【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる   作:大気圏突破

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MEMちょのスマホは指紋認証ではなく番号認証とします


新たな道と戻せない時間

 トントン拍子で物事は進みMEMちょの新居が決まり業者に頼んで引っ越しをする日取りが決まった。なお黒川あかねの突撃対策は向こうの両親が尽力し、登下校はちびまる子ちゃんの花輪君のように車で送り迎えを行った。もちろん早退する時も先生から両親に連絡が向かうようになり単独で動くことが不可能になった。

 

 

「これはお返しします」

 

 

 彼は、黒川父から受け取ったMEMちょの貴重品を持ち主に返却した。理が店に訪れた時に奇妙なことを口にしていたので狡噛は気になって彼女のスマホを鑑定してみると追跡アプリがインストールされていた。監視の目が緩んだところで突撃する算段なのだろう。アンインストールする前に彼は策を講じた

 

 

「過去と決別して新たな道を踏み出す意味を込めてスマホを買い替えてみるのはどう?」

「そうですね!大人の女がこんな子供っぽいのは笑われちゃいます」

「今から行けば夕方までには終わるでしょ」

 

 

 自転車を借りて店から出て行ったのを見送った彼の手にはMEMちょのスマホが握られていた。これは本物ではない

 

 

神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)(劣化版)」

 

 複製したスマホは本家とは違い円の役割は無いが現存出来る時間がオリジナルより3倍になっている。これをモバイルバッテリーと繋いでスマホをとある場所のロッカーの中に転移させた。なお自身のスマホが不知火フリルによって追跡されているのは未だに気付いていないのはご愛嬌である

 

 

 

 

 

 

「本当にありがとうございました!」

 

 店先で何度も頭を下げる彼女の後ろではタクシーが待機している。狡嚙家の4人はそれぞれ別れの挨拶を述べるとMEMちょを向こう側に促し、運転手に安全運転を念押しする

 

 

「阪井先生は厳しいけど、投げ出さずに頑張る人を見捨てることはないから」

「はい」

 

 乗り込んで小さくなっていくタクシーを最後まで見送り、黒川あかねの飛び降り未遂から始まった『今ガチ』の騒動がようやく終わりを迎えた。少し広くなり再び4人暮らしとなる自宅に戻り、いつもと変わらない日常が訪れる……はずだった

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことがあったんですね」

「父さんは知り合いの頼みでMEMちょを利用したって言ってるけど」

「腑に落ちないことがあるんですか?」

 

 ペンを持ったままアビ子が首を傾げるとアクアは彼女の目を真っ直ぐに見つめる

 

「文章化というより言語化が難しいな、言いたいことがあるけど文字に黒い靄が纏わりついて微妙に見えないような」

「なんか難しく考えていませんか?案外シンプルなことで片付くと思いますよ!」

 

 この精神は師匠譲りなのかもしれない。成長してしまうと物事を多角的に考えてしまい余計なストーリーを付け加えることがある。そうなると真実から遠くなってしまい本筋からズレてしまう

 

 

「シンプルイズベスト!1番最初に先生から教わった大事なことです。下手に伏線を張って物語をややこしくするよりも本編を丁寧に描けば面白さは伝わります」

「そうでしたね」

「だからあの海賊漫画は売り上げが落ちたんですよ」

 

 

 いろんな勢力を敵に回しそうな物言いだが真理である。伏線回収中に別の伏線を組み込んでしまい話が余計にややこしくなって過去の回想が長くなれば読者は自然と離れてしまう。内容が難しくなれば漫画を買うよりもYouTubeの考察動画を視聴すれば読んだ気になれるのが実情だ

 

 

 

「アクア君はマスターさんのことが好きなんですね」

「親子の愛というより尊敬はしてる」

「なら、その感情を大切にしていけばマスターさんは幸せなんだと思いますよ!息子から尊敬される父親って今のご時世天然記念物に等しい存在です。誰よりもアクア君たちの成長を楽しみにしているはずです」

 

 

 アビ子は目キラキラさせながら持論を述べて再び原稿に顔を近づけて執筆に戻ると、アクアも思考を切り替えてペンを握る。今はまだ父に甘えよう!でもいつか困っているときがあれば自分が父を助けようと思う息子であった

 

 

「ところで妹さんはいつお姉ちゃんになりますか?」

「授かりものだから、いつになるやら」

「私が名前を考えても良いですか?」

「いや、ダメだろ」

「私だって家族みたいなものでしょ!」

 

 

 

 

 

 

 さて殆ど触れてこなかったことだが、頼子の仕事場と喫茶店は慎二の魔法によって繋がっている。マンション内の私室と狡嚙家にある妻専用の部屋にはドアが設置され、これを使って移動している。通勤時間0分という満員電車で苦しむサラリーマンが血涙を流すような好条件である

 

 

「じゃあ、お先に失礼します」

 

 

 アシスタントを見送った頼子は部屋の片付けをしていた。本来なら億劫な作業だが家に帰れば夫が晩御飯を作って待ってくれている。新婚の彼女は幸せの絶頂だ!連れ子のアクアとルビーの仲も良好で今までの”お姉ちゃん”からスムーズに”ママ”と言ってくれるようになった

 

 

「今日はなにかしら~♪」

 

 鼻歌交じりでルンルン気分である。しかし好事魔多しという言葉があるように隙が生じてしまう。マンションの部屋の鍵を閉めるのを忘れた状態で自宅に戻ってしまった

 

 

 

 

 

 

「ここだな」

 

 それは日付が跨いだ深夜の1時を過ぎた頃だった。この場に似つかわしくない格好をした男が徘徊をしていた。彼はとある部屋に狙いを定め物陰に隠れながらマンション内に侵入する

 

 

