【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる 作:大気圏突破
「それで何の相談?」
頼子の両親に報告を終えて無事に入籍を果たした彼の左薬指には指輪が嵌められている。数日後には妻となった彼女がここに居住を構え4人暮らしとなる。狡噛はいつものように店に立ち訪れる人達に接客をしていると鷲見ゆきが制服姿の男と一緒にやって来た
「私はブラックで」
「俺は砂糖多めでお願いします」
カウンター席に座る2人は飲み物を注文すると男の方は周囲をキョロキョロと視線を動かし落ち着かない様子だが、ゆきが諭すように語りかけている。
「はい、お待ちどおさま」
「ありがとうございます」
「うっす…いや、ありがとうございます」
その男の顔には見覚えがあった。春先に4人で視聴した実写ドラマに出演し恋愛リアリティショーでお笑い担当だった鳴嶋メルトだ!現在は『リアクション芸が出来るイケメン』として世間から認知されている。狡嚙も推しではないが割と好んでいるタレントである
「ご結婚おめでとうございます!」
「ありがとう」
彼女から祝いの言葉を受けた彼は礼を述べるとサービスでお菓子を追加で目の前に置いた。恋愛リアリティショーよりも大人の恋愛に興味を持っていた彼女からも馴れ初めについて聞かれたが、彼はのらりくらりと返している
「実は相談がありまして」
「厄介事?」
怪訝な表情を浮かべるが、ゆきは首を横に振って否定すると肘で隣にいるメルトを促した
「あの…店長さん、俺が出てる番組って見たことがありますか?」
「実写ドラマの方?それともバラエティ番組?」
2つ選択肢を出すとメルトは後の方を選ぶと狡嚙は頷いた。最近では柔道着を纏った彼がバラエティ番組で受ける罰ゲームを全部体験する内容が放送され
・ゴムパッチンで顔面強打
・生卵を頭で割る
・ゆで卵を頭で割る
・激痛足ツボマッサージ
・顔面に装着された洗濯バサミを一気に引き抜く
・熱々の小籠包を破らずに食べる…etc
なおこの罰ゲームが終わった後に金メダリストから柔道の技を全て受けきるという企画も行われたが撮れ高はなく、お蔵入りになってしまった
「テレビの仕事に呼ばれるのはありがたくて、街中で小さい子供から”メルトだ~”って呼ばれることも多くなっているんですが…」
「この路線を進んでいいのか悩んでいると?」
その問い掛けに彼はうなだれるように頷いた。顔の良さを活かして春先までは事務所はアイドル路線で売り出していたが、出演したドラマで役者失格の烙印を押され、鏑木の斡旋で『今ガチ』に出ると埋もれていた才能が開花した
「テレビを視ている一般人の意見を聞いてみたいんです」
家族や学校のクラスメイトは自身のことを肯定してくれるが、それは自分のことを傷つけないようにしているのでは?事務所側も悪名高い鏑木との縁が切れて、新たな路線を見出したメルトを鼓舞しているが不安が拭えない
「俺は今のメルト君が好きだね」
「えっ?」
別にこれは愛の告白ではない
「Youtubeで君が登壇しているイベントの切り抜き動画を見たことがあるけど、"やってる感"って言えばいいのかな?心ここにあらずって感じがしてて、ドラマもそんな風に見えたね」
「そうですか…」
「でも『今ガチ』でリアクション芸を披露している時って、楽しんでいてウキウキしているように見えたんだ!」
実はメルトは割とM気質な面を持っている。中学の頃に3年の先輩から性的に食べられてしまったのが原因である。その経験のせいで被虐的になってしまい未知との体験においては恐怖よりも好奇心が勝ってしまう。だから番組中のイタズラは彼にとってご褒美とも言えた
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「メルト君ってマゾだもんね」
彼女の合いの手にツッコミを入れるメルトは少し顔を赤く染めていると、店のドアが開いて赤髪が特徴的な少女が入ってきた
