【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる   作:大気圏突破

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原作キャラが強制退場


天に送りましょう

「おいおい何でこんな所に仏さんがいるんだよ!」

 

 

 

 夏の暑さが顔を出す頃、転生者の狡嚙は宮崎に来ていた。エリザベス女王杯で大勝ちしてから地方競馬場を巡る旅に出た彼は、寄り道をしながら目的を果たしていた。新幹線はなるべく使わず電車やフェリーで移動し、ご当地グルメを堪能しながら九州へ向かっていた。目的は宮崎にある育成牧場であり生前1度は行ってみたいと思っていた場所だった

 

「しかしエイシンフラッシュが7番人気の単勝30倍って皐月の3着馬だぞ、まぁここで勝って種牡馬入りすることが出来たからオニャンコポンが誕生するし、ジャパンカップであの馬も」

 

 

 決して負けることがないギャンブルで得た資金は億に突入した。馬に食べさせてもらっているので彼は配当金の一部を引退馬を預かっている牧場に匿名で寄付をしている。まだこの時代は引退した馬が行方不明になることが多い、個人で預かっている人もいるが金の掛かることであり、彼は支援している。

 

 

「ん?なんだあの光は?」

 

 ホテルの窓から目を凝らすと山中でライトが光っているのが見える。転移魔法で現場へ向かうことが出来るが移動による疲れもあって寝てしまった。

 

 

 

「あの光はこの人が出していたSOSだったのか?」

 

 彼は翌朝になるとライトが光っていた場所に転移し愕然としてしまった。白衣を着た眼鏡の男性が死んでいたのだ!

 

「雨宮吾郎さんか、すいません俺が寝なければ助かっていたと思うのに」

 

 亡くなった男性に手を合わせ、名札に書かれていた病院に電話しようとしたがダイヤルボタンを押していた指が止まってしまう

 

 

「(病院に連絡してどう伝える?”雨宮吾郎さんが死んでますよ”と言って信じてくれるのか?確実にイタズラ電話の類だと思ってスルーされるだろ)」

 

 今度は110番で警察に繋ごうとしたが、1を押す前に指が止まる

 

「(警察も大丈夫か?仮に来てもらっても俺が怪しまれる。質問攻めされて犯人にでっち上げられる可能性だって)」

 

 彼がそう思ってしまうのも無理はない、だって生前は静岡県民だもん!あの冤罪事件のことを子供の頃から県内ニュースで見て育ったから警察を信用していない

 

 

「(このまま放置も駄目だろ!あ~もう仕方がない)」

 

 狡嚙は指を”パチン”と鳴らし

 

炎灰(かいじん)!」

 

 雨宮吾郎の死体が一気に燃える。周囲に火が燃え移らないように調整しながら眼鏡や白衣、そして胸ポケットに入っていたモノを全て焼き尽くして骨にしてしまう。そしてネットショップで購入した骨壺の中に彼の遺骨を入れて

 

「圧壊」

 

 中の骨を粉々に砕いて砂状にさせて海上に転移した

 

 

「母なる海に還れ!ってな」

 

 上空から雨宮吾郎の骨を散骨し全てを海に放って、再び手を合わせて亡くなった彼の冥福を祈る。自身が見捨ててしまった命に対する償いを終わらせホテルに戻った。なお彼が散骨した場所は数時間後に多くの海水浴客で溢れる場所である。

 

 

 季節は巡り再び11月となり狡噛は関東に居を構えた。別に旅を止めた訳ではなく地方競馬と中央競馬は年末にかけて大きなレースが立て続けに行われる。北上に移動しながらだと雪が原因で馬券を買いそびれる可能性がある為、一時的に部屋を借りた。ネットでは経由で決して購入しない、だって税金払いたくないもん

 

 

「もう1年か早いな」

 

 彼は住処を決める前に自身がかつて住んでいた浜松市にも訪れていた。確かに家はあったが表札の名前が違い、駐車されている車もメーカーも別のロゴだった。かつて友達と遊んだ公園のベンチに座り、当時のことを思い出した。

 

「かくれんぼで軽トラの荷台に水野が隠れていたんだよな、そのまま出発しちゃって」

 

 

 ノスタルジーに浸りながら『げんこつハンバーグ』でも食べようと思い、スイミングスクールとエロタイトルが9割を占めるレンタルDVD店の間に挟まれた県内の人気店に入った。

 

 

「(未成年のアイドルが妊娠・出産って、しかも父親知らずかよ)」

 

 彼は道中で購入した週刊誌にツッコミを入れながら『げんこつハンバーグ』が出てくるのを待つ

 

 

「(芸能界は闇だね、このアイドルグループも解散だろうな!あ~あ1人のせいで全員が夢を失うなんて悲劇だな、まぁ事務所はもっと大変だろうな)」

 

 運ばれた料理は口に運び、転生しても変わらない味に懐かしさと涙を流すのであった

 

 

 

 浜松市から拠点に戻って2週間が経過し、朝のウォーキングを終えた狡噛はコンビニへ寄って競馬新聞を購入していた。本日はジャパンカップでありブエナビスタが斜向で降着となり、繰り上がりでローズキングダムが優勝する年である

 

「雪か」

 

 空を見上げると真っ黒に色づいた雲から雪が舞い落ちていた。昨晩から急激に気温が落ちてしまい体調も崩しやすくなっている。帰宅までの道のりを歩き神社の前を通ると

 

”ぎゃ~!ぎゃ~!”

