・人によって好みを選ぶような作品になると思われ
・タグにもある通り微微微ー微・微ー微微クロスオーバー要素を含みます。(セリフや行動)キャラ等には問題ないのでヘーキヘーキ。
・拙者はにわか乙
・圧倒的自己満
『あ、いたいた』
私がその声を初めて耳にしたのは、まだ三歳にも満たない頃の話である。
倒壊した家屋の瓦礫を掻き分けて、真っ暗で何も見えなかった視界が段々と鮮明になっていく中でも分かる、この凄惨な光景の広がる場にはそぐわないほど快闊な声。
その声が段々とこちらへ近づいてくるにつれて、瓦礫に埋もれて身動きひとつとれない私は緊張でその身を強ばらせた。
そして。
『やーっと見つけたよー。
__君、怪我は?』
悲しいかな、それがまるで運命の巡り合わせだとでも言うように、俗に言う
その時は、そう思っていた。
この世界の均衡が崩れ出したのは、なんといっても【超常】と呼ばれる現象が広まってからだった。
初めは中国の軽慶市で発光児が生まれた、というようなニュースから。それは次第に火を噴く、空を飛ぶ、と多様化していき、
次第にその超常は個性として形を変え、現代の超人社会に浸透していく。
すると世界は個性をもって悪用する人物__ヴィランと、それらを阻止する人物__ヒーローの両者が現れるようになった。
警察も従来のように機能しなくなってからは、「
この世界では、ヒーローが絶対的な正義で、ヴィランが絶対的な悪。
それこそが超常黎明期を経てヒーロー飽和時代となった現代社会の絶対的なルールである。
『ねね、ところで君名前は?』
だと言うのに、目の前の人物は何なのだろう。
私がよく知るヒーロー像とは乖離しているほどにおどけた口調で、表情も一切分からない、宇宙飛行士を彷彿とさせるフルフェイスのヘルメット。声も機械音に改造されて、まず男なのか女なのかすら見分けがつかない。それが怖い印象を与えると思ったのか、顔の部分には常ににっこりマークが浮かんでいる。
「ち、……」
『ち?』
「ちょっと、言えない」
『あれまよく出来た子ね。お母さんから知らない人に名前教えるなって?』
身体が震えて上手く話せないまま何とか言葉を紡ぐと、目の前のソイツは愉快そうに笑って答えた。
よく平和の象徴は常に笑顔だというのを聞いたことがあるが、そんなの私からしてみれば狂気である。瓦礫の中から私を救い出したそいつは、沢山の血を浴びながら、肉の焦げた異臭と破壊された家の数々を前に、平然とそれをやっているのだから。
それに、私のお母さんは。
「お、おか」
『もういないよ。犯人も逃げおおせたみたいだね、君は運良く見つからなかっただけ』
後ろから聞こえる声さえ気にも留めず、私は短い手足を降って異臭のする方に向かって走る。そこで目にしたのは、酷い血溜まりの中央に残った肉塊だけ。母と呼べる存在は、跡形もなくなっていた。
『うーん、残念だね』
だらりとその場に脱力した私の後ろに立って、ヒーローらしからぬ態度でソイツは言った。命を軽く見ている、同じ人間だとは思えない発言に私はとうとう堪忍袋の緒が切れた。
自分の背丈の何倍もある相手へ、掴みかかろうとしたその時。
「ぇ」
何故か私の身体はソイツを通り越して、反対側の地面へと激突していた。
ずざざ、と土が服につき、膝を擦りむくのも関係ない。
確かに私はソイツを
『……大丈夫?』
それでも平然と私に手を差し伸べてくるソイツは、どこまでもヒーローと呼ばれる人間と遜色はなかった。
ソイツは自身のことを「
ヒーローになる者は皆明るく振る舞えと教科書にでも書かれているのか、情報を何一つ開示せず、ただ身を小さくして蹲っている私に、彼か彼女かも分からないリブートはやたらと自身のことをベラベラと喋った。
近くから聞こえる人々の悲鳴、建物が燃える臭い、それらをBGM代わりにひたすら話し続けるヒーローの姿だった。