「かなさん!」
「あら、メルトじゃない?そっちは…」
「鷲見ゆきです」
「『今ガチ』の成功者たちも来るなんて、ここって芸能人御用達?」
2人の隣に腰を下ろした有馬は挨拶をすると狡嚙に大きめな袋を渡した。メルトは彼女にも同様の質問で尋ねると
「今が旬なんだからドンドンやりなさい!」
「えっ?」
「常に最高潮の人なんて居ないの、引っ張りだこの今にガンガン稼いで知名度を上げて、テレビに呼ばれなくなる前に次の道を探しておくの」
3人の中で1番のベテランである有馬は拳を握り持論を述べる。その言葉をBGMにしながら狡噛は弁当箱やタッパーを袋に詰めていく彼女の言っていることは的外れではなかった。『武勇伝』というリズムネタで一世風靡したコンビがいた。片方がチャラ男で売れている間に相方は持ち前の頭脳の活かして独自路線でファンを獲得し、チャラ男の人気が下火になっても仕事に困ることはなかった
「有馬ちゃんは経験豊富だね!」
「何度も修羅場を潜ってますから」
胸を張って鼻息を”フンッ!”と鳴らす彼女は最初に出会った頃よりも血色が良くなり、頬っぺたに自信満々の文字が刻み込まれている。ララライも実力十分な有馬と片寄が加入したことが刺激となり良い相乗効果が生まれている
「狡嚙さん1つ聞きたいことなんですが」
「なに?奥さんの好きなところ100選を聞きたいのか?」
こいつ好きな人と結ばれたから若干お惚気ている。それをスルーした有馬は幼少期の頃の記憶を脳ミソから引っ張りだした
「箒で空って飛べます?」
「……はい?メルト君119番を押してくれる?」
突然のことに彼は目の前にいる彼に救急車を呼ぶことを頼んだが有馬が制した
「すっごい前のことなんですけど、夜に家族と一緒に車に乗っていたら目の前に箒で空を飛ぶ2人組を目撃しちゃって、小さい女の子がいたんですがルビーに似てて」
「夜が遅かったら夢と見間違えていたんじゃないの?」
返しの言葉を述べる彼だが背中には特大の汗をかいていた。お気づきの方もいると思いますがルビーを乗せて夜のドライブをした時に彼らが手を振った相手は有馬一家だった
「でも両親も同じように見てるんです」
「でもさ~仮に箒で空を飛ぼうとすると男は辛いよ」
狡嚙は3人の前に出ると店内に置いてあるモップを持って跨ぐ姿を披露する
「この状態で浮けば、確実に股間に体重が集中して激痛が走る」
「確かに痛いっす」
その姿を見たメルトは自身が小学生の頃に、鉄棒の上を歩いて踏み外し大事モノを強打したことを思い出して下腹部を押さえていた。これは男にしか分からない痛みである
「う~~んでも…やっぱり似ているように」
「ハイ!必要なものは入れてあるから」
まるでさっさと帰れと言わんばかり手提げ袋を渡すと退店を促す。残りの2人も時計を見て席から立ち上がり会計を済ませた。3人を見送った彼は椅子に深く座り特大のため息を吐いて頭をボリボリと掻くのであった
「世界って案外狭いんだな!」
星野アイを行方を追っていた壱護は、過去に存在していたB小町のファンクラブ会員から手掛かりを得ようと奔走していたが、今のところ全て空振りだった。そもそも15年前の住所と同じところに住む人が皆無であり、会員と接触出来たとしてもアイと会った者はいなかった。
「(アイツって身分証持ってないよな)」
帰りの道中で作戦を練り直している彼は1つの答えを出そうとしていた。根無し草の生活をしていればマイナンバーカードを受け取ることは出来ない。身分証として原付の免許を取らせようとしたが頭がバカで試験に落ちていたから5年期限のパスポートを作らせた。
「(パスポートはとっくに期限切れのはずだ!)」
例えば盗品を売りさばくにしても身分証の提出は必要である。保険証も無いから病気になったらどうする?無精ひげのアゴに手を当てて思案していると、近くの電光掲示板に速報ニュースが飛び込んできた。
『治療費踏み倒し罰則強化へ与野党一致』
