【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる 作:大気圏突破
「では、先生お願いします!」
エプロン姿の女の子たちは狡噛に頭を下げて挨拶をした。彼はルビーが誕生日にプレゼントしてくれたピンク色のエプロンを着用し、サイズが合わなくなっても魔法を使わずに自身の手で直しながら長く愛用している。なおアクアからは通販で購入した低温調理器を貰った。
「ほんま噂どおりやね、ルビーちゃんのお兄さんと見間違えるのも分かりまっせ」
「そうでしょ、お父さんは7つの球を集めて呼び出した龍に永遠の若さを」
「不知火さん、かめはめ波と龍拳どっちがいい?」
やろうと思えば彼は孫悟空と同じことが出来る。空は飛べるし瞬間移動は転移魔法、大猿化は変身魔法で代用可能だ!1度だけだが娘が部屋を汚してしまい『G』が出たときに魔封波を試してみたがコスパが悪かった。1匹を瓶に封印するのにフルマラソン1回分の疲労が伴うのは割に合わない
「じゃあ萬國驚天掌で」
「寿さん爪は切ってあるよね?」
ボケるフリルをスルーして彼は隣にいる桃髪巨乳の女の子に声を掛けた。彼女は両手のひらを広げて大丈夫であることをアピールしている
「料理番組に出るんだっけ?」
「実は事務所の先輩が出る予定やったんですけど、急遽ウチになってしもうて」
スポンサー離れで予算が縮小した番組ではタレントのランクを落として存続させていた。急遽キャスティングされた彼女は陽東高校芸能科に所属するグラビアアイドルの『寿みなみ』と言いフリルのクラスメイトで気軽に話せる友達である。何故彼女が狡噛の店でエプロンを着用している疑問だが料理が出来ないのである
「料理が出来ないって個性じゃないの?」
「お父さん、料理が出来ないキャラなんて溢れ過ぎて没個性ですよ」
スルーされていたフリルが2人の間に入り答えを口にする。教室内で彼女がフリルに今回のことを相談した結果、狡嚙に白羽の矢が立ったのである。
「せめて事前に連絡はしてほしいな」
「すいませんウチのせいで」
「そうよ!ちゃんと報・連・相しなさぃぃっ‼」
フリルの後頭部に馬場チョップを与えた狡噛は手を洗った。なにせ『3日後に料理を習いに行きますので、お店を開けてください』と一方的に通告してきた。話が急だったので今回は材料はネットショッピング能力を使って色々な食材を揃えてある。余ったとしてもアイテムボックスの中に入れてしまえば鮮度は保たれる
「なぁ今のうちに胃薬を買いに行った方がよくないか?」
「ダメだよお兄ちゃん、例え不味かったとしても完食するのが男だよ」
今回試食を担当するのは双子の兄妹で、アクアは久々の休みを潰される形となってしまい不機嫌な表情をしていたので、彼をサンドイッチする形で女優とグラビアアイドルからハグをされる攻撃を受けてしまい、Gカップの胸に男のシンボルは反応してしまう
「しかし弁当ねぇ、アクアとルビーが幼稚園に通っていた頃から作っていたけど」
「パパのお弁当って人気があって『交換しよう』ってよく言われたよ」
「鮫島先生の家に持っていくのだって弁当みたいなものだろ?」
今回課せられたお題は『7歳ぐらいの子供に受けるお弁当』である。なおフリルがエプロンを着ているのは飛び入り参加によるもので当人曰く”いつでも家庭に入れる為に準備を怠らない”と口にしている
「そういえば『おべんとうばこのうた』ってあるけど、あれって中身が貧相よね?」
「やっぱ戦争中の歌やから、質素倹約が推奨されたやないの?」
「いや、あの歌70年代らしいぞ」
スマホをで調べていたアクアの方を振り向いた女性陣だが、狡噛だけは黙々と使用する調理器具の手入れをしていた。どんなことも準備が大切である
「(7歳とはまたピンポイントだな、キャラ弁はありきたりだしクラスメイトに自慢したい部分を考えると難易度が少し高いな)」
「狡噛はん、実は言いそびれていたことがありまして」
寿は少しモジモジしながら彼の前に立つ
「親御さんも審査するみたいやねん、だから手の込んだものはちょっと止めてほしいんや」
「それを先に言ってくれない、割と大事なことだから!」
「すんません」
謝る彼女を尻目に彼はため息を吐いて、脳内で考えていた設計図を白紙にした。
「それならルビーたちが、幼稚園に持って行った弁当の作り方を教えるよ」
「卵のやつだよね?あれ好きなんだ」
狡噛は棚からレシピ帳のノートを取り出して、エプロンを着た女の子たちに見せた
「とりあえず後ろからアドバイスするから、やってごらん」
「お父さん」
「どうしたの不知火さん?」
「卵を割るのでノミと金槌を貸してください」
「ダチョウの卵なんて用意してないよ!」
喫茶店で若者たちが料理修行を行っている頃、吉祥寺頼子は鮫島家に訪れていた。彼女が週ジャンにて『東京ブレイド』を始めた時は足の踏み場も無いくらい汚い部屋だったが、狡噛の息子であるアクアのおかげで綺麗に保たれている。漫画を描くこと以外無頓着で食事すらも億劫に感じていたアビ子だったが、彼の父親が作る料理によって健康状態は良好である
「締め切りは大丈夫なんですか?」
「今週は思いのほかペンのキレが良くて、来週分まで終わらせて余裕があるんですよ」
師匠の質問に元アシスタントは笑顔で返しキッチンで紅茶を淹れている。最初この光景を見たときアビ子が壊れたと思って119番通報をしそうになったが狡噛家の躾が行き届いた結果だ
「それよりも先生!」
「どうしたんですか?そもそも何で呼び出したんですか?」
