流星のロックマン Crystal Crest 作:Dylandy
その時、僕は彼女がなんて言ったのかよく聞こえなかった。
朝露の含んだ冷たい風が辺りを包み込むように、まるで二人だけの空間を作るかのように風がそう仕向けた。
霧が深くたちこめていて辺りは良く見えない。
彼女の顔もよく見えない。ちょっぴり紅くなっていたのは目に見えた。目もそらしている仕草もちょくちょく感じ取られた。
「……どうしたの風原さん?さっきから変な仕草ばっかりして……」
スバルは彼女の不自然な仕草に疑問を抱く。率直な疑問を叩かれた少女は驚いてしまい若干萎縮してしまった。
「……う、ううん。な、なんでもないの……。ただすがすがしい朝だなぁ……って、さ……」
「まあ、今日は風も心地よいし、気持ちいいけど……」
スバルは若干霧がかかった辺りの屋上の風景を見渡しながら彼女の言葉に共感する。ユイはいよいよこの気まずい雰囲気の空間の空気に耐え切れなくなったのか、スバルの方に歩いて来て、彼の手を掴んで、エレベーターへと向かった。
「ちょっ、風原さん!!?」
「ちょっと寒いし、教室に戻ろう。スバル君」
スバルは彼女の言葉にただ従うばかりだった。エレベータに乗って自分たちの教室のある階層へ向かう。勿論、彼女は教室に向かうまでこちらを振り向いてはくれなかった。
あの時、彼女は僕に何を告げようとしたのだろう。気になっていた自分の姿があった。
そして二人で屋上から自分たちの階まで一緒に降りてきたというのを目撃されずに済んだ。
行間1
――キーンコーンカーンコーン。
授業終了のチャイムの音が校内中に鳴り響く。今日も真面目に授業を受けることが出来た。当然の如く、ゴン太は授業に集中しないで寝たり、落書きなど遊びほうけていたのがチラホラ見えた。
バックの中に教科書などの道具を詰め込む作業をしていたら後ろから来訪者が来た。
―-それはこのクラスの生徒会長、白金ルナだった。
スバルはこの少女が自分の付近に来るたびに毎回固唾を飲んでどんなお灸をすえられるか恐怖を覚悟している。さらにこの彼女は心配性な部分が多い。
スバルは自分の身体の傷を見せないようにした。極力顔に絆創膏など貼っておかないで正解だったなと思うスバル。
「どうしたの?委員長?」
スバルは固唾を飲みながら彼女に話しかける。その様子を見ていたのか、前方の席にいるゴン太、キザマロ、そしてユイまでもがこちらを見ていた。
これは当然の事だ。この状況下でもし逃げたら呼び止められること間違いなしだ。蛇の形相で睨む彼女の目の鋭さは右に出る者はいない。
「えっと、そろそろ連休がくるじゃない?皆でエンドタウンにピクニックしに行こうかなーって思ってるんだけど、勿論皆来るわよね?」
エンドタウン。
それは標高400mの高地にある綺麗な町である。都会というのにふさわしくはないが、簡単に言えば田舎みたいな感じの町だ。高層ビルや大型デパートの建造物がなく、綺麗な野原と川が有名であり、ここに足を運んでピクニックをしに来る人は珍しくもない。
そしてここにはもう一つも名物、エンドタウンの中央区部にある城が有名だ。ニホンの有名な観光スポットとして指定されていたりする。城の名物は100人斬りというイベントである。木刀を使って、せまりくる人工ロボットを木刀で撃墜するイベントである。
これがなかなか楽しいらしく老若男女楽しめるのである。最上階の天守閣には金のシャチホコというのがある。
実はサイバー・インできるらしい。
そんな彼女のエンドタウンへのピクニック計画。三人の選択肢は『はい』という選択肢しかない。もし『いいえ』の選択肢を選んだら即刻、火あぶりの刑だ。その事は三人もよく身に染みている。
「風原さんも来ますよね?」
