【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる   作:大気圏突破

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今日2本目です(正月競馬やって素寒貧です)


話し合おう親子で

「アクアッ!おいアクア‼」

 

 

 頬を叩かれ意識を覚醒する彼は目の前に父の顔を見て安堵する。そしてさっきまでの出来事に体が震え奥歯がガタガタと震えるが慎二の分厚い手が包み込むように抱いてくれる

 

「父さん……俺は」

「待ち合わせ場所に来なかったから探したんだ」

「さっきあれって」

 

 

 少女に連れ去られそうになった瞬間に父の手から放たれた”何か”によって自分は助かった。あれはいったいなんだったのか?それにどうやって自分を見つけることが出来たのか?疑問の目で彼を見つめると

 

 

「そういえばアクアには話してなかったな」

「えっなにを?」

 

 スマホを手に取ると慎二は電話帳から妻の名前をタップした

 

 

 

『どうしたんですか?』

「ちょっとアクアと男だけのお楽しみ会に行ってくるから、ルビーたちと合流して先に食べてて」

『分かりました!遅くならないでください』

 

 

 連絡を終えた慎二はアクアの方に向き直り手を差し伸べて起き上がらせると、山道を下っていき舗装された道のところまで戻ってタクシーを拾い運転手に行き先を告げる

 

 

 

「父さん」

「店についたらな」

 

 言いたいことを先回りされてしまい二の句を封じられてしまう。抜けている時もあるが父は自分の数手先に存在し動いているときがある。しばらく沈黙が続くとタクシーが飲食店の前に止まり、入店すると個室の中に通され腰を下ろした

 

 

 

「単刀直入に言おう。俺は魔法使いだ!」

「……はい?父さんそんな嘘が…」

 

 

 息子の反応を見た父はルビーや頼子も似たようなリアクションをしていたことを思い出し、少し笑みをこぼしながら指を鳴らし手のひらに炎を灯した

 

 

「手品じゃないよね?」

「触ってみるか?」

 

 手のひらで浮遊している炎に恐るおそる触れようとするが寸前のところで水の塊になってしまい、室内を飛び回ってしまう

 

 

「『今ガチ』の騒動が終わった頃にお菓子の家にいる夢を見ただろ?」

「うん」

「あれは夢じゃなくて現実に起きたことだ」

「ちょっと待って!脳が追いつかない」

 

 父の発する言葉が理解出来ない、魔法使い?お菓子の家?じゃあルビーも魔法使いなのか?でも助けてくれたときに放った技は確かに人知を超えているものだった。それに今見せてくれた現象も説明が出来ない

 

 

 

「じゃあこれでいいかな?『小人化』」

「父さん?」

 

 目の前にいた父が急に消えた。アクアは周囲を見渡して探すがどこに姿が見えない

 

 

「おい鬼太郎!」

 

 自身の頭部から声が聞こえ顔を上げるが姿が見えない、元の位置に戻すと小さい父が浮かんで自分のことを見ている

 

 

「これで理解できたか?」

「なんとか」

「そうか」

 

 再び普通のサイズに戻った慎二はニヤニヤと笑いながらアクアのことを見つめている。そしてドアがノックされ店員が飲み物を運んできてくれた

 

 

「言っておくがルビーは魔法使いじゃない」

「母さんも知ってるのか?」

「あぁもちろん」

「じゃあなんで俺に隠していたんだ!」

 

 自分だけ仲間外れにされたことに対して頭に血が上る

 

 

「隠していた訳じゃない教えるタイミングが無かった」

「タイミングって?」

「ルビーが小さい頃って塞ぎ込んでいただろ?まるで世の中の全てに絶望したように」

「それはアイツに捨てられて」

 

 

 当時のことを思い出すアクアにとって嫌な出来事だった!父に拾われて数年間は妹のルビーは心を開かずに自分にべったりで離れることを恐れていた。しかしいつの間にか心を開くようになり明るくなって父に対しても甘えるようになっていた

 

 

 

「まさか?」

「アクア、お前の考えているようなことはしてないし出来ない!それに俺の魔法はそんなことに使うつもりは一切無い」

「まだ何も」

「おおかた人の心を操る魔法を使ったのか?ってところだろ?お前は顔に出やすい」

 

 

 また言いたいことを先回りされてしまったアクアはコップの中を空にして、ピッチャーから更に水を注いで一気飲みした

 

 

「じゃあ母さんにも?」

「絨毯に乗って星空の下をドライブしてプロポーズした」

「夫婦の馴れ初めを聞いている訳じゃ…」

「なんならアビ子ちゃんに告白するときに使わせてやろうか?」

 

 

 その言葉に息子は顔を赤くして父親を睨みつけるが人生経験豊富な彼にとって、それは産まれたての小鹿並みに可愛らしいものだった

 

 

「知らないなら知らないままでも良かったと思ってる」

「オカルトに関わらせたくないから?」

「それもあるし、小学生ぐらいの頃だったなルビーが”明日を雨にすることって出来る?”って聞いてきてな、理由を聞くとマラソン大会を中止にしてほしいって」

「やったの?」

「あぁ、頭頂部に向けて特大のゲンコツをおみまいしたよ!」

 

 

 涙目で両手で頭を押さえる妹を想像し笑みを浮かべるアクアを見てタッチパネルで料理を次々と注文していく

 

 

