流星のロックマン Crystal Crest   作:Dylandy

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残虐の旋律

「うおおおおおお!!」

 

 ムラサメ・シグマが雄たけびをあげて黒いオーラを放ち、轟々しくたっているウィンド・シータに向かって鎌の柄を強く持ちながら接近した。

 彼は恐らく電波体の中で最上級、つまりSランク級の電波体に位置する存在だ。Sランク級と言えば、地球外侵略事件のブラックホールの電脳にいたシリウス。

 そして、ラ・ムー事件解決時に突如、反転世界と呼ばれる今の世界とは全く違う『終わりを迎えた世界』からの来訪者、アポロン・フレイム。

 最後に、地球に腰を据えている孤独の戦士、ソロ。心に無限の希望とキズナを抱きし若き少年、星河スバル。そのSランク級の彼が、格下のウィンド・シータ相手に手こずっていた。それは何故か。彼女に秘める内なる『力』を解放したからだ。

 それによって彼女の風貌が変わり、全てにおいて格段に上昇した。

 全てを超越したウィンド・シータは近づく者を全く近寄らせない。

 障害となる存在は排除するという者になってしまった。

 

「うぐっ!?」

 

 ムラサメ・シグマは覚醒したウィンド・シータに黒いオーラの衝撃波だけで吹き飛ばされた。ムラサメ・シグマは鍛え上げられた体を器用に使って綺麗に着地する。

 彼女が放つ、闇と呼ぶにふさわしい黒いオーラは気を放っていた。まるで孤独を好むあの時の彼のように。

 

「………対象を発見。重要危険人物……危険度Sランクを超えてSSランク……。障害となる者と断定し……抹殺を開始する……」

 

 その声に意志はなかった。まるで機械からプログラムによって発声される声のように冷たい声だった。

目の色は黒く、身から発する邪悪さを持つオーラは威圧感を増幅させていた。

 抹殺開始、という声を言った後、ウィンド・シータはよく分からない言葉を言った。簡単に言うと、詠唱しているのだろう。中世風の発言、というにはならないが、それに近い感じはあった。

 直後、ウィンド・シータの顔面に白いリングが出現した。その白いリングはドンドン出力が上昇していくのが遠くにいるロックマンでさえ感じられる。

 そして一瞬の刹那、ウィンド・シータの顔面にある白いリングが火を噴いた。極太のレーザーがターゲットとしたムラサメ・シグマに向かって白く輝き、消し去ろうとする。

 ムラサメ・シグマは簡単に対処した。レーザーというのは一直線に進む熱源を持った光線。力を失うまでただひたすらに、まっすぐに進む。

 なら、その対処方法は簡単だ。その一直線上の軌道上から外れればいいだけの事。その軌道上から外れる為に横に飛んで回避した。

 回避し、何もない方向へと飛んでいった白いレーザーは少し空にあるウェーブロードを破壊し、何も残さなかった。ウェーブロードはかなりの耐久値がある。それを破壊するという事はかなりの威力があるという事を物語っている。

 そして、ムラサメ・シグマが回避し、その隙を狙って突進していく。柄を強く握り、少しだが悲鳴を上げる全身に鞭打って腕に力を入れる。そして鎌の刀身の届く範囲内に入ったら腕の筋肉を絞って解放する。

 ―――だが、悲しくも彼の得物は宙を描いただけだった。限界まで溜めて放出された力が目標の敵へと当たらずに綺麗に刀身が弧を描きながら空を斬り、そしてよろめくように彼は倒れかける。

 直後、彼の頭の中の危険信号が鳴り響く、彼が狙った相手のいた空間は無人の空間へと移り変わっていた。ムラサメ・シグマの視界に彼女の姿は映っていない。なら、無人の空間、視界に入っていないという事は、標的(ターゲット)としていたウィンド・シータは彼の目に見えない所、つまり後ろにいるということになる。

 背中に悪寒を走らせて身体に力をいれつつ勢いよく振り向くムラサメ・シグマ。頭の中は真っ赤に輝く危険信号のランプがサイレンの音を大きくあげると共に危険の意味をあらわしている。

 

「しまっ………!!!!」

 

 言葉を言い終わる前よりウィンド・シータの方が速かった。先程、彼女が覚醒する前に放ったウィンドシュートが強さを増して襲い掛かってきた。黒く染まった羽が空気を斬り裂く音をあげながらムラサメ・シグマの身体の関節部分に向かって大きく突き刺さる。肩、腕、手首、膝の関節にウィンド・シータの鋭利な羽が突き刺さったムラサメ・シグマは身動きが取れなくなった。

