キヴォトスを駆けていく   作:味噌焼き

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8話 サイヤク×ト×サイアク?

「もうすぐだな……。」

 

 

どうも、シラホシです。

 

今俺は風紀委員の応援に向かう為、ビルの屋上を飛び移りながら移動している。

 

正味下に降りて走った方が速いが今の時間はまだ人が多い。直線距離で突っ切るならまだこっちの方が走りやすいな。俺の脚力に感謝ぁ〜だな。

 

 

「!見えた!!」

 

 

場所がシャーレから離れていたのでかなり本気で走った。その甲斐あって数分もせず仲間達が見えてきた。

 

 

応援を呼ぶ程の相手……便利屋か、美食研究会か、温泉開発部か………。

 

 

「っ!?アイツは………!!」

 

 

ソイツを見つけた瞬間、俺は思いっきり地面を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ………。あの人はまだ来ないのですか?」

 

 

「くっ……」

 

 

風紀委員の一人が"狐の面"をつけた少女に首を掴まれている。

 

 

「がっ……アイツは今シャーレの当番中だ……すぐには来れない………。」

 

 

「そうですか……ではもういいです。」

 

 

少女は掴んでいた風紀委員を投げる。

 

 

「ゔっ……!」

 

 

「さて。どうしますか…………。」

 

 

少女は困った様に首を傾げる。

 

 

「っ!?」

 

 

どうしようかと思考しようとした刹那、殺気を感じ後ろに飛び退く。

 

 

ドゴォォォォォォォォォォォン!!

 

 

凄まじい轟音が鳴り、自分がいた場所を見ると先程はなかった大きなクレーターができている。

 

少女は立ちこめる煙の中に影を見つける。

 

 

(これは……大砲?いや、だとしたらあの速度での発射は不可能………。しかしあの殺気……まさか?)

 

 

「クッソ……避けんのかこれ…………。」

 

 

「…………来ましたね?」

 

 

「クハッ また会ったなぁ孤坂ワカモ……!!」

 

 

「ふふっ………。」

 

 

じっと獲物が来るのを待っていた獣の様に、ワカモは正しく"捕食者"の目をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さて、どうすっかな………。)

 

 

目の前の強者を睨みながら考える。

 

以前の戦いではあっちが逃げたとはいえ、ほぼ俺の負けだ。

 

あの日からそれほど時間も経っていない。訓練は怠っていないが、この短期間で孤坂ワカモに勝てるほど成長はしていない。

 

 

「シラホシ………来たのか…………。」

 

 

「うっす。また遅くなってすんません。」

 

 

重傷を負っている先輩が話しかけてくる。

 

それは先輩だけではない。

この場にいる風紀委員の殆どが怪我をしている。

 

 

 

また間に合わねぇのか、俺は。

 

 

 

(何の為のこの脚だよ)

 

 

足は速いのに大事なところでいつも間に合わない。

 

 

「クソだぜ。ホントに。」

 

 

「女性に対してその様な言い方は酷いのではありませんか?」

 

 

溢した言葉に孤坂ワカモが反応する。

 

 

「安心しろ……アンタに言った言葉じゃねぇよ。」

 

 

「あら、そうでしたか……。それにしても、先程はヒヤッとしましたわ?猛スピードでこちらに何かが接近してくると思えばあなたですもの。それも地面にクレーターができるほど。方向的に、飛んで来たのはあの高層ビルでしょうか?わかってはいましたが、凄まじい脚力ですわね。」

 

 

ワカモは饒舌に語り始めた。

 

 

「それだけが取り柄なんだ。無駄口叩いてねえでさっさと始めるぞ。」

 

 

「せっかちですね……。そういう殿方は嫌われますわよ?」

 

 

「こう見えて、恋愛に関しては慎重なんだよ。俺は。」

 

 

「……意外でしたね。」

 

 

割と素で驚かれたような気がする。なんかショックだな。

 

 

「オラ、もうこっちから行くぞ?今日はスイーツ逃したしイライラしてんだ。」

 

 

そう言って戦闘態勢にはいる。

 

 

「そう焦らないで下さい。もう少し話しませんか?」

 

 

「はあ?」

 

 

急に意味のわからないことを言う。なんで俺達が話す必要があるんだ?

