【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる   作:大気圏突破

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今後の展開をどうしようか悩み中


芸能界はヤバいですが喫茶店は平常運転

【今からガチ恋始めます放送中止へ】

 

 

 恋愛バラエティ番組『今ガチ』の放送中止・終了の知らせが公式サイトから発表された。原因となったのは記者会見中に出演していた黒川あかねの、尊厳を傷つける内容に編集したことが世間の明るみになり、監督の発した内容と180度違うことに世論は反発し油田火災並みに大炎上したことで最終回を待たずに番組の終了が決まった

 

 

「お世話になりました」

「娘を預かっていただき本当にありがとうございました」

 

 彼女は迎えに来た父親と共に狡噛家の3人に頭を下げて礼を述べている。自宅に群がっていたマスコミたちは引き上げてしまい製作側の方へ向かった

 

 

「今度は客として来てくれよ」

「劇団や学校の友達を誘って必ず」

「一段落しましたらゆっくり飲みましょう。穴場の店に招待しますから」

「それは楽しみだな」

「アクア君、ルビーちゃんもありがとう」

 

 

 

 車に乗った2人を見送った狡噛家は少し広くなった自宅に寂しさを感じながら、またいつもの日々を過ごしていくのであった。しかし平和なのはこの空間だけで外の世界は慌ただしく苛烈に蠢いていた

 

 

「違う!俺はそんなことは」

「ダークヒーロー気取りか?俺たちに責任を擦り付けるとはクソ以下だな」

「鏑木ぃ、今回は擁護出来ないね!映像にもログにも残っている」

「だから、これは俺じゃない!」

 

 

 記者会見が行われている裏で鏑木に変身した狡噛が行った暴露は世間を賑わせた。監督が”編集をしていない”と口にした直後に番組公式サイトやYouTubeで編集前の動画が投稿されたこと、彼のSNSに『全部監督の指示によるものです』という文面が載ったことで、自称正義マンたちが製作側の大人たちを叩きはじめた

 

 

「決して私の指示ではなく、スタッフが忖度を…」

「上からの命令で動きました。現場の人間に権限なんてありません」

 

 

 見苦しい大人たちの責任逃れが行われ、顔をモザイクで隠された元番組スタッフのインタビューで監督の悪行をバラす映像が夜のニュースで取り上げられれば、一般人を番組関係者のように仕立て上げプロデューサーの悪口を言わせることもあった。しかし『今ガチ』関係者の乱闘騒ぎとは別に鏑木の保管していたファイルが外部に流出し、有名企業・テレビ局のお偉いさんや富裕層に対してタレントを使った個人営業を行っていたことが世間にバレてしまった

 

 

 

「いらっしゃい」

「お父さん、コールタールみたいにドロドロで同じ量の砂糖を入れたコーヒーを1つ」

「10代で飲み始めたら胃を壊すぞ」

 

 若手大人気女優の不知火フリルが来店していた。売れっ子の彼女だが鏑木が引き金となった事件のあおりを受けてしまい予定していた撮影が白紙になっていた。また今回の件に起因してスポンサー離れも起きるようになり、毎日テレビから「ポポポポ~ン」の声が聞こえる

 

 

「まともな学生生活が出来るなんて思ってもいなかった」

「10代から仕事に明け暮れるよりも、友達とバカやって笑わないと」

「お父さんはどんなことをしてました?」

 

 コーヒーを飲み干したフリルは狡嚙の方を向いて興味津々に問いかける

 

 

「自転車を3人乗りして坂道を下って救急車で運ばれたり、担任が依怙贔屓をするムカつく奴だったから実在する夜の店の名刺を作ってキスマークと『また指名してね♡』って書いてポケットの中に入れて遊んでいたよ」

「中々鬼畜なことをしていたんですね」

 

 ドン引きする彼女の感想に笑顔を浮かべる彼はニッコリと笑い口直しのお菓子を提供する。なお自転車の3人乗りは通常の2人乗りをしながら3人目が肩車で乗り込むもので背筋力とバランス力が必要な高難易度な技なので良い子のみんなは真似をしないように

