【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる 作:大気圏突破
『カードバブル崩壊』
遂にポケモンカードバブルが崩壊した。今までレアカードは右肩上がりで高騰を続けていたが転売ヤーによる悪辣な行為によって、品位を落としていることにメーカー側の堪忍袋の緒が切れてしまった。彼等がとった対策はシンプルなもので『本物の贋作』を大量に刷った。例をあげるなら大会限定カードが配布された1週間以内に新パック発売を唐突に行い、限定カードと寸分の狂いもない贋作を封入した。店側では正贋の判別は不可能でありフリマアプリに出品しても”これってパック品でしょ”という状態で250円でも落札されることは無かった
「アクア君どうぞ!」
アビ子はアクアに分厚い茶封筒を手渡した
「なんですかこれ?」
「この前ポケモンカードを売りましたよね?」
「パフェを食べに行ったときのアレですか、じゃあこれって」
「夏のボーナスです」
中身を確認するとピン札の1万円がたっぷりと詰められ、驚くアクアの顔を見て彼女はニヤニヤと笑みを浮かべいた
「受け取らないという選択肢はありませんから」
「でもこんなに」
「もし使い道に困ったらマスターさんに渡して”材料費に使ってください”と伝えてください」
鮫島家の食は完全に狡嚙家に依存している。野菜を避けていたアビ子だったが店主の努力やアクアの無言の圧力によって進んで食べるようになった。漫画家特有の偏食による健康状態の悪化も無く毎日が充実している
「ところでマスターさんと先生のデートはどうだったんですか?」
「水族館が臨時休業だったから、父さんの知り合いが運営する牧場みたいなところに行ったみたいですよ」
「2人の仲は進展したのですか?」
その問い掛けに彼は両手を広げ”さぁ?”というジェスチャーで答えた。帰宅後にルビーが必要以上に父にアタックして聞き出そうとしていたが、何も答えずに晩御飯の準備に取り掛かったので追及は止めた
「年内に2人はくっつくと思いますか?」
「案外来月には名字が変わっているんじゃないですか」
「まさか~」
この2人もなんだかんだ仲の良い関係である。冗談を言い合いながら仕事に励むことが出来る環境は良いリズムを作り、アビ子の脳内では東京ブレイドの登場人物が意のままに動き原稿に落としていく、週ジャンでは巻頭カラーや中央に陣取ることが多くなり、長年屋台骨を支えてきた海賊漫画は作者の健康問題もあり年4回発売のグラジャンに移籍した
「嘘だよね?ねぇこんなことって」
赤髪の少女は限界まで目を開いてスマホの画面を見つめていた。その足元には複数枚のポケモンカードが散らばり落ちている
「買取不可能って何?値上がりするんじゃなかったの?」
有馬かなはカード投資に手を出してしまった。皆様ヘイガニ事件はご存知だろうか?SNSでは転売ヤー撲滅の為に知識を持たない無法者に対して偽情報を流すことがある。『このカードが高騰するぞ』『ルール改訂でこのカードが強くなるよ』など正しい情報を知っている有識者から笑われそうなことも転売ヤーは食いついてしまう。そういった情報に彼女は引っかかってしまった
「どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう」
資産運用で減らしていた残金を全ツした訳ではないが失った額は見過ごすことが出来ない、未だに狡嚙の営む喫茶店を見つけることが出来ない彼女は苦肉の策として所持していたブランド品の1部を役者仲間に頼んで売ってもらったが求めている額にはならなかった
『こちらの管を鼻の穴に入れます』
パンパンに膨らませた風船を差し込んでいる芸人の隣には鳴嶋メルトが立っていた
『そして逆側を俺の鼻の穴に入れてます。そしてもう片方には風船を入れます』
『私の送った空気でメルト君の鼻に装着された風船を膨らませます!』
『スリー・ツー・ワン、GO』
空気が送られ萎んでいた風船が段々と膨らんでいくが耐えることが出来ず咳き込んでしまう。チャレンジは失敗したが涙目になるメルトにスタジオは爆笑していた。数か月前は同じドラマに共演して世間から叩かれたのに向こうは着順にステップアップを重ねている。なのに自分はなんだ?
「うるさい!」
テレビを消してチャンネルをベッドに投げつけてしまい電池がケースから飛び出してタンスの奥まで転がってしまう
「あ~もう」
更にイライラは募ってしまう節約の為に1日2食で済ませることが多くなり、朝から何も食べてない胃は飯を寄こせと催促してくる。使っている化粧品やシャンプーのランクを下げているが出費額は減っていない、節約に成功しても”頑張ったからいいよね”と甘くなっている
「とりあえず食べてから考えましょう」
腹が減っては戦はできぬとは言うが、負け戦続きの有馬に輝く未来は訪れるのか不明である。電子レンジ内で回転する消費期限の過ぎた半額弁当を見つける目から光が消えているのは気のせいだろうか?
