【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる   作:大気圏突破

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落馬した3人は大丈夫だろうか?特にみゆぴ~は復帰したばかりなのに


周りだけがいつも騒がしい

「(さてどうするか)」

 

 

 壱護から届いた手紙に目を通した狡噛は腕を組んで手を顎に添えている。中身は5年前に星野アイから被害受けた元ファンと接触したことが記されていた

 

『アイは自身が双子を育てていると嘯いている。大金を盗むことに躊躇しないところを想像すると何度も同じ手口で犯行を行っている可能性がある。当時のB小町には小規模ながらファンクラブが存在していたから連絡のとれる会員から手掛かりが得られるかもしれない、アイはアクアたちの生死については知らないことが唯一の救いだが、街中でバッタリと出くわす可能性も考えられる。尾行されてしまい最悪そっちに出没するかもしない。防犯に注意してほしい』

 

 

「(防犯か難しいな)」

 

 実は壱護が店に現れてから防犯については考えていた。一応飲食店なので強盗対策は必須であるが店主の彼が防犯設備そのものに近い、少なくともナイフや拳銃で襲われても対処は出来る。しかし店にやってくるのは芸能関係者が多く彼等が狙われるのはマズイ、癒されに来ているのに店が騒がしいと心休まることはないと思う

 

 

「(星野アイに直接『店に来るな』や『日本から出て行け!』と暗示を施すことが出来れば問題無いが、暗示魔法って些細なことがきっかけで解ける場合もあるし、とりあえず後回しに………って絶対にフラグだよな、あの時にやっておけばって)」

 

 これは馬券師あるあるだが、レースが終わった後に『パドックや返し馬で、あの馬が気になっていたんだよ』と何度口にしたことか、点数が増えても気になった馬は問答無用に買えである

 

 

「(しばらくの間だけ、条件付き入店の形にしてみるか)」

 

 簡単に言ってしまえば『一見さんお断り』である。現在店に訪れる面々にマーキングを施すことで入店出来るようにして、たとえマーキングが無くても彼等と同伴者なら入れるようにする。何も施されていない人は外から店内を見ることが出来るが入口を見つけ出すことが出来ないように対策をした。アイが見つかれば彼女に暗示をかけるか記憶を消去させることを算段した

 

 

「(DNA鑑定をされたらヤバいが、多分その手前で詰むはずだ)」

 

 星野アイと双子たちの血縁を証明するものは上記のことしかないが、鑑定の前に戸籍が調べられる。そして書類上ではアクアとルビーにアイとの繋がりは存在しない。いくら彼女が大声で喚こうが感情で法は動かない。手紙と考察したノートをアイテムボックスの中に入れた狡嚙は店のドアを開けてきた客人にスマイルを浮かべ注文を聞きに行くのであった。

 

 

 

 

 

「いいんですか?こんなところで油を売って」

「市民の安全を守る為に巡回中にすれば問題無いですよ」

 

 手紙を貰って2週間が過ぎた頃だった。カウンター席に座る男性は爽やかに笑い、提供されたコーヒーのカップに口をつけて、深く息を吐く

 

 

「今まで仕事ばかりで娘のことは妻に任せたままで、向こうも警視という仕事について理解してくれていますが、この前の休みの日に3人で晩御飯を食べた時に涙が出そうになって」

「父親あるあるですよ、止まっていた時計が動き出すような感覚に近いものですから」

 

 空になったカップにお代わりを注ぐ、彼の目の前にいるのは黒川あかねの父親で警視の黒川理である。上から5番目の階級でありフィクションのキャラで例えると特殊刑事課三羽烏の1人である『ドルフィン刑事』と同じエリートだ

 

 

「これからも家族との時間を大切にしたいので、それに妻には苦労をかけたのでどこかで恩返しをしたいですね」

「お金を使って豪華にするよりも感謝を込めていれば、自然と伝わると思いますよ」

 

 狡噛は組織としての警察は嫌いだが所属する人間を嫌っていることは無い、しかし権力を笠に着る輩は大嫌いである。つまり黒川理との関係は良好で互いに年頃の娘を持つパパ友として繋がっている

 

 

 

「1つ相談したいことが…」

「聞くだけなら」

 

 

 テーブルに肘をついた彼は神妙な表情で狡噛のことを見つめ、ただごとではないと察した

 

 

「『今ガチ』に出演していたMEMちょはご存知でしょうか?」

「YouTuberの?知ってるけど動画は見たことないな、ソロより多人数の方が好きだから」

「少し前に『落ちた信用を取り戻すにはどうしたら良い?』って聞かれまして」

「あかねちゃんから?」

 

 

 理は狡嚙の言葉に頷いた。MEMちょは騒動以降沈黙したままだが、YouTubeのコミュニティ欄にて『体調が回復するまで休みます』と残している。しかし返信コメントも攻撃的なものが多く、登録者数も5.5万人を割って更に下降中である。自分を助ける為に行動したのに世間から叩かれ罵られる彼女を見て助けたいと思う舞台女優は、自分1人の手に負えないと考え周囲に相談をしている

 

 

「それで何て答えたんですか?」

「『ほぼ不可能だ』と言いましたが、娘は0%じゃなければ手があるって自分だけが助かるのは駄目だって」

 

 

 腕を組んでいた彼は”う~~ん”と口を閉じて喉の奥から唸り声を出していた。炎上した黒川あかねが助かったのは奇跡と同等のレベルである。奇跡のバーゲンセールなんて行われていない