 

 

「アンタの目的は破壊だろ?それに何の関係があるんだ。」

 

 

「今回は貴方に聞きたいことがありまして……。」

 

 

「はあ………。」

 

 

何も理解できないまま適当に返事をする。

 

 

「貴方………私と同類なのではないでしょうか?」

 

 

「……………は?」

 

 

同類?俺が?コイツと?何で?何が?どうして?どこが?

 

さっきより意味がわからん。何故その質問が出てくる?

 

 

「先日の貴方との戦い、その最後。貴方の顔を見て思いました……。

戦闘を楽しむようなうっとりとした……恍惚とした表情を。」

 

 

「………………。」

 

 

否定できないなぁ…………!

 

 

「あぁ………気づかれてたんだな…………。」

 

 

「あら……否定すると思っていたのですが………。」

 

 

「事実だしな。俺は闘うことが好きだ。けど、まぁ………。」

 

 

「?」

 

 

「だからこそ、一緒にしてほしくはないな。」

 

 

言葉を終えると同時に、孤坂ワカモに向かって走り出す。

 

 

「もうっ……お話はまだ終わっていませんのに………。」

 

 

「そうかよっ!」

 

 

話を終える気のない相手に飛び蹴りをするが難なく避けられる。

 

 

「ここでは人が多いですわね………。少し場所を変えましょうか。」

 

 

そう言うと一瞬にして俺の後ろに移動する。

 

俺は動体視力が良い。だから銃弾を避ける前提のバトルスタイルが成立するのだが………。

 

 

(はっや………!姿を追うことすらできず接近された!やられる…!!)

 

 

来たる攻撃に身構える………が、

 

 

「捕まえました♡」

 

 

背中と膝裏を支えられ横抱きにされる。所謂お姫様抱っこだ。

 

 

「は……?はっ!はぁぁぁぁぁぁぁ!?///」

 

 

それを理解し大声を上げてしまう。

 

 

「おや?意外と純粋ですのね♡」

 

 

そんな俺を見てからかうように言う。

 

 

「なっ………!はっなせよ………!!何のつもりだ!!!」

 

 

「もうっ、暴れないで下さい……。そんなに抵抗されるとこのワカモ、悲しくなってしまいますわ?」

 

 

およよ…とわざとらしく泣くフリをするワカモ。

変わらず抵抗を続ける俺。

 

 

「では、動きますわよ。」

 

 

直後、ワカモは建物の屋上へ飛ぶ。

 

 

「ちゃんとつかまっていなくて大丈夫ですか?」

 

 

「誰がするかよ……!」

 

 

からかってくるワカモに言い返す。

 

 

「もう一度動きますわよ。」

 

 

ワカモは建物と建物の間を飛び移っていく。

 

 

(どこへ行く気だ……?)

 

 

ワカモがどこへ向かっているのかが気になる。

 

そもそも目的がわからない。場所を変えてまで俺と話すこと?

 

わからない。この人が。

 

 

「さあ、着きましたよ。」

 

 

「は?ここは……」

 

 

言われて見たこの場所はとても見覚えのある、馴染みの

ある、というより…………

 

 

「俺ん家の前じゃねぇか………。」

 

 

そう、俺の自宅前。

 

 

「てかなんで知ってんだよ。俺の家。」

 

 

「乙女への散策は御法度ですわよ?」

 

 

「………そうかよ。」

 

 

黙秘、ねぇ………。どっから情報手に入れたんだか。

 

 

「んで?目的は?」

 

 

「ああ……今回は貴方と戦うつもりはありませんので………ただご自宅に帰して差し上げただけです。」

 

 

「はぁ?戦う気がない?」

 

 

「ええ。ここに連れてきたのは、貴方と"ふたりきり"で話す為でもあります。」

 

 

「それで?何を話すんだよ。」

 

 

「あの戦いの後、私は貴方について考えていました………。」

 

 

「貴方に興味を持ったのです。私と同じような感覚。同類なのではないかという期待。しかし断定するには情報が少なすぎます……。」

 