「(メルト君やゆきも駄目か)」
ノートに書き連ねた名前に✕(バツ)印を書き込んでいく彼女は悩んでいた。自分1人の力だけではMEMちょの復帰は厳しいと思い『今ガチ』のメンバーにコンタクトを試みているが望んでいる答えは返ってこなかった
「(化野さんや姫川さんもアテにならない)」
自分が学校にいる間の面倒を彼等に依頼したが『NO』を突き付けられた。姫川は事務所側が彼に対して早目の夏休みを与え”今のうちにさっさと運転免許試験に合格しろ”という温情の夏休みである。なお彼は黒川に
『狡嚙のおじさんを怒らせたんだろ?一緒に頭を下げるから謝ろうぜ』
まるで自分が悪者扱いされているような言い方に憤慨してしまった。あの人はMEMちょのことを見捨てたんだ、上辺だけ優しい偽善者に下げる頭なんて持ち合わせていない
「…っおい、黒川」
「(チャンネル登録者数は約2万人弱、出来れば年内に5万の壁は―――)」
「オイッ黒川‼」
「っえ、ふぁっ!ハイ」
突然大声で名前を呼ばれ椅子から立ち上がる彼女は素っ頓狂な声をあげてしまう
「どうした?また調子が悪いのか?」
「いえ、大丈夫です」
「なら、23ページからの冒頭から読み上げてくれ」
教師からの指示に教科書を手に取って、記述されている文章を口に出して読んでいくが周りがザワザワしている
「黒川!何で生物の授業で島津家が出てくるんだ?」
「えっ!?」
彼女が持っているのは歴史の教科書だが目の前にいるのは生物の先生だった
「すいません」
「もういい、御神本!続きから読んでくれ」
着席した黒川は顔を紅潮させなが手で覆う、授業に集中することが出来ずに今回のようなことが度々起きている。最初は調子が悪いで誤魔化していたが、段々とその言い訳も通用しなくなってきた。早退していることも両親にはバレていないが時間の問題である
「(今は耐えるんだ!そうすればきっと)」
プライベートの時間は殆ど無くなり睡眠時間も段々と短くなっている。目の下に薄く隈が浮かび上がり無意識に貧乏揺すりをしている時もある。周りは"大丈夫?"と気にかけてくれるが、今はそれすらも煩わしい。欲しいのは言葉ではなく行動なのだ!
「(連絡してないけど問題無いよね)」
MEMちょの家に行く時は常にLINEで向かうことを伝えていた。これは彼女からの要望で『お茶の用意する時間が欲しい』とのこと、別に気を使わせるつもりは無いが強い懇願に折れてしまった
「(やっぱり協力してくれる人が必要よね?でも)」
あかねの脳裏に狡噛家の面々が浮かんだが霧散した。あの人たちに頼るぐらいなら自分1人の方がマシだ!しかしこのまま続けるのも茨の道である。親に大見得を切った手前で白旗を上げるわけにはいかない
「(マイナス思考は顔に出る。笑顔笑顔)」
思考を切り替えて頬を叩いてスーパーに入ろうとすると
「あ…かね?」
「MEMちょ?何でここにいるの?」
出入口からビニール袋を片手にぶら下げた彼女が出て来たが、慌てるように持っているものを後ろに隠してしまう
「ちょっと、抓めるお菓子を…あははは」
「お菓子ね~」
袋を後ろに隠す際に僅かながら金属音が聞こえた。それはまるで缶がぶつかり合うような音だった。お菓子と一緒に缶ジュースを購入するのは自然な流れだが、それなら2リットルの飲料水を買うのがお得である
「出して!」
「えっ、ちょっとそれは」
「お菓子なんでしょ?じゃあ問題ないよね?」
「でもここで出すのは、それよりも家で食べようよ」
明らかに変だ!まるで中身を知られるのを恐れているように見える。目はキョロキョロとせわしなく動き体も小刻みに揺れている。あかねは強引に袋を引ったくり中身を見て顔を真っ赤にさせた
「MEMちょ!これお酒じゃない‼しかもこんなにも」
「…うっ……うん、ごめん、でもどうしても」
小さくなって謝る彼女に対し怒号を飛ばすが1つ腑に落ちないことがあった。MEMちょの持っている財布の中身では、この量を買うことは不可能である。バーコード決済が出来ないように『PayPay』から全額出金させて銀行口座に入れている。じゃあどうやって購入資金を用意したのか?
「まさか?」
「借金はしてないよ、弟に頼んで3000円だけ送金してもらってコンビニのATMでおろして」
「だってカードは」
「『PayPay』ならスマホだけでも出来るの」
家族の存在を失念していた。まさかここまで落ちぶれていることに憤りを感じた彼女は、近くのゴミ箱まで歩いてビニール袋の口をきつく結んで捨ててしまった
「何するの?せっかくの」
「せっかくの何?残っているお金も出して」
「でも、これは」
「いいから出して!」
根負けしたMEMちょは財布を差し出し中身を抜かれてしまい、スマホもバーコード決済が出来るアプリを全てアンインストールさせた。彼女は何かを言いたそうな目をしていたが
「私だってやりたくないよこんなこと、でもこれもMEMちょの為だから」
この言葉を免罪符にしているように感じてしまう。ここで逆らってしまえば更に彼女は怒り深夜まで説教コースとなる。ガチガチに締め付けられればどこかで息抜きをしたくなるのが人間である。黒川あかねはプライベートの時間を割いてMEMちょ復活の為に身を粉にして頑張ってくれるが頼んだ訳では無い、一方的な意見の押し付けに彼女のストレスゲージは臨界点突破寸前だった
1つアンケートを行います。殆ど本編に絡んでこない『有馬かな』ですが彼女の行く末を決めかねています。原作を読んでいくと彼女が原因でアクアがダメージを負うことが多く二次創作で幸せにしていいものか悩みます。アンケートの結果次第で彼女の顛末を考えようと思います
感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます
これからもよろしくお願いします。
次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?
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OK 原作を知ってるから問題無い
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NG やっぱり最初から全部読みたい