「魔法があれば何でも出来るが頼りきってしまうと駄目になってしまう」

「分かってるけど、父さんの力でアイツを探すのは?」

「無理だな、例えば一度でも俺が星野アイと出会って『マーキング』をしていれば探すことは可能だ!あと警察犬みたいに個人の所有物を使って探すのも出来ない」

「じゃあ俺を見つけれたのも?」

「5歳ぐらいの頃にデパートで迷子になったことがあるだろ?そのあとに施した『マーキング』を消していなかった」

 

 

 

 父の答えを聞いたアクアは運ばれてきた料理を口の中に入れながら今日の出来事を振り返っていた。過去の自分を埋葬しようと訪れた雨宮吾郎の最期の地で恐ろしい体験をしたが、正体を明かしてくれた父が助けてくれた。多分だけど自分は父の先には立つことが出来ないと実感した

 

 

 

「ところでアクア、なんであんなところに居たんだ?」

「それは…」

「俺は自分の秘密を明かした!ならイーブンにしないといけないな」

 

 

 慎二の目は怪しく輝いていた。魔法を使って聞き出すつもりは無いが明らかに疑念が込められた視線が自分に向いていることに気付いていた

 

 

「笑わないでくれる?」

「息子のことを笑う父親なんていない」

 

 箸を置いたアクアは一口水分を含むと深く息を吸い込んで吐き出した

 

 

 

 

「父さんって転生を信じる?」

「仏教の考えだな地獄で罪を償った魂は新しい命となって地上に戻る。神道だと家族を守る存在として崇められる」

「なんでそんなことに詳しいの?」

「漫画の請売りだな『鬼灯の冷徹』って検索してみな」

 

 父の言葉をスルーした息子は言葉を続ける

 

 

「俺は前世の記憶を持って星野アイの息子として転生したんだ」

「ふ~ん、それで?」

「えっ驚かないのか?それにルビーも」

「なんとなく薄々気付ていたさ、別に自分の子供たちが転生者だとしても俺の子供であることに違いはない」

 

 その言葉にアクアの目から涙が零れテーブルに置かれたテッシュで拭う

 

 

「おいおい別に泣かせることなんて」

「違うんだ!ようやく心の底に閉じていた蓋を開けることが出来て……それにもし拒絶されるんじゃないかと……思って」

「アホっ!子供を拒絶する奴なんて親じゃない、じゃあ未だに星野アイのことを親だと思っているのか?」

 

 慎二の問い掛けにアクアは首を横に振る。もう彼女のことを遺伝上の繋がりしか持たない存在だと考えている

 

 

 

「嬉しいよその言葉が」

「ありがとうアクア、俺の息子になってくれて」

 

 

 会計を済ませた頃には夕陽が山に沈みかけていた。旅館までの道のりは少し遠いが2人は歩くことを選択した

 

 

「父さんはまた旅をしたいのか?」

「まぁ西日本しか移動してないが、頼子を支えて喫茶店のマスターをやってるのが性に合ってる」

「そうなんだ」

「お前たちがいつでも帰ってこれるようにしておくのも親の務めだ」

 

 

 感謝の言葉を小さく口にしたアクアは父の横に並ぶ、小さい頃は山のように大きくて肩車をしてくれた時は落ちないように必死にしがみついていたが数年もすれば追い抜くと思う。心の器は全然及ばないが、いつか自分も家庭を持ったときに近づけるようになりたい

 

 

 

「ところで前世の名前や出来事って憶えているのか?」

「憶えているけど今の俺には必要無い、俺は『狡嚙アクア』なんだ!過去のことに未練をもって引きづられるよりも前を向いて生きていく」

「そうか」

「ルビーから聞いたけど俺達が産まれた頃に宮崎に来ていたんだね」

 

 アクアの問い掛けに頷いた父は

 

「その頃は九州旅行をしていたからな、まぁ宮崎に良い思い出は無いな」

「なんで?」

「救えたはずの命を救うことが出来なかった」

「事故かなんか?」

「そんなところだ」

 

 

 会話を終わらせた慎二は16年前に自分が横着をしたせいで救うことが出来なかった『雨宮吾郎』のことを思い出していた。別にこのことが切っ掛けで『全人類を救う』とは思わなかったが彼の心に重くのしかかる出来事だった

 

 

「(花ぐらい手向けておくか)」

 

 

 

 

「父さん?」

「アクア、人生ってのは波乱万丈で予想外のことが立て続けに起きる。別に逃げてもいい嫌なことがあったら忘れてもいい全部覚えていたら頭がパンクしてしまう。でもな大切な思い出を忘れたり、愛する人のことは絶対に裏切るな!」

「分かってる」

 

 力強く頷く息子を見て父は最後に

 

 

「あともしかしたら、来年の今ごろは5人家族になってる可能性があるから」

「家でやる時は音を消す魔法を使って、夜中に母親が悶える声は聞きたくない」

「大丈夫だ!昨日はそれを試した」

 

 

 新しく産まれる命のことを楽しみつつ親子は仲良く旅館までの道のりを歩く、空には1番星が輝き次第に周囲も暗くなる。アクアは銀髪の少女に言われたことが心に残っていたが、アレも自分たちと同じオカルト側の住人だと思い込み疑念は霧散した

 

 

「(さようなら雨宮吾郎)」




お互いのカミングアウト会となりました。なおツクヨミは彼のパシリとして扱う予定です


感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます

これからもよろしくお願いします。

次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?

  • OK 原作を知ってるから問題無い
  • NG やっぱり最初から全部読みたい
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