 

 

「私も芸事には疎い身ですが、過去に問題を起こして復活することなんて…」

「芸能どころかプロスポーツでも極僅かな例しかないな、それでも復活するのに年単位は要していたはずだ」

 

 

 薬物・賭博・脱税・不倫・詐欺・盗作・不正受給・未成年喫煙と飲酒しての当て逃げ事件、芸人・アイドル・タレント・女優・演歌歌手・野球・サッカー・ボクシングetc、星の数とも言える著名人が問題を起こして表舞台から去っていった。こうやって会話をしている間にも1人また1人消えていく

 

 

「正直なところ関わってほしくないのが本音です。困っている人に手を差し出して引き寄せるのは正しいことだと思います。だけど」

「素手で火中の栗を拾い大火傷、最悪は共倒れもあり得る」

「多分ですが狡嚙さんのところにも相談に来ると思います。ですので」

 

 彼の言いたいことは分かっている。口にはせずにハンドサインで了承するとホッとした表情を見せて、会計を済ませて出て行ってしまった。

 

 

「(流石に年齢詐称YouTuberまで助ける義理はないな、このままだと俺は都合の良い神様になってしまう)」

 

 彼はキテレツでもドラえもんじゃない。アクアとルビーの父親である。頼りにされるのは嬉しいが何でもかんでも頼ってくるのは違う、黒川あかねを救ったのは追い詰められた彼女のことを演出の玩具にしたことに対しての憤りだ!成人している炎上YouTuberまで助けてしまったら後戻りが出来なくなってしまう。空になったカップを洗いながら思案しているとスマホが鳴動していることに気付いた。

 

 

 

 

 

「生配信に来てくれてありがとうございます!」

 

 25歳のYouTuberの女性はカメラに向かって挨拶をしたあと、チャット欄に流れてくるコメントやスパチャを読み上げながら本日のテーマを発表した

 

「今日は『今ガチ』の裏話を公開しま~す!もちろん出演者にも生電話を繋ぐから、最後までお付き合いください」

 

 拍手のマークや数字『8』が早送りした映像のように素早く流れていく光景を見ながら、彼女は近くに置かれているアルコールの缶に口をつけて飲み干してしまう。缶を後ろに放り投げ2本目を開けると袋から取り出した錠剤を噛み砕いて流し込む

 

 

「実はイタズラはメルト君とは事前に打ち合わせを…」

 

 目がトロンとして焦点が定まらない!顔を紅潮させながら振り子のように左右へ揺れ動き、口から涎が落ちて服を汚す。何日も同じのを着ているのか無数の涎がシミになっているのにも気づかず口を動かしながらマイクを近づける

 

 

「ケンゴ君はフヘへ、ちょっとすけべでぇ~、誕生日の鏡餅の、プロジェクションマッピングの土管はあるあう、下から覗くかにゃ1回だけぇぇ」

 

 言っていることが支離滅裂で文章になっていない、それどころか突如着ている服を脱ぎだして下着姿になってしまう

 

 

「うぇ~い、シャンパンファイトぉぉぉ」

 

 

 飲んでいるアルコールの缶を頭の上で逆さにして振りかけるが中身が空で数滴しか出てこない。彼女はこれを前に向けて投げつけると、レンズがひび割れているカメラに新たな傷を作り出していた。

 

「ちょっと!どこ見てんの‼」

 

 今度は急に怒りだして何も映っていないパソコンのモニターに正拳突きをお見舞いする。MEMちょは満面の笑みを浮かべニヤニヤとしている。そもそも生配信なんてされていない

 

 

「鏑木さん赤スパありがとうございます。小遣いが少ないのに大丈夫ですか知りませんよ、キャバ嬢のミカちゃんから怒られても」

 

 

 真っ暗なモニターに向かって頭を下げているつもりだが、壁に貼り付けられているポスターに話し掛けている。笑いながら焦点の定まっていない目から涙が零れ落ちた。パソコンから伸びるケーブルはコンセントに差さっていない、薄暗くゴミが散乱した自室で毎日行っている誰も来ない生配信もどきを続ける彼女は再び袋から錠剤を取り出して飲み込んでいく、次第に眠気が強くなり瞼が重くなってくると

 

「きょうぉの、なまはすいんはこれでぇぇ、にょわります。しゃいごにシュパちょ、のよみあげをしゅてかなや」

 

 

 呂律がおかしくなりベッドの上で天井の染みに向かって片言のように言葉を捻りだすと、目を閉じて夢の世界に旅立ってしまう。いつの頃からか夢と現実の区別が出来なくなり自身が炎上したことを忘れてしまった。彼女の中では『今ガチ』が大成功してチャンネル登録者数も大台のミリオンを突破していると妄想している。ポスターの横にはマジックで描いた金の盾の絵が飾られているが歪で第三者から見れば子供の落書きより酷い、現実から目を背くMEMちょに救いの手は届くのだろうか?

 

 

 

 

 




次第に壊れていく年齢詐称YouTuberは助かるのだろうか?

黒川パパはCV関俊彦さんのイメージで脳内再生させています。しかしあることに気づいた五反田監督が未登場なことに…常連客として出そうかしらシマカンと対比させる形にして


感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます
これからもよろしくお願いします。

次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?

  • OK 原作を知ってるから問題無い
  • NG やっぱり最初から全部読みたい
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