【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる   作:大気圏突破

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舞台版東京ブレイドで刀鬼役は片寄ゆらです


準備万端、魔法使いを決して怒らせてはいけない

「本当すいませんでした!」

 

 閉店した喫茶店では黒川あかねが床に額をつけて伏していた。その近くには大輝や有馬に父親で警視の理も立っていた。ゴールデンウィークに行われた『東京ブレイド』の舞台は大成功で幕を閉じた。主役級に抜擢された化野の演技は関係者の目に留まり女優としての大きな一歩を踏み出した

 

 

「おじさん」

「狡噛さん」

 

 役者の2人は彼を見つめ今回のことを説明した。舞台そのものは成功に終わったが初日に最低な演技をした黒川あかねは別の役者と交代させられた。千秋楽まで蚊帳の外だった彼女を見て2人は切っ掛けが必要だと思い彼に謝罪させるため同行する形となった。

 

 

 

 

 

 軽く溜息を吐いた慎二だが心中としてはどうでも良かった。謝られたところで何も変わらないし嫌いな言葉ランキング上位に『謝ったんだら許してあげなよ』がランクインしている。黒川あかねが変わる為の儀式に付き合わされている程度の感覚なのだ

 

「謝ったところで君の評価が変わる訳じゃない」

「そうですよね」

 

 

 近くにいる父親の表情は形容出来ないほど暗くなり自身の袖を拳で握っている

 

「本当に必要なのはこれからだろ?こんなところで頭を下げるより、やることがあるだろ?それに1番先に謝るのは俺じゃなくて観に来たファンや舞台に立つことが出来なった人たちや金田一さんだ順番が違う」

 

 その言葉を聞いて立ち上がった彼女は駆け足で店の外に出て有馬が追い掛けていった

 

 

「すいません」

 

 頭を下げてきた父親と座っている大輝に飲み物を差し出すと、自身も椅子に深く座りこんで背もたれに体重を預ける

 

「これからは本人次第だ!生き死には彼女が決めることだ」

「どんな道を選んでも支えます。私は父親です」

「もっと早く来るべきだったか?」

 

 ココアを飲み干した大輝のカップに液体を注ぐと、慎二は彼を見つめる

 

 

「早ければ良いという訳じゃない!タイミングの問題もある」

「タイミングか」

 

 黒川あかねは常にタイミングを見誤っていた。運命の歯車がどこかで噛み合っていたら世間を魅了する大女優に変貌していた可能性があった。MEMちょのことを放置してもよかった。なんなら家族に連絡して引き取ってもらう選択肢もあった。彼女が幸せに向かって歩き出せたのは黒川あかねのおかげである。その代償は大きかった

 

 

 

 

 

 

「アクア君♡」

 

 ベッドの上で甘える推しは彼にキスをせがんでいた。触れ合う唇はとても甘く濃厚な味でいつまでも堪能したいと体は反応している。執筆が終わった金曜日はアビ子の溜まった欲望とストレス解消の為にアクアと求めあうのが当たり前になってきた

 

 

「そろそろ産まれるんですよね」

 

 その言葉に頷いた彼は店内で毎日そわそわしている父の姿を思い出して笑った。魔法使いでも普通の人間と同じなんだと実感する。そして運命の連絡がアクアのスマホに届き2人は急いでシャワーを浴びて汗を流して着替え終えると

 

「行ってきますのチューを忘れてます」

 

 重ね合わせて離した唇から唾液が橋のように繋がりアビ子は全て咀嚼し、先にアクアが外に出て10分後に彼女はタクシーを拾って病院へ向かった。流石に未成年者と付き合っているのはマズイのでカムフラージュは必要である

 

 

 

 

 

「パパ落ち着いてよ!」

「だけど」

 

 病院の廊下には破水した妻を連れてきた父と娘が廊下にいた。落ち着かないのか彼は同じ場所を行ったり来たりして落ち着こうとして自販機でコーヒーを飲もうとするが、お汁粉のボタンを押してしまうことを繰り返していた

 

「父さん」

 

 アクアやアビ子も到着すると何故か大輝とフリルも現れた。全員がそわそわしている慎二を落ち着かせようと無理やり椅子に座らせる。そして……遂に扉が開かれ

 

 

 

「おめでとうございます。元気な男の子です!」

 

