【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる   作:大気圏突破

3 / 43
エリキング馬券内来るのかよ。昨日の京都は全部同じ文字が並ぶことがあって

2レース連続で名字に「田」のつく騎手が3着までを独占するし、菊花賞もエネルジコ・エリキング・エキサイトバイオの「エ」馬券だもん

土曜日にベリーベリージョッキーが複勝1.0を飛ばしてくれたお陰で儲けれたけど


行き先は誰も知らない

 斉藤ミヤコが姿を消してから数日が経過した。そして週刊誌にアイが極秘に出産したことが世間にバレてしまった。予定されていた仕事は全てキャンセルとなりアイは双子を抱いて固いフローリングの上に座っていた。スマホにはSNSからの通知が止まらず常に振動している。OFFにすれば問題無いが社長からの連絡を待っているので切ることが出来ない。B小町のメンバーからは罵りの言葉を受け着信も拒否されてしまった

 

 

「(3人で頑張ろうね)」

 

 深夜になっても壱護は帰ってこなかった。彼女は押入れからスーツケースを引っ張り出して、着替えや食料、赤ちゃん用のオムツなどの生活必需品を無造作に詰め込んだ!そして斉藤家に出向き貰っていた合鍵で侵入すると、彼が隠していたヘソクリである27万円の入った封筒を手提げカバンの中に入れて、今まで住んでいた部屋を後にした。

 

 

「(どうにかなるよね?)」

 

 近くを走っていたタクシーを呼び止めて乗り込んだ彼女は運転手に行き先を告げた。

 

 

 

 ミヤコが事務所の金を持って逃亡し、アイが双子を連れて事務所から去っていった。やけ酒をしようとヘソクリから1万円を取り出そうとするが封筒が無かった。財布の入ったポケットには事務員の退職届がクシャクシャに詰め込まれていたが投げ捨てた。

 

「これだけか」

 

 

 財布の中には千円札が1枚だけでこれが彼の全財産であった。複数のキャンセル費用を一括で支払ったことで預貯金を吐き出し、所属していたB小町のメンバーからも未払い分の給料を請求されているがジャンプをしても出せるモノはない

 

「どこで俺は間違えたんだ‼」

 

 フローリングを土足で汚しソファに座って自問自答した。アイの可能性に未来を感じて声を掛けたこと、ミヤコを守り自身の夢を語り妻にしたこと、彼女を中心にして他のメンバーを蔑ろにしてしまったこと、今までの思い出が走馬灯のように駆け巡り涙を流す。それから数日が経ち彼が社長を務めていた苺プロは倒産し、B小町の名前も表舞台から消えてしまった

 

 

 

「さて明日から頑張らないと」

 

 ビジネスホテルに身を寄せたアイは双子をベッドで眠らせると、コンビニで購入したジュースとハーゲンダッツを食べながら英気を養っていた。働かなければ生きていくことが出来ない!でも家族3人ならどんな困難だって乗り越えていくことが出来る。今が人生の最底辺なら後は上に昇っていくだけである。輝く未来が…

 

 

「ダメですか」

「ごめんなさいね、ウチもいっぱいで」

 

 働くにはアクアとルビーを預かってくれるところを探したが、どの施設も定員が埋まっている。奇跡的に見つかったとしても料金が高く安易に決めることが出来ない。それと並行して働き口を探しても未成年の彼女を雇うところは無かった

 

 

「アンタ、赤ちゃん置いてどこ行ってたの?」

「すいません」

「出て行ってもらうから荷物を纏めなさい」

 

 アイはなんとか個人経営のラーメン屋で働くことが出来たが、子供達を預かってくれるところを見つけることが出来ずビジネスホテルに放置してしまった。1日中ドアノブに『起こさないでください』の札が掛かっていたことを不審に思った従業員が中から聞こえる鳴き声が決め手となってマスターキーで突入した

 

 

「ここも駄目」

 

 今にも充電が切れそうなスマホの地図アプリにピンを刺す。上記のことを繰り返したことで泊めてくれるホテルは殆ど無くなり昨日初めて野宿をした。コンビニのポットでミルクを作れば店員に追い出され子供達は昨日から絶食中である

 

 

 

ルビー泣かないで!

 

 イライラして娘に当たってしまう。雰囲気を察したアクアが妹をなだめているが泣き止んでくれない。アイはダブルチーズバーガーを口の中に押し込んで胃を満たすと立ち上がり、近くの水道で手と顔を洗って洗顔とメイクを済ませる。ラーメン屋も店主のセクハラが原因で辞めてしまった

 

「(夜の仕事だけはしたくない)」

 

 それはプライドだった体を売ることだけはしたくなかったが、既に所持金は尽きかけていた。でも生活能力が欠如しているアイに節約という概念は持ち合わせてなかった。そして日々のストレスが募った結果…

 

 

 

 

「ごめんねだらしないママで!」

 

 草木も眠る丑三つ時、彼女は寝ている子供達を連れて街外れの神社に来ていた。道中で拾った段ボールに自身が着ていた服を詰めて布団の代用品とした。手紙を入れて狛犬の近くに置くと振動で目が覚めた2人は不安そうな表情でアイを見つめる

 

「良い人に拾われてね」

アイー‼ママー‼」」

 

 彼女は外に向かって走り出し、2人の叫び声に振り向かず闇に消えていった。ルビーは現実を理解出来ないのか倒れてしまう。段ボールの外に出て追い掛けようにも赤ちゃんの体では決して追いつけない。そして空から雪が舞い落ちてくる

 

「このままじゃ」

 

