【完結】転生した魔法使いが金髪の双子を育てる 作:大気圏突破
「アイ……、君は…」
金髪の男は自室の座布団にナイフを突き立て引き裂いてしまい中から白い綿が飛び出している。部屋には彼女のポスターが貼られているが顔の部分が黒く塗りつぶされてしまい、他のメンバーにも額に『肉』やヒゲの落書きがされている
「どんなモノも朽ち果てる。なら最高の状態で…」
瞳の星は黒くケタケタと笑う彼はいったい何者だろうか?
『外から5番のストレイトガール、ケイアイエレガント!ケイアイエレガント、ストレイトガール‼2頭並んだー!ケイアイエレガント粘ったか?ストレイトガールが交わしたか?3着には18番人気のミナレット、これは大波乱だ‼』
「3連単が2000万って誰が買えるんだよ、なぁアンちゃん?お前はどの馬を…当ててるぞ、オイ‼なんでストレイトガールとミナレットを2頭軸マルチで買えるんだ?」
「ミナレットの鞍上を見れば分かるだろ?”天災とあの人は忘れた頃にやって来るって”」
G1史上大波乱の結果をもたらした2015年ヴィクトリアマイル、狡噛は今回のレースで多額の資金を中央競馬から得らなければなかった。別に家族3人で暮らす資金がカツカツになった訳ではない、トータルで億を超える高額払い戻しを受けた彼はトイレに駆け込み現金をアイテムボックスの中に放り込むと転移魔法でマンションに戻った
「これだけあれば十分だな」
事の発端は彼の競馬仲間である老夫婦が口にした一言だった
「店を畳む?」
「そうなの、息子夫婦が”一緒に暮らさないか?”って、向こうは共働きだから孫の面倒を見てほしいのもあるけど」
この老夫婦が営むのは店舗兼住宅の喫茶店であり店主がヒシミラクルの菊花賞・天皇賞春・宝塚記念で単勝で儲けた金額で建て、競馬ファンの間ではミラクル喫茶というダサい二つ名が刻まれている
「(立地は少し悪いが暮らすことに不便は無いか)」
実は彼にも思うことがあった。競馬で儲けた金銭で家族3人で生活しているが彼の肩書きは無職である。今後のことを考えれば父親が無職なのは双子たちの環境や進路に悪影響を及ぼしかねない
「なぁ俺がここを買い取ると言ったら幾らになる?」
「冗談でも嬉しいけど、これぐらいかしら」
彼女は指を3本立てて狡嚙に見せつける
「(即決で出せる額だが一気に蓄えが減るな、ルビーちゃん達にも相談しないと)」
店を出て幼稚園に向かい2人を先生から引き取ると今回の件を伝えた。アクアは金銭に関して渋い顔をしていたがルビーが賛成し2対1で可決された。彼はヴィクトリアマイルで資金を調達する前に喫茶店経営に必要な資格を取得し書類も揃えた
「(豆や提供する食べ物はアイテムボックスの中に入れておくか)」
こいつの持っているアイテムボックスは許容量が無限であり時間の経過もしない。足の早いナマモノや氷菓子も腐ることも溶けることもない。転移魔法で地方に出向き購入した食品を中に入れて戻って来ることも可能だ
「これでいいですか?」
「ガミちゃんこれって?」
「ミナレットが配当を上げてくれたんで即決で用意することが出来ました!そしてこれが感謝の気持ちです」
更に600万円を札束の上に積んで老夫婦と証書を作る弁護士の前に差し出した
「これで大丈夫ですよね?」
彼が弁護士の方に目を向けると口をポカンと開けて呆けていた。譲渡に関する立会いを何度もこなしていたが多額の現金を目の前にすることは初めてであり心臓の鼓動が早くなり全身が火照るように熱くなってしまう
「ありがとうガミちゃん、この店のことを頼んだわ」
「えぇ」
老夫婦を送り出し喫茶店の主になった彼は早速内装掃除を始めた。清掃業者を呼ばなくても指先1つで終わらせると2階の居住スペースに上り、こちらも同様に終わらせた。アイテムボックスと転移魔法を使えば引っ越しを楽に終わらせることが出来るがアクアには魔法のことを隠しているので業者に頼んで運んでもらった
「行ってきま~す!」
双子たちがランドセルを背負うようになり喫茶店から登校するようになり、ルビーはアクアの手を引っ張って学校に向かっていった。狡噛はマスターとして店頭に立ち接客と配膳をするが大人気店という訳ではなく客足もポツポツである。経営の収支が大きくプラスすることは無いがキタサンブラックの馬券で生活するのには困らない
「マスターいつもの場所借りますね」
メガネ姿の女性はカバンから原稿を取り出して耳栓を装着すると漫画の執筆を始めた。デビューして間もない若輩の漫画家であり老夫婦が営んでいた頃からの常連客だった。狡嚙が店を継いでくれることを喜んでくれた1人である。彼は店内にかかるラジオの音量を下げるとノートを広げ今後中央競馬で主役を張る馬の名前と年代、レース名を書き込んでいった
「狡嚙さんコーヒーをお願いします」
