流星のロックマン Crystal Crest 作:Dylandy
「なんか勢いであんな事言っちゃったけど結構不安だなあ……」
『何言ってんだスバル、お前が巻いた種だろうが』
「そりゃあそうなんだけどさ……」
スバルは戦慄する。何故、心がそのような思いに浸っているのかというと一昨日が元凶だ。
それはいつものメンバー4人に転校生、風原ユイを加えた5人でエンドタウンへピクニックしに行ったのだ。ピクニックに行こうと言い出したコダマ小学校の生徒会長、白金ルナは皆に自作の弁当を食べさせて感想を聞くというのが目的だったらしい。そしてここからだ。控えめ、御淑やかなな彼女、ユイはまだ僕たちとの関係を『知り合い』として見ているのだろうか。会話にはちょくちょく入っていたものの何回かあまり会話の輪に入れていなかった。
そこで僕は彼女の緊張の糸を解し、ちゃんとした友人関係として見積もろうと僕は彼女と二人で遊ぶことにしたのだ。
でも遊ぶといってもせいぜいスピカモールにいってショッピングになるだろう。あくまでもデートじゃない、彼女との交遊をするんだ。
スバルはそう念じていた。
そう思いつつ、スバルは珍しく朝早く起床して駅前へと向かう。時間はまだ9時45分ぐらい。けどここは男として予定の時間より早く集合場所に向かい、相手に迷惑をかけないのが男としての最低条件だ。
「時間は……9時48分か………少々早かったかな……」
スバルは川沿いのほとりにある駅に到着したと同時にハンターVGを展開して自動内臓されている電波時計を確認し、現在時刻を確かめた。
すると川の畔沿いの向こうから見覚えのある少女がこちらに向かって歩いてきた。
「―――あれ?スバル君?早いん……だね………」
こちらに向かって歩いてきた少女……それは風原ユイだった。夏になる季節の前とはいえ、まさに少女らしい服装だった。綺麗な桃色のスカートなどかわいい色で自分を染めていた。髪止めにも一味加えて花びらの形をした髪止めを付けていた。
「………あっ、風原さんも早いね……。予定の時間より10分ぐらい早いよ………」
「………予定の時間に遅刻したらダメかなって思って……。私の為にスバル君が付き合ってくれるんだから遅れてはならないって………」
やはり彼女は謙虚になっていた。自分の為に彼はしてくれているんだと控えめになってしまっている。
「別に僕もさっき来たから気にしなくていいよ。今日はそんな他人行儀な行為しなくていいよ。僕達は友達なんだからさ」
「………うん、ありがとスバル君……」
「さっ、行こうか。丁度いいタイミングでウェーブライナーが来たし」
こうして二人は目的地の場所へと向かう。
「やっと着いた~~」
「やっとですね」
スバルがウェーブライナーから降りた後、腕を上に伸ばして背伸びする。到着した場所はニホンでは最大規模となる大型販売店スピカモールだった。過去にある少女とここに来て悲惨な思いをした経験がある。ユイは田舎から来たのか、興味津々な表情でスピカモールを見ていた。これだけ有名なショッピングモールなのに知らないという事は余程の田舎から来たのかも知れない。
スバルは彼女を田舎者という意識を振り捨てて彼女を誘導しつつ中へと入っていく。
「さて、どこに行こうか………」
「なんか大きくて迷ってしまいますね………」
スバルとユイはメインストリートを歩く。洋服店、宝石店、電化店、色とりどりの店が並んで接客をしていたりする。
スバルとユイは話の会話があまりないまま進んでいった。
「何処か行きたいとことかある………?」
「……え、えっとね洋服店とか……に行きたいな……かわいいお洋服とか買いたいし………」
彼女にとってはデート感覚なのだろうか、少し恥じらいがスバルの目に明確に映って見えた。思わず顔が若干桃色に染まった彼女の恥じらいと遠慮しがちなとこを見てて、スバルは思わず顔が赤くなってしまった。
―――やはり、彼女も一途の女の子だ。洋服を購入してお洒落をしたくなる年頃でもある。そう言えば彼女と来た時も洋服を買いたいなと言っていたのが記憶にある。
お洒落をして、綺麗で可愛い女の子は好きだし、何よりひかれてしまう。スバルもその経験が何回もあった。
「――この洋服どうかな?」
「似合ってるよ。違和感がなくて可愛く見えるよ、風原さん」
「―――か、可愛いなんて、そんな………」
スバルの『可愛い』という一言にユイは両手を頬にあて、紅潮した顔を隠した。素直に可愛いと言われてしまった為、ユイは驚いてしまった。勿論、スバルもユイと同じ。
