流星のロックマン Crystal Crest   作:Dylandy

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少年と少女

 刹那、屋上に声が響いた。それはウィンド・シータとムラサメ・シグマとの戦い。何かと屋上での戦いが多いなと感じるロックマンであったがそれどころではない。

 敵か、味方は今の所は不明だがウィンド・シータが謎の来訪者、ムラサメ・シグマに急襲を受けられた。やはり、このウィンド・シータはPM星の計画を阻止するために来た来訪者らしい。相手がウィンド・シータに向かって『裏切り者』と叫んだ言葉の裏には殺意と憤怒の意味が重く乗っていた。

 ムラサメ・シグマが愛剣、フランベルジェで容赦なく斬りこむ。フランベルジェはかなりではないが大型に属する剣。かつてオーパーツ、ベルセルクの剣を使用していたロックマンの愛用のベルセルクソードに匹敵する程の長剣ではない。

 それでも不思議な波打つ剣は大きさと風格を醸し出していた。

 フランベルジェの刀身が波打つ切っ先はウィンド・シータの羽を浅くとらえただけ。羽が宙を舞い、そして消えていく。

 

「くっ……」

「ほらほら!!どうした!?落ちこぼれのウィンド・シータさんよ!君の実力はそんなんじゃないはずだ!!」

「黙りなさい!!私はあんな計画……、認めたくない!!」

 

 ウィンド・シータはムラサメ・シグマの猛攻に防戦一方だった。愛剣の短剣は防御態勢になっていて反撃の糸口を見いだせなかった。

 回避して、回避して、防いで、回避して、チャンスをうかがって、それでも回避する。

 そして浅く削られる。

 

「やめろぉ―――!!!」

 

 防戦一方になっていたウィンド・シータとムラサメ・シグマの間にロックマンが割り込んできた。メタルシールドを使ってムラサメ・シグマのフランベルジェを両手で防いだ。と同時に火花と轟音があたりの空間に不協和音を奏でていく。

 バトルカード、メタルシールドというシールドを一定時間の間、物理変換して鋼鉄製のシールドに変えた。気味悪い音と、死を表現するような音がオーケストラの演奏のように指揮者が指示して、演奏者が奏でる。

 そんな感じな音がメタルシールドとフランベルジェから聞こえた。

                                              

「君は………、あの有名なロックマンか!?」

「それがどうした!!」

「君とは一度会いたいと思っていたのだ……。そう、私の実力がどれぐらい通用するという事をな……」

「なっ………!?」

 

 ロックマンはムラサメ・シグマの思いもよらない一言に戦慄してしまう。まさかの勝負宣言。ムラサメ・シグマは極度の戦闘好きらしい。

 覚悟しておいた方がいいと唾を飲んで喉を鳴らし、体の緊張を高めて行ってしまう。

 

「けど、今は君に用はない……。話があるのはあのウィンド・シータだ!!」

 

 ムラサメ・シグマはフランベルジェの柄を強く握ってロックマンのメタルシールドを弾き飛ばした。ロックマンは弾き飛ばされた反動と、フランベルジェの異常暴発な力によって吹き飛ばされウェーブロードに叩き付けられる。ウェーブロードに叩き付けられた瞬間、体中の酸素が吐き出される感覚と、遠くでウィンド・シータの容姿なのに、『風原ユイと非常に似た声がした』。

 そう、『スバル君!!』っていう声が聞こえたのだ。

 そして、彼女がムラサメ・シグマによって傷つけられているのを。

 彼女の悲鳴と、彼女の涙とフランベルジェによって傷つけられたウィンド・シータの鮮血と、彼女の思いが見えた。

 けど、それはスバルにとっては一瞬の幻想であって、自分が彼女に『好意を向けた一瞬の恋の幻想』と思った。

 常識的に考えて、あんな優しくて、可愛くて、頭がよくて、社交的で、何より一人一人に笑顔を絶やさずに話す一途な女の子が。

 ここにいる訳ないじゃないか―――………。

 

 ―――でも。

 ―――それでも。

 ―――ウィンド・シータは自分の身を危険に晒してでもここに来てくれて、信じられない真実を話してくれたんだ。

 ―――なら、自分が答えてやるしかないじゃないか、自分が手伝ってやるしかないじゃないか。

 ―――目の前に起きていることが幻想であっても。この少女を裏切るわけにはいかない。だったら倒してやるしかない。この、自分の両腕で!!!!