 

 

 

「私はマシな方ですが、クラスには年内のスケジュールが白紙になってしまった人もチラホラと」

「スポンサーが消えれば番組は出来ないからね。おかげで昔のドラマを再放送してくれるのは助かるよ、レンタルや配信されてないのがあるし」

 

 

 予算縮小やスポンサーが撤退したせいで新番組の製作が困難となり、どの局もドラマの再放送路線に舵を切った。しかもお蔵入りしていた『フードファイト』も放送されている

 

 

 

「夏休みも纏まったのが取れそうでして」

「それこそ誰かと遊びにいけば良いでしょ?」

「その今まで誰かを誘うってことがなくて、休みの日も自主的に稽古したり、人の演技を見て勉強してましたし」

「生き急いでいるな、人生が虚しくなるぞ」

 

 

 空になったカップを下げる狡噛は続けて

 

 

「小さい頃にやってみたかったことってないの?」

「そうですね……あっ!」

「なになに?」

 

 対面に座った彼はフリルの目を見ながら尋ねると、彼女は少し頬を赤らめて口を開いた

 

「お菓子の家に住んでみたくて」

「住む?食べるじゃなくて?」

「はい、アニメを見て憧れて親に『住みたい』って言ったら、ミニチュアの市販されてるキットを買ってくれたんですが…」

「お気に召さなかった?」

 

 その問い掛けに頷く

 

「作る楽しみはあったのですが、自分で作っているので完成後のワクワク感がなくて、『この壁はどんな味なんだろう?』『チョコの椅子は甘いかな?苦いかな?』というトキメキが無くて」

「大工は自分自身だからね、フフ…!」

 

 

 狡嚙は唐突に思い出し笑いをしてしまい、崩した表情を見たことがない彼女は少し驚いて理由を尋ねた

 

 

「ごめんごめん!大輝君が小さい頃に『お菓子の家を作る』って言いだしてね、アポロやマーブルチョコを木工用ボンドで壁にくっつけて金田一さんに怒られたことを思い出して」

「容易に想像出来る光景ですね」

「しかし『ヘンゼルとグレーテル』に憧れるとは」

「いえ『トリコ』の方です!」

 

 

 

 

 

 店内でのやり取りを夕食時に2人に話すと、アクアは父と同じように大輝がやらかしたことを思い出し険しい顔をしていた。金田一の家で怒られた彼はアクアの部屋でも同様のことを行い、ポッキーでコーティングされた壁を見て”プッツン”して乱闘騒ぎになった

 

 

「フリルちゃんもメルヘンチックなんだね」

「女の子の夢は甘いモノだからね」

「鮫島先生も似たようなことを言ってた。『トリコ』の家を見て”これなら執筆中に小腹が減っても大丈夫です”って」

 

 

 食事中は黙って飯を食えという人もいるが、家族団欒で和気あいあいと好きなことを語れる空間を狡噛は大事にしている。転生前は仕事中に飯を食う余裕がなく【カロリーメイト】と【プロテイン】が主食だった彼にとって、子供達と壁を作らず話せることに幸せを感じていた

 

 

 

「ねぇパパ、入るよ」

「どうした?」

 

 彼の自室に風呂上りのルビーがやってきて父の隣に座る

 

 

「パパの考えていることを当ててあげようか?」

「言わなくても正解してるよ」

「もぅ、言わせてよ!」

 

 顔を膨らませているが、怒っているわけではなく見せ場がなくなったことに対するものなので、すぐに表情は戻った

 

 

「ねぇ一緒に上原さんの夢も叶えようよ」

「そうだな、黒川さんも入れるか」

「じゃあ、お姉ちゃんは?」

「お菓子の家よりも、酒風呂の方が良さそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 斉藤壱護は『ベスパ』で貰った情報を精査していた。自己紹介をすると顔役の女性は皺だらけの顔でミヤコの写真を見ると茹で上がったタコのように真っ赤に変色し、歯を強く噛みしめていた

 