 

 

 小さな泣き声が聞こえてきた。最初は猫の声だと思っていたが明らかに違うことを感じ

 

「探知」

 

 ハンターハンターの円のような捜索魔法を展開させた。半径4メートル10センチが限界でありノブナガより範囲は大きい、次第に小さくなる声に焦りながら彼は段ボールの中で重なりあった2人の赤ちゃんを見つけた。

 

「(ステゴ、いや捨て子か)」

 

 

 降ってくる雪から女の子を守るように男の子が上に被さっている。手で触れると2人とも心音を感じられるが体温が低い

 

「(しゃ~ない家まで運ぶか)」

 

 彼は段ボールを持って神社の裏手に回り拠点まで転移した

 

「とりあえず体を温めて回復魔法だな」

 

 

 暖房を最大まで稼働させて毛布に2人を包み治療を開始する

 

 

 

「(ここは?)」

 

 金髪の男の子が目を覚ますと見覚えのない室内だった

 

「(確かアイに捨てられて、雪が降って…ルビーは?)」

 

 周囲を見渡すと双子の妹は毛布に包まれて寝息を立てていた。無事であることに安心した兄は自分たちが何処にいるのかを探ろうとするが

 

「おっ目覚めたか!」

 

 別の部屋から男性が入ってきて自分の額に手を当てて体温を確認する

 

「大分良くなったな、頑張ったな偉いぞ」

 

 大きくて暖かい手で髪の毛をわしゃわしゃすると毛布を掛けて横にさせた

 

「お前が上に被さっていたから、女の子の方は軽症で済んだ!って赤ちゃんに言っても分からないか」

 

 この人が自分たちを助けてくれたんだと理解した男の子は安心したのか、再び目を閉じて夢の中へ旅立っていく、あの騒動以来まともな睡眠を得ることが出来なかった体は休むことを欲していたからだ

 

 

 

 

『わたしにはムリです、だれかアクアとルビーのことをおねがいします』

 

 彼はマグカップに注がれたコーヒーを飲みながら段ボールの中に入っていた手紙に目を通していた。汚い字で漢字が使われていないのを見ると母親の教育レベルは低いと予想している

 

「(望まれない行為で身籠ってしまい出産したってところか?ってことは無戸籍の私生児の可能性があるな)」

 

 実は狡嚙の推理は当たっている。この2人には戸籍は存在しない!引受人である夫婦が頃合いを見て自分たちのところへ迎え入れるつもりだった

 

 

「(成り行きで連れてきたけど、この場合って警察?それとも119番?)」

 

 善意のある人間なら捨て子を保護した青年だが、悪意に満ちあふれた者なら誘拐犯と罵る可能性がある。今後のことについて思案していると女の子が目を覚まして彼のことを見つめていた。近づいて手を差し伸べるが

 

 

「や~!いや~!」

 

 彼女は泣きながら後ずさりをしてしまい、男の子がいる方へハイハイで駆け寄ると彼の体を揺らして起こそうとしていた。

 

 

「なんだルビー?もう少しだけ寝かせて」

「喋った?こんなにもスラスラと…」

 

 目を覚ました男の子は小さいのに流暢な日本語を披露し狡噛を驚かせた!男の子は焦った顔で見つめているが妹が抱きついてしまい身動きがとれない状況である

 

「(どうする?どうやって誤魔化す?)」

「最近の子は成長が早いんだな、もう喋れるなんて天才か?」

「ふぇっ?」

 

 どうやら狡噛は男の子ことを成長の進んだ子供と認識していまい、彼の杞憂は無駄に終わってしまった

 

 

「そうか母親に捨てられたのか」

「助けてくれてありがとうございます!」

 

 男の子の前に粉ミルクの入った哺乳瓶を置いて飲むこと勧める。彼にとって久々の食事であり空腹になった胃は満足したように膨れていった

 

「あっちが妹の」

「ルビーです」

 

 指さす先に粉ミルクを貪るように飲む女の子はこちらの視線に気付くと後ろを向いてしまう

 

「ごめんなさい」

「捨てられてショックを受けたんだろ!ルビーちゃんも喋れるのか?」

 

 その質問にアクアは頷き肯定する

 

「あの不躾な頼みですが」

「訳ありだろ?実は考えていたんだが俺の所で暮らさないか?」

「えっ!あのそれは」

「あんな状態のルビーちゃんを施設に送ったら確実に病む、兄妹は一緒にいた方が良いだろ?」

 

 それはアクアの望んでいたことだった生きていくには誰かの保護を受けなけばならない、行政に頼めば衣食住に困ることは無いが、最悪ルビーと離ればなれになってしまう。それだけは避けたかった。自分を犠牲にしてもいいから妹を守るつもりだ

 

「俺の戸籍に2人を入れる。経歴は適当にでっち上げる。造作もないことだ」

「いいんですか、仕事だって」

「大丈夫だ土日に稼いでいるし、君たちが成人するまでの蓄えは既にある」

「でもそんな」

「いいんだよ子供が遠慮なんかするな、黙って甘えていろ」

「ありがとうございます」

 

 狡嚙は頭を下げるアクアを撫でると同時に2人を捨てた母親に大きな怒りを覚えた。子供を捨てる奴はクズだ!”育児を放棄した愚か者に鉄槌を”と行動するが居場所が分からなければ無理な話である。まずは生活環境を整え2人が過ごしやすいように改善するのが先決だ

 

「あっ馬券買い忘れた!」

 

 史実通りジャパンカップはローズキングダムが優勝したが後味の悪い結果であった

 




浜松市の件は本当です。某レストランはスイミングスクールとレンタルDVD店の間にありました。

次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?

  • OK 原作を知ってるから問題無い
  • NG やっぱり最初から全部読みたい
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