流星のロックマン Crystal Crest   作:Dylandy

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彼女の声

「-――バル君!-――スバル君!!」

 

 少女の叫び声が聞こえる。その声には悲しみと不安が乗っていた。その声の主は。 

 ―-傷だらけになっているが無事のウィンド・シータ。ロックマンは意識を繋ぎ合わせて目をようやく覚ました。彼女の叫び声が祈りとなってロックマンを覚醒へと導いたのだろう。無事に目覚めた。

 傷だらけになっているが無事目を覚ましたロックマンは右拳にふと目をやった。

 そこには傷がふさがった右拳。綺麗に元に戻っていた。

 

「――……君が回復してくれたの?」

「うん……。こんだけ守ってもらっちゃ悪いでしょ。だから私も持てる力を持って貴方を回復させてあげた……」

「……あ、ありがと……」

 

 ウィンド・シータの健気な優しさにロックマンは少し調子が狂う。不意にも目をウィンド・シータからそらしてしまった。その一瞬の刹那。

 二人の空間を突き破るように。

 少女は、全てを捨てて、未来を切り開くために背水の陣の覚悟で来た少女は。

 ――――涙を浮かべながらロックマンに抱き着いた。ロックマンは女の子に抱き着かれる経験がなかったので思わず顔を紅潮させてしまう。けど少女が泣いてる様子を見たら、一瞬で真剣な顔になった。

 

「……本当は……怖かっ、たん、だよ……。私のせいでスバル君が死ぬ、かもしれないって……。私が、弱くて、不甲斐無い、せいで君をこんな、目に、あわせちゃった……」

「ウィンド・シータ………」

「本当にごめんなさい……。傷を回復したぐらいで許してもらえるって思ってないけど……。その代わり、貴方のいう事聞くから……」

「じ、じゃあ、一ついいかな……」

 

 刹那、ロックマンがウィンド・シータの発した言葉に考える。こんなに自分の責任だと思っている少女に負荷をかけさせるわけにいかない。自分の胸の中で怯えるように、目の前で人が肉塊の塊みたいにグチャグチャとなって地面に這い蹲っているのを見て怖がっているような少女を見てロックマンは思った。

 ―――この少女には、支えとなるものが必要だ。

 ロックマンは一拍置いて、息を吸い込んだ。肺に酸素を溜めて二酸化炭素と交換する。そして考えたことはただ一つ。

 ロックマンは自分の片手でそっとウィンド・シータの背中に優しく手を当てた。まるで母親が息子を安心させるかのように。優しくそっと包んで、少女の心を安心させる。

 ―――ロックマンが決めた少女の支えとなる『存在(モノ)』。

 

「―――ずっと僕の傍にいてくれない? 常にじゃなくていい。敵と相対する時、僕の背中を預けてほしいんだ。今回の事を別に自分の責任って思わなくていいんだよ。僕はただ守りたいものを守るために戦っただけさ。理由は君と同じだよ」

「-――ありがと……スバル君。そして……よろしくね……」

 

 少女の声の裏には儚さと嬉しさが薄く乗っていた。いつの間にか彼女が泣き止んでいて、顔を上げてロックマンに抱かれている状態になっていた。それを察知したウィンド・シータは一気に顔を真っ赤にしてロックマンの悪意のない拘束から脱出した。

 でも、決して意心地が悪くなかったわけじゃなかった。不機嫌になるわけでもなかった。

 むしろ気分がよかった。

 ウィンド・シータは彼の事を考えたら少しほんのりとだが顔を紅潮させて心臓の鐘の音の感覚が早まっていた。

 

「さて、帰ろう………。よかったら僕の家に来ないかな? 食事とか招待してあげるよ……。うちは基本少人数で食事してるし、友達とか来てくれたら母さんも父さんも喜ぶと思うんだ」

「………ごめんなさい。貴方のその優しい気持ちだけ受け取っておくね。ちょっといきなりすぎて私には無理かも……。ごめんなさい……」

 

 ウィンド・シータは突然、様子を変えて、ロックマンに謝ると同時に軽く会釈して立ち去った。勿論、礼儀正しく挨拶もして。

 少女はこう思っているのだ。

 ―――自分は人とは違う構築で作られた人工体(ノルスヴァイド)……。

 ―――肉体的、精神的に違う人と人工体である私の事を知ったらスバル君はどう思うのか。

 事実、少女は身体の構築が違う。

 必然、少女は事実を知ったら嫌われるとそう思っている。

 隠蔽、必然的出来事を絶対防御し大切な人の耳に入らないようにする。

 刹那、隠蔽してきた真実の扉はいずれ開く。

 

 

 行間1

 

「フフッ……」

『機嫌がいいな、どうしたんだ?』

「いや、スバル君かっこいいなあってね」

『まあお前を必死に守ろうとするところはかっこよかったな』

 

 場所はコダマタウン、西地区。ウェーブロードをご機嫌で移動していくウィンド・シータとその相棒、フリーストが話していた。この様子だとロックマンが自分に思いもよらない一言を発してくれたのか、顔を少し赤くして笑顔でいた。彼に対する興味心と小さな『恋』という少女が抱くものが心の奥底で沸き上がっていた。

 その様子を見てフリーストはこんなに明るいウィンド・シータを見たのは『久しぶり』でまるで息子を見守る優しい目をしていた。

 ここに来るまでに彼女と彼が遭遇したのはまるで想像を絶するような不条理な出来事と悪夢が何度も何度も襲い掛かってきたからだ。気が付いたらいつの間にか顔には笑顔という幸せの扉が完全に封じられていたのだ。

 

「-――スバル君………。私、貴方の事が好きになったかも……」

 

 とウィンド・シータは沸き上がった恋心に全く戸惑いを持たずにいた。

 

 

 行間2  

 

「なんで拒否されたんだろ……」

 

 ロックマンが食事に招待しただけなのに速攻で拒否されて戦慄していた。

 あの時の少女は何かに震えていたようだった。でもそれがなんなのかは本人だけがわかる真実であって、他人には絶対知らない真実である。

 少し落ち込むロックマンを見てウォーロックはこう言った。まるで自分の心境を容赦なくブチ込むように。

 

『お前、あいつが好きなのか?』

「なっ!!?な、何言ってるの!!ウォーロック!!」

『いやーその素振りを見ていてな。なんとなくそう思っただけだ。ったく、この事、あいつらが知ったらどうなるか……』

「ウォーロック、最後なんて言った?」

『二度は言わねえよ』

 

 スバルは最後の言葉がよく聞き取ることが出来なかった。ウォーロックも何故か、二度も喋ってくれないみたいだし。最初の自分の素振りという言葉は聞こえた。だがそこからは良く聞こえていない。自分がウィンド・シータに対する振る舞いが優しいとウォーロックに思われたせいで聞いていなかった。

 でも自分でも少し彼女に興味を持っているというのは事実だ。

 何者なのかというのも知りたい。

 何故、僕を『ロックマン』じゃなく『自分の本名で呼ぶのか』。

 これらが気になった。 

 そして彼女は一体誰なのか。僕的には大体の想像はついてる。あの優しい敬語と声。そしてあの涙。

 僕は完全とは言えないけど確信があった。

 

 ―――謎の来訪者、ウィンド・シータ。

 ―――意外と僕のすぐ傍にいて。

 ―――意外な人だったりするのかもしれない。

 

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