「えっ……!?で、でもこんな私が仲の良い4人の輪に入ってもよろしいんでしょうか……?」
「いいわよ。でも、そんなに謙遜しないの。私たちはもうクラスメイトであり、友達なんだから。控えすぎるのもよくないわよ」
「ありがとうございます……皆さんとのピクニック楽しみです!!」
彼女は両手の指を交差させてそう言った、その彼女の嬉しそうな顔がやはり魅力的だった。一瞬、心臓を抉られるような殺気を感じたのは言うまでもない。背中に悪寒を感じた三人は引っ込み思案になってしまったのである。
やっぱり何度体験しても彼女の殺気は恐ろしい。
行間2
この学校の生徒会長、白金ルナがピクニックに行こうという突拍子極まりない事を急に言い出した。でも週末までには何日かの感覚があったため余裕はあった。
何かとからまれたりするんだろうなとか、この前、こっそりと委員長のスターキャリアーを覗いたときにお料理に興味があるとかプロフィールにあったからきっと彼女手作りのお弁当を食べさせられるんだろうなとスバルは週末になるまでそう思っていた。
勿論、自分が彼女が誰にも知られてはいけない個人情報を覗いたというのは口が裂けても彼女にだけは言えない。
見たという事がバレたらプライバシーの侵害として訴えられお灸をすえられてしまうに間違いないのだから。
―――そして週末。
とある家でアラーム音が鳴り響く。
それはある時間に達した証拠を知らせる為の通知音だった。少年は勿論、目を丸くして起き上がり準備をして慌てで外出した。
これはもう日常的な出来事であって母親のあかねも顔色一つも変えやしなかった。
「スバル君、遅-―――――――い!!!!!!!!」
「ご、ごめん、寝坊しちゃって……」
待ち合わせ場所はいつもの駅前。ここからウェーブライナーに乗ってニホンの最大の駅、ターミナルウェーブステーションへと向かって、乗り継ぎをし、エンドタウンへと向かうのである。
予想通りに彼女の洗礼を僕は思い切り喰らった。それを見ていたユイとキザマロとそして予想外のゴン太が笑ってみていた。
二人のやり取りに笑っているのだろう。他人事だと思ってと萎縮してしまうスバルである。そして怒られているスバルをあざ笑うかのように太陽がスバルを照りつける。
「ふぅ……、ここで怒っても仕方がないわね……。とりあえずもう少しでウェーブライナーが来るからそれに乗車してエンドタウンへと向かいましょう」
ルナの合図に4人が同意する。暫くするとターミナルウェーブステーション行きのウェーブライナーが到着した。これに乗車して向かう。
乗車して僅か30分。高速500km以上の速度で走るウェーブライナーはあっという間に目的の場所へと運んでくれる。ターミナルウェーブステーションは国内最大の大きな駅。全国地方へと展開しているウェーブライナーが待機している。利用者は月に3億人という大多数の人が利用している。
5人はエンドタウン行きのウェーブライナーに乗ってエンドタウンへと向かった。
そこからわずか30分だった。さすがはウェーブライナー。1時閑弱で目的のエンドタウンの駅にご到着した。
「さて、まずお城の見学にでも行きましょうか」
「そうですね」
とユイとルナが明るくそういった女の子同士であるためか和気藹々とした雰囲気で二人は歩いていた。その後ろを見ていた3人は癒されていたりする。
エンドタウンは自然が溢れた町。和菓子のお店などたくさんある。中にはあの有名なエンドまんじゅうなどの和菓子職人の手によって作られた有名な和菓子があったりする。
エンドタウンの町の風景を堪能しながらエンドタウンの中心区分にあるエンド城へと5人はたどり着いた。