「逃げた?」

「あぁ今でも覚えてる。あの店のホストは全国からスカウトして集めた!この女と逃げた奴は私が頭を下げて元々いた店から引き抜いたのさ、待遇も良くしていたのに」

「じゃあ今も…」

「私は過去に何度も同じことをされているから抜かりないよ、1年もせずに見つけたさ」

 

 薄気味悪い笑い声をあげて壱護を見つめる

 

「じゃあミヤコは?」

「いや、見つけたときには男しかいなかった。あいつは『逃げやがった』って口にしていたが、本当かどうか知らないね」

「探さなかったのか?共犯者なら憎んでいても」

「男が五体満足で見つかれば問題ないさ、『雨傘1本』って知ってるか?」

 

 

 その問い掛けに首を横に振る

 

 

「カビの生えた古い言葉でね。投資した金額の1割しか戻って来ないことだが、私にとって1割もあれば増やすことが出来る。見つからない女に時間を潰すより次の金儲けを考える」

「その男に会えるか?」

「お前の後ろにいるよ!」

 

 壱護は椅子に座った状態で振り返るが後ろには誰も居ない、周囲をキョロキョロ見渡しても男の姿や人間なんて存在しない、前を向いて問いただそうとするが

 

 

「どこを見ている?お前の後ろは座っている椅子だろ?」

「えっ‼」

「肺はタバコで少し汚れていたが、中身は引く手あまたでね余ったモノで職人に作らせた」

 

 全身から血の気が引いて立ち上がる壱護を見てケタケタと笑う老女は

 

「なに、冗談さ!お抱えのタコ部屋送りにして働いているだけさ、あと10年ぐらいしたら娑婆の空気を吸うことが出来る。お前さんも行ってみるかい?」

「いえ、他にも探さなければいけない人物がいるので」

「そうかい、見つかるといいな奥さんと『B小町』のアイが」

 

 老女の口から双子たちの母親の名前が出て来て驚く壱護は、彼女に詰め寄ろうとするが近くにいる黒服たちに止められてしまう

 

 

「あの週刊誌で報道された後に経営しているホテルで赤ちゃんを置き去りにする女や、男を騙してホテルから逃げる奴のことを耳にして独自に調べたら特徴が一致してな」

「アイの居場所を知っているのか?」

「いや、最後に見たのは7年前だったかな」

 

 1枚の写真を差し出されそこには男と一緒に肩を並べるアイが写っていた。髪はロングからショートヘアーになっているが雰囲気は同じである

 

 

「やるよ、手掛かりになるか分からないが」

「有難く頂戴いたします」

「かしこまるな、ウチの系列店でお金を落としてくれれば構わない、どこかのテレビ局が問題を起こしてくれたおかげで中々の上玉が入ってくれたから、選り取り見取りだ!」

 

 

 鏑木たちが起こした『今ガチ』問題が事務所に所属する女性タレントたちにも被害が及んでいた。番組が作れないとタレントたちは暇であるが生活するには金がいる。彼女たちは身銭を稼ぐ為に夜の蝶として羽ばたいていった

 

 

 

 

「(ミヤコを追ってアイの手掛かりが見つかるとは)」

 

 店から出た壱護は素泊まりのホテルで腰を下ろすと貰った写真を見つめていたが情報量は決して多くない。追いかけても背中どころか姿すら見えない彼女にやきもきしながらテレビを点けると報道特集で刑務所の中を映し出していた。彼はテレビをラジオ代わりにさせてカップラーメンにお湯を入れようとした瞬間、テレビから『菅野良介』の名前が聞こえ、ラーメンを床にこぼしてしまう

 

 

 

 

 

 

「あれ?ここはどこ?」

 

 目をパチクリさせるフリルの前には、大きなお菓子の家が鎮座されていた。




ご都合主義ですが壱護がリョースケのことを知ってるのは『B小町』活動中に「厄介なファンがいるな」程度で認識していたので顔と名前を覚えています。

日曜日は執筆しながらエリザベス女王杯の予想をしていきます


感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます
これからも頑張ります

次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?

  • OK 原作を知ってるから問題無い
  • NG やっぱり最初から全部読みたい
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