【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる 作:大気圏突破
双子たちが進級し再び桜が舞い散る季節になった。頼子のお腹も大きくなってきたので家の中を魔法でバリアフリー化させて段差を無くし手すりを作った。彼女は月刊誌で執筆している漫画とは別に自身の半生から現在に至るまでのエッセイ漫画を描いている。世間に発表出来なくても子供にプレゼントしようと考えている。
「明日はララライに行ってくるんだろ?」
「だから帰って来るのが遅くなる」
「ここまで大変だったな」
父の前に座るアクアは深く息を吐いて疲労の色が見てとれる。舞台化の決まった『東京ブレイド』の脚本でアビ子と脚本家の間で、一悶着があり頓挫しかけたがアクアや頼子が仲裁に入ったことで限界まで突き詰めた尖った台本が完成した。それでも全体稽古前のことなので演じる劇団員にダメージは無かった
「あかねちゃんは残念だったな」
「仕方がない、それでも立つことが出来るだけマシだ」
空白になっていた鞘姫役は化野めいが抜擢された。選ばれた本人は知らせを聞いた瞬間に驚いて倒れてしまったが、瞳に六芒星が宿り実力者たちと稽古に励んでいる。そしてエース格だった黒川あかねはモブの鬼役となってしまった
「もう寝るから」
「おやすみ」
彼は指を鳴らして息子の財布の片隅にプレゼントを仕込ませると、妻の入浴の介助をするために風呂場に向かうがスマホにLINEの通知が届いた。送られてきた文面と写真を見た彼は笑みを浮かべ、頼子のところへ足を運んだ
「どうしたんですか?」
「良いことがあってね、もしかしたらカップル誕生になるかも」
お腹が大きくなり胸が張り出した妻の背中を洗い流しながら夫は、入浴前に届いたLINEのことを口にする
「そうドバイで」
「あと数時間でレースだから、それ次第だな」
かつて保護したYouTuberは彼の友人である息子のバレットとして仕事に従事し周りの人達も彼女のことを受け入れた。アルコール依存に関しても通院をサボることなく順調に依存症から脱却に向けて頑張っている
「レースに勝ったら結婚してくれって、青春ですね」
「当人たちは四捨五入したら30歳だがな」
「あら、青春に年齢なんて関係ないですよ」
「そうかもな」
深夜に行われるドバイワールドカップにて阪井騎手が日本総大将の馬に騎乗する。そしてMEMちょは彼から上記のプロポーズを受けて発走を待つだけである。競馬学校32期生で唯一の独身で競馬の息抜きに競馬をする馬バカに春は訪れるのだろうか?
「みんな熱心ですね金田一さん」
「台本の変更もあったが許容範囲内だ!」
「ホント大変でしたよ」
ララライ本部には金田一の他にイベントプロモーターの雷田と脚本家のGOAがパイプ椅子に座り稽古に励む団員たちを観察している。机の上にあるスポーツ紙には日本馬が勝利したことが1面を飾り、関係者全員で手で♡マークを作っている写真が掲載されていた
「しかし化野ちゃんを主演級に抜擢するなんて凄いギャンブルだね」
「ここがターニングポイントだと思ってる。上に行くか停滞するか分水嶺になる」
「今日はアビ子先生も来ますし、みんな目の色が違いますね」
腕時計に視線を落とした金田一は暇そうな団員たちに椅子を2つ用意することを伝え、煙草を咥えようとしたが寸前で握り潰してしまった
「禁煙ですか?」
「俺がそんな野郎に見えるか?妊婦に対しての配慮だ!」
その言葉を聞いた2人は首を傾げてクエスチョンマークを作った。”妊婦って誰のことだ?”団員に妊娠者は存在しない。妥当なところを考えればアビ子に対してのことだと思うが彼女が身籠ったニュースは聞いたことがない。あれこれ考えているとドアが開いた
「おう!来たか」
「招いていただきありがとうございます」
「よせよ、そんな固い挨拶は」
金田一は立ち上がり入ってきた2人を近くに呼び寄せて挨拶を交わしていた。どうやら金髪の青年と彼は知り合いのように見える。そしてその後ろには小さい女の子が青年の腰に抱き着くような形でくっついていた
「ほら先生も」
「……どうも、鮫島です」
2人は彼女が人見知りなのは知っていたが青年については知らなかった。あの距離感を見れば親しい間柄だと思われるが、自身の脳内ライブラリーに青年に関する情報は存在しない。しかし団員たちが”あの人って単行本に登場してたアシスタントじゃない?”という声を耳にして電子書籍版をダウンロードすると印象が合致した
「アクア!」
ララライの顔である大輝も彼に近づいてきた
「上原さん」
「もうすぐ産まれるんだろ?」
「まだ2ヶ月ぐらい先ですって」
「ヘリを使ってでも病院に行くからな!」
挨拶が終わると金田一は浮き立つ団員たちに喝を入れて2人に全体稽古の様子を見せた。アビ子が”練習”と口にしていたがアクアが訂正させている。彼女は満足している様子でGOAたちも苦労が実ったことに安心するのであった
「先生どうですか?」
「みんな頑張っているんですね。徹夜して作った甲斐があります」
「あとは細かい訂正をするだけですが」
「そうですね。ここの台詞ですが…」
全体稽古が終わりGOAとアビ子が台本に目を落としながら細かい修正を行い、団員たちも個人練習や雑談をしている。そして手持ち無沙汰だったアクアは父に帰宅予定時間を送っていると
