「もうすぐだな……。」
どうも、シラホシです。
今俺は風紀委員の応援に向かう為、ビルの屋上を飛び移りながら移動している。
正味下に降りて走った方が速いが今の時間はまだ人が多い。直線距離で突っ切るならまだこっちの方が走りやすいな。俺の脚力に感謝ぁ〜だな。
「!見えた!!」
場所がシャーレから離れていたのでかなり本気で走った。その甲斐あって数分もせず仲間達が見えてきた。
応援を呼ぶ程の相手……便利屋か、美食研究会か、温泉開発部か………。
「っ!?アイツは………!!」
ソイツを見つけた瞬間、俺は思いっきり地面を蹴った。
「はぁ………。あの人はまだ来ないのですか?」
「くっ……」
風紀委員の一人が"狐の面"をつけた少女に首を掴まれている。
「がっ……アイツは今シャーレの当番中だ……すぐには来れない………。」
「そうですか……ではもういいです。」
少女は掴んでいた風紀委員を投げる。
「ゔっ……!」
「さて。どうしますか…………。」
少女は困った様に首を傾げる。
「っ!?」
どうしようかと思考しようとした刹那、殺気を感じ後ろに飛び退く。
ドゴォォォォォォォォォォォン!!
凄まじい轟音が鳴り、自分がいた場所を見ると先程はなかった大きなクレーターができている。
少女は立ちこめる煙の中に影を見つける。
(これは……大砲?いや、だとしたらあの速度での発射は不可能………。しかしあの殺気……まさか?)
「クッソ……避けんのかこれ…………。」
「…………来ましたね?」
「クハッ また会ったなぁ孤坂ワカモ……!!」
「ふふっ………。」
じっと獲物が来るのを待っていた獣の様に、ワカモは正しく"捕食者"の目をしていた。
(さて、どうすっかな………。)
目の前の強者を睨みながら考える。
以前の戦いではあっちが逃げたとはいえ、ほぼ俺の負けだ。
あの日からそれほど時間も経っていない。訓練は怠っていないが、この短期間で孤坂ワカモに勝てるほど成長はしていない。
「シラホシ………来たのか…………。」
「うっす。また遅くなってすんません。」
重傷を負っている先輩が話しかけてくる。
それは先輩だけではない。
この場にいる風紀委員の殆どが怪我をしている。
また間に合わねぇのか、俺は。
(何の為のこの脚だよ)
足は速いのに大事なところでいつも間に合わない。
「クソだぜ。ホントに。」
「女性に対してその様な言い方は酷いのではありませんか?」
溢した言葉に孤坂ワカモが反応する。
「安心しろ……アンタに言った言葉じゃねぇよ。」
「あら、そうでしたか……。それにしても、先程はヒヤッとしましたわ?猛スピードでこちらに何かが接近してくると思えばあなたですもの。それも地面にクレーターができるほど。方向的に、飛んで来たのはあの高層ビルでしょうか?わかってはいましたが、凄まじい脚力ですわね。」
ワカモは饒舌に語り始めた。
「それだけが取り柄なんだ。無駄口叩いてねえでさっさと始めるぞ。」
「せっかちですね……。そういう殿方は嫌われますわよ?」
「こう見えて、恋愛に関しては慎重なんだよ。俺は。」
「……意外でしたね。」
割と素で驚かれたような気がする。なんかショックだな。
「オラ、もうこっちから行くぞ?今日はスイーツ逃したしイライラしてんだ。」
そう言って戦闘態勢にはいる。
「そう焦らないで下さい。もう少し話しませんか?」
「はあ?」
急に意味のわからないことを言う。なんで俺達が話す必要があるんだ?
「アンタの目的は破壊だろ?それに何の関係があるんだ。」
「今回は貴方に聞きたいことがありまして……。」
「はあ………。」
何も理解できないまま適当に返事をする。
「貴方………私と同類なのではないでしょうか?」
「……………は?」
同類?俺が?コイツと?何で?何が?どうして?どこが?
さっきより意味がわからん。何故その質問が出てくる?
「先日の貴方との戦い、その最後。貴方の顔を見て思いました……。
戦闘を楽しむようなうっとりとした……恍惚とした表情を。」
「………………。」
否定できないなぁ…………!
「あぁ………気づかれてたんだな…………。」
「あら……否定すると思っていたのですが………。」
「事実だしな。俺は闘うことが好きだ。けど、まぁ………。」
「?」
「だからこそ、一緒にしてほしくはないな。」
言葉を終えると同時に、孤坂ワカモに向かって走り出す。
「もうっ……お話はまだ終わっていませんのに………。」
「そうかよっ!」
話を終える気のない相手に飛び蹴りをするが難なく避けられる。
「ここでは人が多いですわね………。少し場所を変えましょうか。」
そう言うと一瞬にして俺の後ろに移動する。
俺は動体視力が良い。だから銃弾を避ける前提のバトルスタイルが成立するのだが………。
(はっや………!姿を追うことすらできず接近された!やられる…!!)