入場料を払って5人は中へと入っていく。ちょっと老朽化した木の床の上を歩く度に木から聞こえてくる軋む音が何かと心地よかったりする。これが城の雰囲気をだしているのかもしれないんだなと思ったスバル。
戦乱の世の中で使われた鉄砲や鉄の鎧、槍、刀、などがあった。途中には100人斬りというイベントゲームがあったがスバルとゴン太が挑戦したが70人抜いた程度でリタイアしてしまっていた。
その後は5人全員が和気藹々としながら天守閣に上って最上階からの景色を眺めていた。けど、やはり少しだけユイが会話の輪に入らずに遠慮し気味になっている様子があった。やはり遠慮しているように見えているのを感じていたスバル。
そんな彼女を放っておけない彼になっていた。
「――されここらへんでいいわね。お昼にしましょう。私、実はみんなの為に食べてもらいたくてお弁当持ってきたの」
『予想的中したなスバル………』
「あぁ………全くだよウォーロック…………」
エンドタウンのエンド城を楽しみ、適当に道を歩いてたら丁度よく昼ごろの時間帯になったためルナがお昼にしようとふっかけてきた。
スバルとハンターVGで待機している相棒、ウォーロックはルナの声を聴いて萎縮してしまう。スバルとウォーロックは過去に他人のスターキャリアーの中身を覗いたことがある。ここにいる白金ルナの個人情報や趣味も、そしてあの有名人のスターキャリアーの中身を覗いたこともある。
だがこれは彼にとっての命に係わる国家機密級の秘密事項である。
ルナは用意周到なのかバックの中から草原の上に座るためのビニールシートを所持してきた。赤と青のラインが入った綺麗で5人分全員入るビニールシートである。
「さっ、どうぞ上がって。お弁当食べましょう」
「そうですね」
とユイがにっこり笑顔で同年代の女子の一言に頷きながら、やはり丁寧に靴を脱いで、綺麗に揃える。マナーの丁寧さと気品の高さが出ている。
ゴン太はもはやどうでもよく、スバルとキザマロはユイの丁寧さに心を動かされたのか、右に同じ動きをして靴を揃えていた。
「さーて!!俺の弁当はこれだーーーーっ!!」
『ブロロロ……。どうせいつもの牛丼山盛り弁当だろ?』
「だーーーーっ!!!それを言うな!!弁当を開けるとき何が入ってるかそれが一番楽しみなんだから!!」
『といってもお前の弁当は牛丼しか入ってないだろ?』
「そ、そう言われたら………」
ゴン太の相棒、オックスは常にゴン太と一緒であるため彼の日常や食事などが分かって当然の事だろう。ゴン太は食べることを生きがいにしているような男な為食べ物に関しては結構デリケートだった。お弁当の中身を空けてみるとやはり言うまでもなく牛丼であったため、ゴン太は少し落ち込んでしまった。
だが、箸を手に取って牛肉を食べた瞬間、すぐにあのマイナスオーラは塵と化して消えてしまった。ここがゴン太らしいなと思う一同。
ゴン太の食べる様子を見て4人も視線を合わせてそれぞれのお弁当の蓋を開ける。
たこさんウインナーとか愛らしい弁当がそれぞれの弁当に入っていた。
「生徒会長、それ自分で作ったの?」
「ええ、そうよ。作るの大変だったんだから。皆食べてみて!」
ルナはえっへんと誇らしそうに自分の作った力作の弁当を見せる。中身は卵焼きやウインナーなどのごく普通の一般の家庭の母親が作りそうな料理だった。
見た目は上々、でも問題が味……となる。吉とでるか、凶と出るか。生と出るか、苦と出るか。
けど、年頃の女の子が時間をかけて作った力作の弁当を拒否したまま食べないわけにもいかない。ここで食べなかったら彼女を傷つけてしまうだけだ。
「い、いただきます…………」
スバルは箸をとって、一番きれいな卵焼きをつまんで口に運んだ。
入れた瞬間、とてつもない破壊力を持った味が僕らの口の中に襲い掛かる……という訳でもなかった。