カウンター席に座る金髪でスーツ姿の男は提供されたカップに口をつけて深く息を吐いた
「今回はどこに行ってたんだカミキ?」
「ちょっと日本海側を北上してまして」
「まだ失恋の傷が癒えないのか」
「えぇ未だに」
彼は過去の失恋を引きずり心を癒すために旅を続ける若者で、当人同士は覚えていないが宮崎の街中ですれ違っている
「狡嚙さんの意見を聞きたいのですが宜しいですか?」
「なんだ?」
「形あるものって時間が経てば朽ち果てて醜い存在になりますよね?」
「モノによりけりだな、まぁ完成すれば朽ちるのは自明の理だ」
高級和紙に墨で残した書物は当時の形を残したまま千年以上残り、日光の有名な観光地ではわざと未完成の状態で工事を終わらせ完成していないことで劣化を防いでいる
「朽ちる前に最高の状態で終わらせるのは素敵じゃないですか」
カミキの言葉に彼は納得できない表情をしていた。スポーツ選手が引き際を見誤ることなく綺麗な状態で引退し後進に道を譲るのは正しいことだが、ボロボロになっても立ち続け前に進む方を好んでいた
「あまりお気に召さない?」
「まぁな、滅びの美学という訳じゃないが最後まで立ち続けることに意味があると思ってる」
「それが狡嚙さんの意見ですか」
乱暴にカップをテーブルの上に置いたカミキは代金を置いて店から足早に去ってしまった
「喧嘩でもしたんですか?」
「今生の別れじゃないさ」
漫画家の彼女が空になったカップを彼の所へ届けると、バッグの中から1冊のコミックを狡嚙に差し出してきた
「私の漫画の単行本が出たんです。マスターにはお世話になっているので差し上げます」
「ありがとう」
会計を済ませ出て行った彼女を目で追いながら閉店の看板を表に掲げると、狡嚙は帰ってくる双子たちの為に美味しい晩御飯作りに取り掛かるのであった。
「パパ~明日学校で牛乳パックが2ついるんだけど」
夜の9時にルビーが困った顔で尋ねてきたが、彼は娘の目の前に牛乳パックを2つ置いた。別に魔法を使った訳ではなく
「アクア君から聞いていたから用意していたけど、ルビーちゃん今度は連絡を受けた日に言ってほしいな、約束してくれる?」
「うん、パパとの約束は守る!」
「よし偉い子だ」
彼女の頭を撫でながら日に日に成長する子供たちの姿を見て、これからも頑張ろうと思う魔法使いであった
菊花賞でサトノの冠名が初G1を制した10月の下旬、山登りにいそしむ1組の男女がいた。金髪の男性は先導しながら道をひらき女性をエスコートしている
「ミキさん少し休みましょうよ」
「もうちょっと先のところに休憩出来るスペースがあるから、そこまで頑張ろうか」
彼は女性を鼓舞しながら前を向いて先に行ってしまい、彼女は重い足取りで太ももに激を飛ばし1歩ずつ前に進むことを命令させた。もう少しで追いつくことが出来る!目と鼻の先で立ち止まる彼に声を掛けようとした瞬間
「じゃあね!」
「えっ?」
体当たりをされ気づいた時には自分が宙を浮くような感覚に陥っていた。彼女は受け身の体勢がとれないまま崖の下に落ちていってしまった。
「君は今が1番美しい、だからその状態で終わらせてあげたんだ‼」
カミキヒカルは変装していた姿を解くとケタケタと笑いながら涙を零す
「僕を拒絶したアイは既にあの時に劣化していたんだ!だから消えてしまったんだ。そうだ醜い存在なんてふさわしくない、僕が人生を最高の状態で終わらせることが出来る」
それは破綻している理論だった。カミキヒカルの口にするアイとは双子たちの母親で彼はアクアたちの父親である。体を重ね合わせ互いを受け入れたのに彼女から拒絶された彼は異常者となってしまい同様の手口で女性たちを葬っていた。
「あぁっ!アイ、君を終わらせることが出来なかったが、僕は僕はね…」
スポットライトを浴びる舞台役者のようにオーバーなアクションをするカミキだったが、背後に気配を感じ振り向いた瞬間
”ベロン‼”
彼の顔の皮膚が鋭い爪で全て剥がされてしまった。
馬券が外れるとイライラしてしまう
最後の皮膚が剥がれるイメージですが『バキ』で列海王の師匠がバキパパにやられてしまう状況と同じやつです。
しかしアイのことをどうしようか悩みます。生かすべきなのか?生死不明で行方知らずにするべきか?迷ってます
感想ありがとうございます。これからも頑張っていきます。(とざき~~大外)
次回作を作る時に途中まで原作と同じ流れだったら、すっとばしても良い?
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OK 原作を知ってるから問題無い
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NG やっぱり最初から全部読みたい