彼女のルックスはどうやら他の人と比べて高いようだ。何を来てても似合うし、それに可愛い。あの大人気シンガーと比較しても引けをとらないだろう。
スバルはちょっと彼女の照れ隠しな行動を見ていて『ロリコン』ではないのかと嫌な答えに辿り着いた。でも自分はそれでないと頭をぶんぶん振って気持ちを切り替える。
ユイは商品の服を持って試着室へと入る。布のカーテンを隙間なく綺麗に閉める。スバルはそこの付近で彼女が着替え終わるのを待機していた。
「ふう………」
『スバル……お前も女の扱いが若干慣れてきたんじゃないか?』
「気のせいだよきっと………。こういうのって一瞬の気も抜けないんだよ」
『そうか………俺は少し出かけてくるわ……5分程度で戻ってくる』
「わかったよ、ウォーロック」
そう言いつつ、相棒はウィザードオンして何処かに行ってしまった。壁を擦り抜けて向かう先は何処なのだろうか。ただ時間だけを言って相棒は消えた。
と、その瞬間、スバルの横から知らない人が大きな足音を立ててぶつかってきた。この時、スバルは頭の思考回路の処理時間が数倍に伸びた。
まず、ぶつかってきた相手がそのままこちらに気付かずに行ってしまった事。
そして、自分がぶつかった衝撃により身体の態勢が完全に床に倒れる態勢になっている事。
倒れる体の先は試着室。カーテンで試着室の中がさえぎられているあの試着室。
頭の危険信号のアラートが大きく鳴り響いた。このままだと間違いなく彼女がいる試着室の中へと入ってしまう。この状況を打破できないか。身体は今倒れかけている。足は地面についている。スバルはどうにか全身の筋肉を使って粘った。
このままだと、間違いなくお約束パターンになってしまう。それだけは絶対に回避しなくてはと思ったスバル。
――だがどうやっても、無理だった…………。
ぶつかった衝撃で押し倒されカーテンの下の部分を擦り抜けるようにスバルはあの魔の試着室へと入っていってしまった。彼女の驚きの声と彼の声が聞こえ、それが交錯し、そこにあったのは。
―――着替えているユイの姿だった。
今の彼女の状態は体の上部と下部につける女の子用の下着を付けている姿だった。
その下着姿を諸に見てしまったスバルは動きが止まった。
スバルは目の前の視界が真っ白に染まり、脳の思考が凍りついた。試着室に転がり込んできたスバルを見たユイは顔を紅潮させる。それは試着室の中にいるユイはまだ着替え途中であり、服を脱いでいたためである。
自分の裸体を隠すのがない上半身と下半身に可愛い桜色の下着を装着してるだけの下着姿のユイだった。籠には自分の着用していた服が丁寧にたたんで入れてあった。ユイは両手で体を隠すようにした。スバルはもうその時は白目をむいて気絶していた。
顔を真っ赤にしているユイはおそるおそる近づいて彼が気絶したというのを認識したら即着替えた。その後、彼女は試着室で虫の息のように気絶している彼を叩き起こす。
「スバル君、スバル君!!」
「あれ、僕……………。あっ!!」
スバルは顔と背中に冷や汗が走った。彼女の顔を見たらただ顔を赤くして視線をそらしていた。無理もない。彼女の着替えているところにちょっとした不慮の事故で彼女の下着姿を目撃してしまったのだ。
下手したら彼女は傷ついてしまっているかもしれない。
僕はちょっとばかり不安になってしまった。
「……えっと気にしてないよ………。私が着替えてる時に意図的に試着室に入ってきたように見えなかったし…………」
「あっ……ごめん……わざとじゃないんだ。誰かにぶつかってそのひずみで倒れちゃって………。ごめんね風原さん……」
「うん、わざとじゃないならいいんだ。それに…別に……ル君になら……ても、恥ずかしくなか……かも……」
「何か言った?風原さん?さっきの事気にしてるなら謝るよ………」
「ううん、ただの自分の独り言だよ。さっ、さっきの事は忘れましょうか」
どうやら彼女は下着をつけてカバーしてたためどうにか裸を見られなかったのが安心だったのかあっさりとすぐ許してくれた。彼女の優しさに感謝するスバル。もしユイではなくルナだったら間違いなくこの場所で死を迎えていただろう。
でも彼女は他に別の意味もあって許してくれたのかもしれないとスバルはそう思っていた。
覗きで最後を迎えるなんて最低最悪の死に方だ。スバルは試着室の付近で待機するのは気を付けることにした。
とりあえず、『彼女』だったらマシンガンストリングで縛られてぼっこぼこにされていただろう。
「……とても似合ってるよ、その服」
「――ありがと」