「確かこの部屋に住んでいるはずだ!」

 

 彼の名前は鏑木勝也、番組プロデューサーだった男だ!『今ガチ』騒動で全ての責任を負わされたが行方をくらませていた。騒動の直後に妻から離婚届を突き付けられ娘も向こう側に行ってしまった。今日に至るまで深夜の公園の水道で体を洗って身を清め、献血ルームのお菓子やデパ地下の試食で飢えを凌ぎ、鍵が開いていたコンテナで寝泊まりをしていた

 

 

「(怖がってくれよ)」

 

 これは憂さ晴らしである。自分にケチがついたのは彼女が実写ドラマのことを断ったからだ。こうやって地面を這いつくばって泥水を啜る日々のストレスの捌け口に嫌がらせをしてやろうと短絡的に考えてしまった。チャイムを連打してドアノブをガチャガチャ回して睡眠を妨害するつもりだが

 

 

「(鍵が掛かってない?)」

 

 

 ノブを回すと簡単に開いてしまい拍子抜けする。このまま回れ右をしていれば運命が変わっていたのかもしれない、彼は音を立てないように閉めて靴をポケットの中に入れた。これはいざという時に武器になる。もし彼女が大声を出したらこれで頭部を叩けば逃げる時間を稼ぐことが出来る

 

 

 

「(何か金になるモノを)」

 

 鏑木は奥にある彼女の私室に足を踏み入れると鎮座するドアに注目してしまう。異質な存在に目が点になってしまう彼は興味本位で触れてしまった瞬間に目の前が暗闇に包まれた

 

 

 

「あれここはどこだ?」

 

 周囲を見渡すが暗く何も見えない、足元は液体に浸り肌がピリピリと痛みだすので彼は急いで靴を履いた。この空間は臭く鼻が曲がりそうな状態で右手で摘み、左手に持ったスマホのライトを点灯させて壁面を見るとヌルヌルとしていて少し蠢いている

 

 

「どこなんだここは」

 

 気味が悪いと感じた鏑木は大声をあげて助けを求めるが息が苦しくて言葉を発することが出来ない、次第に立っていることが辛くなり四つん這いになると視界が段々と朧気になってしまう

 

「と…けて……」

 

 最期に見た光景は自身の皮膚が溶けているのを目撃して人生が終わった。彼の人生は誰もが知る名作のあり得たBADENDルートで骨すら残らなかった。巨体を海面から出して叩きつけるようにダイブすると体に付着したフジツボを引き剥がす海の主は大きな口を開けて奥底に沈んでいった。鏑木が世界から存在しなくなっても何も変わらない。いつもと同じように太陽は昇り時間通りに沈んでいくのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ~MEMちょが居候してたんだ」

「それで、どこに行ったん?」

「それは秘密」

 

 

 陽東高校ではルビーと芸能科の2人がテーブルを囲んで昼休みを満喫していた。彼女は居候との思い出を語りながら箸を動かす

 

 

「まぁいいわ、でもお父さんが頑張ったんでしょ?」

「うん、パパの知り合いのツテって言えばいいのかな」

「顔が広いんやね」

 

 みなみの言葉に頷くルビーは少し顔を曇らせたので、フリルが気になって問いかけた

 

 

「なんだろう、パパのことを知っていたつもりだったけど」

「知らない面が見えてきて戸惑っているの?」

「私やお兄ちゃんを引き取る前に旅をしていたって言ってて、そのときの繋がりでMEMちょに新しい道を作って」

「狡噛はんってボクシングのサンドバッグみたいなカバンを持って、流浪の旅をしていそうな雰囲気やもんね」

 

 

 弁当箱を空にし娘はペットボトルに口をつけて潤すと、頬杖をついてしまう

 

 

「いつかパパに恩返しをしたいって考えているんだけど、何がいいのかな?」

「そんなの簡単なことよ」

「ルビーちゃん、多分やけど狡嚙はんって家族の幸せを最優先にしていると思うんよ、だから辛気臭い顔なんかせずに、毎日笑顔でいたらええんと思うよ」

「そんなことでいいのかな?」

「いいのよそれで、モノや金で解決するより大事な娘が笑顔でいることが、お父さんの幸せなんだと思うわ」

 

 

 2人の意見に納得したルビーは鏡を取り出して笑顔を作るが青海苔が前歯に付着した状態でやってしまい、彼女たちに爆笑されるのであった

 

 

 

 

 

 

 

「もう新しい人生を歩んでいるんですか」

「こっちはあくまで道案内をしただけで、その先は彼女次第です」

 

 

 全てが終わり、しばらく経ったある日のことだった。黒川理が店に訪れ店主と世間話をしながら紅茶を啜っている。彼の顔は疲労の色が濃く出ていて不健康そうな雰囲気だった

 

 

「結局あかねのしたことって」

「遠回りの無駄足ってところですね」

「結局あなたに余計な苦労をさせてしまいました」

「別にもういいさ、こっちも困っている知り合いに人手を提供したにすぎない」

 

 

 ため息を吐いてしまう彼を見て話題を変えようとするが、乱暴に店のドアが開けられ理の娘である黒川あかねが来店した。そして開口一番

 

 

 

「いったいMEMちょはどこにいるんですか?」

 

 

 狡嚙に安寧の日はいつ来るのだろうか?

 

 




とりあえずMEMちょ虐はここで終わりになりますが、更に別のトラブルに巻き込まれそうになるオリ主はどうなるか?

なお鏑木の開けたドアは以前にも説明があったように対象外の人が開けようとすると別空間にランダムで飛ばされます。ヤベー防犯です

感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます
明日は朝日杯、頑張れダイヤモンドノット

次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?

  • OK 原作を知ってるから問題無い
  • NG やっぱり最初から全部読みたい
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