――――草木が生い茂る森の中に、地面を
奇妙なその穴は驚くべきことに広場ほどの大きさだったが、しかし、何者かが掘ったというわけでもなく、空から落下してきた何かが衝突して作られた穴というわけでもない。
どういった過程でこんな穴ができたのか、詳しくは知らないが――その中央に
名を、〈
「…………」
円状に
〈
なにせ、地上を
自分もまた、実物を見るまでは、そんなものなのだろうと納得していた。
「…………ハハハッ」
――――結果として、その認識は間違いではなかった。ただ一つだけ、付け加えるならば……想像の十倍はおぞましいものだった。
(こんな、とんでもない代物を大陸中に拡散させたのか……魔女アリギエイヌスは)
それは一見して、巨大な花のようにも見える形状をしていた。
内側を囲んで
植物を
ふと、足元を見る。
「…………」
――――肉。泥に
それは形を作ろうとして、失敗したまま、〈
過去に獣の血と肉片が散乱している光景は
馬、熊、狼……それらは見覚えのある種類の断片であったり、
まるで、とある形を作ろうと試行
「…………」
ここにある、この魔術装置だけが特別なのか、それとも、大陸中に散りばめられた装置もまた同じような様相を
とにもかくにも、生み落とされて未だ――獣としての役目を果たさんと
正常な理性を持つ人間ならば、こんな異常が
そう、正常な理性……を持つ人間、ならば。
…………
(…………、…………なんで俺は、こんな場所で…………こんなことをやる必要があるんだったか)
不意に、思考が行き先を見失いそうになり、慌てて首を振る。
「……そうだ」
自分の為すべき目的を思い出して、懐から“ある物”を取り出した。
ぼんやりと霞が掛かってきた頭の中で、なぜか、その目的だけは、鮮明に思い出すことができた。
(そうだ、そう……俺は、報復しなければならない)
強く、それを意識する。
例えば、俺を殴ってきたあの男に。
例えば、俺に屈辱を味わわせてきた貴族たちに。
例えば、俺の大道芸の相棒だった愛犬を蹴り殺した冒険者の連中に。
例えば、あの女に、例えば、あの老人に、例えば、あの酒場の店主に。
例えば、例えば、例えば――――
例えば、こんな救われない世界を良しとした、あの――――リディヴィーヌとかいう魔術師に。
俺は報復しなければならなかった。