【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる   作:大気圏突破

28 / 43
シマカンの年齢って何歳だよ?原作者が誕生日や年齢をあやふやにしているから、原作改変でこっちの都合にさせるけど、とりあえずシマカンは38歳ぐらいにします(映画監督でも若い方だよな)


本当にすまないという気持ちがあれば…

「あんたは!」

 

 

 猿ぐつわを外され呪詛のこもった目で老婆を見つめるミヤコは昔のことを思い出していた。ホストだった彼と店の売り上げ金を持って逃避行した日々は最初の頃は楽しかったが、次第に彼の嫌な部分を目にするようになった。燃え盛った情熱も弱火になってしまい彼が若い女に現を抜かすようになったので残っていた金を持って逃げた。風の噂では男は捕まって行方不明らしい

 

 

「どうやって生き延びたか知らないが、ここでは意味を成さない」

「っくっっ!」

 

 

 視線を老婆から隣にいる島に移すが帽子を深く被り目を合わさないようにしている。唾でも吐いて顔を汚してやろうと思ったが距離が遠い

 

 

「あぁ、”どうしてバレた?・私たちの関係は?”って悩んでいそうだね、冥途の土産に教えてやるよ、私は坊主の雇用主さ」

「元だけどな、顔だけが良くてホストの才能は無かったけどな」

「ベッドの上で泣きながらヒーヒー言ってた坊主が、まさか映画監督になるとは」

 

 

 島の童貞は老婆に捧げられていた。彼女は当時のことを思い出しニヤニヤと笑っているが対照的に彼の顔は真っ青な表情を浮かべている。別に2人の関係は悪くない、島が風俗嬢を題材にした映画を撮影するときは本職のキャストや店を撮影場所として提供した

 

 

「あんたから見れば下っ端の顔なんて覚えてないと思うが、派手に金を使う女の顔は覚えている。まさか関係者の俺に接触してくるなんてフィクションでも駄作だな」

 

 

 

 彼がSNSのダイレクトで受け取ったときに五反田監督以外に老婆にも相談していた。もし彼女が斉藤壱護との出会いがなければ今回のことはスルーされていた可能性もあったが、天は彼等に味方をした。

 

 

「さて、無駄話はこれまでとする」

「いったいどうするつもり?」

 

 

 ミヤコの言葉に高々と笑う老婆を見て、気持ち悪くなり鳥肌が立ってしまう

 

「そんなことも分からないのかい?盗まれたものを返してもらうのが筋じゃないのかい?」

「残念だったね!もう殆ど残ってないわ」

 

 

 潜伏先を定期的に変えながら犯罪紛いのことを行い、生活してきたミヤコに手持ちなど残っていなかった。双子たちの情報で受け取った現金はあるが奪った額には到底及ばない

 

 

「貴様には2つの選択肢を与える」

「2つ?いったいなにを…?」

 

 

 頭に疑問符を浮かべるミヤコの表情を見た老婆はVサインを作り、口を開いた

 

 

「1つは変態御用達の店で馬車馬になって働いてもらう。頑張ってトップになれば2年ぐらいで完済出来る。まぁ2ヶ月すら持たずに世から消えてしまうこともあるがな」

「誰がそんなところに」

「じゃあもう1つでいいな、それで構わないか?」

 

 その問い掛けに対して頷くと老婆は黒服たちに指示を出す

 

 

「利子をつけてざっと1億2千436万円、優しいから端数を省いて1億でいいか、1000万円につき10秒に設定するか」

「どういうこと?」

「100秒間だけ頑張れば無罪放免してやる。好きなところに行けばいい追跡もしない」

 

 

 あきらかに胡散臭いが変態たちのオモチャになるより十分マシである。100秒だけ耐えれば解放される。短絡的な思考で安易な方を選んだミヤコの顔に生気が戻った。しかし

 

 

 

「威勢がいいな!」

 

