「こんな治安が終わっている学園で! 女子を殴る俺にラブコメの主人公を!?」   作:明るく楽しく暴力系ヒロインを!

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 日本の領海にあると言われている孤島。外部からは定期便が訪れる位で、逃亡など考えるのもバカらしくなる様な孤島がある。

 この島には、主に十代の少女達が詰め込まれていて、彼女らが通う公的な教育機関がある。名を『バイオレンス学園』と言う。

 文部省はよくもこんな校名を許したモンだと思うが、この学園は隔離施設みたいなモノなので知ったこっちゃ無いんだろう。

 

「『大西 弘樹(おおにし ひろき)』君。この学園から出たいかね?」

 

 この学園に入学してから1ヶ月ほどのことである。数少ない男子生徒である俺は校長に呼び出されて、こんなことを聞かれた。

 

「出たいに決まってンだろ。なんで、こんなアルカ・トラズみたいな場所で青春を過ごさなきゃいけねぇんだ」

「この学園に入れられる生徒の大半は『暴力系』だの『反社』だの『社会不適合者』ばかりだからな。君も、その一人であることを忘れてはならない」

 

 全く。何時から、我が国は人権と少年法を忘れたんだか。だが、俺は善良な国民なので、黙って校長の言うことを聞くことにした。

 

「君以外の大半は女子生徒だが、いずれも社会生活においては著しい問題を抱えている子達ばかりだ。曰く、幼馴染を殴る。曰く、照れ隠しに殴る。曰く、理由もなく暴力に走る。どうにかしたい物でね」

「校長! 俺、いいこと考えたぜ! この学園を改造してな。コロシアムにすンだ。そんで、頭のおかしい生徒達に武器を持参させて殺し合わせたら、校長の心配も無くなンぜ!」

「おお! いいアイデアだ! で、君は何の武器を持ち込むんだね?」

「俺の頭がおかしいって言いてぇのか!?」

 

 人が折角、悩みを解決するアイデアを提案したって言うのに、なんて言い草だ。頭のおかしい奴らをまとめている奴もやっぱり頭がおかしいらしい。

 

「私としても不服だが、この大役を任せられるのは君しかいないんだ。この学園から卒業する条件を教えよう」

「国際裁判所に駆け込むとか?」

「止めろ!! この学園に蔓延るミュータント共を放逐するつもりか!」

 

自分の生徒をバケモンみたいに言うなんてひどい奴だ。しかも、国際裁判所に駆け込まれたら不味いって自覚があるのか。ここで、1つ咳払い。

 

「それはだな。君が、女子生徒達と『恋』をすることだ」

「2010年代のラノベやラブコメみたいなノリだな。告白したら、迎えの船とテレビクルーが来ンのか?」

「君、ひねくれ過ぎだろ。兎も角、卒業したいならコレ一択だ。素敵な恋をして、品性下劣な子達を見事なヒロインへと昇格させて欲しい。私からの連絡は以上だ。教室に戻ってくれ」

 

 頭のおかしい生徒の面倒ばかりを見て来たせいか、同じ様に頭がおかしくなってしまった校長の妄言に胸を痛めながら、俺は部屋を後にした。

 恋をした程度でまともになるなら、世の中にはDVも離婚も存在するはずがない。俺よりも長生きしている癖に、そんなことも分からない校長を憐れに思いながら、俺は教室へと戻った。

 

――

 

 この学園は女子校もかくたるやと言わんばかりに女子の比率が高い。では、甘酸っぱい学園生活が待ち受けているかと言われたら、そんな訳がない。

 

「エ”エ”-イ!! エ“エ”-イ!!!」

 

 何が面白いのかは分からないけれど、猿叫を上げている女子が多い。

 そんな彼女達を見て、周りも拍手して笑い転げているんだから、もはやここは学園じゃなくて動物園かなんかじゃないかと思う。

 こんな人間未満の連中と恋をしろだなんて言うんだから、校長も人が悪い。と思って、教室に戻ろうとすると立ち塞がる女子が1人。

 

「ア”アー!!」

 

 叫び過ぎて言葉を忘れた憐れな動物がいた。その癖、何の間違いか。顔は良いんだから困る。立派なハードウェアがあるのにインストールするOSを間違えてしまった、教育の失敗を嘆く外ない。

 バイオレンス学園は名前の通り暴力が日常茶飯事だ。喧嘩も絶えない為、斜視の生徒が多い。顔面を殴られ過ぎているせいだ。顔は良いのに斜視と言うアンバランスさが何とも言えない不安を引き起こす。

 

「どうした? 俺になンか用か?」

「金出せ、コラ!」

 

 現代に蘇る山賊。ちなみに、彼女の言う金。とは日本銀行券のことではない。

 この学園内だけで使える『ラリ』と言う専用通貨のことだ。恐らく、生徒達の大半がラリっていることを揶揄しての単位だと思われる。

 きっと、これがラブコメとかなら『とほほ~』と言いながら可愛いヒロインに慰めて貰うか、あるいは『アイヤ、待たれよ』と正義感の強い風紀委員の子が助けに来てくれるかもしれない。だが、ここは現実だ。未来は自分で切り開いて行け。

 

「調子にのんじゃねぇ、ブス!!」

「ギャッ!」

 