語気を強め真顔のアビ子は彼女の正面に座る。前日に”大事な話があるので家に来てください”と連絡を受けた吉祥寺は弟子が連載で行き詰っていると思い足を運んだのであるが、どうやら別の話のようだ
「いつになったらマスターさんと結婚するんですか?」
「ふぇっ?………アビ子先生…いったいなにを?」
突然のことで脳がバグる吉祥寺は目が点になってしまうが、アビ子は更に言葉でまくしたてる
「もう出会って10年以上経っているのに何も進展していないって、どんだけ初心なんですか?恋愛モノを描いている漫画家が恋愛をしてないってギャグですか?」
「いや…その、結婚じゃなくて付き合っても」
「アクア君から聞きましたよ!部屋で倒れているのを介抱されたことがあるって、常連客にここまで親身になる人なんていませんよ、しかも度々アドバイスを受けたり相談もしている。もう家族の一員じゃないですか、何を躊躇っているんですか‼」
彼女も狡嚙のことは意識している。先代が店を畳むと言ったときには赤の他人なのに引き継いでくれて自分の居場所を守ってくれた。『今日あま』の実写化未遂でも彼の言葉が頭に残っていたので最悪を回避することが出来てドラマでは脚本家共々お世話になった。もし互いが20代だったら勢いで告白してゴールインすることが出来たと思う、しかし30を超えてしまい今の関係に落ち着いてしまうと1歩を踏み出すことに躊躇してしまう
「このまま恋愛や結婚もしないで終わる気ですか?マスターさんが他の女性と結婚して『婚姻届の証人欄に名前を書いてください』って言われて納得出来ますか?」
「でもあの人にそんな女性は…」
「あ~もう!そんなんだから進まないんですよ」
モジャモジャに爆発している髪の毛を掻きむしると紅茶を一気飲みして鼻息を荒くしている。彼女は立ち上がり戸棚から2枚のチケットを机の上に叩き置いた
「これは?」
「担当がくれたんですよ!”部屋に籠っていないで外の空気を吸ったらどうですか”って、あの野郎最後に”独り身の先生にペアチケットは余計でしたね”って、アイツの名前を雑魚キャラに付けて無残な死に方で葬ってやりますよ」
それは都内から少し離れた水族館のペアチケットだった。最初は断ろうと思っていたが押し付けるように渡されてしまい長財布の中に入れてしまった
「それに先生がマスターさんと結婚してくれれば、自動的に私も店に転がり込むことが出来ます。そうすれば原稿の手伝いを頼むことも出来ます」
「そっちが本音か‼」
アビ子の頭を叩いてツッコミを入れるが軽いもので痛みは殆ど無い、体勢を立て直した彼女は吉祥寺の目を見ながら
「元アシスタントの過剰なお節介だと思ってください!私だって先生の幸せを願ってるファンなんですから」
「ありがとうアビ子先生」
鮫島家を後にした吉祥寺は財布の中に入ったチケットを見ながら溜息を吐いた。弟子にまで揶揄されてしまう程もどかしい関係に思われていたことに反省しつつ、どうやって狡嚙のことを誘おうか頭を悩ませるのであった
「卵料理って奥が深いんやね」
「料理の基本だから」
「お父さん!この巻き寿司を作る竹の道具って何ですか?」
「それは『巻きす』ね」
おかずのメインは厚焼き卵でフライパンで焼いている時に中身に鯖やサンマの缶詰をすりつぶした具材を入れて焼き上げると『巻きす』で♡(ハート)の形を作って固める。この他にも薄焼きを作り茶巾やふくさ包みに仕上げる方法を2人に教えた。
「美味しい」
「旨い」
双子たちが食べている主食のご飯だが、抜き取りの型を使いクマの顔や星の形をしたお握りだが白米ではなくチャーハンを使っている。もちろん米類なら何でもアリだが2人のお気に入りは
「狡嚙さん!この『さくらごはん』ってなんですの?」
「私も知りたいわ」
エプロン姿の女の子は具の無い炊き込みご飯である『さくらごはん』にご満悦だ、これは彼が転生前に住んでいた浜松市のソウルフードで使っているのは酒と醤油だけである。学校給食に出されれば取り合い必須の人気メニューの1つで、ルビーは小さい頃にこれをお茶碗3杯食べてしまいお腹を壊したこともある
「付け合わせの野菜はキャベツともやしを炒めてかつお節を和えたものだけど、使う調味料によっては味変も出来るから、そこはアレンジしてね」
「「は~い」」
2人の返事を聞いた聞いた狡噛は汚れてしまったキッチンを見て、どこから手を付けようか迷っていると店のドアを思いっきり叩く音が聞こえ、全員の視線がそこに注がれる
「誰かな、大輝君じゃないよね?」
鍵を開けると2人の女性がなだれ込むように店に入ってきた。1人は髪の毛が藍色で黒川あかねだと分かった。そしてその隣にはプリンみたいに中途半端な色の変化があり角が装着されていた。彼とアクア以外の女性陣はそれが誰なのか分かってしまった。
「狡嚙さん!助けてください‼」
どうやら厄介事が向こうからやってきてしまったようだ
タグにMEMちょ虐を追加しました。しかし割と多く反応があるので自分でもビックリしています。新たなジャンルを開拓したのかな?
今週は夜勤なので執筆ぺースは遅めになります
感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます
これからもよろしくお願いします。
次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?
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OK 原作を知ってるから問題無い
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NG やっぱり最初から全部読みたい