「…………ヒーローは嫌い」
『あり、ようやっと喋ってくれたと思ったらヒーローへのアンチヘイト?』
「……ヴィランも、嫌い」
ぐ、と体を抱える手に自然と力が入る。地面に俯いてみれば、目からぽたりと雫が零れた。
『このまま行けば、君は孤児院に強制送還だろうね。父親もいないみたいだし、きっと君はこれからもヒーローとヴィランを憎むだけの一般人で終わる。世間からは見向きもされない』
「……」
『でもさ、もしそれが変えられるとしたらどうする?』
『この世の運命は、結末は同じかもしれない。でも、その過程が違っていたら?』
『傍から見れば余計なコマだと思っていた小さな歪みは実は布石で、積み重なって運命を変える亀裂になるかもしれない』
「だからって、なんでわたしを」
『君はヒーローとヴィランを同一視している、この世界でも数少ない"フィルター"を持たない人物だからさ』
リブートの言っていることは今となってみれば、穴ぼこだらけの突拍子もない話だったと思う。
それでも当時の私は、ただ自分を必要としている存在がいた事が嬉しかった。誰かの役に立てるなら、それでもいいと思った。
生きていていい、って思いたかった。
『君は、この世の為だけに自分の命を賭ける覚悟があるかい?』
齢三歳にして知った、自分の存在価値。
リブートは、今度こそしっかりと私の手をとってから、そう尋ねた。
『て訳で、これから君は
「なに、それ」
『名前。だって教えてくれないし、このまま呼び方も定まらないと不便だろ? なら私が付けるしかないよねって』
「ださい」
『おいコラガキ三秒で考えた力作を』
あの後、別のヒーローがやって来ると面倒だからとリブートは私の手を引いて街をふらふらと徘徊した。何処へ行っているのと問えば、身を保護してもらう為に孤児院に行くのだと。
『身分証も何も無いとなると、捨て子として扱われる可能性は高い。世界を変えるとか大それたこと言うにしても準備がいるし……それより』
暫くは孤児院に向かっていたリブートであったが、途端に立ち止まって私の顔からつま先までを品定めするようにジロジロ見てきたかと思えば、急にこんな事を言い出した。
『ンー、やっぱ髪色が目立つな。よし、染めよう』
「え」
『ああ大丈夫大丈夫、黒から白に染める奴なんかそうそういないから。まずバレることはないでしょ。はは』
まア逆ならいるけど……、とぼやくリブートであったがそんな事は関係ない。手持ち無沙汰なのを分かっていて、近くのスーパーに寄るや否や、早速髪染めスプレーを手に戻ってきた。
『言われてみれば確かに? 目つきが似てる……ことも無いか』
「なんの」
『こっちの話〜』
当時の私は代金の事にまで気を回す余裕もなくらいだったから、リブートのされるがままになってただただ店のガラス越しに白く染まる自分の髪を見つめていた。
見え方によっては赤を含む黒髪が段々と真っ白に染まっていく。
リブートは手馴れた様子で髪を染め終わると、その空き缶をゴミ箱へ放り投げて、再び歩き出した。
『個性、もう発現した?』
「……たぶん、でもわかんない」
『お前分かんないばっかだね』
「お医者さん、まだ行ってないから」
『ほう、個性届もなけりゃ戸籍もないとね』
「こせき?」
『うん。私はここで生きてますよーってのを示す証明書みたいなモンよ』
「わたし、ないの?」
『無いんじゃない?』
「……そっか」
『マ、気にしないでよ。私も持ってないからさ』
孤児院についた私は、リブートにそう言えと言われたのに従って、「おやがいなくていくあてがありません」と言った後、態とらしく泣き真似をして見せた。そこまでする必要はあったのか、と思うが、私が世界を変える為には必要なことらしい。
「もう大丈夫なのさン、僕たちここには君と同じような子たちがたくさんいるから、きっとすぐ気に入るさン!」