卵焼きはふんわり柔らかく焦げた味とかしなかった。
味付けも丁度良く不快、苦痛の思いに浸らずに済んだ。
「会長、これ美味しいよ!!覚悟決めて食べた甲斐があったよ~」
「ちょっと、それどういう意味かしら?星河君……」
スバルの何気ない一言が彼女の地雷を思いっきり踏んでしまったようだ。スバルは無意識で自分の一言を晒してしまった。
横にいたキザマロ、ゴン太は唖然とした表情でルナとスバルを見つめていた。そして二人はとっとと卵焼きを食べて体の中へと運ばせる。
「い、いや!!別に不味そうとかそんな意味で言ったんじゃないよ僕は!!」
「ふぅ~~ん。それなら別にいいんだけど。まぁ、美味しいって日本のヒーローさんから聞けたし作った甲斐が本当にあったわね」
スバルは安堵の息を漏らす。心臓が大きく鼓動を打っていた。怒りに満ち溢れた彼女と接するのはやっぱり怖い。立ってたら足が竦むし、座ってれば腰が抜け、脱力してしまう。下手したら失神の場合もある。
「うふふふ、いつもこんな感じなのですか?」
「え、はいそんな感じですね。会長が騒いでるけど僕らにとってはなんか元気付けられるんですよ。不思議と……」
「へぇ……、そうなんですか……」
ユイがルナとスバルの微笑ましくは見えないが殺気立ったやり取りを見てて笑顔を広げた。キザマロがユイの質問に答えた。
やはり彼女は未だ敬語を使って話している。まだ僕たちの関係を友人として見ていないのか。それともただの知り合い程度として見つめているのか。
スバルはやはり、彼女の事が気になったのである。
昼食が終わった後は川辺の畔で水遊びをした。男三人は小石を投げて水切りをしたり、透き通るような川の水を見つめていたユイとルナ。女の子同士の会話が見えた。
叫ぶ声、笑う声、悔しがる声、楽しむ声。
それぞれの感情の籠った5人の声は本当に楽しそうな声だった。だが、本当に5人はピクニックを楽しめたのか。
5人じゃなく4人だったら?
謎の転校生、風原ユイは本当に楽しめたのか。友人に敬語や当たり前の事に興味を抱いてまで、彼女は本当に堪能できたのか。
スバルは気になったのであった。
―――列車の音が聞こえる。
―――帰りのウェーブライナーに乗車してコダマタウンに向かっているところである。どうやらほとんど疲れていたようだ。キザマロ、ゴン太、ルナはコダマタウンまであと1時間弱はあるためウェーブライナーが起こす僅かな揺れに眠りを誘われて睡魔の世界へと旅立ってしまっていた。
スバルは西の空に沈む夕日を見つめていた。
ユイは隣で寝ているルナを見つめていた。
ふと、スバルは思った。三人が寝てる今なら言える。
「ねえ、風原さん………」
「何?どうしたんですか?スバル君……?」
「僕たちの皆との関係、君の瞳から見てどう思ってる?」
「……………」
ユイは黙り込んでしまった、予想的中。やはり控えめの性格である彼女はまだ知り合いとしてしか見積もっていないらしい。
「あのさ………。明後日、僕と一緒に何処かいかな……い?」
スバルは最後の方の声が小さくなった。自分の発言をよく考えてみるとこれじゃデートのお誘いをしたように思いっきり見えてしまう。スバルは顔を紅潮させてしまった。思いがけない発言で自分の顔が真っ赤に染まる。
「別にいいですよ……。私も貴方と少しお話したいなあって思ってましたので……」
とユイがそう返答してきた。橙色に染まる綺麗な西に浮かぶ夕日は彼女の顔を薄暗く照らした。彼女の顔はほんのり桃色になっていた。
ユイは何かを逸らすように反対側を向いてしまった。
「うん……。じゃあ、明後日の午前10時ね!」
三人には知らない二人だけの約束が夕日が降り注ぐ陽光のもとで交わされた。