やっぱり病気って辛いですね。
シモンを担ぎながら下に降りると、貯水池の真ん中で上半身が沈み足がVの字になっているカミナを見つけた。
どうやら殴り飛ばした後は真っ逆さまに落ちたらしい。ピクピク震えてるから生きてはいるようだ。
「・・・カミナ、生きてるかな?」
「手加減はしたから大丈夫だよ(たぶん)。拾ってくるから待ってな。」
担いでいたシモンを下ろし、貯水池の真ん中まで歩いていく。足は濡れるけど、まあ仕方ない。やりすぎた気もしなくもないしちょっと反省。
カミナを片手で引っこ抜いて意識の有無を確認する。
「おーいカミナ。起きろー、起きなきゃビンタだよー?」
「・・・・・・・・・う、うるせぇ。頭に響く。」
割と平気みたいだ。少し休ませてから叱るとしようかね。
カミナを肩に担いでシモンの居るところまで向かう。歩き始めるとカミナが話しかけてきた。
「・・・・・・今日は大丈夫だと、思ってたんだがな。今日はお前の姿見なかったし。」
「残念。今日は家に居たんだよ。」
どうやら私が地上に行けるか行けないかの目安らしい。
カミナが地上へ行くのを邪魔したのは今回が初めてではない。過去に3ケタはカミナが地上に行こうとしているのを止めてるんだ。私自身も地上に興味がある、でも天井を開けることは掟とか以前に村の皆を混乱させることになるかもしれないという懸念がある。
カミナが見たというのなら、地上はあるのだろう。そんな嘘を言う奴じゃないし。
心配なのはその地上に何があるかが問題なんだ。地上以外何も無いなんてことはないだろう。
だから昔に「少しだけ、私達だけで覗こう。」と言ったんだ。
でも、カミナはそれを断った。
曰わく、「親父の言っていたことが本当だったと、地上はあったと村の全員に知らしめてえんだ!」だと。
そこの考えから私とカミナは対立している。といっても、せいぜいそのことで言い合うぐらいでなんだかんだ仲のいい友達だと思ってるけどね。
「・・・あーあ、次どうすっかな。流石にネタが無くなってきたぜ。」
「それを私の目の前で言うか。まあ、大人しくしてればいいんじゃないかい?」
「そりゃ断る。」
即答かい。頑固だねぇ、相変わらず。
喋りながら歩いていると、シモンのところに着いた。
・・・・・・隣に面倒くさいのがいるけどね。
3人の男の子(恐らくグレン団のメンバー)を捕まえた村長だ。しかも相当お怒りのご様子。まあ被害甚大みたいだし当然か。
家畜の解放、それによる仕事の遅れ、追撃の村民の不満を一身に受ける。
これだけ受けて怒らないことはまず無いね。まあ、あの村長は口で言っても実行はしないだろうし大丈夫だろ。ヘタレとも言うけど。
カミナを降ろすとその手首を縄で縛り、説教が始まった。
「カミナ!またお前か!何度同じことをすれば懲りるんだお前は!」
「うるせえ村長!頭に響く!」
「ワシはお前のやったことが頭にきてるわ!いい加減に地上なんて無いものを目指すのはやめて、村拡張の為の穴掘りを手伝え!」
いつも通りの言い合いが始まった。カミナが失敗して、村長が来て言い合いが始まり、カミナが牢屋で反省させられて、またカミナが地上に出ようとする。
「地上はある!俺は親父と見たんだ!」
「じゃあなんでお前はここにいる?地上に行かずに。」
「それは・・・・・・!」
「そこまでにしときな村長。カミナにそれ以上言っても無駄なのはわかってんだろ?」
そして言い過ぎないうちに私が止める。こうしないと止まらないからね。
「ナナメ・・・・・・。」
「・・・・・・ナナメ、お前もお前だ。こんなことになる前に、止めることも出来たろう?」
「冗談だろう?私にはそこまでカミナの行動は把握出来ないよ。」
最近はパターン化してきたが、カミナは事を起こすタイミングがズレるからあんまりわからないしね。
「・・・・・・まあいい。お前ら、こんなことを続けるなら今晩は飯抜きだ!」
「「「ごめんなさい!」」」
「お前ら!?」
・・・カミナ以外のグレン団メンバーは謝ったみたいだ。根性無いねぇ。それを聞いた村長は付けていた手錠を外していく。
形だけはカミナに謝ってはいるが、カミナはそれを歯牙にもかけない。
「シモン。お前は巻き込まれただけだろう?お前には、村の拡張という大事な仕事をやってもらわんとな。」
「ぇ・・・・・・で、でも。」
シモンはよく巻き込まれるし、穴掘りの腕もあり村長からは結構甘やかされている。今回もそれを理由にお咎めは無いらしい。
けど、シモンはどうやらカミナが気になるみたいだ。一応信頼はしてるみたいだからね。
カミナはそんなシモンの背中を押す。
「行けよ、シモン。俺のことは気にすんじゃねえ。」
「・・・・・・うん。」
そんなやり取りを見ていると、少し足元に違和感を感じた。
それはここ最近多くなって来た、そして昔からよく味わっていたものだ。
「・・・・・・っ!地震が来るよ!!」
直後、大きな揺れが村を襲った。
こちらの様子をうかがっていた村民達もすぐさま近くの穴に避難する。
私達の上からも土埃が降ってくる。今回はなかなか大きい揺れだ。
その揺れの中、動かない馬鹿が居た。
「・・・カミナ!シモン!さっさと逃げな!」
「カミナ!速く!」
「逃げねぇ・・・俺は逃げねぇ!」
仁王立ちをし、全く動く気は無いようだ。
ああ、もう!何を意固地になってんだか!
無理やり引っ張って行くかを考えていたとき、悲痛な叫びが私の動きを止めた。
「逃げなきゃ、みんな潰されて死んじゃうんだぞ!!」
シモンの声だ。いつもの弱気な彼からは想像が出来ないくらい大きく、とても悲しい声だった。
「!・・・そうだったな、お前は・・・。」
カミナはシモンを守るようにその身体を支えた。
シモンの両親は亡くなっている。原因は地震。目の前でそれを見たらしい。私の両親もそのときに亡くなっている。カミナの父親はその時に行方不明になった。
私達は、ある意味ではこの地震でつながっているのかもしれない。
「カミナ、シモンは・・・・・・。」
「大丈夫だ。シモン、安心しな。もうおさまる。」
そうカミナが言ったときは、既に揺れは収まりつつあった。
完全に止まると、カミナは叫んだ。
「お前ら!地震に怯えながら暮らしていて楽しいのか!?地上に、天井はねえんだぞ!!」
・・・それが今の私達だ。いつ潰れるかもわからない、明日突然死ぬかもしれない。その原因と隣り合わせに生きる。それをほとんどの人が受け入れてる。
そういう、村【世界】を・・・・・・
「・・・・・・カミナ、シモンが苦しそうなんだけど。」
「・・・いっけね。強く抱きすぎた。」
(・・・い、息が・・・・・・)