『なんだコイツ気持ち悪っ』
晴明先生、と呼ばれて親しまれているその人は、常にニコニコと笑っていて、まるでリブートのヘルメットを見てるみたいだった。隣で暴言を吐くリブートの方には見向きもせずに、私の方だけをじっと見つめてくるので、バツが悪くなった私は咄嗟に目を逸らした。
『よーし、ここはもって五年。五年で出るから、それまでに準備しとけよ』
「えっ、なんで」
「どうかしたのさン?」
晴明先生が表情の変わらぬ笑顔で絶えずこちらを見つめてくるので、慌てて首を振る。
訝しげな表情で終始彼を見つめていたリブートだったが、後から仮説を聞いてみれば合点がいった。
どうやらリブートは私以外の人には見えていないようで、普段はどんな人間もその身体をすり抜けてしまうらしい。私が初めその体に飛びかかった時に触れられなかったのもそれであれば納得がいく。
しかし一つ違う点があるとするなら、リブートの方から干渉したい、と思って触れることで接触は可能になるのではないか、ということだった。
あくまでも仮説のそれは、まだ私以外に試したことがないからだ。
「試せばいいのに」
『駄目だ。ここの連中の大人は揃いも揃って気味が悪い。私のキライな人間の匂いがする』
「なにそれ」
孤児院の子たちは、ちらちらとこちらを見てくるばかりで、声をかけてくる気配もない。傍から見たら私が一人で喋っているのを気味悪く思っているのだろうか。
「……おかあさん」
ポツリ、と私が呟いたのを机に頬杖をついて見ていたリブートは聞き逃さなかった。それでも尚、リブートはその事について触れようとはしない。
『悪いな、私はヒーローでもヴィランでもないんでね。お前に関しては救うことも絶望させることも出来ンのよ』
ただ一言、それだけで十分というぐらいに、リブートは会話を広げることはなかった。
そうして、早くも二年の月日が経った頃。
五歳になった私に、リブートはある時から山登りに行こう、とせがむようになった。何やら、個性の特訓に役立ちそうだとか何とか言って。
『ほら、"敵は本能寺にあり"ってな。
「晴明先生だよ」
『どーでもいいね』
私の個性___「変化」は、あらゆる物質を別の物質に組み替えることの出来る個性。晴明先生がわざわざお医者さんを呼んで私を診てくれたおかげで発覚したことだった。隣で聞いていたリブートはお医者さんの方をジロジロと睨め付けるようにして見た後、「コイツにはあんま口聞くな」とだけ返したので、私はなるだけ口を噤んで無口な人間を装った。
園の人達は、私の出自はおろか、私の名前すら知らない。関わることはないだろう、とリブートが言ったから、私も教えなかった。お友達になりたそうにこちらを見てくる子達にも、ねえ、とか、おい、とかで言葉を交わした事が数回だけ。
「先生たちに内緒で来てるんだから、早く帰ろうよ」
『用が済めばな』
リブートは瀬古杜岳と書かれた看板を見て、私の手を引いた。
思い返せば二年間の月日はあっという間で、個性が私にあると診断を受けたあの日から、リブートは毎日私に訓練と称して個性の増強を図るようにいった。元素図鑑や骨格、人体についてと書かれた変な図鑑や、物質の成り立ち、おかげで孤児院内にある本はほとんど読み尽くしてしまったので、時には図書館に赴いて何冊も、何十冊も読むように指示を出す。
私は何度も尋ねた。
「何のためにやっている事なのか」と。
リブートはその度、決まってこう返した。
「皆の幸せの為だよ」と。
そうこうしている内に、雪の降りかかった麓の方までやって来た。びっくりしたのは、私より少し年上ほどの男の子が、手に火傷を追いながらその場に立っていた事だった。
『よー、燈矢くん。元気?』
「リブ……?」
『お、白くなってるね』
リブートは男の子の背をちょんちょんとつついて、ニコちゃんマークの笑みをそっちに向けた。髪の真っ白な男の子は、リブートだと気づくや否や、__私でさえした事の無い__その腕の中に飛び込んだ。
