流星のロックマン Crystal Crest   作:Dylandy

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悲劇の覚醒

「私は元から、貴方に殺されるつもりはありません!!」

「いい覚悟だ!! それでこそ殺しがいがあるぞ!! ウィンド・シータ!!」

 

 暗い空の下、5分前まで平穏の一時を見せていたコダマタウンの展望台は戦いの展望台へと変わっていた。叫ぶ声、奇妙な者が擦れる音、羽ばたく音。そして、何かが弾ける音。

 ウィンド・シータは彼女が持つ、特有の短いソードで戦う。ムラサメ・シグマは鎌という人の命を刈り取るために作られたのではないかという風格を持つ鎌で戦う。

 

「……中々、戦いの基礎基本は分かってきたようだな………。動きに無駄が消えてるなウィンド・シータ!!」

「私だっていつまで同じ場所に立ち止まってなんかいませんよ!!」

 

 ウィンド・シータはライトニングソードの柄を強く握ってムラサメ・シグマへと襲い掛かる。だがウィンド・シータのライトニングソードは無残にも宙に弧を描くだけ。だが外れても、回転、ステップを巧みに使い、威力を失わせない。

 そして当てると確信したウィンド・シータはライトニングソードの柄に力をグッと込める。そして大きく振りかざす。聖なるライトニングソードは綺麗に光り輝く。その為、神速、と呼ぶほどの速さではないが彼女の力によって振り下ろされた剣はムラサメ・シグマに申し分のない速度で振り下ろされる。

 

「あまい!!」

 

 ムラサメ・シグマはウィンド・シータのライトニングソードを自分の得物、鎌の長い柄の部分で綺麗に防ぐ。辺りには火花とノイズが同時にまき散らされる。

 

「防がれても!! ウィングシュート!!」

 

 ウィンド・シータの背中に生えている翼から、無数の羽が飛び出し、まるで意志をもっているかのように飛び出した羽がムラサメ・シグマに一直線に襲い掛かる。左から、右から、上から。

 羽は硬質化し、羽の矢と化した羽はムラサメ・シグマに綺麗に突き刺さった。

 

「その程度か!!」

「きゃっ!!」

「――そんな小手先の技はきかないぞ……。もっと本気で来ないか……。そうだ、あの君に備わっているあの謎のモードをやってくれよ……。それなら私にも君を倒したいという執念の気持ちが沸き上がるんだ……」

 

 ウィンド・シータのウィングシュートを易々と体で受け止め、ウィンド・シータに向けて弾き返す。その上、更に彼女の中に秘める内なる力を解放させろと挑発している。

 だが、冷静沈着なウィンド・シータは彼の挑発には乗らない。冷静な判断がいられていた。

 彼も冷静だ。心・技・体を兼ね備えたオールラウンダーだ。けど、心には戦闘が好きという心を持っている。

 

「だったら、本気を出せるまでだ!!」

 

 ムラサメ・シグマは姿を消した。

 いや、消したというより『見えなくなった』と言った方が正しいだろう。早すぎて見えないのだ。僅か1秒に達するその僅かな時間。先程の彼女のウィングシュートで距離は空いていたがその一瞬の刹那、彼はその空間を走り抜けて埋めたのだ。

 ムラサメ・シグマは鎌の刀身の部分を使って攻撃はしなかった。柄の部分を使ってウィンド・シータの溝に大きな一撃を与える。ウィンド・シータは声も出せないままゴムボールのように吹き飛ばされる。

 

「ゲホッ!!うっ……速すぎ……る…」

「――はぁっ!!」

 

 ムラサメ・シグマはゴムボールのようにふっ飛ばされたウィンド・シータに追い打ちをかける。再び神速を超えるような速さを使って移動する。彼が消えた足元は地面が少し凹んでいた。

 ムラサメ・シグマは神速の速さを使って、鎌の柄の部分を振りかざし地面で転がっている彼女を再び大きく吹っ飛ばす。

 衝撃と轟音があたりに大きく、そして彼女の体の激痛の奏でるように音が舞い上がる。

 ウィンド・シータの身体は僅か2発でボロボロになった。

 身体を起こそうとしても全身の筋肉が悲鳴を上げる。身体の節々が悲鳴を上げる。

 声も出せない。呼吸も満足にできない。視界も眩む。

 ウィンド・シータは力尽きる寸前だった。

 

――一方その頃。

 

「………うっ……こ、ここは……」

 

 少年、星河スバルが目覚めた。身体に一瞬痛みが突き抜けてスバルはそれによって一気に目が覚める。

 電波変換した状態だった。そして荒れている展望台。その状況を見たスバルは今の状況を一瞬で思い出した。

 そして無造作に立ち上がる。焦点が合わず体を震えさせ、右腕を抱えるように立ち上がったロックマンは目の前の光景に呆然と立ち尽くす。

 そこにあったのは、冷静沈着で、実力も折り紙つきの相当な実力者ウィンド・シータが瀕死の状態だったことを。彼女は相当な実力だった。どんなときにも余裕の表情で対処していたあの彼女がこんな無様な格好で、地面に這い蹲るようになっていた。

