【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる 作:大気圏突破
「あれ?ここは!」
目を覚ましたMEMちょは周囲を見渡すと自分が室内にいることに気付いた。さっきまで公園のベンチにいたはずなのに、いつの間にこんな所に来たのだろうか?視線をキョロキョロ動かして情報を得ようと画策するが分かるのは現在の時刻だけである。とりあえず部屋の外に出ようと立ち上がるとドアが開いた
「起きたか」
彼女の目の前に金髪の男が現れた。『今ガチ』で共演した鳴嶋メルトとは別ベクトルのイケメンで少しだけ心臓の鼓動が早くなる。彼は持っていたスマホを操作して誰かを呼び出している
「あの~ここは?」
「俺ん家だ!デート中だった父さんたちが、MEMちょを見つけて運んできたんだ」
「そうなんだ。ごめんなさい」
「俺に謝っても無意味なんだけど…」
「そうだね」
しばらく2人だけの会話が続くと階段を上る音が聞こえ1組の男女が入ってきた。男の方は金髪の青年に労いの言葉を口にするとアクアと呼ばれた彼は部屋から出て行く、そして入ってきた女性には見覚えがある
「漫画家の吉祥寺先生ですよね?『今日あま』の」
「そっちは旧姓ですが、ペンネームにしておきましょう」
「じゃあ、そっちの人が旦那さん?」
その問い掛けに頷いた彼はこれまでの事情をMEMちょに説明した。
「すいません!大事なデートの邪魔をしてしまって」
「気にしなくていいのよ、そのおかげで最悪なことにならなかったと思えば」
妻はポジティブ思考である。悲観することなく目の前で起きる出来事をプラスとして受け入れる姿が大好きで惚れている。娘のルビーも物事を好転的に考えるので彼女のことも愛している
「それで何で、あんな時間に公園のベンチに座り込んでいたんだ?散歩で疲れて休んでいたって訳じゃないだろ?」
「え〜〜っと、実は…」
「ゆっくりでもいいわ、それに無理に口にしたくなくても」
彼女の手を握り諭しながら安心させようとしている。MEMちょは2人の温かさを感じとったのか、ゆっくりと口を開いた
「あの部屋にいると怖くて寝れなくて」
「怖い?」
「『今ガチ』が打ち切りになって世間から叩かれて、アルコールに逃げてしまって、それであかねが私のことを助けようとして」
涙目になりながら語ってくれた心情の吐露はMEMちょの叫びだった。彼も『視野共有』でも視ていたが、黒川あかねは意固地となり自分の調べたやり方が正しいと思い込んでいた。最初は寄り添ってくれたが次第に当たりが強くなり語気が荒ぶるようになってきた
「もう嫌なんです!自分のペースでやりたいのに、あれこれ指示されて勝手に落胆されるのは!」
「MEMちょさん…」
目尻から流れる涙がポタポタと落ちて布団を濡らしていく
「とりあえずアルコール依存は治したいんだな?」
「…は…い!」
「慎二さん」
MEMちょのことを妻に任せた彼は部屋を出て、依存症治療を行ってくれる病院の洗い出しをする為に自室に入ろうとするがアクアがドアの前に立っていた
「父さん、これ」
差し出された紙には近隣で診てくれるアルコール依存治療施設や患者たちのサークル集会所の住所が複数記載されている。父は息子の顔を見ると少し不満気な表情をしていた
「アクアありがとう!」
「早めに行くべきだ!遅くていい治療なんてないから」
「あぁ、だが既に後手後手だけどな」
「でも王手は打たれてない」
息子からの厚意を胸ポケットの中に入れて、妻たちのいる部屋に引き返そうとするが
「父さん1つ言わせて」
「なんだ?」
「自己を犠牲にしてまでの人助けは、身を滅ぼして周りの人たちが悲しむ」
それはアクアなりの注意であり警鐘だった。軽い言葉なら『お節介』と言われるが、度を過ぎてしまえば『過干渉』になる。彼にとって狡嚙慎二は大切な父親であることに揺るぎはない。もし父が無理をしているなら力尽くで止めるつもりだ!