 

「だから同じじゃねぇって。………んで?」

 

 

「そこで私は思いついたのです。ならば何回も会って少しずつ知っていこうと。」

 

 

「と言う訳で、定期的に会いにきますわね?」

 

 

「わからん(わからん)」

 

 

いやまあ、言ってることは単純でその通りかもしれんが。

 

なんでそこまで俺に関わるんだ……。やっぱ男が少ねえからか?同類だという確信が欲しいから?俺は違うって言い続けてるのに……。

 

 

「では……また会いましょう?"あなた様"?」

 

 

「あっ……!おい!?」

 

 

別れの言葉を告げて彼女は去っていった。

 

 

「………………。」

 

 

「今日は疲れた…………………。」

 

 

一日中書類仕事で慣れない頭使って、さらにあの狐さんの意味わからん発言の考察で頭使って………。今日はもう何も考えれねぇ……………。

 

 

「さっさと寝よ…………。」

 

 

そうして俺の一日は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜─────。

 

 

「スヤァ………」

 

 

「…………………………。」

 

 

「きつねのしっぽは……もふもふで…………いちごみるく(?)……。」

 

 

「……………………♡」モゾモゾ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日───。

 

 

「ん………んぁ……………。」

 

 

いつも通り、スマホのアラームで目が覚める。

 

 

「ねみ……………。」

 

まだ覚醒しきっていない意識でアラームを止めた。

 

今日もまた、新たな一日が始まる。

 

 

「…………………?」

 

 

違和感。

 

 

朝食を作ろうとベッドから出ようとするが、体を動かせない。

 

意識が覚醒してないからとかじゃない。なんか……いつもより体が重い。

 

 

「んだ………?」

 

 

自分の体を確認しようと視線を下に向ける。すると…………。

 

 

「……………!?」

 

 

毛布の間から大きな耳や尻尾が飛び出ている………しかも狐の。

 

 

「まさか………!」

 

 

急いで毛布をめくる。

 

 

「すー…………」

 

 

そこには、俺の上で寝ている寝巻き姿の孤坂ワカモの姿があった。

 

 

「っはぁ〜〜〜〜〜!?」

 

 

「んん……あなた様…………?如何しましたか…………?」

 

 

「なんでアンタがここにいる!孤坂ワカモ!!」

 

 

「あまり大きな声で話さないで下さいまし………。それに、昨晩、お伝えしたでしょう?『定期的に会いにくる』と…………。」

 

 

「定期的って意味知ってる?」

 

 

「あら?朝に会ってあなた様は昼は学校、そしてまた夜に会う……定期的でしょう?」

 

 

「その言い方………住む気か!?ここに!!」

 

 

「はい♡」

 

 

何を言ってるんだこの人は!?俺は風紀委員だぞ!?敵の家に住むなんて………。それ以前に、俺は男だぞ!?そういうのは………もっと深い関係になってからで……………今はそれはどうでもいい!!

 

 

「アンタなぁ……むっ!?」

 

 

急に口に指を押し付けられた。

 

 

「"アンタ"ではなく、"ワカモ"と、お呼び下さい♡」

 

 

「…………ワカモさ「さん付けも無しです♡」……………………ワカモ。」

 

 

「はい、よく出来ました♡」

 

 

あぁ!調子狂う!!

 

 

「何を考えてる。何でこんなことを?」

 

 

「言ったでしょう?あなた様を知る為です♡」

 

 

「だからって異性の家に住もうとするかよ…………。」

 

 

この人の考えてることは何もわからない。ずっと。

 

 

「この方が手っ取り早いでしょう?それに、"他の方達"にはない、大きなアドバンテージとなりますから………♡

 

 

「?」

 

 

「いえ、何でもありません♡まあ、そういうことですので…………」

 

 

 

 

「不束者ですが、これからよろしくお願いいたしますね♡」

 

 

 

 

「最悪だ……………。」

 

 

そんなこんなで、俺と災厄の狐との同居生活が始まった。




Q.何故ワカモは先生をじゃなくシラホシを好きになったか?

A.私がそうしたかったから。
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