「こんな治安が終わっている学園で! 女子を殴る俺にラブコメの主人公を!?」 作:明るく楽しく暴力系ヒロインを!
「なんつーか。やばいヤツってバリエーションがある様に見えて、意外とパターン少ねぇよな」
翌日のことである。昨日は、3人で色々なクラスを見て回ったが、この学園のやばいヤツはバリエーション豊かと言う訳ではなかった。
偶に変な奴がいる位で、概ねは猿叫を上げるか、暴れているか、遊んでいるか、寝ているか。の4パターンだった。
「頭が悪いから、個性が出ないんだと思う」
「宮本も酷いこと言うよな……」
と、江口がやや引いていたが事実なのだから仕方ない。校長はAV(アニマルビデオ)でも見たいんだろうか?
「もう二度とやらない。と思う、ヒロキ君なのでした~」
「急にどうした?」
「いや。この学園の様子が映し出される様なことがあった場合を考えて、アテレコの練習をしていたんだ」
江口がドン引きしていた。そんなことを考える位には、このまま宮本と一緒に卒業しようという気持ちが強くなるだけだった。……のだが。
「なんで、お前は極自然に俺達の一味に加わってンだ?」
「あんなヤバイ奴らとこれからも一緒に過ごしたくねぇからだよ!」
この学園に入学してから、これほどまで他者に共感を覚えたことは無い。
最初は気長にやって行くかハハハ。と思っているけれど、周りを見て『俺もこいつらと同類?』と思った時の焦燥感たるや。
「え、江口さん。駄目だよ。大西君はボクが先に友達になったんだから……」
「ハーレムエンドがありかどうかでも決まりそうだな。もしも、そうなったときに予約しておく奴はいねェか~?」
と、受け付け中と言うことをアピールしたが全員からブーイング、シカト。あるいは、死ね、クソ虫。などと言うメッセージが返って来るだけだった。俺としても喜ばしい。
「マッタク。俺の厚意も受け取る気がねぇとは。もしも、本格的にラブコメが始まっても、このクラスの奴らだけはバイ学に放置してやるからな」
「正直、お前の性根で卒業できるか微妙な気がすんだよな」
江口が的外れなことを言っていた。こんな奴らに門戸を広げてやっている、俺の人間性を疑うとは。ハーレム云々については後で聞きに行くとして。
「そう言えば、委員長がいねぇな。まだ、帰って来ていないのか?」
「皆で船を拿捕しようって、煽動する人を返す訳にはいかないんじゃないかな?」
宮本の言う通りだ。この学園内で暴力を振るおうが、粗相をしようが治外法権で収められそうだが、流石に脱走を図ろうという考えは許されなかったのだろう。
「こういう学園だと、粗相をした生徒を閉じ込めておく地下室とか。あるいは『良い子』にする為の実験施設とかありそうだよな」
「怖いこと言うなよ……」
江口がドン引きしていた。俺に暴言を飛ばして来た委員長がどうなろうが知ったことではないが、何処に行ったかは興味がある。
「恋愛よりよっぽど面白そうじゃねぇか! 今から、俺達のジャンルはラブコメじゃなくて、学園ミステリーだな!」
2人共ドン引きしていた。だって、顔だけ美少女モンキー達と恋愛している位なら、この学園のことを調べている方が楽しいし? とか思っていると、仁王像みたいな担任が入って来るや一言。
「委員長は別のクラスに移動することになりました。皆さんも、悪いことをしてはいけませんよ」
クラス内が騒めく。何があったんだ。始末されたのか、処置されたのか。不安が渦巻く中、俺の心は浮き立っていた。ぜってー、なんかあると。
その後も抑揚のない声で連絡事項を言って、出席を取った後。担任は教室から出て行った。
――
「は? 委員長君が何処に行ったか。だって?」
「別のクラスに行っても俺達のことを忘れんなって。伝えてェんだ!」
昼休みのことである。俺は宮本、江口と一緒に校長へと直談判に行っていた。もちろん、校長も頷く訳がない。
「教えんぞ。どうせ、君のことだから煽るか、もしくは彼女が向かった場所に興味があるだけで、委員長のことを思ってじゃないだろう?」
「って、思うじゃん?」
校長の言うことは事実なのはさておき。これ位の反論は想定済だ。
故に、俺はクラスメイトから集めた署名を見せた。幸いにして、委員長はクラスメイト達の関心を集める位にはボス猿だったので集めるのは難しくなかった。
「『委員長を返せハゲ』『ぶっ殺してやる』。うーん、署名と言うか連盟脅迫状みたいだな……。まぁ、教えんが」
「まぁ、待てよ。シージャックを企てた委員長さんを俺が迎えに行く。すると『どうして、私を?』『お前がオモシレー女』だからだよ。みたいなラブが始まるかもしれねーじゃん?」
「いや、委員長がぶち込まれる原因作ったの、お前じゃね?」
江口が何か言っているが、俺はひとまず無視することにした。ただ、校長は首を横に振るばかりだった。
「喧しいわ! 現状、大西君からは恋愛の兆しもクソも見えんだろうが! そんな奴が恋愛を餌にするとは片腹痛いわ!」
「くそぉおおおお! 事実を言いやがって!!」
