人外以外ほぼ壊滅
本部に戻って聞かされた状況は
思ってたより酷かった
「特異1課2課3課4課ともに銃撃に遭い壊滅状態
銃を使った襲撃…
おそらく銃の悪魔が関わっています」
「キミたちが生き残ったのは
奇跡みたいなものだね」
「ほぼタツトのおかげですよ…
銃を持ってる奴等に対して何もできなかった
そこのクソ魔人も逃げて居なくなりましたし」
パワーへの怒りを隠さずに早川が言った
「ワシは逃げとらん!
腹が減ったから帰っただけじゃ!」
心外だと喚き散らすパワーに
「パワーちゃん」
「次はないからね
もし次もこんなことしたらわかってるよね?」
「ハイ!!」
「いい子」
その言葉は飼い犬に向けるような声色を含んでいた
「ホテルの事例と今回の事例で
デンジ君の心臓が敵対勢力に狙われてる
事が分かったから
4課を強化しようと思ったけど
ほぼ死んじゃったね
ということでデンジ君とパワーちゃんは
とある人に指導を頼んであるから
明日その人のところに
「はーい」「はい!!」
これからどうなるかわからないから
できるだけ早く動いておくことに
越したことはないから
早川君達はこれから東京悪魔収容センターに
行って狐と幽霊以外にも
使える悪魔と契約しておいて
私から話は通しておくね
「はい」「了解でーす」
タツト君は自由で」
「え?」
大方一人で悪魔退治かデンジの指導に
ついて行くことになると思ってた俺は
想定外の言葉に思わず聞き返した
「あれ?聞こえてなかった?
タツト君は自由ね」
「はいぃ?」
「本当は一人で任務に行ってもらおうと
思っていたんだけれど対魔特異課の殆どが
壊滅している以上変わらないと思ってね」
そう言うと執務用の机に座り直した
「まあ、デンジ君たちについていくなり
早川君たちについていくなりしておいて」
「最初っからそう言ぇあいいのに」ボソッ
「何か言ったかな?」
「いえ、りょーかいです」
「では、各自解散」
ぞろぞろと執務室から出て各自行動に移る
明日から指導のデンジ達は帰宅
俺はこれからどうしようかと
廊下でうんうんと唸ってると
それを見かねて姫野が声をかけてきた
「タツト君も一緒に来る?」
「ぇえ?」
「何その反応?そんなに意外?」
早川に聞かれないように顔を近づけた
「だって姫野お前いいのかよ
せっかくふたりきりなんに」
「いいのいいの!ほら!行くよ
いいでしょ?アキ君」
「別にいいぞ」
姫野の奴本当に早川のこと狙ってんのか?
…まぁ本人が良いっつってんだから良いかぁ
フツーにどんなとこか気になるから行くことにする
てか襲撃に遭ったその日に
外出させるって公安どうなってんだよ
これが"ぶらっくきぎょう"ってやつかぁ?
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早川が運転する車に揺られ始めて5分
早くも夢と窓の外の景色を行ったり来たりしてた
タイヤとアスファルトが擦れる音と規則的な振動
ラジオから聞こえる何を言ってるかわからない音
は眠気を誘うには十分だった
重くなった瞼にはもはや重力に耐えうる力はなく
タツトを夢の世界へと送り出した
タツトは何故か何もない空間にいた
無限にも有限にも見える白
上下の感覚がない空間で
タツトは漂っていた
「タツト…タツト…」
何か見覚えのあるシルエットが近づいてきた
特徴的な頭についているソレは
デンジの内側からよく飛び出してくる物だ
トテトテという音が似合う歩幅で段々と
距離がなくなっていく
しかし、視界がぼやけていて何かわからない
その生き物が眼前まで迫った瞬間
ガタン!
大きく揺れた車体が現実へと引き戻した
「ッハッ!」
「すまん、なんか踏んだみたいだ」
ふわぁあと大口を開けて欠伸をかまして
前を見るとニヤニヤとした姫野と目が合った
「いや〜あんなに強いタツト君でも
寝顔は子供みたいで可愛いね」
「良いもの見れましたね」
「はっ?」
いつもは仏頂面を崩さない早川さえも
弱点見つけたり!と
俺の寝顔を見てニヤニヤしてる
顔から火が出そうなくらい頬が熱くなった
「あ〜照れてるかわいー」
無言で顔を両手で覆って悶える
耳が赤くなってる気がする
早く、早く着いてくれ!
