今年も投稿していきます。
カミナが牢屋に入れられたあとのこと。
シモンはまた村拡張の横穴掘りに村長に連れて行かれた。(ついていこうとしたら「だ、大丈夫だから!」と言われた。残念だね。)
私は貯水池から(大きい水瓶で)水を汲み、家まで運んだ。思っていたより早く暇になったので今日の地震で少し崩れた村の壁を治し、家に戻った。
「ふ~、お仕事しゅーりょー!っと。」
脚を投げ出すようにポスンと椅子に座る。実際はそこまで疲れてないけど、こうするとシモンが労ってくれるから癖になっちまったね。・・・今はシモンいないけどね。
くそう、やっぱりシモンについていくんだった。そして労ってもらえば良かった!
そのときのことを悔やみ、椅子にボーッと座っていると下からカンッ!カンッ!と軽い音が響く。
村長が持っている野太刀の音のようだ。知らせがある時はいつもこれを使うんだよね。
・・・結構強く打ちつけてるのに、なんで鞘にヒビが入らないんだろうね?
『消灯~消灯~、明かりを落とせ。眠れない者もさっさと寝ろ!夜の時間だ、貴重な電気を無駄遣いするな!』
下から村長の声が村全体に響く。村長の部屋にしか無い時計が夜の時間だと示したようだね。
寝床に入り込み、よく眠れるように考えごとをする。
これは習慣で、その日の出来事で気になったことをまとめることにしているんだよ。
今回は村長の言っていたことについてだ。
『地上』・・・天井の上にあると云われているもの。
村では無いものとして扱われているもので、言葉だけが存在している。
カミナの親父さんはそこに行ったらしいが、真相はわからない。
そこには壁も天井もない、果てしない『空』がある・・・らしい。
今日はその『地上』について考えよう。
私はあってもおかしくはないと考えてる。その根拠は『時間』だ。
村長の時計だけがこの村で時間を把握できる物で、それ以外でわかる物は無い。そしてその時計を見て時間を知らせるのは村長の役目の1つらしい。
ここで、私は引っかかることがあった。
(なら時計ができる前、時計がなかった時はどうしていたんだ?)
時計は昔の人が造った物だ。その恩威を受けて私たちは暮らしている。
けどその恩威が無かった時は?
少なくとも何も無かったとは思えない。それなら時計は造ることができない、できたとしてもかなり難しいと思うから。
なら他に、この村以外のモノで時間がわかる物があった筈。
それは『地上』にあると思う。
あの世から行って帰ってくる以外で、他に確認できる場所はないからね。
一通り考えた所で、身体を深く布団に沈める。
・・・・・・考え終わって、いつも思うことだけど・・・
「・・・こういう考えって、かなりアブナいんだろうね。」
ポツリと、誰もいない部屋で呟いた。
この癖は昔から、何か疑問を持った時にやっていることなんだよね。
一回、結論が出なかったことがあって両親に聞いてみたことがある。
そのときは、難しい顔をして二人一緒に考えこんじゃったんだよね。若干熱が出ちゃって、申し訳なくて謝ってたなぁ。
そのときの疑問は、「何で下に物は落ちるの?」だったっけね。未だにわかんないよ。
こんなことを考えてて、我ながら良く飽きないもんだねえ。そんなこと思ってても止められないんだけどね。
(・・・確かめたい。)
不意に、頭にこんな言葉がよぎる。
(もっと色んなものが知りたい。)
思考は止まらない。
(自分の目で、耳で、肌で、手で、脚で。)
(色んなこと、もっと沢山のことを確かめたい!)
身体が高揚し、どんどん熱くなってくる。このまま外に飛び出して、天井をぶち破りたくなってしまう。その衝動を解き放ちたくなる。
「・・・・・・でも、できない。」
ふっ、と。
突然、その高揚感は無くなる。
この一連の思考を止めたのは、天井を破ったあとの、この村の人々の事を考えた時のこと。
それをすれば迷惑が掛かるかもしれない。
地上にある何かが村を危険に晒すかもしれない。
もしかしたら、地上なんて無くって土砂が落ちてくるかもしれない。
踏みとどまる。そうしなければ何が起こるかわからないから。
・・・いつものことだね。あと一歩で止まるのは。
「・・・はあ。喉かわいた。」
今日は考えすぎたかな?ちょっと暑い。
水瓶の中にある水をコップですくい、窓から暗闇で見えない筈の天井を覗く。
だが、予想に反してうっすら天井が見えていた。
「おや?明かりが点いてる?・・・下かな?」
村の底を覗き込むと、照明が誰かを照らしていた。
青い髪の長身と黒い髪にゴーグルが見えるね。
もしかしなくてもカミナとシモンだろうね。脱走かな?
また問題を起こしたであろう2人のことを考え、上を見上げ溜め息を漏らす。
(多分、一生の疑問になるだろうね・・・。)
1つ前の『地上』についてのことを考えながらコップの水を一気に飲み干そうとする。
そのとき、
(・・・ん?揺れ、てる?)
コップの中の水面が波立っている。夜にはあまり無かった地震に顔をしかめつつ、避難を皆に促そうとした。その瞬間、
ゴオオォォォオオオオオン!!!!
天井が、割れた。そしてそこからは、見たことの無い光が漏れ出している。
電気の光ではない。火のような暖かさを感じる。
しかし、その衝撃が薄れるようなものが一緒に上から落ちてきた。
それは見たことのないモノだ。
しかし似ている物がある
二つの目。少しの高さしかない鼻。大きな口。
それは人とはまるで違うが、間違いなく・・・
巨大な、『顔』だった。
ドオオオオォォォン・・・!パシャッ!
『顔』は橋を砕きつつ、下に落ちた。よく見ると手足があるようだ。
下は土煙でよく見えない。あの顔はそうとう重いようだ。
『顔』が底に落ちたあと、自身の手にある『空になったコップ』を見つめ、次に『濡れた上着』を見る。
「・・・ちょおっと、頭にきたね。うん、一生の悩みになる筈のものが消えたのは関係ない。少し服のお礼に行くだけさね?うん、そうだ。それでいいに決まってる。」
一生の覚悟、一瞬で消えたなあ・・・・・・ちくしょう。