ユイが商品の服に試着しているのを見た後、試着室から退室した。運よく周りの人は誰もいなかったのが不幸中の幸いだ。男女二人で試着室から出てくるのを見られたら一体どんな目で見られるだろう。
そんな事がもし起きていたらもうここには二度とこれない。
「お腹空かない?さっきのお詫びとして昼食をおごってあげるよ、風原さん」
「そ、そんな悪いですよ……。さっきのは事故なんですからそんなに気にしなくても……」
買い物を終えたユイは片手に紙袋を持ち、もう一つの片手で遠慮の仕草をしていた。けど、スバルは男として、幾ら不慮の事故だとしても覗くという事は最低の行為だ。
だから汚名返上としてスバルはここでおごりをしようと提案したのだ。
「で、ではお言葉にあまえて、スバル君におごってもらいます……」
「さっきから敬語をあまり使っちゃダメって言ってるじゃん、風原さんー。女の子らしいけど友達なんだから敬語なんか使わなくていいんだよーー」
「そう思ってるんですけど、使ってしまうんですよね……」
中々雰囲気のいいデート。これを相棒ウォーロックはウェーブロードをの上で見ていた。勿論、スバルユイのハプニングも目撃してしまった。あの時はさすがのウォーロックも視線をそらしてしまった。信頼できる相棒がドジを踏んでしまったことに。
そして考える。
『あのミソラって奴とのデートよりどうみても上手くいってみえないか?このデート………』
ウォーロックは一人でそう考えていた。
「――えっと、じゃここでいいかな?」
「いいよ、風原さんが行きたいところならどこでも」
向かったとこはデザートショップだった。かつてあの『彼女』ともここに来たことがある。彼女は可愛い見た目とは裏腹に無限の食欲を持つ少女である。一番大きいサイズのパフェを余裕に食べてしまう伝説もある。
やはり、年頃の女の子は甘い物が好きなのだろうか。ユイもあの彼女と同じでガラスケースの中に並べられているスイーツを見ていた。視線の先はクレープだった。薄い生地でその中にクリームやバナナなどがトッピングされた甘いスイーツである。
ユイがクレープを見ているのをスバルは思った。
「風原さんはクレープが食べたいの?」
「えっ!?べ、別に食べたいわけじゃ………」
「でもずっと見てるよそのおいしそうなクレープ」
「………………………」
ユイは図星だったのか黙り込んでしまった。スバルはスイーツを自分の分と彼女の分を注文した。綺麗なレジの店員さんに「デートですか?」と言われてしまいスバルは興味の視線を浴びせられたため少し恥ずかしくなった。勿論、ユイも周りの視線に気になっていた。
でも、不思議と彼女はいやそうに見えなかった。むしろ嬉しそうな表情に見えた。
スバルとユイは店内にいる客からの声を聴きながら隅の席に座った。隅の席に来るまでに「お似合いだな」とか「美少女、美少年の組み合わせね」とかなどの少し過大評価されているような声が多々聞こえた。
「はい、風原さん」
「あ、ありがと……。いただきます」
ユイはスバルから出来立てのクレープを受け取って小さく食べた。もぐもぐと顎を動かして食べていく。スバルも同様、ユイと同じで小さく食べる……とはいかないが普通に食べていく。
二人はあっという間に食べてしまった。言葉が出ないほどおいしかったのだろう。さすがあの彼女が厳選するお店だ。
味も信頼もあるのだろう。店を見ていたら隅っこに何故か彼女のサインが飾ってあったことに気が付く。
―――そして、色々と時間が過ぎていく。
「スバル君、今日は楽しかったよ。ちょっとした事故とか起きたけど、私はそれなりに色々と楽しめたよ。楽しいデートをありがとうね、スバル君」
「いやいや、僕も少しまだ風原さんが僕達との壁を気にしているんじゃないかって気にしてたんだ。今回ので心に安心が出来たなら僕は嬉しいよ。今日は楽しかったよ、風原さん」
ウェーブライナー、コダマタウンの川沿いの畔の駅に下車しとこである。二人は今日一日、思いっきり楽しめた。彼女もきっと少し安心とか、気が楽になっただろうし、これで敬語や他人行儀などの正しい礼儀作法が少しずつ消えて、ちゃんと友達と見てくれるはずだ。
知り合いだけではなく、ちゃんとした友達で見てほしい。
スバルも昔そうだった。自分からしては知り合いだとしても、彼女らからしてみれば、クラスメイトであるなら、それは友達である。
「じゃ、またね~~」
「さようなら~~」
二人はそれぞれの家に帰っていったのである。ユイはなんか嬉しそうな表情で彼の事を思いつつ、この思い出が詰まった紙袋を両手で持って家に浮足立って帰り、スバルも同様であった。