 

「キャアアアアァァ!!!」

「くたばれ!!裏切り者!!」

 

 ウィンド・シータは完全に瀕死状態だった。そしてムラサメ・シグマが勝利の狼煙を上げるように声をうならせてフランベルジェを振り上げた。恐怖によりウィンド・シータは叫んで傷つく体を怯えながら丸くなっている。

 二人の短い距離の間に身体を振り絞って割り込んできたのは青い流星、シューティング・スター・ロックマンだった。ムラサメ・シグマのフランベルジェを手の表面の皮膚が抉れる覚悟と根性で素手で掴んだ。左手がウォーロックによる堅固な前歯により攻撃を止めれたが右手の表面はフランベルジェの絶大な切れ味により手の内側から出血した。手から出血した真っ赤な鮮血が宙ではじけ飛び、地面にしたたり落ちては赤血球の働きによって血液硬化が始まる。

 衝撃により、傷口が出来たこと、身体の全身が悲鳴を上げ、その痛みが脳へと集まり、痛みを終息へと導く。

 痛い、辛い、怖い、逃げたい、死にたくない。生と死が交差する輪廻の精神状態の中、本当は自分もこの怯えているウィンド・シータと同じなのだ。一人ではちっぽけで何にもできない。出来やしない。だから信じてくれる人を求めにここに来た。

 けど、一人でも成せれる事はある。未来と守る希望を捨てないこと。

 それを信じることでロックマンは何度くじけても、何度倒れても、その思いが消えない限り、七転八倒、不屈の精神で強くなった、守り抜けた。この少女だって同じだろう。どんなに不条理な理由でも、どんなに屁理屈な思いを叩き付けられても、『未来』とこの地球の人を守りたい『守る希望』があったからここにいるんだ―――………。

 

「また君か!!今、君に用はない!!」

「-――黙れよ……。君がどんな屁理屈な理由でこの子を殺そうとしても僕は許さない!!ウィンド・シータは僕の大切な『仲間』だから!!」

「ス……バ……ル…君…………」

 

 膝の力ががっくりと抜け落ちて立ち上がれなくなっているウィンド・シータは目の前の状況がはっきりと明確に理解できた。

 死に近いときは冷静に判断できる。何故ならその答えは『死に終息しているから』。

 けど、彼女の答えは違った。死に近いのでなければ、生から離れているわけでもない。

 だったら何故?

 それはロックマンの大きな背中に答えはある。彼が放つ、彼独特の優しいオーラ。その大きくて、温かくて、頼りになる背中を見つめていたら安心できたのだ。彼が必死の思いでムラサメ・シグマから自分を守ってくれているのだから。

 

「うおおおおお!!」

 

 ロックマンが叫んだ。全身の力を振り絞って拳が鉄のようになるくらいに力を込めて、全身の血が沸騰するくらいな想いを乗せて、血まみれの右手の拳に全てを乗せるように。―――ムラサメ・シグマのフランベルジェを叩き壊した。破壊とと共に砕け散るフランベルジェの音と、顔が驚きと焦りで歪み始めるムラサメ・シグマの顔。ただでさえ真っ赤に染まっている右手の拳がさらに真っ赤になった。

 刀身に波が打っているのが特徴的なフランベルジェ。ロックマンは殴る瞬間に波打ってない平坦な刀身の部分を渾身の一撃を載せて潰した。その結果が右腕の出血多量。

 

「んなっ!!?私のフランベルジェがっ…………!!!!」

「お前だけは!!!!」

 

 動揺してしまったムラサメ・シグマ。自分の愛用している得物が綺麗にしかも素手によって完膚なきまでに粉々に壊されたのだ。自分の精神に動揺が走るのは無理はない。誰だって自分の大切な物に傷や破損してしまったら動揺するだろう。

 ―-その動揺をロックマンは見逃さなかった。

 すかさず自分の真っ赤に鮮血で染まった鉄のような力がこもった右拳でアッパーカットをムラサメ・シグマの顎に向かって繰り出した。

 ムラサメ・シグマは声を上げることもできずに上に低く吹っ飛ぶ。それを見逃さないロックマン。上へ瞬間移動して回り込む。左手は大きな拳に変わっていた。恐らくバトルカードを使用したのだろう。

 見る限り、あれは『インパクトパンチ』という最大級の拳の一撃を繰り出す、まさに男が使うような脅威のカードだ。鉄を超越し、あらゆる硬化物を壊す。

 

「であああああぁぁ!!!!」

 

 ロックマンが叫んだ。インパクトパンチがムラサメ・シグマの溝に当たった。そして思い切り振り切るようにそのまま地面へと叩き付ける。  

 そこまでの記憶しか少年にはなかった。

 

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