【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる   作:大気圏突破

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有馬ちゃん救済ルート


やる気があれば差し伸べるのが先駆者の務め

「お〜〜いアクア!」

 

 授業が終わり校門を出ようとすると馴れ親しんだ声が聞こえ、視線を向けると姫川大輝が手を振っていた。その後ろにはピカピカの車が存在感を示し、まるでCM撮影のワンシーンのように見えてしまう。周囲の生徒は遠巻きながら姫川に声を掛けようか迷っていたが、大輝がアクアに近づいたことで無駄な時間浪費となってしまった

 

 

「どうしたんですか、この車?」

「ちょっと前に免許を取っただろ?だから」

「買ったんですか?」

 

 

 彼の問い掛けに腕を組んで鼻を鳴らした大輝は胸を張って

 

 

「いや、レンタカーだ!」

「もったいぶってそれは恥ずかしいですよ」

「仕方がないだろ、パンフレットを見ちゃうとどれも魅力的に感じるから迷うんだ」

「それで何しに来たんですか?」

 

 ジト目で兄貴分の彼を見つめるアクアは心の中で溜め息を吐きつつ、何も無い日の過ごし方を模索していた。昨日のうちに必要な原稿を終わらせてあるので今日のアシスタント業務は休みである。アビ子からLINEに父に作ってもらう弁当のリクエストが届いていたが肉類が多めというか殆どが肉だ!

 

 

 

「役者と同じで継続していないと腕が錆びつくから、教習所のじいさんに上手いと言われたドライビングの才能を枯らすつもりは無い」

「だれだよ、じいさんって」

「近くを通ったから店まで送ってやるよ、あれっ!ルビーは?」

「さぁ?教室にはいなかったし、クラスメイトと遊びに行ったんじゃないですか?」

 

 

 返ってきた答えを聞いた彼は、アクアを車の中に招き入れてエンジンを回転させた。授業中に雨が降っていたので濡れた道を歩くより全然マシだが、大輝の運転がやけにぎこちない

 

 

「本当に普通自動車の免許なんですよね?実は原付でしたって」

「大丈夫だ!じいさんが信じてくれた俺を信じてくれ」

 

 

 最初は緊張していたが、次第に鼻歌が出るほど余裕をかます彼を見てアクアはひやひやしていた。この人は調子に乗ると大きなポカをやらかす前科を持っている。子供の頃に自転車に乗れるようになった大輝は両手を離して運転していたが、そのまま坂道を下ってしまい大惨事になりかけたことがある

 

「あの髪色って有馬か?」

 

 大輝は遠くを歩く制服姿の女の子を見て声を掛けようとしてアクセルを踏み込んだ

 

 

 

 

「クーポンを使って500円を切るなんて盲点だった」

 

 牛丼チェーン店から出て来た有馬の持っている袋の中には『ネギだく・つゆだく・紅しょうがたっぷり』の牛丼で節約レシピとしてネットで紹介されていた。彼女にとって久々の動物性たんぱく質の詰まった食事になるので早く家に帰りたいと思い、若干早足になっている

 

 

 

「中身を仕分けるなんて考えたものね」

 

 この節約レシピを考案した芸人は1か月1万円生活で千円札を複数枚残してゴールしたことで企画そのものを潰してしまった。しかし彼の残した『ダクト飯』は貧乏芸人にとって希望の星であり、白米片手に街中を闊歩する芸人と出くわすこともある

 

 

「流石にあんなことをやりだしたら役者人生が終わるわ」

 

 誰に向けて言っているのか分からないが決意表明だと思う。今は我慢をする時でいつか好転する日がある。運用失敗とポケカ暴落で多くの財産を失ったが残金と相談しながら自分磨きを行うのはプロの姿だと言えるが努力の方向先が明後日なので、誰かが方向転換させなければならない

 

 

 

「お~~い有馬~」

「ん?誰?」

 

 

 遠くから自分の名前を呼ぶ声が段々と近づいてくる。どこかで聞いたことがあるような男の声で、名字を呼び捨てにしていたので検討はついていた。現場で顔を合わせたことがあるが彼の天然や自身を慕う双子の兄妹へのマシンガントークに辟易してた

 

 

「ったく、せっかくの良ぃ……」

 

"バジャ〜〜ン"

 

 

