【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる   作:大気圏突破

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あけましておめでとうございます


カミングアウト

 時間無制限のシングルマッチを終えた夫婦は朝を迎え布団の上でぐったりとしていたが、回復魔法を施し体調を万全の状態に戻した。頼子は甘い声でお姫様抱っこを求めてきたので抱えて浴室に入って共に汗を流すと同時に消臭魔法も行った

 

 

「では奥様は私たちが連れ去っていきますので」

「覚悟しいや先生」

 

 

 

 朝食が終わり2日目は全体行動ではなく各々がグループを組んで行動することが決まり、みなみとフリルは頼子の両端をがっしり掴んで連行していった。”女三人寄れば姦しい”というので賑やかに楽しんでくるだろう

 

 

「アビ子先生行きましょうか」

「ふぇっアクア君は?」

 

 ルビーはアビ子の手を取ってフリルたちは逆側に向けて歩を進めた。困惑する漫画家はアシスタントに助けを求めようとしたが後手を踏んでしまいタイミングを見逃してしまった

 

 

 

「父さん1人で行きたいところがある」

「分かった。じゃあここで昼飯にするか」

 

 

 息子のスマホに合流する店の名前と住所を送り父子も別れた。慎二は周囲をくまなく確認して人がいないことが分かると転移魔法で佐賀競馬場に向かった。

 

 

 

「お兄ちゃんと一緒じゃなくて残念ですか?」

「はい、その為に頑張ったのに…」

「じゃあ、旅館に戻ったら好きなだけ甘えていいですよ」

 

 その言葉にアビ子は瞳を輝かせてルビーを見つめていた。それはまるで12月24日の朝にクリスマスプレゼントを貰った子供のように喜んでいる様子で、この瞬間を切り取れば完全に年下に見えてしまう

 

 

「先生ってやっぱりお兄ちゃんのことが」

好きですよ!この世界で誰よりも

 

 自信満々に宣言する彼女を見て妹は少し目を細めたが、中学に上がる前から付き合いのあるので幼馴染と言える関係である。ルビーもアビ子との付き合いは良好で店に来るときはモジャモジャの髪の毛を櫛で梳かしながら化粧を施すこともある

 

 

「まだ未成年だよ」

「そこは待ちます!別に婚約でも構いません」

「因みに…アタックしたことは?」

「まだ勝ったことがありません」

 

 

 更に小さくなるアビ子は今までのことを思い出して顔を暗くさせてしまう

 

 

「先生、お兄ちゃんって年上が好みだから」

「そうなんですか?」

「うん」

 

 将来の義理の姉に向けて兄の性癖を伝えたルビーは彼女を伴って恋愛成就で有名な神社に向けて歩き出し、アビ子と兄に向けてペアのお守りを購入した

 

 

 

 

 

 

「よっ!」

「コウちゃん来てくれたんだ」

 

 

 佐賀競馬場に転移した彼はスマホで連絡すると厩舎から出てきた調教師に挨拶をした。彼の案内で事務室に通され腰を下ろして落札した馬について尋ねる

 

 

「父がマインドユアビスケッツに母父ダイワメジャーって芝でも走らせる気か?」

「小倉で結果を残せることが出来れば阪神や京都に送り込むつもりだ!」

「オグリは突然変異だ!それともアジュディミツオ―にでもさせるってか?」

 

 

 地方馬のレベルは基本低いが稀に怪物が誕生することがある。彼が口にした馬も地方馬でありながら交流重賞で中央馬を打ち破った猛者だ!日本の競馬ファンは割と判官贔屓な面が強くジャイアントキリングを望んでいる

 

 

「それで来年デビューするんだろ?」

「まずは認定競争に出してからだ、あと…」

「なんだ?もう金は出さないぞ」

 

 若干不機嫌な顔をしている狡嚙に向けて調教師は少しモジモジしていた

 

「実は猛倉が騎手免許試験に合格したんだ」

「確かバレット兼調教助手だったな、まさか?」

「アイツに乗らせる。中央での経験は佐賀にいる騎手の中で1番多い」

 

 

 元中央の騎手で、在籍時に調整ルーム内におけるスマホの使用と親族に対する予想行為により競馬の世界から身を引いた若手騎手だが彼のことを気に掛けていた馬主が再就職支援として佐賀競馬への道を作ってくれた

 

 

「その辺は任せる。飲酒運転やゲートが開いた瞬間に手綱を引っ張る奴より全然マシだ」

「耳の痛い言葉だね」

「そんなことをやってきたから客が離れたんだ自覚しろ」

 

 

 ソファから立ち上がる慎二は調教師の前に立つと懐から100万円を机の上に置いた

 

「猛倉の祝い金にしてくれ」

「ありがとう」

 

 

 その言葉を聞いて彼は部屋から出ていき浮遊し上空から佐賀競馬場を眺める。JBCの開催以降寂れてしまったが中で働く人たちの目には炎と光が宿っている。もしかすると近い将来にオグリキャップで沸いた笠松のように人が溢れるのかもしれない

 

「行くか」

 

 転移魔法で宮崎に向かいアクアと合流する店の近くに降り立つのであった

 

 

 

 

 

「(私って……いったいどこで)」

 

 

 家族旅行を満喫している宮崎組とは別に黒川あかねは地元で彷徨していた。この時期は家族と共に帰省する団員も多いのでララライ本部に集まる人たちは僅かである。しかし彼女の場合は行ったところで無意味であった

 

「(MEMちょの為に…)」

 

 

 あの日以降も彼女は行方を追っていたが、手掛かりの1つも無い状態では名探偵でも探し出すのは不可能だ!