それからの時間は永遠に感じた
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頭の上の切れかけの蛍光灯がジジジと音を立てた
薄暗い廊下には3人分の足音がコツコツと響く
ここには窓がないのか空気が淀んでいる
「なァーこんなとこで何すんの?」
「着いたらわかる」
はぁ?と聞き返したけど無視された
それから2回曲がったところで止まった
「ここだ」
扉が開かれるとそこは無機質なコンクリート
の壁と床で構成された部屋だ
「え?何ここ?」
「タツト、お前は俺らよりはるかに強い」
部屋の真ん中まで歩いていった早川が振り返る
「まぁそうだなァ、」
「俺は銃の悪魔をこの手で殺してやりたい
…だが、今回の襲撃で自分の力不足を理解った
だから実戦で稽古をつけて欲しい」
公安に入って聞いた『悪魔嫌い』が
恥を忍んで頼んできた
だけど
「えーメンドイ」
そんな面倒そうなことをしに来たわけじゃねぇし
テキトーに断っとくか
「今日の夜飯、好きな所に連れてってやるよ」
「やりまぁす!!」
ソレはずるくねぇか?
「私もやりたい」
「いいぜ、どっちからやるか?」
「俺からいく」
早川がスラリと釘がついた刀を抜いた
姫野が入り口の方まで避難した
「じゃあ合図しまーす」
「スタート!」
合図と同時にこちらに突っ込んで来る
横薙ぎに振られた刀を
上体を反らして紙一重で躱す
切り返された刀を片手でつかんで止める
右手の爪を早川の首筋に突きてようとするが
早川は刀を手放して距離を取った
コン!
飛び出してきた狐の頭を跳躍で避けて
そのまま距離をとる
後ろ髪を変化させる
血のように真っ赤な生き物が早川に飛び立っていく
ヤツメウナギに羽根が生えたような20センチ位の
ソレは喰らいつかんとその身をクネクネと
うねらせて獲物へと向かっていった
「そこまで!」
姫野の声に反応してソレは元の漆黒の髪へと戻った
「何アレ、キモ〜!」
「俺の眷属と共生シてる奴だな
噛まれると血ィ吸われて病気になるヤベーやつ」
「うわ、やば〜」
「それでさぁ気になんだけど早川の契約悪魔は?」
「それ言わないとダメか?
自分の手の内を晒したくない」
「知ったほうが考えやすいと思うんだが」
「ハァ、他言するなよ
俺のは
狐の悪魔 対価は髪の毛とか皮膚
呪いの悪魔 対価は寿命
って感じだ」
「うーん取り敢えず呪い使うの
やめたほうがいいと思うぜ」
「は?4回刺せば確実に殺せるから
かなり強い部類に入ると思うんだが」
「いや、刀男とかデンジみたいな不死身の奴に
4回刺して寿命を捧げて殺しても
復活されちまうからこすぱ?が悪くねぇ?」
「確かに一理あるな」
「なんか他に刀に合うようなやつ
探したほうが良いんじゃねぇの」
「そうだな、わかった」
姫野方を向き直る
「はい次の人ー」
「やっぱり実戦はパスで
アキ君みたいに近接無理だし」
「へいよー」
「まぁ、あれだな二人とも遠距離攻撃手段
あったほうがいいと思うぜ」
今回の襲撃然り相手に遠距離攻撃手段があると
死んだら終わりの姫野と早川は動けねぇ
だから連発できる奴が必要だと言っといた
から2人は幽閉されてる悪魔の中に
ちょうどいいやつはいないか探しに行った
一方俺はと言うと
「あれぇ?ここどこだよ」
道に迷っていた
長い廊下の両側には同じ様な牢に
拘束されてる悪魔が大人しく捕まってた
同じような景色が長い廊下に続いてるせいで
どこ通ったからわかんなくなった
「ツイてねーなマジで」
ボヤきながら先に進むと
ふと目に
[爪の悪魔]
つー文字が飛び込んできた
体の内側で契約したのを忘れてた
筋肉達が反応を示した
「あ?お前らの仲間かよ」
それならと牢に近づく
「オイ、俺と契約しろ」
「む、なんだお前は」
「中々珍しい、悪魔の気配がする人間は初めてだ」
突然契約を持ちかけられた悪魔は動揺しつつも
こちらの様子を伺っているようだ
「…ふむ、いいだろうここから出してくれれば、な」
その言葉を聞いて牢の中に手を突っ込む
「俺ん中に入れば出れるぞ
ほら、早く入れよ
お仲間さんが待ってるぞ」
「む、久しい気配たちだ」
「俺の契約内容はお仲間さんに聞いといてくれ」
「では、契約成立だ」
元からその場所にあったかのように
俺の爪に成り代わった
心なしか体内の悪魔たちの機嫌が良いような気がする
一件落着した
「…でもここ何処だよ!!」
その後体感30分ほど彷徨って
早川達と合流した
その日の夜飯は5人で回転寿司を美味しく頂いた
早川タツト
最近仕事が楽しくなってきた
人間の食べる飯うますぎ
早川アキ
公安随一の悪魔嫌いのハズが
だんだん絆されつつある
チョロいなこいつ
姫野
日頃の会話、お出かけを経て
アキ>タツトが
アキ≧タツトになりつつある
コイツも案外チョロい
マキマ
自分の側に支配できない悪魔が
チェンソーマンと一緒に入ってきて
内心焦っている