 振り向こうとした瞬間に、彼の運転する車のタイヤが道路の泥で汚れた水たまりを踏んでしまい、ドラマのワンシーンのように有馬の全身を汚してしまった。車内の大輝は口をあんぐりと開けて硬直してしまい隣のアクアは手で顔を覆い特大の溜め息を吐いた

 

 

「すまん!有馬」

 

 

 汚れることを厭わずに地面向かって額を擦り付ける大輝は彼女に対して土下座をしていた。有馬は頭から泥水を被りワナワナと震えているが手に提げていた牛丼は無残な姿となっている。アクアはコンビニまで走り2リットルの水とタオルを購入し手渡した。

 

 

「………」

 

 

 言葉を失った訳ではなかった。脳が現状を理解することを拒んでいる。さっきまで自分は幸せの絶頂にいたはずなのに、何だこれは?どうして泥水まみれになっている?目線を下げると未だに大人気俳優が土下座をしているが謝罪の言葉を並べているが全く伝わってこない、水とタオルを渡してくれた金髪の青年は制服から同じ高校の後輩だと察した。姫川から写真を見せられたことがある人物だ

 

 

「大丈夫………じゃないですよね?」

 

 青年からの問い掛けに頷いた有馬はタオルを水で濡らして顔を拭った。しかし汚れの範囲が広くコンビニのタオルでは焼け石に水である

 

ぐぅぅ~~んんんん~~~

 

 

 間の悪いことに腹の虫まで鳴ってしまい赤面してしまう。彼は地面に落ちている袋から漂ってくるものを感じ取り脳内で推理を完結させた。そして未だに地面と一体化している大輝の背中を叩いて起き上がらせる

 

 

「彼女を店まで運びましょう。事情を話せば父さんも分かってくれると思います」

「そうだな、おじさんが怒ったら2人で謝ろう」

 

 

 この野郎、過失割合100%なのに同乗者の弟分も巻き込んでいる。大輝では交渉が纏まらないと思いアクアは有馬に近づき

 

 

「ここから車で10分ぐらいの所に自宅があります。そこで洗いましょう」

「でも迷惑なんじゃ?それに汚して…」

「事情を話せば店にいる父も理解してくれます。身内ではありませんが兄の不始末の責任をとらせてください」

 

 

 深々と頭を下げたアクアの姿を見た彼女は頬を赤く染めた。人を寄せ付けないような見た目をしているが礼儀正しく責任を取る立場ではないのに謝罪してくれている。厚意を受け取った有馬は頷いて車に乗り込んだ。車内では仕事が無くなって1日3食を満足に食べることが出来ない日々を吐露していた

 

 

 

 

 

 

 

「大輝のやつ」

「しかし店主さんのご子息君は父親のことを信頼してますね」

 

 

 ここまでの顛末を聞いた金田一と寺田はそれぞれの感想を口にし、アクアが大御所俳優から褒められていることに狡嚙の心はウキウキだった。有馬は続けて鏑木事変(ファイル流出によるスポンサー離れ)によって仕事が無くなったことを口にすると

 

 

「はい、お待たせ!」

 

 

 作っていた料理が完成し有馬の前に運ばれる。大盛りのご飯と豚肉の生姜焼きに具沢山の水餃子のセットから香る匂いに腹の虫はご満悦のようである

 

 

「慌てなくてもお代わりはあるから」

 

 

 いつものスマイルを浮かべているが内心は違っていた。ファイルの流出は狡噛が鏑木に変身したことで起きてしまったので自身の犯した行いが巡りに巡って、目の前の女の子を困窮に追い込んでしまった。彼女以外にも仕事を失った人は沢山いるだろう。ある意味この行為は罪滅ぼしに近いのだ

 

 

「美味しい」

「嬉しい言葉だね」

 

 全てを救うことは出来ないが、せめてお腹を空かせている女の子を満たすぐらいのことをしないと罰が当たりそうだ

 

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

 

 全てを食べ終えた彼女はお茶を飲んで、ようやく落ち着くことが出来た。レンジで温めた期限切れの安い弁当とは比べ物にならない満足感を得て穏やかな表情を浮かべている。浴室の掃除を終わらせたアクアも戻りコーヒーを差し出す

 

 

 

「有馬、あのドラマは周りに合わせた結果だったのか?」

「はい、私を除いて演技の『え』の字も知らない素人相手にレベルを落としました」

「それは現場からの指示だったか?」

「いえ、でもそうしないと……」

 