「そこは認めるのか……」
江口も小さく頷いていた。だけど、恋愛をしたいと思える人間がいないんだから仕方がない。ただ、校長から話を聞くには実績が必要な訳で。
「チッ。分かったよ。恋愛すれば良いんだろ。すりゃよぉ」
「とてもじゃないが、ラブコメに相応しい人間とは思えんな……」
「いえいえ、校長。こういう男子がね。逆にボクみたいなヒロインに絆されて変わっていくって言うパターンもありかもしれませんよ?」
ここに来て、急に宮本がアピールを始めた。校長も『そう言う路線なら……』と納得しそうになった所で、もう一つ。質問を思い出した。
「後、ハーレムみたいな場合でも全員卒業できるんですか?」
「……もちろんだよ! ハーレムもまた。結末の一つだからね!」
なんか引っ掛かる答えだな。こういう時にスルーすると後出しで面倒臭いことを言われそうなので、詰めておこう。
「本当にそう思っているんですか? 女子を攻略してトロフィーにしまくる不誠実な光景を校長はお望みなんですかぁ?」
「君から誠実さを問われるとは思わなかった。ただ、ハーレムを作ろうとするなら弊害は付き物だからね。それ等を乗り越えるのもまた、ラブコメだね」
パチンとウィンクしながら言われたので引っ叩きたくなったが、そんなことをしたら俺も早めに委員長と再会することになりそうなので、堪えた。
「とりあえず。恋愛しとけば満足してくれて、この学園の隠された秘密に迫れるって訳?」
「あんまりラブコメを実績解除みたいに言わんといて欲しいんだが……」
「しょうがねぇだろ。あんまり興味ねぇンだから」
「校長! ボクに任せて下さい!」
俺のやる気とは打って変わって、宮本はバッチリやる気だった。もはや、校長も俺には期待していないのか、彼女の方を見て微笑んでいた。
「宮本君は良い子だね。君が彼の心を開いてくれることを期待しているよ」
「はい!!」
もしや、この瞬間。主人公交代みたいなことが起きているんじゃないんだろうか? 俺の心はいつだってオープンだってのに。
とりあえず、実績を積めば学園の秘密を知れるかもしれない。と言う情報を掴んだので、俺達は校長室を後にした。
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「で、宮本はコイツの何処に惹かれたんだ? アタシはドン引きしているけれど」
と、教室に戻るや否や。江口が無礼なことを聞いていた。まるで、俺に何の魅力もないみたいに言いやがる。
「大西君の良い所はね。気を使わなくて良いんだ。だって、直ぐに暴力と暴言で返って来るから、とっても正直だなって」
「ウム。俺の魅力を理解しているとは。褒めて遣わす」
「なにこれ。DV?」
ちなみに、1ヶ月位一緒にいて初めて知った。この先、もしも彼女が俺以外の誰かと結ばれるとしても碌なことにならない気がする。
「しかしよォ~! 校長の言いなりになっての恋愛って腹立つよなァ~! ビジネス恋愛だ。この夏! 最高の恋が始まる! と、何ら変わりねぇよ!」
「全国の配給会社に喧嘩売ってんじゃん」
江口のシニカルなツッコミを他所に、実際に気に食わないというのは本音だ。恋愛なんて誰かに言われてやるモンじゃねぇ。
「大西君。その割にはハーレムみたいなのを作ろうとしていなかった?」
「いやぁ、このクラスの奴らが嫌いだから嫌がらせができたらなって」
「カス!!」
江口が中指を立てながら言った。話を聞かれていたのか、クラス中の女子からもブーイングを食らった。
散々、美少女モンキー達から酷い目に遭わされたんだから、俺もやり返そうとしたら、この始末。全く! 自分勝手な奴らだ!
「でも、恋しないと委員長さんが連れていかれた場所が分からないんでしょ? ビジネス恋愛でも良いからやっちゃおうよ。まずは、ボクから……」
「でもよぉ。宮本とはもう仲が良いから、これ以上詰めることは無いしなぁ」
「デュフフフ」
よし。宮本もコレで満足してくれたし、明日からは虱潰しに学園内を探索しようと思っていたら、ポンと肩を叩かれた。江口だ。
「じゃあさぁ。アタシとはいっぱい詰められるってことだよな。だって、知り合って間もないんだからさ」
「えぇ~~?」
墓穴を掘るという奴だ。先程まで、あんなに嫌がっていたのに、ここに来て急に距離を詰めて来るとは思っていなかった。
「もしかして、言われてからやる恋愛は嫌だって思っている? それってさ。饅頭怖い。みたいに、結局は言うことに従っているのと変わりないよな?」
どうやら、こういう遣り取りは俺よりも遥かに慣れているらしくグイグイ詰めて来られた。そう言われたら、俺も黙っていられない。
「しゃーねぇなぁ。お前に付き合ってやるよ」
「えぇ!?」
「じゃあ、放課後付き合ってね」
宮本が慌てふためいているが、江口はしてやったり。と言った具合だ。
上手く乗せられてしまったが、こんな学園で自分から絡んで来る奴の方が珍しいし、宮本以外の奴とも話してみたいという気持ちはあったので、彼女の用事に付き合うことにした。