 

 

「(でも、あのままだったら)」

 

 結果だけを考えれば、追い詰めたことでSOSを出していたMEMちょを喫茶店のマスターが助けたことで第2の人生をスタートさせることが出来た。もし最初から見捨てていたら今の彼女は存在しないどころか最悪の展開もあり得た

 

「私が幸せになってMEMちょが不幸になる。MEMちょが幸せになって私が不幸になる」

 

 

 この世の中はプラスとマイナスで出来ている。世界中のみんなが同時に幸せになることは天地がひっくり返っても起きる事象ではない!

 

 

「どうしようか?」

 

 

 あれ以来ララライでも浮いてしまい妙に避けられる。そりゃそうだ自身が授業中に不在の時に世間で炎上中している他人の面倒を見てくれるお人好しは殆どいない。そんな狂人なんて……1人だけいた

 

 

「(相談してみよう。とりあえず謝罪から入れば話ぐらい聞いてくれるはず)」

 

 

 あかねは行き先を喫茶店に向けて歩きだした。望まれない客という自覚はあるが彼に出会った人たちは助言を受けて新しい可能性を見出している

 

 

「(かなちゃんも狡嚙さんのおかげでララライに来たんだ!)」

 

 少し駆け足となり店前までに向かうが、ドアに貼りだされた紙を見てやる気が削がれてしまうのであった。IFの話をすればキリがないが、もし彼女が狡嚙家に迷惑を掛けてなかったら今回の旅行に呼ばれていた可能性は十分にあったはずだ!しかしボタンの掛け違いなのか世の中は上手く出来ていない。乾いた笑いを浮かべ彼女は再び彷徨するのであった

 

 

 

 

 

「確かここだったはず」

 

 狡嚙アクアいや雨宮吾郎だった彼は16年前に自分が落とされた場所を目指していたが、なにぶんにも昔のことで記憶もあやふやである

 

「(自分で自分の死体を片付けるなんて、三流小説以下だな)」

 

 

 猛暑の中でアクアは汗だくになりながら目的地に向かう。既に購入した飲み物は空になっているが彼の喉はカラカラになるまで乾いてしまっている

 

「(1回戻って買い直すか?いやそんなことしたら父さんとの合流に遅れる)」

 

 

 ふらつく足に喝を入れるが若干怪しい。とりあえず目と鼻の先にある木陰で休もうとするが体力は限界を迎えてしまい倒れてしまう

 

 

「(ぶしょったいな)」

 

 砂や埃を払って立ち上がろうとすると頬に冷たい感触が伝わり顔を上げると、黒いワンピース姿の銀髪の少女がペットボトルを差し出していた。あきらかに違和感しかなかったが喉の渇きにはには勝てなかった

 

 

「ありがとう」

「こんなところで何をしてるの?」

 

 

 少女は首を傾げながらアクアに尋ねるが、彼は答えを濁しながら女の子に帰るように促したが言うことを聞いてくれなかった

 

 

「君の探し物はもう存在しないよ」

「なにを……言って?」

「ついてきて」

 

 

 アクアの手を取って銀髪の少女は山道を駆け登る。そして雨宮吾郎の生命が尽きたと思われる場所に辿り着く

 

 

「知ってるでしょここは?」

「君はなんで?」

「昔ここには死体があったの、でも…たった1日も経たずに消えてしまった」

 

 

 その言葉を聞いて少女が異質な存在と気付き手を離そうとするがガッチリと掴まれていて振りほどくことが出来ない。冷たい風と共に薄気味悪い笑顔を浮かべアクアに近づき

 

 

「死んだ魂は天に還らないといけない」

「離せ!俺は…」

「大丈夫、この世に星野アクアは存在しなくても」

 

 

 何故コイツは自分の旧姓をしっているのか?逃げようとしても足が動いてくれない!脳内にはこれまでの思い出が走馬灯のように駆け巡る

 

 

『星野アイの子供として産まれた』『スキャンダルが原因でアイに捨てられた』『雪の日に父が助けてくれた』『喫茶店に移り住んで母となる人と出会った』『上原大輝や不知火フリルと仲良くなった』『漫画家のアシスタントは楽しい』『アビ子のことを』『ルビーのことを』『父の』

 

 

父さん!

 

 腹の底から1番頼れる存在の名前を口にした瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔封波!」

 

 

 会いたかった人の声が聞こえた瞬間、アクアは意識を失い倒れてしまうのであった

次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?

  • OK 原作を知ってるから問題無い
  • NG やっぱり最初から全部読みたい
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