【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる 作:大気圏突破
「魔法使いの狡噛慎司です!」
彼の言葉を耳にして吉祥寺の脳内は真っ白になっていた。魔法使いって何?30歳まで童貞だった?そんな下世話なことじゃない。だって現在進行形で自分は絨毯に乗って夜空を飛んでいる。部屋で見るよりも星が綺麗と思っていると
「アラビアンナイトより西遊記の方がお望みですか?」
声のする方を見ると狡噛が片手に大きな柱を持って投擲のポーズをしている。あんぐりと口が開いてしまい閉じ方を忘れてしまうほどの展開に言葉を失ってしまう
「このままでいいですから」
「そうですか」
持っていた柱を遠くに投げ捨てた彼は子供のようにしおらしくなり、ちょっとだけ寂しい顔をしていた
「マスターさん!いったい魔法使いってなんですか?まさかこの絨毯ってランプの魔人のアニメに出てくる魔法の絨毯じゃ?」
「先に絨毯のことですが通販で購入したやつで、私の魔法で浮かして操縦しているだけですよ」
彼女の質問に答えた狡噛はニッコリと笑いながら吉祥寺の表情を見るが怯えているように感じたので、彼女の手を握り絨毯を上昇させて雲を突き抜けて満天の星空の下に躍り出た。そこからは車のクリープのようにゆっくりと動きながら夏の星座を眺めることにした
「最初の質問ですが言葉のままですよ」
「いや、そうじゃなくて」
押し寄せてくる情報の波に溺れそうになる吉祥寺は、今の状況を判断しようと脳みそをフル回転させているが彼女のCPUでは処理することが出来ない。モクモクと頭から煙を噴かす姿を見て彼は手を離すと絨毯の外に出てしまった
「こういうことです!」
「マスターさんが浮いてる。マジックや手品じゃないですよね?じゃあこれって夢?」
太ももや頬を抓るが痛みが生じ皮膚が赤くなっている。吉祥寺はようやく自分が現実に存在していることを理解し、狡嚙のことをまじまじと見つめていた。目の前にいるのはいつも通りにスマイルを浮かべ店で飲み過ぎた時には介抱をしてくれる彼がそこにいる
「このことを家族以外に見せるのは先生が初めてです」
「なんで、私に?」
「先生だから明かしました!」
「それってまさか…」
その一言で彼女は察した!彼が家族以外に大切な秘密を明かしたということは覚悟を持っているということに、そしてその覚悟を受け入れてほしいと願っている
「マスターさん!いえ慎司さん」
「はい」
「嬉しいのですが今すぐに返事が出来ません!自分自身の気持ちに整理をつけたいので七夕の日にもう1度ここに連れてきてくれますか?」
「いいですよ」
彼女の答えは保留となったが、2人は夜空の旅をしながら月見酒と洒落込んだ。アイテムボックスの中から複数の日本酒とつまみを絨毯の上に広げ、矢継ぎ早の質問を丁寧に捌いていった
「もしかして私が風邪で倒れた時も」
「探知魔法でして、ハンターハンターの円だと思ってください」
「じゃあ中を透視した訳じゃないんですね」
「プライバシーは守りますよ、あの時は3人で部屋に突撃しましたが」
瓶を1つ空にして彼は彼女の正面に向き直して自身の悩みを語った
「魔法の力があれば9割方何でも叶えることが出来ます。それこそ困っている人に手を差し伸べることも容易になります。でも」
「都合の良い神様、確かに言い得て妙ですね」
「家族や友人がピンチの時に使いますが別に私利私欲という訳じゃなくて」
「慎司さんは、ちゃんとわきまえているから迷ってしまう」
黒川あかねがMEMちょを抱えて助けてほしいと懇願したが、それを拒否したことに対して彼女は腕を組んで悩んでいたが
「人の行動に正解なんて無いと思います」
「どういう意味ですか?」
「結局それって正解・不正解の2択じゃないんです。自分で悩み考えた結果によるもので正否の範疇を超えています」
吉祥寺の意見に耳を傾けていると更に捲し立てるように
「リアルの人生はゲームと違って選択肢を間違えたからリセットボタンを押して、セーブ地点からやり直すことなんて出来ません。1つの道を選んだのなら終わりまで突き進むしかありません」
「はい」
「正解・不正解のピン・パーで考えてしまうと常に後悔が心の中に残ります」
それは学校の先生が生徒の質問に対して答えるようなもので、彼女は狡嚙の目を見ながら自分の意見を伝えていた
「知ってますか?仮面ライダーの目の下がギザギザ模様になっている意味を」
「デザインの都合じゃないですよね?」
スマホを取り出して画像検索で1号の写真をピックアップして彼に見せる
「昔テレビで言ってたんですが、その模様は涙で強大な力を得てしまい二度と人間に戻ることが出来ない哀しみを表しているって」
「今の俺に近いですね」
「違います!慎司さんは人間です。確かに魔法の力を得て人と違うことが出来ますが私はそれを個性だと思ってます」
「魔法も個性ですか…」
「もし貴方が泣いていたら私はハンカチを持って、その涙を拭きます!」
細くて小さな手だが力強く彼の手を握りってくる。恋愛漫画ならここでキスシーンとなるが、急に顔を赤くした彼女は慌てるように手を離してしまう
「すいません!」
「大丈夫ですよ」
今度は狡噛の方が彼女を落ち着かせる為に諭していく
「人なんて気分屋の気まぐれ者です。"今日は助けない"と言った次の日には助けているときもあります」
「難しく考えていたのかもしれません」
「なまじ考え込んでしまうと堂々巡りをして機を逃してしまいます。瞬間の気持ちや感情で動いても問題無いと思います」