 彼は歓喜の涙を流し出産を終えた妻の横に立って手を握った。疲労困憊の彼女に労いの言葉を掛けて休むように伝えた。ルビーたちは外から泣いている弟の姿を見て生命の誕生に感動していた。父親は病院近くのホテルに泊まりアクアは大輝の住むマンションへ、ルビーはフリルの家に泊まることとなりアビ子はタクシーで帰宅した

 

 

 

 

 

「名前は決まっていますの?」

「パパは男の子が産まれるって予想していたみたいだから」

 

 帰宅しながら今後のことを語る女の子たちは今日のことを振り返っていた

 

「ルビーさんもこれでお姉さんですね」

「なんか実感が湧かないな、今までお兄ちゃんしか居なかったし」

「でも兄弟姉妹って憧れるわ、一人っ子だと」

 

 

 人混みの中を歩く2人だがルビーは、ひときわ目立つ存在に視線を奪われたが消えてしまっていた。どこか懐かしい感じで記憶の片隅に残っているような、まるで喉に魚の小骨が刺さったように感じるが思い出せない

 

「ルビーさん?どうしたの」

「あっ何でもないよ」

 

 

 再び歩き始めた2人を見つめる怪しい瞳には黒く滲んだ星が浮かび探し者を見つけ出したのであった

 

 

 

 

 ぶりぶりざえもんはトイレの中で頭を抱えていた。配下のカラスから連絡を受けて『星野アイ』を見つけたことを彼に伝える必要があったが、道中で何度も防犯ベルや横断歩道の音が原因で腹を痛めてしまい辿り着くことが出来ない状態だった。しかも駆け込んだトイレの中に紙は存在せず、ウォシュレットも無かった。何度も起きる腹痛と排泄によって彼女の尻は悲鳴をあげてしまい柔らかいタイプじゃないと受け入れない体になっていた

 

「(どうする拭かないは論外だ!)」

 

 最初はカラスの羽を使うことも考えたが思考が読まれているのか呼んでもやってこない。所持品の中には汚れた尻を拭くものは何も無かった………しかし

 

「(紙やすりだと?)」

 

 

 何故か個室内に1枚だけ落ちていた。実は彼女が使用する前に入っていた人が落としたモノで天は彼女を見捨てて無かったが1つ問題があった

 

「(両面でしかも粗いやつじゃないか)」

 

 もしこれが片面だった場合は問題無く拭くことが出来るが両面だと話は別である。今の彼女にとってこれは自分を救う神器であると同時に地獄へ叩き込む断頭台だ

 

 

「(こんなので拭いたら完全に終わる。でも伝えないと心臓が)」

 

 伝えないという選択肢もあるが完全に怒りを買ってしまう。そうなれば魔法使いはハンマー投げ選手並みに握力を最大限までに強化して握りつぶすか、緑山高校の投手並みのスピードで壁に叩きつけることをしてくると想像してしまった

 

 

「(やる、やらない、やる、やらない、やる、やらない!どっち)」

 

 葛藤する少女はどちらを選ぶのだろうか?

 

 

 

 

 

 

蒼真(そうま)だ!」

 

 家族の前で子供の名前を発表した。アクアは自分のようなキラキラネームならなかったことに安心し、ルビーは蒼という漢字が書けるか心配だった

 

「母さんはいいの?」

「ちゃんと悩んで考えてくれたのなら否定しないわ」

 

 なお最初は『真』の部分を『馬』にするつもりだったが流石にマズイと思い”偽りなく真っ直ぐ”という意味が込められている。また蒼は兄のアクアからイメージしたもので、女の子だったらルビーのイメージから用いる予定だった

 

 

「狡噛蒼真か」

 

 弟の名前を口にしたアクアは、自分もいつかアビ子との間に授かるであろう奇跡に思いをはせながら頑張った母親に感謝の言葉を述べた

 

 

 

 

 

 頼子は退院し賑やかになった店で過ごす5人は幸せに包まれていた。家族の中心は産まれてきた赤ちゃんであり狡嚙家のアイドルである。夜泣きで起こされることもあるが両親の睡眠時間を確保するために双子たちが家事を分担してくれた。一家団結して子育てを頑張っている

 

 

「かわええな」

「そうね、お父さん似かしら?」

 

