客が戻って来るんだ』
「だからって俺に金だけを要求するなんて」
『正直ふざけたことを言ってる自覚はある。でも頼めるのがコウちゃんしかいなくて』
転生前の彼は佐賀競馬に良い思い出がない、スタートした瞬間に手綱を引いてブレーキをかけたり負けてもヘラヘラ笑っている姿を見てしまい、中央との交流重賞以外で賭けることは無かった。しかし競馬を愛するギャンブラーは
「1500までなら出してやる」
『コウちゃん!』
「預託や飼い葉に掛かる金は出さない今回だけだ‼来年も同じことを口にするな」
『ありがとう』
「とは言っても確実に競り落とせる訳じゃないだろ?そんときはちゃんと返してくれよ、セールまでに1回そっちに行くから、そこで」
電話を切った狡嚙は薄ら笑いを浮かべ、自分がお人好しの馬鹿なんだと自覚してしまった
「意外に面白いな」
店内で『今ガチ』を視聴する狡嚙の感想はシンプルなモノだった。ファッションモデルの鷲見ゆきが番組の中心となってダンサーとバンドマンとの三角関係を演出しているが彼の目からすれば微妙だった。しかし鳴嶋メルトとMEMちょのコンビは意外な化学変化が発生し、彼女が仕掛けたイタズラに対するメルトのリアクションが視聴者に大受けしている。
「イタッ‼」
最初は板ガムを取ろうとして爪が挟まれるシンプルなイタズラだった。電気ショックが起きるボールペンにも引っ掛かってくれた。教室のドアに黒板消しトラップを仕掛け気付いた彼が取り除いて室内に入ると足元に置かれていたバケツに足がハマってしまい盛大に転び、階段を上っているときは大玉が落ちてきて下敷きになっていた。
「俺っていったい…」
番組スタッフもメルトを道化として扱うことに心を痛めることは無く、MEMちょの提案に対して肉付けを行い過激なモノを作り上げた。ネットドラマが原因で評価を落としていた彼だが隠れていた才能が見つかり視聴者も好意的である。だからこそ
「金田一さんの予想通りだったな」
黒川あかねが殆ど画面に映っていなかった。鷲見ゆきとMEMちょは自分の役割と武器を理解して視聴者に受ける立ち回りをこなしていた。嗅覚に優れ立場が分かっているからパートナーとなる男性を選び演出をしていく、2人にとって台本が存在しないというのは最高の環境である
「黒川さん今日も出てなかったね」
「本人は真面目にやってるつもりだけど編集で切られてるね」
ルビーとアクアはそれぞれの感想を口にしていた。2人の通う高校でも『今ガチ』は注目されている。しかし黒川あかねの名前は忘れされてSNSでも不要論が飛び交っている。なおMEMちょは自身のアカウントで『やってほしいイタズラ』を募集し、番組を利用して着実にファン数を増やしている
「テコ入れをするかもな」
「どういう意味だアクア?」
意見を口にした息子の方に視線を向けた彼は問いただす
「このまま最終回を迎えても面白くないでしょ?モデルの女の子に告白してカップル成立で終わりそうだし」
「お兄ちゃんまさか?」
「黒川あかねに悪役を演じさせる!」
「どんなヒールにさせるんだ?」
「俺が演出家だったらモデルの子が、男と良い雰囲気になったら空気を読まずに割って入ったり、偽情報を流して関係を悪化させて漁夫の利を狙う悪女にさせる」
父は腕を組んでアクアの言ったことを想像し脳内で再生させてみた。番組としては恋愛とお笑いのメリハリが成立しているがパンチが薄く、ダラダラとした雰囲気が続いている。彼女を悪役にさせれば恋愛において転換点が生じ視聴者は次の展開を期待する。
「やるのかね?そんなこと自分から炎上するなんて」
「切羽詰まった状態なら、周りも見えなくなってスタッフの操り人形になるよ」
「こりゃ金田一さんの健康診断の数値が悪化するな」
アクアの口にしていたことが現実になってしまった。黒川あかねの出演シーンは増えたが悪女的な立ち回りが目立ってしまい恋愛の邪魔をしたり、メルトに対するイタズラに使う道具を壊してMEMちょを否定する言動を叫んで場を荒らしていた。当然のように彼女を否定する言葉がSNSに並ぶようになった
「おじさん『今ガチ』見てます?」
「アクアたちと見てるけど、ちょっとマズくない?」
大輝の顔に生気はなく、舞台の上で魅せる勇ましい姿とは全然違うように見えてしまう。いつもならココアをお代わりするが1杯も飲み切れてない
「実はララライに『黒川あかねを二度と起用するな!』『とっとと辞めさせろ!』みたいな手紙や電話が最近多くなって、金田一のオッサンも顔を真っ赤にしちゃって」
「それって本人も知っちゃってる?」
その問い掛けに彼は力なく頷く
「俺もオッサンと同じで黒川に合うとは思ってなくて」
「説得したけど止められなかったか、やっぱり役者に悪役のイメージがあるとその後の仕事にも支障があるのか?」
「特撮でヒーローを演じた役者がサスペンスで殺人犯に選ばれると思う?」
「確かに無いなそんなこと」
「やっぱり力づくで止めるべきだったかな」
そして最悪な事態が起きてしまった。収録中に黒川あかねが鷲見ゆきと口論となってしまい黒川の爪が彼女の頬を傷つけて出血させてしまった。無論この部分は放送されSNSは大炎上となり、加害者の黒川が鎮静化させようと謝罪文を投稿した結果、消防車がガソリンで消火活動をしたレベルで悪化してしまった。
「じゃあ行ってくる」
「パパ気をつけてね」
日本列島に台風が直撃している夜、狡嚙はゴムブーツとレインコートに頭部にはライトを装備していた。彼はこれから見回りに行かなければならない
「卒業した先輩たちのせいで、なんでこっちが」
「仕方がないよアクア」
昨年も同じ時期に台風が迫り陽東高校は4限目で終わらせて生徒を早退させたが、一部の馬鹿が制服姿のまま遊びに行ってしまい、帰る頃には全ての公共交通機関がストップしていた。普通なら台風が過ぎ去るまで安全な場所で待機すれば良かったのに馬鹿共は帰宅することを選択してしまい巡回中のパトカーに見つかってしまった。しかもパトカーをタクシー代わりにしてしまう暴挙を犯した。お察しの通り特大のカミナリが馬鹿たちの頭に落ちた
「2時間ぐらいで帰ってくるから」
つまり狡噛は馬鹿がうろついていないことを調査する為に学校から依頼されたのだ!店のドアを開けて出て行くとルビーは父の身を案じながら夜食の準備にとりかかる。そして数時間が過ぎて父親が鬼の形相のように顔を真っ赤して帰ってきた。その脇には気を失った女性を抱えているのを見て子供たちは驚愕してしまう
「黒川さん?」
さぁ?いったい何があったのか?
『今ガチ』編の終わりまでの流れが考えてありますが文章化が難しい、今週は夜勤なので投稿ペースは少し落ちると思います。
感想を書いていただき誠にありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
これからも頑張ります
次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?
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OK 原作を知ってるから問題無い
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NG やっぱり最初から全部読みたい