 アクアは段ボールを境内の軒下に入れようとするがルビーが重くてビクともしない。担いで行くのも不可能だ!彼は妹を雪から守る為に覆い被さり自分は冷たい雪の冷気を受け続けた。

 

 

 

 

 捨てられた時のを思い出したアクアは子供用の浴槽の中に入れられ汚れを落としていた。久しぶりの入浴に心が落ち着く

 

「気持ちいいか?」

「ありがとうございます」

「しかし子供を捨てるなんて最低な親だな」

「それでも唯一の親です」

 

 頭を下げて今までのことを思い出すがアイは母親としては不十分だった。ルビーが空腹で泣いているのに爆睡したり、歯も生えていないのに自分の苦手な野菜を押し付けていた。それは子供がそのまま成長したアダルトチルドレンだった。さりなちゃんが知ったら絶対に幻滅する

 

 

「何か情報の1つでもあれば探すことは出来るが」

「ごめんなさい!何もなくて」

「アクア君が謝ることじゃない、悪いのは捨てた母親だ!ろくな人間じゃないだろ」

 

 彼の言葉に対して素直に頷けない、自分が生前に最後に担当した推しの子供として転生したのに、その推しから捨てられてしまうなんて思ってもみなかった。彼女に関わったことでミヤコが暴走しB小町のメンバーや社長たちが不幸になってしまった。

 

 

「そういえば経歴をでっちあげるって」

 

 アクアは気になっていたことを狡嚙に問い掛けた

 

「ストーリーは適当に考えるが、お役所仕事ってザルなんだよ、江戸時代に生まれた人が戸籍上では生存していることがニュースでも取り上げられるぐらい杜撰なんだ」

「そうなんですか」

「存在しない弟夫婦が交通事故で亡くなって、その子供を引き取るにするかな」

「お願いします」

 

 湯船から上がり全身を拭いてもらうアクアは他者から受ける厚意に胸を熱くさせた。さりなちゃんが亡くなってからポッカリと空いてしまった空間を彼の愛情が埋めてくれた。

 

 

 

「ルビーちゃん、お風呂だよ」

 

 彼の呼びかけに彼女はフローリングの上で布団に包まってミノムシのようになっている。返事もなく中から出てくる様子も無い、引き剥がして入れるのも可能だが今の彼女に対して悪手である。アクアは満腹感と入浴によって緊張の糸が緩み、ぐっすり眠っている

 

 

「仕方ない、睡魔!」

 

 強情で汚れている女の子を無理やり眠らせ身ぐるみを剥がして裸にさせると、湯船に入れて隅々まで泡だらけにして綺麗にさせて髪を乾かし、風呂に入れる前と同じ体勢にさせて布団に包ませた

 

 

「(しばらくはこうするしかないな)」

 

 

 

 翌日の朝から狡嚙は双子の為に奔走した。近くに住む競馬仲間の夫婦に子供たちを預かってもらい、必要な書類作成と申請を行って、帰りには赤ちゃん用の衣服やオムツに粉ミルクを購入して拠点に戻った。”能力を使えば店に行かなくても”と思うかもしれないが、それだと世の中にお金は回らない、一応は経済のことを考えて行動しているが税金逃れの為に紙馬券を買っているので擁護は出来ない

 

 

 

「なぁルビー、今はあの人に甘えよう」

「………」

 

 深夜0時を過ぎた頃、アクアはルビーを起こして今後のことを相談していたが、妹の反応が悪い、ミヤコが裏切りアイに捨てられたことで病んでしまい口数が少なくなっている。捨てられる前はテレビに映る母親に向かって声援を送っていたが、今の彼女にそんな元気は無い

 

 

「今の俺たちに何が出来る?アイを探すなんて不可能だ!」

「でも…なんで、ママは」

 

 

 妹はアイの光しか見ていなかった。それは推しの全てを肯定する厄介なファンと同列である。例えばアイが道端にゴミを捨てたら、ゴミ箱が近くに無いことを怒り行政を非難する。この世の全てが彼女中心に回っていると思い込んでいる

 

 

「なんでアクアは受け入れているの?だって…私たち星野アイの子供なのに」

「俺だって受け入れたくない、でもこれが現実なんだ」

 

 

 

 

「(星野アイ?…って、おいおい双子の母親ってあのアイドルグループのヤツかよ)」

 

 彼は遠くから聞こえてくる声に耳を傾け彼女の名前を検索した。SNSでは彼女や事務所の社長に対する罵詈雑言が並び、中にはB小町のグッズに灯油を掛けて燃やす動画をアップした馬鹿もいた

 

 

「(アイドルが活動中に妊娠するだけでも炎上するのに父親不明で極秘出産、ファンは裏切られたと思ってキレるよな)」

 

 生前にアイドルの総選挙で『結婚しま~す』と発言した女性はボロクソに叩かれて、表舞台から消えた。あの時の最適解は『私は自分の幸せの為にグループを脱退します。今度の選挙には出ません』だと思っている

 

 

「(アクア君たちの名前と顔はバレてないが、嗅ぎ付けられる可能性もあるな)」

 

 

 ルビーのメンタルケアを中心に考えていた狡嚙だったが、2人の今後の人生を守る為に色々なことを思案させる

 

「(とりあえず馬券は分身体でも作って買いに行かせるか、オルフェーヴルが3冠を獲るし安田記念はベリーベリージョッキーのアイツを買わないと、それに次の春天で…」

 

 

 こいつ本当に双子のことを想っているのか?大丈夫だろう多分

次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?

  • OK 原作を知ってるから問題無い
  • NG やっぱり最初から全部読みたい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。