 人の通行を邪魔する物は拳で殴り倒すに限る。男を殴るより、柔らかくて殴り心地が良い。性差による強さを顧みないバカに対する鉄槌だ。

 暴力ヒロインに対して、暴力を振るってはいけない。と言う前時代的な考えは、残念ながらZ世代には通じない。すると、ゾロゾロと似たような女子生徒が駆け寄って来た。敵討か。いや、違う。

 

「おい! コイツ! 気絶してんぞ!」

 

 皆が倒れた小金のポケットやらバッグから『ラリ』や菓子を奪い取って行く。さながら、死体に群がるハイエナめいている。

 どうやって、こんなケダモノ達と恋愛をすればいいのか。俺は頭を悩ませるばかりだった。

 

――

 

「大西君。校長から、何の用事で呼び出されたの?」

 

 教室に戻って来るや、俺に声を掛けて来る女子生徒がいた。この学園の生徒にしては珍しく正気を保っている。

 彼女の名は『宮本 加菜』。桜色の髪をツインテールでまとめた小柄な女子で、この学園で数少ない人間だった。

 

「校長から恋愛ポルノを見せてくれたら、学園から卒業させてあげるよ~って言われたンだよ」

「じゃあ、ボクと結ばれたら外に出られるよ! やったね!」

「嫌だよ。付き合ったら、責任取らなきゃいけねェじゃん」

「ボクと仲良くなったんだから、最後まで面倒見てよ!!」

 

 胸倉を掴んで揺さぶって来たので、ビンタして黙らせた。頬を抑えて、信じられない。みたいな顔をしていたので、更なる癇癪を起す前にハグをした。

 

「ゴメンって」

「仕方ないなぁ。でも、ボクは大西君のことを分かっているからね。許すよ」

 

 なんで、コイツはこんなに偉そうなんだろうか? もしかして、俺の唯一の理解者とかでも思っているんだろうか? まぁ、可愛いからいいや。

 ただ、こんなことをしたらクラス内の女子達からも関心を向けられた。ふと、良いことを思いついた。教壇に立って、事情を説明した。

 

「えー。校長はお前達と俺の恋愛ポルノを所望しておられる。俺と結ばれた奴だけが、外の世界に出られるらしい。俺を崇め、媚びるが良いぞ」

 

 端的に事情を説明した途端。女子達からは黄色い声ではなくブーイングと一緒に灰皿も飛んで来た。

 

「死ね!!」

「二度と面見せんな、チ〇コ野郎!!」

「テメェの金玉切り刻んで、その口にぶち込むぞ!!」

 

 なんて下劣な女共だ。一人残らず殴り倒したい衝動に駆られたが、グッと堪えた。我ながら、自らの人間性に惚れ惚れする。

 

「じゃあ、お前達はこの学園で永遠に争ってな。俺は宮本と一緒に外の世界に出て行くからな」

 

 宮本が『やっぱり、ボクのことを…』と彼女面をしていたが、即席的に取れる方法を提案しただけで、今の所はそんな気はない。

 別に女子に興味が無い。と言う訳ではないが、俺はあくまで人間らしい恋をしたいのであって、美少女モンキーとお付き合いをしたい訳ではない。

 喧々囂々。みなして、一様に俺への不満を口にする中。バンと机を叩いて皆を黙らせる女子が1人。眼鏡に黒髪のお下げと言うクラシカルスタイルを決めている委員長だ。

 

「大西君。今の話は本当?」

「聞いた話だとな」

 

 恐らくだが、俺達に隠していることはあるだろうが、現状では外に出る方法は俺と結ばれることしかないらしい。すると、委員長は皆の方を見て言った。

 

「皆! 準備をして、定期連絡船を奪おうよ!」

「さすが、委員長ー!!」

 

 余程、俺とお付き合いをするのが嫌らしい。極自然にシージャックを提案する辺り、真面目そうに見える奴でも結構イカレているようだ。

 

「やっぱり、コイツらイカれてやがらァ」

「大西君こそ。恋愛ポルノの竿役に選ばれただけで、よくそんな強気な態度に出られるよね。信じられない」

 

 委員長が溜息混じりに言って来た。カチンと来たので殴ろうかと思ったけれど、現時点で殴ったら袋叩きに合うのでやめることにした。引き際も肝心だ。

 

「お得意の『暴力』で、この学園から出るか。それとも、俺との『恋愛』に屈するか。見ものだなァ」

 

 ニィと笑って見せたが、誰も俺の言うことを聞いていなかった。現代らしく、俺はもう終わったコンテンツになったらしい。

 だが、いずれ。連中は俺に屈することになるだろう。こんな危険人物共を学園に収監できるような連中が、船を奪われるようなマヌケをするとは思えない。

 

「やがて、どいつもコイツも俺と恋愛をするしか脱出方法が無くなるんだ。その時のアイツらの苦痛に歪む顔が楽しみだ」

「大西君。自分で言っていて、空しくならない?」

 

 宮本に慰められた。別にいいし。こんなゴリラ女共と恋愛する気なんて無いし。何人かは顔が良い奴がいるが、俺には関係ない奴らだし。

 腹が立って来たので、机に突っ伏して寝ることにした。その際、教室の外の廊下にいた校長が『何やってんだコイツ』みたいな顔をしていたのが見えたが、気にしないことにした。

 

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