それは日本に訪れる外国人が病気や怪我を負って病院で治療を受けるが、治療費を払わずに出国してしまうケースが相次いでいた。国は補償してくれないので病院側の赤字負担となるを現政権が新たな法案を作り与野党合意で全会一致となった
「(規模の大きい病院じゃ不可能だけど、個人経営で主治医がヨボヨボのじいさんで耄碌してそうなところなら、『今度持ってきます』で切り抜けることも出来そうだ!なんなら夜に忍び込んで薬を盗むことも)」
ホテルに戻った彼は部屋に備え付けられたパソコンで個人経営の病院や限界集落の近辺に居を構える医者のピックアップを始め、次の日には飛行機に乗っていた。
「(絶対に捕まえる!アクアたちは今が幸せなんだ)」
背中に闘志を燃やす彼は双子たちにとってアイは毒にしかならないと思っている。もし彼女が店に現れたら崩壊が起きる可能性がある。それだけは絶対に起こしてはならないと心に強く誓った
「夜風が気持ちいいですね」
「えぇ」
双子たちは就寝し両親たちは絨毯に乗って夜のドライブと洒落込んでいた。妻の引っ越しが終わり、賑やかになった狡嚙家は笑顔の日々が続いている。頼子は執筆に行き詰まるとデートに行くことを懇願し誰にも邪魔をされない星空の下で夫に甘える
「慎二さん」
「な~ぁ~に」
「呼んでみただけです」
「そう」
肩を寄せ合い何もしない贅沢な時間を満喫している。妻は眼鏡を外し目を閉じてアピールをしてくるので夫は顎に手を添えて角度を合わせると互いの唇を軽く合わせた。
「ルビーちゃんがママって呼んでくれて、母親になったことを実感出来て」
「今までがお姉ちゃんでしたから」
「4人の時間も大切にしていきたいですね」
「家族と幸せに暮らすって当たり前のことだけど」
彼が次の言葉を口にしようとするが空気の読めないスマホが鳴動している。最初は無視をしようとしたが鳴りやむことがなく、仕方なく取り出すとディスプレイには『黒川理』と記されていた。2人は数秒間見合ったあとに通話ボタンを押してスピーカーモードにした
「すいませんこんな夜遅くに」
「どうしたんですが黒川さん?」
電話口の彼はいつもと違い落ち着きが無いように感じてしまう
「あの~すいませんが、あかねって店に来てますか?」
「……時計見て言ってますか?もうすぐ日を跨ぎますよ」
「そうですよね。こんなことを訪ねてすいません!」
「何か厄介事ですか?」
その問い掛けに彼は数時間前の出来事を口にした。黒川家の夫婦は娘の態度に我慢を続けていたが耐えることが出来ずに家族会議となった。売り言葉に買い言葉で話し合いではなく答えの無い意見のぶつかり合いに、あかねは途中で中座する形で外に出て行ってしまった。狡嚙は目を閉じて店内に置かれている人形と自身の目をリンクさせてたが、周囲に彼女は見当たらない
「今から家内と外に出て探してみます!」
そう言って電話が切られてしまった。
「慎二さん!」
妻の声に顔を向けると彼女は斜め下に向けて指をさしている。彼は絨毯の高度を落として目を凝らしてみると、そこにはかつて店で治療したYouTuberの彼女が頭を垂れてベンチに座っていた。
今週は執筆と仕事と競馬で遊ぶ余裕が無かったので、明日はゆっくりと競馬をして英気を養います。今日はやばかった阪神の最終レースで断然の1番人気が負けていなかったら正月の餅代がなくなるところだった
感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます
これからもよろしくお願いします。
次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?
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OK 原作を知ってるから問題無い
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NG やっぱり最初から全部読みたい