 黒服たちが持ってきたのは頑丈に作られた鉄の檻で中には黒い物体が蠢いている。それはしきりに体当たりをして檻を破壊しようとするがビクともしない。ミヤコは目を凝らしてよく見ると物体は体を反転させて目を合わせてきた

 

 

「知ってるかい?大昔に海外の番組で格闘家と野生の獣を戦わせる企画があったのさ」

「…熊?」

 

 檻の中にいる獣は口から涎を垂らし血走った目は彼女のことを餌と認識している。唸り声を上げながら数回突進を繰り返すが檻は破壊されない

 

 

「”熊がかわいそう・駆除反対”と外野から叫ぶ輩に送りつけてやりたいものだね、安全圏から好き勝手に言って何様のつもりか」

「ねぇまさか?」

 

 

 戦々恐々するミヤコは察してしまった。黒服たちに拘束を外され逃げようとするが頭から押さえつけられてしまい倒れる

 

 

「まぁ馬鹿でも分かるね!でもルール説明は必要だな」

 

 

 簡単に言えば熊とミヤコを同じ檻の中に入れて、両者の間にある仕切り板を取り外して100秒間逃げることが出来ればチャレンジ成功である。しかし熊相手に狭い檻の中を逃げるのは到底不可能だ!暴れるミヤコを檻の中に閉じ込めると言葉にならない叫び声をあけで全員を罵っている

 

 

「ちゃんと時間はコイツで計ってやるよ」

 

 笑い声をあげながら、ストップウォッチを掲げミヤコの目に見せつける。彼女は目を見開き手が赤くなるまで鉄格子を握り、力の限り動かしているが人間の力では隙間を開けることすらかなわない

 

 

「じゃあ、カウントダウンだ!」

 

 10秒前から数えられ、それは自身の終わりを告げる残り時間となる。熊は何かに察したのか仕切り板に体当たりを行い、カウントダウンよりも早く距離が縮まりそうだ

 

 

来るな!来るな!来るな!来るな!来るな来るなく…

 

 

 穴という穴から汚物や液体を撒き散らし泣き叫ぶが獣には通用しない。ヒビ割れた仕切り板が脆くなり、あと1発ぐらいで破壊される。ミヤコは神に助かることを祈ったが都合の良いことなんて起きない、最後の体当たりで板が破壊された

 

「い……や!」

 

 

 その瞬間ミヤコの脳は完全にショートし、熊の咆哮を耳にしたと同時に意識を失った

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、もうちょっと粘ると思ったが興醒めだ!」

 

 檻の中で大の字になって倒れるミヤコを黒服たちが運び出している。彼女は盗んだ金を返済する為に変態たちのオモチャになってもらう。全額払い終えるまで正気を保っていられるか保証は出来ない。そして熊も檻の中から出され老婆の所へ向かって行く

 

「間近で見ると本物そっくりだな」

「余興で作ったものさ、まさかこんなところで役立つなんて思ってもみなかった」

 

 

 老婆が熊の背後に回り背中のファスナーを下げると中から若い男が出て来た。これは精巧に作られた偽物である。10年前のバラエティ番組で芸人が動物園でゴリラの着ぐるみを纏い来園者を騙す企画があり同じことを行った。

 

 

「お疲れ、今日はもう上がりな」

 

 大役を演じた彼は2人に対して頭を下げると、他の黒服たちと一緒に着ぐるみを持って部屋から出ていく

 

 

 

「どうする?その資料は」

 

 その問い掛けに映画監督の島はミヤコから渡された紙の束を破り、室内に置かれていた一斗缶の中に入れて火をつけた

 

「こんなモノに頼るほど落ちぶれちゃいない」

「じゃあコイツも入れるか」

 

 

 彼女はミヤコの所持品や住処にしていた部屋から持ち出した資料の原本が入ったUSBを粉々に砕いて燃え盛る缶の中に放り込む、免許証やパスポートにマイナンバーカード、スマホや通帳など現代を生きるのに必要なモノを消していく、頃合いを見計らって全てを処分するつもりだ!懐から分厚い茶封筒を出して島に渡す

