「こんな治安が終わっている学園で! 女子を殴る俺にラブコメの主人公を!?」 作:明るく楽しく暴力系ヒロインを!
俺が大々的に宣言をした翌日のことである。案の定と言うべきか、机には花瓶が置かれ、『死ね』『クソ』等と言う情熱的なメッセージで埋め尽くされていた。
周りの女子達はニヤニヤと陰湿な笑みを浮かべている。そんなに俺と結ばれるのが嫌か。こんな所に放り込まれた癖に、未だに自分に価値があると思い込んでいる憐れな連中だ。
「(顔だけじゃなくて、心までブス共がよぉ~!)」
こんな所を抜け出すために思ってもいないことを口にする奴が出て来るんじゃないかと思ったが、そんな兆しは無さそうだ。
ひょっとしたら、俺が言ったことを信じていないということもあるかもしれないが、ここまで誰からも相手にされないとは思っていなかった。
「だから、言ったでしょ? 大西君を分かっている女子はボク位だって」
「うわぁああ! いつの間に!」
いつの間にか宮本が隣の席に座っていた。それだけ、俺も周りが見えていなかったということか。本当に面倒臭くなったら、コイツと一緒に出て行こうかな。
「どうする? 今から、校長先生の所に報告に行く?」
「嫌だよ。いきなり『ラブラブした』って言ってもケチ付けられンのがオチだろ」
ゲームを開始して放置しているだけでクリア。となるタイトルもあるが、面白いかどうかと言われたら否である。
宮本が不服そうにしていると。ガラリと教室の扉が開いて、委員長が入って来た。彼女は俺を見るなり、ニッコリと笑顔を浮かべた。
「おはよう、大西君。昨日は良いことを聞けたよ」
「お。やっぱり、俺に媚びる気になったか?」
「ううん。君がクソゴミ男だったおかげで、クラスの子達も学園を脱出する決意ができたみたいだし。お礼を言うよ。ありがとうね」
俺と付き合う位なら悲壮な決意をした方がマシだとも言いたいのか。女子生徒達が委員長に声を掛ける中、俺も決意をすることにした。
「よし、宮本。校長室に行こう」
「うん! RTAだね!」
バイオレンス学園卒業RTAと言いたそうだが、残念ながら俺の用件はそうではない。とりあえず、向かって言うことがあるとすれば。
――
「何!? 君と付き合う位なら、連絡船を拿捕するつもりだと!?」
「おぅよ。委員長が計画していたぜ。どうすンだ?」
「ど、どうして。君にラブコメを頼んだらサスペンスになって返って来るんだ……」
校長が頭を抱えていた。きっと、本人の脳内的には興味を持った女子が接触して来たりとか、アタックして来たりとかみたいな甘酸っぱいシチュエーションを妄想していただろうが、残念ながら胃液の酸っぱさで我慢して貰おう。
「アンタから言ってくれよ。俺が言った所で信じて貰えねぇしな」
「むぅ。それもそうか。……所で、隣の宮本君は一体?」
「ボク彼女候補なので、速攻で卒業しても良いですか?」
「いや、ちょっと。それは……。ていうか、君達。1ヶ月の間でちょっと喋ったりした程度だよね? 距離の詰め方異常過ぎない?」
「これもまた、宮本の個性だな!」
この1ヶ月の間、彼女と特別なエピソードがあった訳でもないのに、異常に距離を詰められていたのだが、顔が好みなので流している。
「そこはホラ。もっとなんというか、こうね。暴力ヒロインになって、ここへと送られて来た彼女達の心の傷を癒すような」
「現在進行形で俺の心の傷が増えてンだよ!!」
俺も殴り返すのでイーブンではあるが、校長の浄化オナ〇―に付き合わされる身としては堪ったモンじゃない。
「わ、分かった。とりあえず拿捕されない様に連絡を入れるのと。それと、校内放送も入れておこう。恋愛奨励と言う形でな。ウム」
「恋愛って言われてするものなの?」
宮本から極当然のような疑問が投げかけられたが、校長は何も言えなかった。間もなくして、校内放送で例の旨が流された。
――
教室に戻った俺達を待ち構えていたのは盛大な舌打ちだった。