空になったコップにミネラルウォーターを注いで、酔を覚ます方向にシフトさせつつ星空の旅を終わらせる為、ゆっくりと降下させていく
「でも憧れますね。魔法が使えるなんて」
「そういったアニメや漫画を見ていた世代ですか?」
「えぇ、子供の頃に母が使っていた化粧用のコンパクトを持ち出しては、友達と変身ごっこをしてました」
「怪盗ふくみみが登場していた世代ですか」
「見てたんですか?慎司さん」
「日曜朝はアニメが楽しみでしたから」
他愛のない話しは、互いの知らない子供時代の思い出を語り合う、それは欠けていたジグソーパズルのピースを埋めるように丁寧に1つずつ歩み寄って完成を目指すように思えた。愛しい人との夢のような時間は着陸と共に終わりとなり彼女を自宅前まで運んだ
「お店の方には普通に行きますので」
「では七夕の日に」
そう言って彼は転移魔法で消えてしまった。さっきまでのことを思い出し心臓の鼓動が早くなる吉祥寺の決意は既に固まっていた。だけど最後の1歩を踏み出すだけだが勇気が足りない。酒の力を借りて告白するのは悪手である。だから目標の日まで勇気の鉢植えに水と肥料を与える為に行動を始めた。なお彼が投げ捨てた柱は異国の地に突き刺さりそれが紛争終結の第1歩になるのはまだ先の話である
「遂にお前もプロポーズをしたのか?」
「まだ返事待ちですよ」
告白した翌日の午後に金田一が友人を連れて店に訪れた。テレビで見たことがある顔だが81歳には見えないほど若々しく一本の筋が通った出で立ちに、狡噛の背筋は伸びてしまう
「紹介がまだだったな、この人は俳優の寺田さんだ!ララライを立ち上げる時にお世話になった恩人で度々演技指導で劇団にも来てくれる」
「どうも、しかし縁起の良い日に訪れましたな昨日の夜にプロポーズとは」
白髪交じりの寺田は笑いながら彼のことを見つめ人生の先輩としての手解きについて語ろうとしていたが
「おじさん!お風呂貸して‼」
店のドアを荒々しく開けたのは先日運転免許を取得した大輝だった。その後ろには制服姿のアクアがいて、その隣には泥だらけの制服を着ている女の子が立っていた
「大輝君どうしたのいきなり?」
「運転中に泥を跳ねちゃって、それが有馬に直撃して」
「この女の子って大輝君の知り合いなの?」
「同業者!」
アクアを先に店の奥に行かせてお風呂の準備をさせるように指示をだした。ただ家の中を汚されるのは困るのでバスタオルを複数枚渡して残っている水分を拭いてもらった
「アクアについて行けば風呂場だから」
「ありがとうございます」
今にも泣きそうな声だったが彼女はお礼の言葉を述べて奥に入って行った
「アクア!」
「分かってる。下着類は流石に無理だけど必要なやつを持っていく、洗濯機は屋外のを使うから」
父の意図を理解している息子は遠くから声を張り上げてOKの返事を出していた。吉祥寺やアビ子が泊まることもあるので彼女達用の衣服も常にタンスの中に常備されている。緊急事態だから仕方がない理由を話せば分かってくれるだろう
「おい大輝!いったい」
「ごめん、別件の用事があって今から行かないと」
彼は財布から5枚の紙幣をテーブルに置いた
「これ迷惑料と有馬に飯を食べさせてくれ」
「払ってくれるなら問題ないけど」
「じゃあ!」
そう言って彼は風のように去っていくのであった
「なんだったんだ?いったい」
「彼はもうちょっと落ち着きを持った方が」
「昔からあんな調子で…」
三者三葉の言葉を述べていたが金田一は大輝が連れてきた女の子について語り出した。彼女は女優の『有馬かな』でアクアとルビーの通う高校の先輩である。名前を聞いた狡嚙は双子たちが入学する直前に見たドラマに出演していたことを思い出した
「実写ドラマに出てた女の子ね」
「あの子が小さい頃に共演したことがあるよ、天才子役の名に恥じない見事な演技でね歴史を変える逸材だと思っていたけど…」
「天狗になっちまったんだよ!親の現場介入もあったが、それで見切られてしまった」
「ところで1万円が5枚あるんだけど、迷惑料と飯代にしては高すぎない?」
「大輝のヤツ、千円札と間違えて出したんじゃないのか?」
しばらくして泥を落とし終えた有馬が店内に現れ、再び頭を下げて礼を述べたが彼女のお腹から特大の腹の虫がオーケストラの大演奏をしてしまい顔を赤くさせてしまう。なおアクアは汚れてしまった浴室の掃除をやっている
「制服が乾くまで時間があるし、食べたいモノを作るよ」
「でも、お金が…」
「既に大輝君から貰っているから問題ない」
「厚意は素直に受けておけ」
「ララライの金田一さん?…………それに」
「やぁ久しぶり!」
「……寺田さん?どうしてここに?」
カウンターから離れた狡嚙は冷蔵庫の中身と相談しながら、彼女が2人対して今回の経緯を説明しているのをBGMにしてフライパンを取り出すのであった
まずはプロポーズをさせて七夕の日に彼女の答えを聞く形にしました。強引すぎる展開かな?
感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます
これからもよろしくお願いします。
チャンピオンズカップの本命はどうしよう?
次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?
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OK 原作を知ってるから問題無い
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NG やっぱり最初から全部読みたい