「こんな治安が終わっている学園で! 女子を殴る俺にラブコメの主人公を!?」 作:明るく楽しく暴力系ヒロインを!
クラス内は騒めいていた。昨日の騒ぎの件もあるだろうが、恐らく話題にされているのは……。
「大西、おはよ。その、似合うかな?」
教室に入って来た江口の髪型が変わっていたこと。
そして、それを俺に聞いて来たこと。バイオレンス学園らしからぬアオハルの雰囲気にクラスメイト達が戦慄し、俺も言葉を選びあぐねていると。
「すっごい似合っている! 可愛いよ!」
と、俺の代わりに宮本が答えていた。江口が若干ムッとしていたので、俺も直ぐに返事をした。
「可愛いー!!」
「えへへ」
ドキッとした。こんな感情を覚えたのは産まれて初めてだ。とか、思っているとクラス内の女子達が立ち上がり、俺を教室の隅まで連行して行った。
「お前、調子乗んなよ。コレで私達まで落とせると思うんじゃねーぞ」
「あ? 自惚れんなや。お前達の認識はチンパンのままだよ」
クソチン〇野郎! のシャウトを皮切りに朝から教室で大乱闘が始まったが、そこは男としての身体能力が物を言う所。囲んで来た女子達を殴り倒し、見事に勝利を収めてから席に戻った。ちなみに宮本も江口もドン引きしている。
「昨日はアタシを止めていたのに……」
「俺は良いンだよ。何せ、振るい慣れているからな。手加減もし放題だ」
本当に怖い暴力と言うのは手加減をしないタイプの物で、先日の江口の物はまさしくそうだ。
「そもそも、人を殴るのを止めようよ」
「でもなぁ。しっかり、力関係を示しておかないと嘗められるからなぁ」
宮本がお花畑みたいなことを言うが、こんな動物園みたいな学園で物を言うのは力だ。当人同士の問題なら殴り合いでスッと解決することも多い。
「そもそも、卒業云々の話をするなら江口とでいいだろ。ハーレム云々とか言ったけれど、外に連れ出してやりたい奴が他に居ないし」
「ちょっと待って!? なんで、ボクのことを置いて行こうとしているの!?」
「ごめん。忘れていた」
江口がニヤニヤしている傍ら、宮本から迫真の抗議を寄せられた。素で入れるのを忘れていた。
クラスメイト達からは相変わらず中指を突き立てられていたが、コイツらは外の世界に帰りたくないんだろうか? いや、こんな所に連れて来られる位だから外の世界にも居場所は無いんだろうなと思った。
――
さて、俺に油断があったかと言われたら頷くしかない。江口が可愛いかったことか。あるいは俺が男性だから女子には負けないと思っていたからか。もしくは、俺がいるのはラブコメだと思っていたからか。
「貴様が『大西 弘樹』だな!!」
「お、おぅ」
購買部へと行こうとした俺を阻んだのは同じく類人猿的な。いや、もうゴリラと言っても良い位にゴツイ女子だった。体内でたんぱく質とか生成できそう。
制服も改造されて臍出しになっているのに、顔と声だけはバイオレンス学園のデフォルトと言わんばかりに可愛い。いや、駄目だ。髪の毛が辮髪だから本当に戦闘特化フォルムって感じだ。
「我が名は『炎王院 焔(えんおういん ほむら)』。聞けば、貴様と結ばれたら学園から出ていけるそうだな」
「そういうことになっているな。もしかして、彼女候補?」
無くはない。一応、校長から放送はして貰ったので、他所のクラスから来ることは考えていたが、多分そう言う雰囲気じゃない。
「いいや。貴様を力づくで打ち負かし、我の物にする。恋愛などに現を抜かす軟派な男に惚れる要素があるだろうか。いや、ない」
「ぼ、暴力はいけない……」
なんで、この学園に来たか説明不要過ぎる。どうして、こんなラオウみたいな思考を持った奴が女子として生まれているんだろうか?
仮に生まれたとしても、ここまでデカくなる必要があっただろうか。後、俺がやっているのはラブコメだったハズじゃ。
「構えろ!!」
「チィッ! 力で思い通りにできると思うんじゃねぇ!!」
いやいや、実はコレでも見掛け倒しかもしれないし。いざ、やってみれば俺が逆転するルートがワンチャンスあるかもしれない。レッツチャレンジ!
~~
「そんな風に考えていた時期がありました」
「何やっとるんだね……」
結局、炎王院にボコられてしまったが心は明け渡さなかった。
ただ、今後も力尽くで拉致られる展開はゴメンだったので、こうして校長に泣きつきに来た訳だ。
「このままだと、俺と恋愛するよりも『駄目! 感じちゃう!』形式で落した方が早くなるかもしれねぇじゃーか! 校長はD〇SiteやFAN〇A形式が好ましいって言うんですか!!」
「君、未成年だよね。何で知っているの?」
名前は知っているだけで買ったことは無い。クレジットカードは使わせて貰えないからな。そんなことはどうでも良くて、大事なのは今後のことだ。
「校長。ここは学園の力とか治安維持部隊なのを総動員して炎王院を始めとした『真・暴力系ヒロイン』を連行して、地下施設で洗脳してやろうぜ!」
「テキトー抜かすな! 第一、教育機関でそんなことするか!」
「これだけ暴力が蔓延ってんのに、今更教育機関面するんじゃねぇ!!」
これはきっと誰もが思っていることだ。結局、委員長も何処に連れて行かれたんだか。と思いたいが、まずは身の安全からだ。
「だがね。君も結構暴力を振るっているんだから、敵わない相手だから取り締まれ。とか、ダサすぎやしないか?」
「そもそも! 暴力が横行する環境を放置するんじゃねぇ!!」
「マァマァ。暴力と言う形で放出されている状態が一番健全なのだから。こう言うのって押さえつけると、イジメとかの形で噴出されるから」
先日の江口の一件もあるから一概には否定できない。忘れがちだが、ここはやはり隔離施設なのだ。
「分かった。百歩譲って、暴力で従わせて好きにさせるとか卒業させろとか。そう言うのはノーカウントにしてくれよ。このまま逆レ学園になっちまう」
「ウム。正直に言うと、そんなラオウ式の人気がいるとは思わなんだ。後、言ったからには君もやるなよ?」
「流石にレ〇プみたいなことをするのは俺でもちょっと……」
直ぐにマイクを取り出して、今の件を放送してくれた。
幾らモンキーだとしても番を選ぶ課程くらいは尊重する奴らだと思っていたが、認識が甘すぎた。コレで、明日からは普通の恋愛になるハズだ。
「(早く、江口の所に帰るか)」
教室に戻って、さっさと慰めて貰おうと思いながら、俺は校長の放送を聞き届けていた。