忌々しいことに、昨日の俺の宣言を認めざるを得なかったのだろう。後、委員長の席がポッカリと空いていた。
「アレ? 委員長は?」
「パクられたんだよ! テメーがチクったんだろ!!」
「もう俺とラブラブするしかねェよな~!」
「死ね!!」
テキトーに話し掛けた女子生徒がブチギレていた。 嘗めたこと抜かす女子の脳天にチョップをプレゼントした。
どうやら、校長は直ぐに手配してくれたらしい。良いことをすると気持ちが良いので、俺は上機嫌に自分の席へと戻った。
「(どうなンだろうな~)」
どいつもコイツも顔は可愛いし、暴言や暴力でどうにかしようとして来る奴はぶん殴ろうとウキウキしていると、寄って来る女子が1人。その胸は豊満だった。
「江口じゃん。どうした?」
『江口 伊佐美(えぐち いさみ)』。ショッキングピンクの髪にだらしないボディを下げた妙に色気のある女子だ。
BMIもしっかり20以上はありそうな全身を揺らしていると、彼女はスクールシャツの前面を開けさせていた。気が早すぎる。
「オラッ!! ゴールさせろ!!」
「ヌキゲーじゃねぇんだぞ!!」
別の意味で襲われそうになったので引っ叩いて阻止した。校長だって生徒がいきなり前後し始めたらビックリするだろうよ。
「お前と恋愛する位なら抱かれた方がマシかなって」
「自分の貞操を差し出す位に、俺と恋愛すンのが嫌か!!」
まさか嫌われまくることで、ゴールできるというライフハックを発見したが、そんな物は俺の望む所では無い。
「お前の何処に好きになれる要素があるんだよ! 口は悪いわ! 人を殴るわ! 無駄に尊大だわ! DV野郎が!」
「黙れ! 暴力が『暴力系ヒロイン(お前ら)』の特権だと思うなよ! 俺は、テメェらが殴って来た玉無し共みたいに『トホホ』じゃ済まさねーからな!」
男女平等に殴るのが、俺の主義だ。今までは一方的に殴って来たかもしれないが、俺が相手ならそれは許さない。
これには女子達も訝し気にしていた。もしかして、コイツら。男子は殴られて当然みたいに思っていたんだろうか? とんでもない奴らだ!
「じゃあ、アタシ達は学園から出られないじゃん!」
「反省しろよ! ハハハハ!」
人を殴って傷付けて来た分際で元の生活に戻ろうなんて厚かましい奴らだ。
一連の流れを見ていた奴らは、全員で中指を立てて来た。これでは卒業なんて夢のまた夢だ。こうなったら、奥の手だ。
「しょうがねぇ。別のクラスの奴らを探しに行くか」
「大西君!?」「おい!?」
教室から出て行こうとすると、宮本と江口が付いて来た。なんで、江口まで付いて来ているんだろうか?
「お前が他の奴見つけたら、アタシが卒業できねーじゃん!」
「大西君を気にいる女子なんて、ボク以外に誰もいないよ!」
「すげぇな。俺を嫌っている奴の方が、まだ可能性を見出してんじゃん」
と言うか、宮本は俺を何だと思っているんだ。腹が立ったので両ほっぺを軽く引っ張った後、一緒に他所のクラスを見に行ったが。
「ピ~ヒョロロロロ」
まず、最初に訪れたクラスでは、生徒全員が一斉にリコーダーでチャルメラを吹いていた。笑ったり、騒いだりもせずに一心不乱にやっているので、不気味過ぎて逃げ出してしまった。
で、次に訪れたクラスはと言うと。教室内の女子と言う女子が百合百合していた。恋愛さえしていれば、同性でも良いと思ったんだろうか?
顔は良い奴ら同士なので、見世物になるかもしれないが……。俺達は何も見なかったことにした。
「やっぱり、この学園やばいって」
先程まで醜態を繰り広げていた江口も正気に戻るレベルだった。
やっぱり、コイツらは学園に閉じ込めておいた方が良いんじゃないかって気がして来た。
「でも、ここまで来たらどんなヤバい奴が来るかワクワクして来た。最高にヤバいのはどのクラスになンだぁ?」
「お前も大分ヤベーよ!」
毒を食らわば皿までと言うし。江口からの非難を他所に、この後もクラス巡りを続けることにした。