 

 

「これは?」

「今回の報酬さ!あの女に渡していた額の3倍ぐらいは入っている」

「それではありがたく」

「これからどうする?またここで働くかい?」

 

 冗談半分で尋ねるが彼は帽子を深く被り直して身支度を整える

 

 

「カメラ片手に海外で貧乏旅行でもするさ」

「そうかい、困ったらいつでも連絡しな!枠の1つぐらい残しておくよ」

 

 

 数日後、日本から飛び立った彼は謎の柱が地面に突き刺さった現場に訪れていた。日本人である島にとって、それは子供の頃に見たアニメと同じ光景であり現地の人に対して『桃白白』が柱に乗って空を飛ぶシーンを見せた。世界を旅した彼が再び時代の寵児になるのは20年先のことである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アクア君、これはなんですか?」

 

 それは七夕が終わり数日が経過した頃だった。いつものように鮫島家でアシスタントをしていたアクアにアビ子は問い掛けていた

 

 

「暇つぶしに執筆した作品です」

 

 彼女が指をさしているのは原稿の傍らで細々と書き込んでいた小説で、自身の体験を少し脚色した内容となっている。小刻みに揺れる雇用主を見ながら後片付けをしていると

 

 

「もしかしたらアクア君に文筆の才能があるかも」

「おだてないでください!」

「編集が来たら見せてもいいですか?」

 

 食い入るように迫って彼を押し倒したアビ子は腹の上に跨っていた。頷いたアクアは彼女の両脇を持って赤ちゃんを”高い高い”するように遠ざけて起き上がる

 

 

「ところでマスターさんのプロポーズは上手くいったんですか?」

「成功でしたよ、普通に朝帰りしていましたが」

「じゃあそれって…」

 

 

 あの2人は告白をしたあとに星空の旅を終えてカップルたちが入ることを許されたお城の中に姿を消した。詳しい内容を記載するとR18コースなので割愛するが、互いの愛を深め合い何度も身体を重ね合わせて朝になるまで求めあった。

 

 

「じゃあもう先生は店に住んでいるんですか?」

 

 その質問に対してアクアは首を横に振った。今週末に吉祥寺の両親に対して報告を行ったあとに婚姻届けを提出する予定で割とバタバタしている。普通に考えれば頼子が住んでいる部屋を引き払ってしまえば問題無いが漫画を描く仕事部屋として機能しているので、悩んだ狡嚙は魔法で店と仕事部屋を直結させた。云わば『どこでもドア』だ

 

 

「入籍が済めばやって来ると思います」

「あの~ついでに私も…」

 

 手を合わせて懇願する彼女に対して彼はニッコリと笑い、アビ子の顔も期待に膨らむが

 

「寝言は寝てから口にしてください!」

「あっう!」

 

 現実は無情だった。床に倒れる雇用主を見ながらアクアはこれから増える家族のことについて思っていた。雪の日に産みの親であるアイに捨てられ命の危機に陥ったが彼が自分たちに手を差し延ばして助けてくれた。血は繋がっていないが父は愛情を注いでくれる。いつかは形に残るモノで恩返しをしたいと考えているが妙案は思いつかない。

 

「(幸せか)」

 

 もしかしたら来年は家族が更に増えるかもしれない。17歳年下の弟か妹が産まれたら家は賑やかになるだろう。家庭の暖かさを知ったアクアは笑みを浮かべアビ子を抱き上げると、ベッドの上に運んで寝かすのであった

 




ミヤコはこれにて永久退場になります。原作では聖人キャラとして描かれていましたが今作では落ちるところまで落としました。なお格闘家と野生動物を戦わせる企画は本当に存在し、ジョジョの荒木先生の書籍(奇人変人)にあります。ライオンと10秒間戦う内容でしたが


感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます
これからも頑張ります

次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?

  • OK 原作を知ってるから問題無い
  • NG やっぱり最初から全部読みたい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。