来たる攻撃に身構える………が、
「捕まえました♡」
背中と膝裏を支えられ横抱きにされる。所謂お姫様抱っこだ。
「は……?はっ!はぁぁぁぁぁぁぁ!?///」
それを理解し大声を上げてしまう。
「おや?意外と純粋ですのね♡」
そんな俺を見てからかうように言う。
「なっ………!はっなせよ………!!何のつもりだ!!!」
「もうっ、暴れないで下さい……。そんなに抵抗されるとこのワカモ、悲しくなってしまいますわ?」
およよ…とわざとらしく泣くフリをするワカモ。
変わらず抵抗を続ける俺。
「では、動きますわよ。」
直後、ワカモは建物の屋上へ飛ぶ。
「ちゃんとつかまっていなくて大丈夫ですか?」
「誰がするかよ……!」
からかってくるワカモに言い返す。
「もう一度動きますわよ。」
ワカモは建物と建物の間を飛び移っていく。
(どこへ行く気だ……?)
ワカモがどこへ向かっているのかが気になる。
そもそも目的がわからない。場所を変えてまで俺と話すこと?
わからない。この人が。
「さあ、着きましたよ。」
「は?ここは……」
言われて見たこの場所はとても見覚えのある、馴染みの
ある、というより…………
「俺ん家の前じゃねぇか………。」
そう、俺の自宅前。
「てかなんで知ってんだよ。俺の家。」
「乙女への散策は御法度ですわよ?」
「………そうかよ。」
黙秘、ねぇ………。どっから情報手に入れたんだか。
「んで?目的は?」
「ああ……今回は貴方と戦うつもりはありませんので………ただご自宅に帰して差し上げただけです。」
「はぁ?戦う気がない?」
「ええ。ここに連れてきたのは、貴方と"ふたりきり"で話す為でもあります。」
「それで?何を話すんだよ。」
「あの戦いの後、私は貴方について考えていました………。」
「貴方に興味を持ったのです。私と同じような感覚。同類なのではないかという期待。しかし断定するには情報が少なすぎます……。」
「だから同じじゃねぇって。………んで?」
「そこで私は思いついたのです。ならば何回も会って少しずつ知っていこうと。」
「と言う訳で、定期的に会いにきますわね?」
「わからん(わからん)」
いやまあ、言ってることは単純でその通りかもしれんが。
なんでそこまで俺に関わるんだ……。やっぱ男が少ねえからか?同類だという確信が欲しいから?俺は違うって言い続けてるのに……。
「では……また会いましょう?"あなた様"?」
「あっ……!おい!?」
別れの言葉を告げて彼女は去っていった。
「………………。」
「今日は疲れた…………………。」
一日中書類仕事で慣れない頭使って、さらにあの狐さんの意味わからん発言の考察で頭使って………。今日はもう何も考えれねぇ……………。
「さっさと寝よ…………。」
そうして俺の一日は幕を閉じた。
その夜─────。
「スヤァ………」
「…………………………。」
「きつねのしっぽは……もふもふで…………いちごみるく(?)……。」
「……………………♡」モゾモゾ
翌日───。
「ん………んぁ……………。」
いつも通り、スマホのアラームで目が覚める。
「ねみ……………。」
まだ覚醒しきっていない意識でアラームを止めた。
今日もまた、新たな一日が始まる。
「…………………?」
違和感。
朝食を作ろうとベッドから出ようとするが、体を動かせない。
意識が覚醒してないからとかじゃない。なんか……いつもより体が重い。
「んだ………?」
自分の体を確認しようと視線を下に向ける。すると…………。
「……………!?」
毛布の間から大きな耳や尻尾が飛び出ている………しかも狐の。
「まさか………!」
急いで毛布をめくる。
「すー…………」
そこには、俺の上で寝ている寝巻き姿の孤坂ワカモの姿があった。
「っはぁ〜〜〜〜〜!?」
「んん……あなた様…………?如何しましたか…………?」
「なんでアンタがここにいる!孤坂ワカモ!!」
「あまり大きな声で話さないで下さいまし………。それに、昨晩、お伝えしたでしょう?『定期的に会いにくる』と…………。」
「定期的って意味知ってる?」
「あら?朝に会ってあなた様は昼は学校、そしてまた夜に会う……定期的でしょう?」
「その言い方………住む気か!?ここに!!」
「はい♡」
何を言ってるんだこの人は!?俺は風紀委員だぞ!?敵の家に住むなんて………。それ以前に、俺は男だぞ!?そういうのは………もっと深い関係になってからで……………今はそれはどうでもいい!!
「アンタなぁ……むっ!?」
急に口に指を押し付けられた。
「"アンタ"ではなく、"ワカモ"と、お呼び下さい♡」
「…………ワカモさ「さん付けも無しです♡」……………………ワカモ。」
「はい、よく出来ました♡」
あぁ!調子狂う!!
「何を考えてる。何でこんなことを?」
「言ったでしょう?あなた様を知る為です♡」
「だからって異性の家に住もうとするかよ…………。」
この人の考えてることは何もわからない。ずっと。
「この方が手っ取り早いでしょう?それに、"他の方達"にはない、大きなアドバンテージとなりますから………♡」
「?」
「いえ、何でもありません♡まあ、そういうことですので…………」
「不束者ですが、これからよろしくお願いいたしますね♡」
「最悪だ……………。」
そんなこんなで、俺と災厄の狐との同居生活が始まった。
Q.何故ワカモは先生をじゃなくシラホシを好きになったか?
A.私がそうしたかったから。