「おまえ、今までどこ行ってたんだよ……!! 五年間も……!」
『言ったろ、私にはどうしても会わなきゃならない存在がいるって。別にほっといた訳じゃないんだ、分からなくても無理は無いけどね』
「おとおさん……は、未だにおれを見てくれない……!! 見ようとすらしないんだ……!」
『どうしようもねえなあの人』
「それもこれも、弟が生まれたからだ……、こんなに強い炎を出せるようになっても、氷の個性を持つ弟が生まれたせいで……!!」
『どうしようもねえな君も』
流石はエンデヴァーの息子だぜ、なんて呑気な口調で暫くは男の子に抱きつかれていたリブートだったが、暫くしてから、コホンと咳払いをして話を切り出した。
『悪いが、例の存在を連れてきたんでね。ソイツにも見せてやって欲しい。君の炎をさ』
「……そこの女に?」
『失礼だね燈矢くん、斎蹴遼ってのが名前だ』
「……」
リブートが目線で頭を下げるように言ったので、私は男の子の方を見て頭を下げた。蒼い目がジッと、私を嫌そうに見つめ返してくる。
「……轟、燈矢」
とうやくん、と頭の中でその名を反芻すると、すぐさま彼はリブートの方を向いた。
「リブは、おれの事見ててくれるよね?」
『ウン。見てるよ』
「お母さんともお父さんとも違う、家の女たちも、夏くんとも……」
『アレ重っ』
「リブに言われて着いてきたお前も、俺を見ててくれるんだよな」
「見てる、よ」
燈矢くんは短く「ならいい」と呟いて、静かに息を吐いた。
その息が導火線のように空気を震わせ、赤い炎が彼の中心から噴き上がる。
熱と光が渦を巻き、赤が濃く、濃く染まって──一瞬、蒼に転じた。
その瞬間、火力はふっと和らぎ、まるで満ちた波が引くように炎は形を失っていく。そうして最後に残ったのは、パチパチと燃える燈矢くんの炎の残骸と静寂だけだった。
それを目にした私はあまりの威力に驚いてただ立ち尽くすことしか出来ずにいた。
「っやった! 今、ほんの一瞬だったけど、遂に蒼に変わった……!! 何か原理がある筈だ、リブもいる今、決定的な何かがあった!!」
『へえ、凄いね』
リブートは燈矢くんの元へそっと歩いていき、そのまま火傷を負っている彼の手に触れた。
『……でも、無理しすぎ』
その瞬間、火傷で真っ赤に爛れていた燈矢くんの両手が、みるみる回復していく。
「へへ、次はお父さんに見せてやるんだ……! 蒼い炎が出せるようになれば、きっと認めざるを得ない……!!」
『少しは弱火に調節する力を身につけなって何度も言ってるだろ。一度燃えたらキリがないよ』
「それなら前にリブが教えてくれた方法がある……次こそは必ず……!」
『マ、ホドホドにね』
その日のは、日が暮れない内に三人で帰ることになった。燈矢くんのお家はウチのところよりもずっとずっと大きくて、門の向こうで燈矢くんは私たちに手を振った。
「じゃーな、リブ……と、遼」
『ほら、バイバイしてやんなよ』
「とっ、燈矢くん……、私と、話してくれてありがとう!」
燈矢くんが凄かったのは個性だけじゃなくて、あれだけみんなと話せなかった私に、初めて喋りかけてくれた子だったって事だ。
つい嬉しくなって、私は何倍も大きい声でお礼を言った。
「……別に、んな大袈裟に礼言うほどでもないだろ。また翌週、見せてやるから」
燈矢くんは、そう言って頬をかいて笑った。
けれどその翌週の約束は、いつまで経っても叶うことはなかった。
いつの間にか燈矢の夢小説みたいになっている(錯覚)
とりあえず主人公のプロフィールを載せておきます
| 名前 | 斎蹴 遼 (さいしゅうりょう) |
| 個性 | 変化 |
| 誕生日 | 4月7日 |
| 好きな物 | 平和、白百合 |
| 性格 | とてもやさしい |