 

 金田一の質問に答える彼女だが段々と寂しい表情を浮かべるようになってきた

 

 

「心中は察するが、お前の看板に傷をつけるだけだった」

「でも…嫌なんです世間から忘れ去られることが、ネットで調べるとオワコンや過去の栄光に縋るって、だから選り好みなんて」

「有馬ちゃん、君は覚えているかな?映画で共演したことを」

 

 

 寺田からの問い掛けに首を縦に振る

 

「あの頃の君は太陽のように光輝いていた。その光は様々なものを照らし観客達を惹きつけ、最後は自身に注目の的にさせた」

「褒めていただき光栄です」

「だからこそ今の君を見ていると残念にしかならない」

「すいません!」

 

 頭を下げる有馬を見て彼は手で制してしまう。謝罪の言葉を聞きたい訳では無かった

 

 

「どうだい?ウチに来ないかい」

「えっ?」

「事務所に入っていないフリーだろ?」

 

 突然の申し出に彼女の思考はフリーズする。寺田が代表を務める事務所は規模は大きくないが得意分野に特化した個性派が集まるところでララライの『みたのりお』も所属している

 

 

「なぁ有馬っ!そのついでだけどララライにも来ないか?」

「…は……い?」

 

 追い打ちをかけるように金田一の申し出に対して脳ミソはショートを引き起こし頭から煙を噴き出してしまう。ほんの数時間前に泥水をぶっかけられた自分が何でスカウトを受けているのだろうか?説明が出来ない

 

 

 

「寺田さんと話していたんだが、今が転換期なんだと思ってる」

「転換期ですか?」

「あぁ、ララライは大輝や黒川に依存している節があった。2本柱といえば聞こえはいいが2強他弱とも言える。そのイメージから脱却したい!」

「スポンサー離れでテレビの仕事から弾かれた逸材に声を掛けようと思ってね、それに君の目は死んではいない」

 

 

 

 金田一には別の思惑があった。黒川あかねがMEMちょの介護で劇団に足を運ぶことが無く将棋の飛車・角の1枚が抜けている状態で、言葉の悪い書き方になるが黒川の代役探しである。彼としても天才子役と言われた有馬かなが燻ぶって終わるよりも輝ける場所を提供し未完成のダイヤモンドを1級品に仕上げたいと思っている

 

 

「でも……そんな急に」

「確かに急だね、考える時間も必要だけどチャンスっていうのは転がってきた瞬間に掴まないと誰かの手に取られてしまう」

 

 

 大御所からの言葉に困っていると

 

 

「成功する人はピンチからチャンスを作り出しているものだよ」

「そうなんですか?」

「経験済みだからね」

 

 

 それは転生前の23年日本ダービーが行われた日だった。11レースが始まるまでに大損をしていた彼は通帳に残っていた30万円を6番人気だったハーツコンチェルトの複勝にゼンツした。ドゥラエレーデのスタート直後の落馬というハプニングもあったが3着に食い込み、払い戻し金を次の目黒記念に出走するヒートオンビートの単勝に全額入れて大幅プラスを達成させたことがある。なお翌週の安田記念で大敗を喫している

 

 

 

「受けてみたら?」

 

 少し離れた場所に座るアクアはカップの中身を空にすると有馬に近づき

 

 

「俺と父さんに血の繋がりは無い、妹がいるんだが両親を失った俺達に手を差し出してくれたんだ!その手を掴むことが出来たから今の俺がここにいる」

「そんなことが」

「血の通った温かい手を掴むことが出来れば道は開けると思う」

 

 

 

 彼女に退路は無かった。狡嚙が口にしたようにピンチはチャンスである!明日から劇的に日常生活が変化する訳ではないが現状を打破する起爆剤になる。きっと神様がここに来るように背中を押してくれたんだと思う。1度深く呼吸をした有馬かなは

 

 

「その話、受けさせてください」

 

 

 光を失い闇夜を歩く彼女は出口を見つけドアノブに手を掛けた




ちょっと強引ですが、重曹ちゃんをハッピーエンドにする為に展開させました。

店主の狡嚙は特に何もしていません。店にいた周りの面々が彼女を助けるために手を差し伸べました。飯を作ったぐらいですね


感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます
これからもよろしくお願いします。

次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?

  • OK 原作を知ってるから問題無い
  • NG やっぱり最初から全部読みたい
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