「どうしたのアクア?」
「有馬さん」
「もう、そんな他人行儀な言い方をしなくても」
食事面で慎二の世話になっている有馬かなが接近してきた。ルビーは昨年の夏休みから彼女の部屋に弁当を届けるようになってから慕うようになり2人の関係は友達として良好である。しかしアクアとの親交は薄い関係だ
「どうして鮫島先生と一緒だったの?」
「俺の雇い主なんだ、先生は母さんの弟子だからデビュー前からの付き合いなんだよ」
「へぇ~アクアも漫画家に?」
「俺に絵心は無いから」
矢継ぎ早に飛んで来る質問に答えながら彼は辟易していたが、以前父に言われた顔に出やすいということを意識し、いつもと同じ表情である
「そういえばルビーから聞いたけど読書が好きなんでしょ?」
「趣味だからな」
「新人の作家で面白いのを見つけてね、これなんだけど」
結局帰宅するまで有馬のマシンガントークは続きアクアはげんなりしていたが、隣の席に座るアビ子はララライを出てから黙ったままだ!そして近くのコンビニで降りると彼女は”渡したいものがある”と口にして自宅に招かれた瞬間に唇を塞がれた
「アビ子?」
「私じゃ駄目なんですか…若い女の子じゃ」
どうやら有馬とのやり取りを見て不安になっていたみたいだ。心中を察したアクアはアビ子を抱きしめて自分からキスをして舌を捻じ込んでいく、息遣いだけの無言の時間が流れるが彼はそのままベッドにダイブした。
「俺の推しは目の前にいる」
「口だけなら何でも言えます!」
いつものことならこれで落ち着いてくれるが、まだご立腹のようだ!アクアの脳裏には最終手段が思い浮かんだが避妊具なんて持ち合わせていないしアビ子も持っていない、未装着は危険である。しかしポケットから財布が落ちて小銭が散乱すると中から必要なモノが登場した
「まさか父さんが?」
そのまさかである。別に彼は未来視が出来る訳じゃないが保険の為にプレゼントしていた。そして決心したアクアは
「アビ子、俺の生涯の推しになってくれるか?」
「それって、まさか?」
歯を使ってビニールを破りズボンとトランクスをズラして装着した。そして彼女の口を塞ぐと衣服を1枚ずつ脱がしていく、雨宮吾郎の頃に大学時代の先輩や彼女が亡くなった後に心の穴を埋める為に同僚と夜を明かしたことがある。しかし愛のある行為はこれが初めてだ!
「アッっ、アクア君!わたし初めてで」
「俺もです」
愛する推しを背中に向けさせると2人は体温を感じながら心を深めていく、流石にここから先はR 18になるので執筆することは出来ないが軋むベッドの上で狡嚙アクアとしての童貞を卒業した。彼女のことを生涯愛することを誓った彼は、前世の産婦人科医としての知識を用いて目の前にいるアビ子を悦ばせた。汗だくになりながら初めてを終えた2人はシャワーを浴びる気力はなく産まれたままの姿で抱き合い朝を迎えアクアは学校をズル休みした。なおビニールが破られた時点で慎二は理解していたので朝帰りになっても咎めることはしなかった
「ゆうべはお楽しみでしたね」
「あぁ気持ち良かった!」
恥ずかしがらずに胸を張るアクアであった
「あれは絶対にルビーだった」
特徴的な瞳を持つ女性は男を誘う扇情的な恰好をしているが、よくよく見ると肌は荒れて肘と膝からは粉が吹いていた。形容するなら富士山で遠くから見れば綺麗だが近づくと汚い部分が注目されてしまう
「もしかしたらアクアも生きているかも」
彼女は作中内で犯罪を繰り返し関わった男たちを不幸にさせていった人物である。星野アイはテレビに映った女の子を見て自分がかつて捨てた子供だと分かった
「生きているってことは誰かに拾われたんだ!私は2人の母親なんだ偽りより本当の家族と暮らすのが幸せなんだ」
とんでもない暴論だ!自ら放棄して今さら母親気取りとは最低である。しかし彼女に正論を説いても無意味だ!そもそも彼女は根無し草で定住していない。大きな罪を繰り返すうちに小さい罪を犯すことに葛藤が無くなった
「潜り込んでしまえばこっちのもの」
痴漢をでっち上げサラリーマンから現金をせしめたこともある。酔っぱらっている乗客の財布を盗んだこともある。イラついている時は有料駐輪場にて半差し状態で止められている自転車をロックさせていった
「待っててねアクア、ルビー」
闇夜に溶け込んだ彼女を見つめるカラスが1匹飛び立つと主が籠るトイレのあるデパートへ向かっていくのであった
そろそろ完結が近いですね。マサルさんみたいに1部完→2部1話が最終回みたいなことを考えていましたが流石に無理でした。本編が終わったら後日談で最終回を考えてます。前話の後書きで書いた次作ですが、骨組みは出来ました(リメイク作なので展開は楽なので)
感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます
最後まで走り続けます
次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?
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OK 原作を知ってるから問題無い
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NG やっぱり最初から全部読みたい