 休みの日にフリルたちが店に訪れ、蒼真のことを愛でている

 

「この前なんて上原さんが大量のオムツを持って来て、全部サイズ違いで」

「あの人ならやりそうなことね」

「ねぇ、抱っこしてもええの?」

 

 みなみの懇願にルビーは頷き優しく抱きかかえて、ゆっくり渡した

 

 

温い(ぬく)ね~」

「この子みなみさんの胸に興味津々じゃなくて?」

「まさかぁ!」

 

 そのまさかで小さな手はグラビアアイドルの胸を触りながら、大きくて柔らかいモノを堪能していた。自分が吸っているモノより大きい物体は赤ちゃんにはとても魅力的に見えてしまうのであった

 

 

 

 

 

 

「(あの制服は陽東高校の…)」

 

 星野アイは残り少ない所持金で量販店で衣服を揃えるとネットカフェで情報収集を行っていた。自身から漂ってくる悪臭はシャワーで洗い流し小奇麗にしていた

 

 

「(下校する時に追えば住んでいる所が分かるはず)」

 

 彼女の作戦は、今どきの小学生すら使わない幼稚なモノで学校終わりのアクアとルビーを追跡し住んでいる場所が分かったら突撃するものだった。あとは嘘で塗り固めた戯言で2人を信じ込ませてしまえばこっちのものだ!もし独身男性だったら暴力されたことをでっちあげてしまえば住処も奪うことが出来る。法律は常に女の味方なんだ

 

 

「(もうこんな生活とおさらば出来る)」

 

 

 これまでのことを思い返しながらカップラーメンを啜る姿は、17年前に世間を賑わせたアイドルとは思えない姿だった。

 

 

 

 

 

「ここね?」

 

 翌日の夕方、アイは下校中の2人を追跡し喫茶店の前まで辿り着いた。彼女はそれを見て自分が手に入れるモノが大きいことにほくそ笑んでいる。あとは演技をするだけだ!人を騙すことなんて今までやってきたことだ容易いことなんだ

 

 

「アクア、ルビー私だよ!あなた達の星野アイだよ‼」

 

 扉を開けて彼女は双子たちの名前を叫んだ!出てきたら思いっきり抱きしめてあげようと考えていたアイだが中の様子がおかしいことに気付いた。そこは自分が双子たちを捨てた神社の前で室内のはずなのに雪が落ちて肌寒く感じる。変だと思い回れ右をしてドアの外に出ると

 

 

「アイどうしたの?」

「ニノ?」

 

 かつてB小町として共にステージに立っていたメンバーがそこにいた。周囲を見渡すと他のメンバーがライブの衣装を身に纏い自分のことを見つめている

 

「ほら行くよ!」

 

 ニノは自分の手を取って楽屋のドア開けて外に出たが

 

 

 

「ここはどこ?いったい何が?ニノ!」

 

 今度は3人で暮らしていたマンションの中にいた。連続して起きる出来事にアイの頭脳はスパークを起こして煙がモクモクと噴かされている

 

「アクア!ルビーいるんでしょ?どこにいるの?」

 

 声は反響するだけで返事は無い、彼女は部屋の中に金目のモノが無いか調べ始めるが出てくるのは紙ばかりで目を通すと自身が犯してきた犯罪のレポートだった

 

「こんなもの」

 

 分厚い紙の束を破ることは不可能で用紙がひしゃげるだけだった。結局それを投げ捨てるとソファに腰を下ろして周囲を見渡した。もしミヤコがスキャンダルを暴露しなければ家族3人で幸せに暮らすことが出来たのに

 

「アイツのせいで全てが狂った!」

 

 責任転嫁も甚だしい、確かにミヤコも悪質であるが双子たちを捨てたことに対する免罪符にはならない。叫び続けて喉が渇いたアイは台所で水を飲もうとするが部屋のチャイムが鳴ったので不審と思いつつドアを開けると

 

 

「お前のせいだ!」

 

 事務所の社長だった壱護に腹をナイフで刺された




多分次話ぐらいで本編が完結するかも、その後は後日談を書いて終わると思います


感想ありがとうございます。
誤字訂正もありがとうございます
頑張るぞい

次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?

  • OK 原作を知ってるから問題無い
  • NG やっぱり最初から全部読みたい
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