空もすっかり暗くなった頃、ゲヘナのとある場所では銃撃戦が行われていた。
戦っているのは風紀委員会のメンバーと1人の少女………
近くの建物は崩れ、辺り一帯は焼け、風紀委員会の生徒達が地に伏している。
「くっ……!なんだこいつは……こんな大勢でかかっても銃弾一つ当てられないなんて………!!」
「強すぎる………仲間達が次々やられていく…………!」
「………うふふ」
この惨状を作った本人である、"狐の面"を身につけている少女は静かに笑った。
「これが七囚人"災厄の狐"……孤坂ワカモ…………!!」
百鬼夜行連合学院 三年生 孤坂ワカモ
現在、停学処分を受けており、連邦矯正局に入っている………はずだったが、脱走し、数々の襲撃事件を起こしている。
趣味は破壊と略奪。今まで起こしてきた襲撃事件や破壊活動には特に目的はなく、ただ「趣味だから」行っているだけである。
戦闘の実力もかなり高く、キヴォトス最強格とまでは行かなくとも、大半の生徒には負けることはないだろう。
「……そろそろ終わらせましょうか。」
その言葉を聞き、風紀委員達は身構える。
「今日はそれなりに楽しみましたし……。まぁ、今回の"目的"は果たしていませんが………。」
そう言って、ワカモは銃を向ける。
「くっ………!」
「それでは、さようなら。」
そして、引き金は引かれた。
「……っ!?」
しかしその銃弾は風紀委員には当たらず、地面に着弾した。
ワカモから見れば、不可解なことが起こっていた。
(あの生徒は何処へ………!?)
今、撃とうとしていた倒れていた風紀委員が目の前から消えたのだ。
(あの生徒は満身創痍……動けるはずがない………。動けたとしてもこんなに消えたと錯覚するほど速く………!?)
「やーっと見つけたぜ」
「!?」
ワカモは声のする方へ振り返る。
「ギリセーフ………ではないな。」
声の主は自分が先程撃とうとした生徒を抱えて立っていた。
「大丈夫か?」
「シラホシ……。ごめん、助かった。」
「焦るのはわかるが場所くらい教えろよな?おかげでゲヘナ中走り回ったわ。」
シラホシは笑いながら抱えている生徒をゆっくり下ろす。
「……ま、あとは任せろよ。」
「あなたは………。」
シラホシとワカモが向き合う。
「俺は早乙女シラホシ………今からテメェを倒してとっ捕まえる男の名だ!よーく覚えとけ!!」
「………ふふっ」
ワカモは小さく笑う。
「そうですか、この男が噂の………」
「何笑ってんだ!?そのうちその余裕もなくなるぜ!!」
シラホシは自分のハンドガンを構え、ワカモに向けて撃つ。
……が、全て避けられる。
「どこを狙っているのです?このような弾、簡単に避けられ………」
「オラァ!」
気づけばシラホシはワカモの間合いにおり、顔目掛けて蹴りを放っていた。
「っ!」
が、それをギリギリで避ける。
(銃弾で注意を逸らして接近……一年生だと思って油断していると危ないですね………。)
シラホシは避け続けるワカモに連続で攻撃を続ける。
しかしすぐに距離を取られ最初と同じ状況に戻ってしまった。
「やっぱ一筋縄じゃいかねぇな……。これが七囚人か。」
「女性を蹴るなんて酷いですわ。男性としてもっと紳士的にしては?」
「紳士的にだの、騎士道だの、言ってられないんだわ。んなこと言ってたらこっちが死にかねん。」
「……噂の通り、ヘイローはないのですね。」
「ンだ?ヘイローがないなら手加減してくれんのか?」
「いえ?手加減して壊しても、何も面白くありませんから。」
ワカモがそう言うと、シラホシは笑みを浮かべる。
その表情は、心からこの状況を楽しんでいるようであった。
「そろそろ再開しましょうか………。次はこちらから……」
その言葉を聞き、シラホシは構える。
ワカモはシラホシに愛銃、「真紅の災厄」を向け、引き金を引く。
シラホシはそれを見て避け、再びワカモに接近しようとする。
ワカモは迫り来るシラホシに狙いを定め、銃弾を放つ。
「ちょっとマジで行くぜ……!」
そう呟くと、目にも止まらぬ速さで辺りを走り回り、銃弾を避ける。
「っ!」
ワカモは走り回るシラホシに狙いを定められず、攻撃は諦めてまもなく来るであろう攻撃に備える。
シラホシは走り回るだけでなく、建物の壁を蹴って移動しさらに立体的な動きになり、目で追うことがさらに困難になる。
(これがヘイローのない人間の身体能力…?速すぎますわね……。)
ワカモは自分の周りを駆け回っている男について考えていた。
本当にヘイローがないのか?何故ここまでの身体能力を得たのか?
