剛腕突破!ナナメ   作:ひのきのぼう

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一殴り目「鬼姫降臨」

 

 

 

 ・・・ここは、変わらないな。

 私は今、住処の穴蔵にいる。昔は両親と一緒に暮らしていたがその両親も死んじまった。

 いい人達だった、誰もがそう断言出来るぐらい両親は善人だったね。

 年老いた夫婦だったが積極的に誰かの手伝いをしていた。水を汲んだり、穴蔵の壁を掘った時に出た土を運んだり、家畜の世話をしたりね。

 私の産まれる前から二人はそんな生活をしていたらしいよ。その所為か自分達の事は意外と適当だったみたいだけどね。

 

 

 

 ・・・その二人ももう居ない。

 何年か前の大きな地震。あれによって起こされた穴蔵の壁の崩壊に巻き込まれ・・・土砂に流されていっちまった。

 私はそのとき、運良く流されずにすんだ。昼寝をするために穴蔵に居たのが幸をそうしたらしい。

 下の土砂を見た時は絶望したね。床が全て大量の土砂で見えなくなっていたのだから。

 ・・・その時のことは、よく覚えていない。ただ必死に土を掘っていたよ。ドリルもシャベルも使わずに素手で、手が傷つくのも無視していた。

 生まれつき、異常に力があったのがその行為を後押しした。

 

 

 

 ・・・だけど、見つかったのは物言わぬ亡骸だけだった。

 

 

 

 その後は、気づいたら住処で寝ていた。思いっきり動いていたから疲れて身体が限界だったのかもしれない。

 

 

 

 ・・・・・・『寂しい』

 

 

 

 これが私が起きた時の一番最初で最後の両親への、両親の死への感想だったよ。

 哀しいでも、泣きたいでも、喪失感がある訳でもなかったんだ。

 

 

 

 ただ、『寂しい』。私以外この住処に居なくなってしまった。それがとても『寂しい』としか感じなかった。そんな自分が気持ち悪く思えて、嫌になっていたんだ。

 しばらくはその事を考えこんでいた。一、二時間程度だけど、ね・・・。

 

 

 

 ・・・その後は下に戻ったね。

 いつも両親のやっていた人助けをしようとしていた。

 でも、下は本当に地獄だった。

 あちこちに泣いている人がいた。悲しんでいた、茫然としていた、泣き叫んでいた、苦しんでいた。

 

 

 

 その時だったかな、あいつに会ったのは。

 たまたま近くに、うずくまってる子がいた。

 その時思わず手を伸ばして、気づいたんだ。

 その子は静かに震え、泣いていた。誰も周りにいないのに誰にも聞かれないように。誰からも攻められてはいないのに何かから逃げるように。

 何故?どうして?その頃は、ただ泣いている訳が聞きたかった。

 「どうしたんだい?大丈夫かい?」

 思わずだったんだよ、その子に声をかけたのは。

 何があったのか聞きたくなったんだよ。

 

 

 

 しゃがんで肩をたたいた。そしたら「キャーーッ!」「どきやがれー!」さ・・・またかい、あのバカは。

 昔を思い出していたら、外から大声が聞こえてきた。

 またバカが馬鹿やってるらしいね、全く。

 他の住処より高いところに私の住処がある。

 住処から出てすぐの橋の上に行き、そこから下を覗き込んだ。

 

 

 

 私が見たのは、家畜のブタモグラの群れに乗って上へと登ってくる、悪戯集団だった。

 待っていると、すぐにそいつらは来た。こっちを見て驚いてやがるね。

 「げぇ!?ナナメ!?」

 「な、ナナメ!?危ないよ!」

 げぇって・・・その言い方は無いだろう、こんなか弱い女の子に。

 

 

 

 青い髪の長身でこっちを見てビビってる男がこのジーハ村の悪戯集団『グレン団』のリーダーのカミナ。こういう騒動をよく起こしている常習犯。

 『地上』があると信じてるが、だいたいの人からは信じられてはいない。私も行ってはみたいから否定はしないんだけど、やり方がいつも村の人に迷惑だから止めているね。

 今は面白いぐらい顔を青くしてるねぇ。

 

 

 

 黒髪にゴーグルを着けた小さい男の子が穴掘りの名人のシモン。よくカミナに巻き込まれて騒動の中心にいることが多い。

 カミナに気に入られてるのもあるが、ドリルの扱いがうまいのもあり天井に穴を空けるためにとよく連れて行かれる。

 村を拡張したい村長のお気に入りということもあり、僻みを込めてあだ名に『穴掘りシモン』と呼ばれている。・・・ピッタリだから僻みになってないと思うんだけどねぇ?本人も穴を掘るのが好きだし。こっちを心配しているみたいだね、今回も巻き込まれただけだろうし助けてやらないとね。

 

 

 

 「さて、と。・・・覚悟は出来てるね、カミナ?」

 「・・・み、見逃がしてくれ!」

 おお、走るブタモグラの上で土下座とは器用な。

 「まあ、見逃す訳無いけどね。」

 「やっぱりかチクショウ!」

 人生そんなに甘くないってね。

 喚いてるバカは無視無視。ブタモグラ達を正面に据え、腰を落として右拳を引いて、息を吸い込みタイミングを計る。

 そして、思いっきり踏み込んで・・・飛び込む!

 一瞬で迫った事に慌ててるバカの顔に・・・

 まっすぐ行って、右ストレートでぶっ飛ばす!

 「歯ぁ食いしばれバカカミナ!」

 「ッギャアアァァァ・・・!!」

 ヒュウゥゥゥゥ・・・ボチャーン!

 バカは錐揉み回転をしながら下の貯水池に向かって落ちていった。

 そしてシモンの首根っこを掴みブタモグラから飛び降りる。

 乗ってた奴らが降りると、次第にブタモグラ達は大人しくなっていったね。

 

 

 

 「よっと・・・シモン、大丈夫かい?」

 若干震えてるよ・・・ブタモグラの上は怖かったんかね?

 「う、うん・・・大丈夫だよ、ナナメ。」

 (い、今こぶしがヒュンッて・・・ヒュンッて・・・。)

 良かった、大丈夫そうだね。

 あのバカも手加減はしといたし、一応大丈夫だろう。けど・・・

 「シモ~ン、姉ちゃんでいいっていつも言ってるだろう?ほら、遠慮なんていらないよ!」

 小脇に抱えていたシモンを抱きしめて言う。いっつも遠慮して呼んでくんないんだから。

 もうちょい甘えてくれてもいいと思うんだけどねぇ?

 「ぅえ!?そ、そんなこと言ったって、恥ずかしいよ!」

 おやおや、まだ呼んでくれないのかい。早く呼んでくれないのかね?

 「んもう・・・ま、今はいいや。まずは下のバカを回収して来ないとね。」

 今回自分がやったことを言い聞かせて、もう一発ぶん殴ってから説教かね?

 (・・・カミナ、頑張れ。)

 シモンは静かに無事を祈っていた。

 

 

 

 

 

「・・・で、この胸にいる小さなブタモグラはなんだい?」

「ブーブッ!」

「こ、こら!ブータ!」




ナナメ・ジーハ
 見た目は東方projctの星熊勇義を黒髪にして角を無くした姿
 姉御肌であり、カミナ達のストッパー役
 人並み外れた筋力があり、それを頼りにされることもある
 今の目標はシモンに姉ちゃんと呼ばせること
※物語更新事に随時更新
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