「分水嶺は見極める。今回はあくまで道を作るだけだ!25の大人に過度なお節介はしない。助かる助からないは本人次第だ!」
「そう…ならいいや、昼は向こうで食べてくるから」
「いつもの所に置いてあるから」
「分かった!じゃあ行ってくる」
仕事道具の詰まったカバンを持ってアクアは鮫島家に向かい、彼は止まっていた足を動かして部屋に戻ると、ルビーも入室していてMEMちょの話相手になっていた
「慎二さん、もう調べてきたの?」
「アクアが一足先に見つけてくれた」
「そう…アクア君が」
妻の問い掛けに答えた彼は3人に対して今後の説明をした。病院に関しては電話で確認をした後に今日中に行ければ頼子とルビーが付き添って向かう予定となり、道中でMEMちょの部屋に寄って保険証や財布を取りに行く算段である
「やっぱり俺も行った方が…」
「私とルビーちゃんに任せてください!今日の晩御飯は5人で食べましょう。だから慎二さんは私たちを出迎える大役に任命します」
ややアニメチックな言い方だが、妻たちの決意に負けた夫は肩を竦めると降参のポーズをして部屋から出て行った。そして着替えた3人を見送るとスマホが鳴動していることに気づいた
「なんですか黒川さん?」
「すいません昨日は夜分に急な連絡をしてしまい」
「それで?」
結局のところ黒川あかねは巡回中の警察官に見つかってしまった。大人びている彼女なら成人に見られる可能性もあったが、警察官が『今ガチ』の視聴者だったので初見でバレてしまい補導され真夜中の帰宅となった
「大変でしたね」
「とりあえず今日明日は外に出さないつもりです」
「じゃあ、伝言を頼めますか?」
「伝言ですか?別に構いませんが、いったい?」
彼は手元に紙とペンを置いて狡噛からの言葉を待った
「MEMちょの件から手を引け、あとはこっちで片付ける」
「狡嚙さん、それは…」
「実は」
昨日のことや今さっきの出来事を説明すると、彼は力の無い声で再び謝罪を行うとテレビ電話でもないのに深々と頭を下げた。娘のやっていたことが彼女にとって逆効果だったこと、そしてMEMちょが顔を見たくないほど追い込まれていたことに、無理やりにでも止めるべきだったと悲観した
「今後あの2人が会うのは最悪の展開になります」
「分かってます!しかし」
「策というか、全てが上手くいけば彼女を救う手立てが1つあります。私がやるのは提供までです。そこから先はMEMちょ本人が決めることです!」
「どうするつもりですか?」
狡嚙は詳細については伏せたまま電話を切った。彼の脳内では乱雑に並ぶ複数の点を1本に結ぶ為に鉛筆で線を引き始めた。アクアに貰った紙の1番下に『アニマルセラピー』と書かれていたことが起点となっている
「やっぱり継続的な通院が必要か」
病院組の女性陣とアシスタント業務を終えたアクアとテーブルを囲み晩御飯を口にしている。やはりというべきかMEMちょの治療には多大な時間を要することが分かり、今後のことについて計画を見積もっている
「すいません今日も泊めてもらって」
「自宅だと寝れないのも辛いですね」
「でも、ずっとこのままじゃ」
アクアの言葉に顔を伏せるMEMちょを見てルビーが肘で兄の脇腹を強打する
「慎二さん、どうしたんですか?黙ってて」
「あぁ、いや朝から色々考えてな、点と点を結んでた」
「点と点ですか?」
「ようやく全部結び終えた」
全員の視線が彼に集中すると茶碗と箸を置いてMEMちょの目を真っ直ぐに見据えた
「1つ尋ねたいが、芸能の世界に戻りたいか?」
「えっ…と、正直なところ嫌です。良かれと思ってやったのに真逆にされて世間から総叩きにされるなんて」
「MEMちょ、パパいったいどうするの?」
ルビーの問い掛けに父親は1度深呼吸をすると
「『バレット』をやってみる気はありますか?」
「「「「バレット?」」」」
聞きなれない単語を耳にした4人は説明を求めるのであった
先週から風邪をこじらせて無理に仕事をしてたら案の定駄目でした(馬券も)
なおデート中にMEMちょを見つけて119番をしなかったのは、鑑定魔法で外傷無しと調べたので、2人で店に運び寝かしました(文脈に入れると説明が長くなりそうなので省きました)
感想ありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
これからも頑張ります
次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?
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OK 原作を知ってるから問題無い
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NG やっぱり最初から全部読みたい