剛腕突破!ナナメ   作:ひのきのぼう

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四殴り目「平穏終結」

 

 

 

 

 若干濡れた上着を着たままハシゴを使い下へと向かう。着替える時間がもったいないし、あの『顔』の事がかなりの不安要素だからね。

 見たことも無い形をしていて、人の何倍もある大きさでかなり堅そうな見た目をしていた。あんなのが暴れたりしたら・・・・・・

 最悪、村が土砂で埋もれちまうだろうね。それだけはなんとしてでも防がないと。

 

 ドオォン・・・

 

 グラッと地面が揺れる。先程よりは小さいから、あの『顔』が何かしたのかもしれない。

 私は下へと急ぐ。橋が崩れているので家の中のハシゴや通路を使い。

 ・・・飛び降りた方が早かったかもしれない。でも家はかなり高いとこにあるから、ちょっと危ないかも?

 そんな事を考えつつも降りる速度は最高を維持する。

 

「オウオウオウ!!」

 

 あの馬鹿・・・!また何かやらかしたか!

 外からカミナの声が聞こえた。しかも喧嘩腰の口調で。

 一旦通路を抜け、他の家にお邪魔する。そこから外が見える場所を見つけ、急いで底を覗きこんだ。

 あの『顔』は既に起き上がっている。間違っても友好的な雰囲気ではなさそうだね。

 カミナのヤツは・・・見つけた!『顔』の目の前で・・・啖呵きってやがる!?

 

『ああ?なんだオメェ?』

「喋った!?」

 

 っ!?今の声は、シモンか!カミナの後ろに居たのかい!

 まずいね、あの『顔』は人より数倍大きい。人なんて簡単に潰してしまえる筈・・・。

 ここから下に行くまでに間に合うだろうか?かなり怪しいところだ。まだ若干だけど高すぎるか?

 あと少し下に…!

 そう考え急ぎ通路へと戻る、寸前に声が聞こえた。

 

「ジーハ村に、悪名轟くグレン団!」

 

 大きな声が響く。私の足が止まる。また底を見ると、無謀にも彼は正面の脅威に向かって吠えていた。

 

「不撓不屈の、あ!鬼リーダーァ!」

 

 それは彼の、カミナの誇りを表す名乗り上げ。どんな時でも己を誇示する為に彼が考えたこと。

 

「カミナ様たぁ、俺のことだ!」

 

 村長の持っていた野太刀を抜き、堂々とそれを向ける。

 その大きな背中を、しかし遠い背中を見つめるシモン。

 

 私の『居場所』。

 あの家族と過ごした土塊の家ではなく、私の居たい場所。あの2人を笑っていられる場所。

 その2人が今、死の危険に晒されている。あの『顔』によって。

 

「・・・させない。」

 

 そんなことは、私の前では絶対にさせる訳にはいかない。あの2人は私の、護る場所だ。

 まだ若干高いけど、悠長にハシゴで降りてたんじゃあ間に合わない。思いっきり跳ぶか。あとは・・・まあ、そのときかな。

 上体を下げ腰を落とし、跳躍の構えを取る。息を大きく吸い込み覚悟を決める。

 せーの・・・・・・

 

 

 パキュウン! パキュウン!

 

 

 いざ行かんと力を込めた時、上から何かの音がした。何事かと思い跳ぶ体制を解き上を確認する。

 女の子だ。上からロープを使い、女の子が降りてきた。上と言っても穴蔵の中じゃない。

 天井の更に上、『地上』からだ。

 やってきたのは赤い髪を後ろで縛った女の子だった。その子は奇妙な物(恐らく音の正体)を持っている。彼女はロープを使い下まで降りて行き、カミナ達のところに降り立った。

 『顔』と敵対してるのかな。さっきの音は攻撃だったらしい。あの大きさのモノを倒せるぐらいの物なのだろうか?

 

 さて、と。出遅れたけど、良いものが出来た。

 彼女の残してったロープ。ありがたく使わして貰おうかな。

 私はそのロープに飛びつき、眼下の『顔』へと狙いを定めた。

 

 

 

_________________________

 

 

 

 場面は代わり、穴の底。先程降りてきたばかりの少女が2人の少年に避難を促していた。

 

「アナタ達!早く逃げなさい!」

「へっ!やだね!これは俺達に売られた喧嘩だ!」

 

 しかしカミナはこれを断った。自分達の村で好き勝手されるのを、彼は良しと出来ないのだ。

 

「馬鹿なの?死んじゃうわよ!?」

 

 少女は刀で巨大な敵に挑もうとしてる無謀なカミナを見た。自分一人では銃があったとしても倒せるかどうか怪しい『ガンメン』。

 その言葉はカミナ達の身を案じ発していたが、カミナはこれを一笑した。

 

「これは俺達の村の喧嘩だ!アンタに任せっぱなしてぇのも俺は許せねえ!それにアンタは知らないだろうが・・・」

 

 カミナは『ガンメン』が大きく棍棒を振りかぶっているのを見た。これが当たればカミナ達は肉塊へとなるだろう攻撃。

 少女がその視線の先を見て気づき、すぐに少年2人を抱え避けようとした。

 その動きを無視し、カミナは最後まで言い放った。

 

「ここにはな、俺達の仲間の『鬼』がいるんだよ。」

 

 

 

 ゴオオォォォオン!!

 

 

 

『ッギャアアアア!?』

 

 少女は聞いた。自分の背後から聞こえた、堅いモノ同士がぶつかり合う音と、中に入った獣人の悲鳴を。

 岩にでもぶつかったか?と少女は『ガンメン』の姿を見た。

 ・・・目を疑った。これが本当に現実なのかと。自分を、自分の村の人々を苦しめる大きな『ガンメン』が。

 先程まで人間に死を振りかざそうとしていたガンメンが。

 

 眉間の辺りを、1人の少女の右足によって踏み潰されているのを見て。

 

「・・・・・・え?」

 

 少女の漏らした驚愕の声を無視しし、怖がっていたシモンがその姿を見て喜色の声を上げる。

 

「来てくれた・・・!」

 

 それは喜びだけでは無く、安堵も混じっていた。もう彼女が来たなら大丈夫と言わんばかりだ。

 カミナは不適な笑みを浮かべ、遅れてきた幼なじみの乱入者へと嫌みを言う。

 

「遅かったな!寝坊かよナナメ!」

「私のウチはかなり高いとこにあるんだ!それに、アンタじゃないから寝坊なんてしないよ!」

 

 落ちてきたナナメは『ガンメン』の上からゆらりと立ち上がり言い返した。

 彼女を知らない少女は驚いた。自分と同い年くらいの少女が『ガンメン』に足でダメージを与えたことを。

 

「さあ、喧嘩を始めるよ!」

 

 

 

 

_________________________

 

 

 

 これがグレン団の、彼らの、そして1人の少女の物語の始まりだった。

 少女は走りだした。自分の信じた道に向かって。他の道を切り捨てて。

 

 

 それが正しい道かどうかも解らずに・・・・・・

 

 

 

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