思考を巡らせていた瞬間、視界の端に何かが映る。
「っ!?」
ワカモに強烈な衝撃が襲う。
自分に何が起こったのか理解するのに少し時間がかかったが、すぐに攻撃されたことに気付いた。
すんでのところで腕で防御はしたが、その腕はビリビリと痺れている。
シラホシを見るとドロップキックの形で自分に足を向けていた。
目にも止まらぬ速さ、銃弾を難なく避けられる視力と反射神経、ほぼ視界外からの攻撃、持ち前速さと慣性を乗せたキック………。なんとなくこの男を理解した。
(これがヘイローが無くても他の生徒達と戦えている要因……。)
シラホシは攻撃をやめようとせず、再び近づき蹴ろうとする。
しかしワカモは威嚇射撃をし、近づけさせない。
「クッソ……!」
「……随分と熱烈なアプローチですわね?あまりグイグイ迫る男性は嫌われてますわよ?」
「ハッ……こういうアピールは苦手か?生憎、こっちはアンタを捕まえんのに必死なんだわ。」
両者、軽口を叩く。
「……余り時間はかけたくないですね。」
そう言うとワカモは銃でシラホシを撃ちながら接近する。
「!?」
なんの前触れもなく撃ってきたワカモに驚くが、自慢の反射神経で避ける。
(あっちから近づいてきた……ずっと近距離戦は俺が優勢なのわかってんのに?)
そんなことを考えていれば、ワカモは既に目前に迫っている。
「っ!」
焦ってたシラホシは右脚で横から蹴ろうとするが、それは悪手であった。
蹴りは避けられ、隙ができた右半身にカウンターを受ける。
「ぐっ……!」
ワカモは攻めの姿勢をやめず、連続で至近距離で銃弾を放つ。
シラホシはなんとか身体を翻し、弾を避ける……が、何発か被弾してしまう。
「あ"…!?」
撃たれた痛みで更に隙を晒すシラホシ。
その隙をワカモが見逃すはずがなく、回し蹴りをモロに食らって後方へ吹き飛ばされる。
シラホシはすぐに受け身をとる。その後、地面を思いっきり踏む。
(…?)
敵の謎の行動に疑問を浮かべるが、すぐに答えを知ることになった。
「ふっ…!」
シラホシは浮いた瓦礫をワカモに向けて蹴り飛ばす。
「っ!!」
迫る瓦礫を避ける。その時、瓦礫で隠れていたシラホシの姿が視界に入った。
シラホシは蹴りの構えを、ワカモは防御の姿勢をとる……。
が、シラホシが繰り出したの蹴りではなく、掌底であった。
「!!」
「攻撃手段が蹴りだけとは言ってねぇぜ?」
予想外の攻撃に驚くが、直ぐにシラホシに銃を向け、引き金をひく。
「うおっ…!」
また何発か被弾してしまう。出血も多くなり、少し動きが鈍くなった。
(敵の弾を全て避けて蹴りでダメージを与える……これが理想だが、やっぱ実力者相手だと弾を全部避けんのはキツいな………俺が弱すぎる。)
ワカモはこのまま決着をつけようとシラホシを見る………。
「……クハッ」
「!?」
「あー……たのし。」
シラホシは恍惚とした表情で笑っていた。
(笑っている…!?明らかに自分がピンチなこの状況で……!?)
「ハハっ」
「………成程。」
ワカモは攻撃をしようとする手を止める。
「……?何故止めた?」
「今日はここまでにしておきましょう。目的は済みましたしね……。」
「あぁ……?このまま逃すとでも……!」
「シラホシ!!」
背後からヒナ委員長の声がした。
「ヒナ委員長……!?」
「ごめんなさい…遅くなったわ。」
「それでは、そろそろお暇させていただきます……。また会いましょう?シラホシさん?」
「待っ……!」
「……今回は諦めてましょう。あなたもその身体じゃ危ないわ……。手当てしなきゃ。」
「………うす。」
(あ"ー…クッソ……噂通りの実力だな、七囚人……。捕まえられなかったのも悔しいが、今はそれより………。)
「………これからいいとこだったのになぁ………。」
人も少なく、辺りが静かになった深夜、ワカモは今日の出来事を思い出していた。
(早乙女シラホシ………キヴォトス唯一の男子生徒と聞いて会って見れば………ある意味想定外でしたわね。)
シラホシとの戦闘の最後、あの恍惚とした笑みと発言………。
(彼はおそらく……)
ワカモは感じた。シラホシの本性の片鱗を。
(闘うのを好むという情報はありましたが………アレは"好き"程度のものではありませんね。)
そして考える。あの男は自分と"同種"なのではと。
しかしそれを決めつけるには今回の戦いでは判断材料が少な過ぎる。
彼のことを知る為に、もっと、もっと、もっと調べないと。
「……ふふっ」
小さく溢れた笑みは、夜の静寂へと吸い込まれていった。
やべぇ……ハーレムとか、恋愛とか書きたいのに繋げ方がわからない…!
自分の文章力のなさを恨むばかりです……。