 身体が完全に動かなくなった。

 突き刺さっている部分は何故か不思議とあんまり痛くなかった。殺傷能力が低いだけで、ただ動きを封じるだけであろう。各関節部分に突き刺さった羽は完全に彼の動きを無に帰していた。

 

「チッ!!身動きが………」

「………凄い………あれが彼女の真の実力…………」

『あぁ……凄いぜあの動き……。完全に一枚、いや二枚上手だな。俺達より強いかもな……』

「ウィンド・シータ…………君は一体何者なんだ………」

 

 とロックマンとウォーロックは右腕を抱えながら彼女の素晴らしき戦闘に固唾を飲んで見守る。彼女がどこから来たのか、何が目的で来たのかはまだ一部しか知らない。

 あの実力は魅入るほどのものだ。

 まず、お互いのレベルが違いすぎる。キャリアも多いし、攻撃のバリエーションも多数だ。

 

「キエロ………!!」

 

 彼女の声なのだろうか。彼女の前の声じゃない恐ろしく、冷たさ、冷酷さをもったような声でウィンド・シータは小さく言った。再び、意味わからない言葉をいい、詠唱し始めた。彼女のオーラが金色に染まり始めた。

 と同時に彼女の周りに西洋風の剣、ブロードソードが6つ取り囲んだ。刀身は細く、長く、太陽の光に当たれば美しく輝きそうな剣だった。ちなみに西洋の剣は日本刀より硬度が高いらしい。

 それを生かしたウィンド・シータはブロードソードをムラサメ・シグマへと飛ばす。

 ブロードソードはムラサメ・シグマの右腹、左腕、右腕、右足、左足、鎖骨へと突き刺さった。そこから言葉にならない悲鳴が出そうになるがあまりの激痛により声も出せなくなる。

 痛みの捌け口は出せない。全身はブロードソードにやられていた。半ばデリート状態のムラサメ・シグマだった。そして全身にブロードソードが突き刺さったムラサメ・シグマが膝をついた瞬間、ウィンド・シータは黒い目の色に赤いラインが入った。直後、彼女の顔の前に白いリングが出現する。

 そして、重い音と共に先程見せた、あのレーザーがムラサメ・シグマに向かって一直線に放たれる。空気を焦がし、あらゆる物を消し去ろうとする意志を持っているのではないかと感じるぐらいの威圧感のあるウィンド・シータの放った技。彼女の放った技は確実にムラサメ・シグマを光線の中へと包み込み、そして大きな爆発と共に吹き飛ばした。

 衝撃で空気の衝撃波とノイズが発生する。

 もうもうと立ち上がる煙の中からは瀕死状態のムラサメ・シグマだった。あの一級品の実力を持った彼がこの短時間でまるで地面に転がるぼろ雑巾のようになっていた。全身は傷つき、なす術もないままただ一方的にやれてしまった。反撃もできず、抗う事もできない。まさに相手は巻けることしかできない一方通行だ。

 

「………ウウ……ウァァ………」

 

 ムラサメ・シグマは倒れた後、何かの呻き声が聞こえた。

 その声の主は誰か、ロックマンはすぐに分かった。それはウィンド・シータであった。苦しそうに悶えている。

 ――直後、彼女の背中から大量の黒い瘴気が溢れ出す。ムラサメ・シグマとのウェーブバトルで勝利したことで個人的な祝杯をあげているわけでもない。かといって、彼がまだ生きている、抗ってくるというわけでもなかった。 

 ウィンド・シータはそれでも、これでもなかった。彼女の中で何かが変革し始めていたのだ。

 ――そう、あの覚醒が関連しているのかもしれない。

 

「ウワアアアアーーーーー!!」

 

 彼女は頭を抱え、天に向かって絶叫した。そのたびに黒い瘴気があふれ出す。悲鳴は長く続き、叫ぶウィンド・シータは苦しそうに悶えていた。

 ロックマンは構える。かつてこんな状況が何回か体験したことがある。例えばこの後、彼女が襲い掛かってくる、とか自我を失って暴れ出す、などそんな事がロックマンの目の前で何回も起きている。

 そして、絶叫と共に彼女は首を下ろす。。黒い瘴気の放出も止まった。

 

 ―――彼女は黒い、殺意と血を求めるような悪魔のような紅いラインが入った赤黒い目でこちらを見つめる。その目の矛先は完全にロックマンとウォーロックであった。

 ―――そして彼女は、先程召喚したブロードソードを6丁ではなく10丁召喚する。

 ―――その目に自我は見えない。闇に憑りつかれた彼女は完全に意志を失っていた。 

 

 その様子を見たロックマンとウォーロックは身構える。距離をとって対応しやすいようにする。

 

「スバル!!」

「分かってるさ!!これぐらい!! バトルカード、デュアルセイバー!! ――ウェーブバトル、ライド・オン!!」

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