 ロックマンの頭の中にある記憶は彼女が少なくとも自分より勝っている事だ。その彼女が負けているのだから、その相手はもっと凄い猛者に違いないとロックマンは悟る。眩む視界の中、ロックマンは必死に焦点を合わせた。

 ――そこに映っていた相手は一度倒した強敵、ムラサメ・シグマだった。死神の持つ鎌を所持して、西洋風の剣を廃棄していた。

 

「……なんであいつが……」

「ロックマン、下がっていて……ください……。これは私と……奴の問題……です……」

 

 と言い、ウィンド・シータはライトニングソードを杖代わりにしてどうにか立ち上がる。それでも足はガクガクと震えている。決して武者震いではない。自分の身体がいう事を聞かなかった。指令を無視されている。自分の身体はもう死に近い状態だった。

 それでも、諦める訳にはいかない。一度、死の地獄を見てきた少女はこれ以上の死を見ることは絶対的に無いはずだ。目の前の状況をあきらめなかったからこそ自分は今、ここにいる。この地球の大地の上に立っている。

 震える腕、体に叱咤してライトニングソードを構える。目は眩んでいる。足は震えている。腕には力が入らない。頭は回らない。呼吸はあれている。

 けど、彼女の目には光が消えていなかった。決して希望の光というのでもなければ、絶望の光でもなかった。彼女の目には諦めないという不屈の光が輝いていた。

 ムラサメ・シグマは構える。顔に不敵な笑みを広げて、まるで勝ちを確信したかのように、鎌の柄を長く持つ。そして、二人が接近した。二人の得物がぶつかり合い、最大のノイズと轟音をまき散らした。鍔迫り合いとなった。だが、体力面的に考えて有利なのはムラサメ・シグマの方だ。正直言うと、ほとんどノーダメージに近い状態だ。

 

「チッ……。まだ『アレ』を使わないか……。だったら奴が本気を出させるまでだ!!」

「…来る!!」

 ムラサメ・シグマが鎌を構えてウィンド・シータに一直線に向かってくる。殺気を限界までたたせて、正面にいるウィンド・シータに恐怖という感情を植え付けるように高速で向かう。

 ウィンド・シータはライトニングソードを斜めに構えて、呼吸を無理矢理止めて、集中する。

 だが、ムラサメ・シグマの言った一言が本気を出させるために今の標的(ターゲット)がウィンド・シータではなく仮にここにいる別な者としたら?

 それは、誰だ?

 この場にいるのは手負いのロックマンと自分、ウィンド・シータ。

 そしてムラサメ・シグマ。

 ――そう、ムラサメ・シグマの目的は。

 彼はウィンド・シータに目もくれずに負傷のロックマンに急接近した。

 ――青い流星、ロックマンを仕留めることだ。

 動くこともできずに自分の横の通過を許してしまったウィンド・シータ。あちらには彼がいるという危険信号を鳴らしつつ振り向く。

 

「ウィンド・シータを本気にさせる為………その生贄となってもらうぞ、青い流星、シューティングスターロックマン!!」

「くっ、体がいう事を……」

「ロックマン逃げて!!アイツの目的は……!!」

 

 ウィンド・シータが言葉を言い終える前にムラサメ・シグマによる洗礼をロックマンはもろに受けた。鎌の刃の一撃をまともに喰らったロックマン。一回高く吹き飛ばされ、そのまま受け身にとれずに地面に墜落し、衝撃が凄かったのか、小さくバウンドした。

 

「フッ、コイツの命はないぞ……」

「や……やめて……」

 

 ムラサメ・シグマは気を完全に失ったロックマンの首根っこを掴んで絞める。勿論、ロックマンは気絶している為無抵抗だ。

 ウィンド・シータは彼の行いに体が震えていた。

 恐怖、圧倒的実力、威圧、とかの感情で震えているわけではない。怒りの感情で震えているのだ。

 

「さあ!! 君に秘められし能力を使ってコイツを助けてみるがいい!!」

「……世界を構築する物質、……人の理念を掲げる創造、……そして秘められし無限の力……」

 

 突然、ウィンド・シータが詠唱し始めた。と同時に辺りが地響きと地鳴りを奏でていく。

 ムラサメ・シグマはその彼女の秘められし能力に額に汗を垂らしていた。あの彼でさえ、後ずさりするほどの彼女の隠された秘密。

 詠唱を終えた瞬間、ウィンド・シータは黒いオーラに包まれて目の色が碧と黒がいりまじった気色悪い色に変わった。

 その瞬間、ウィンド・シータは詠唱し始めた。言葉には意味わからない英語で喋っていた。と、その直後、ウィンド・シータの両肩から、レーザーがムラサメ・シグマに向かって照射された。

 

「くっ!?」

 

 一瞬の刹那、急に発射され、不意を突かれたものの、間一髪回避は成功した。だが………。

 

「……………………」

 

 ウィンド・シータは秘められし能力で解放された力によりライトニングソードが黒く染まっていた。その黒く染まった剣でムラサメ・シグマを吹き飛ばした。ゴムボールのように大きく吹っ飛んで砂煙を巻き上げながらようやく止まった。

 

「これを待っていたんだ………。我が実力、どこまで通用するか楽しみだ!!」

 

 とムラサメ・シグマは不敵な笑みを広げながら鎌を片手に突っ込んでいった

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