流星のロックマン Crystal Crest   作:Dylandy

22 / 31
希望から絶望へ

 ―――彼女の力によってロックマンの方にブロードソードが10丁襲い掛かってきた。

 ロックマンはウェーブバトル開始時にバトルカード、デュアルセイバーを発動させている。ロックマンはウィンド・シータから距離を置く為に後退した。

 一拍置いてからウィンド・シータによって召喚されたブロードソードがロックマンに向かって襲い掛かってくる。

 ロックマンの脳裏にはあの剣によって刀身の餌食になったムラサメ・シグマの突き刺さった姿が想像できる。固唾を飲んで小さく喉を鳴らし目の前の障害に集中する。

 

「えいっ!!」

 

 ロックマンは襲い掛かってきたブロードソードを二対剣のバトルカード、デュアルセイバーで迎撃した。両手持ちのデュアルセイバーを巧みに生かしてまずブロードソードを4丁撃墜させる。

 

『スバル!! 後ろだ!!』

「分かってる!!」

 

 ロックマンは振り向いてデュアルセイバーを薙ぎ払うように振る。ロックマンに突き刺さる直前のブロードソードはロックマンの手によって全て撃墜された。そして再び距離を置く。

 ウィンド・シータとロックマンの距離感覚はおよそ20メートル。その空いた距離を埋めるように自我を失ったウィンド・シータは黒く染まったライトニングソードを持ってロックマンに襲い掛かる。

 ロックマンは嫌な汗を垂らしながらデュアルセイバーを構える。

 ウィンド・シータが大きく縦に振りかぶった。と、ロックマンはサイドステップで横にかわす。だがウィンド・シータの方が一枚上手だった。かわされるのを予想して次の攻撃展開をイメージしていた。

 大きく縦に振るという事は相手は間違いなく横か後ろに回避する。そすれば、横か後ろに動くと予想してれば追撃は容易い。

 ウィンド・シータはライトニングソードを使ってロックマンの右肩を斬りつける。

 

「うわあああ!!」

 

 ロックマンは小さく悲鳴を上げて吹き飛ばされる。そこまで致命的なダメージではないが実力と戦略の差が叩き付けられた。だが、ロックマンも諦めない。向こうが戦略の技でいくなら、こっちはその戦略の裏をかく。裏の裏を読んで戦うことにした。

 

「バトルカード!! ゼウスハンマー!! バリア!!」

 

 ロックマンの周りにある程度防ぐことのできるバリアが展開された。

 そしてもう一つ。その名はゼウスハンマー。

 見た目はかなり普通の槌。だが所々、装飾が仕掛けられていた。銀色の槌の部分には紋章が彫られている。柄は赤の色だった。ゼウスハンマーはあらゆるものにダメージの裁きを与えさせる諸刃のカードだ。使い方によっては自分にも被害が被ることになるが、所有者の腕によってはその諸刃のカードが何倍の強さを引き出すことが出来る。

 ロックマンはバリアを張って、ゼウスハンマーの柄に手を当てる。そして大きく振りかぶり、地面へと叩き付ける。神の槌は全ての全方向に向けて神の裁きを下した。

 衝撃波が地面を伝い、全ての物に対して襲い掛かる。

 だが、ロックマンはバリアを張っている為、ゼウスハンマーによる神の裁きは無効化される。

 と残るのはウィンド・シータ。ゼウスハンマーによって繰り出された衝撃波は安い装甲で止めれるような軽い一撃ではない。装甲車10台あれば止めれそうな重い衝撃波だった。

 しかし、ウィンド・シータにはゼウスハンマーによる衝撃波は届かなかった。黒い瘴気、オーラによってかき消され、無効化にされてしまう。

 

 けどロックマンはそれを承知の上、先程のムラサメ・シグマとウィンド・シータの戦いによってあのオーラを使って戦っていたことを頭に叩き込んでいる為、それぐらいの警戒意識はあった。

 次に更なる先手を打つ。

 

「バトルカード!! ソニックブーム!!」

 

 ロックマンが繰り出したバトルカード、ソニックブーム。これはソードによる特殊的な攻撃。鎌鼬(かまいたち)といういわば真空の刃というのを生み出す。

 この鎌鼬というのは目に見えなく、そして簡単に斬り割いてしまうという恐ろしいものだ。

 簡単に弾き返されてしまうなら目に見えない技で攻撃してみるのはどうかと考えてみたのだ。ウィンド・シータは攻撃が当たる瞬間、オーラの出力がわずかに上昇してるのをロックマンは肌で感じることが出来た。

 なら、目に見えないのなら、と思い、ロックマンはソニックブームを飛ばす。見えない刃がウィンド・シータに襲い掛かるが、ウィンド・シータの身にまとう黒いオーラのせいで、やはりこれも簡単に弾き返されてしまう。どうやら意識していなくてもあの誰もよせつけなさそうな邪悪な気の鎧は絶対防御に見えた。

 

「くっ……まるでソロの電波障壁みたいだ………」

『スバル!! あいつはソロと何か似ている……あのバミューダラビリンスで戦ったようにするんだ!!』

「――分かった!! バトルカード、ワイドショット2!! ナイトソード!!」

 

 ロックマンは怯まず右手にワイドショットを発射するための横長の銃口、そして騎士(ナイト)が使う長剣、ナイトソード。

 ロックマンはまず水属性の波の衝撃波を飛ばすワイドショットを飛ばしたがこれもオーラによって容易くかき消されてしまう。だが、足を止めている暇はない。必ずその瘴気に穴はあるはず。

 と思いつつロックマンはナイトソードを使ってウィンド・シータに振りかぶる。だが、やはり易々と受け止められてしまう。ロックマンは慌てて距離をとって一息つかせる。

 

「打つ手なしか………」

『スバル!! オーラを吹き飛ばすにはあれを使ってみるんだ!!』

「あれって? ………あれか!!」

『そうだ!!』

「『スーパーキタカゼだ!!』」

 

 綺麗に二人の声が重なった。相棒のウォーロックによる稲妻にも似たような閃きが全身をよぎった。ロックマンはバトルカード、スーパーキタカゼを発動させた。

 強い風がこの周囲を襲い、ウィンド・シータをも襲うが彼女の身に纏っている鎧は剥がれることはなかった。

 この瞬間、ロックマンはスーパーキタカゼによって完璧にウィンド・シータの鎧が剥がれると確信していたのか、予想外の展開にロックマンは一歩たじろいてしまう。 

 その隙を見逃さなかったウィンド・シータ。意志は失っても戦闘の仕方は忘れていないようだ。完全に自我のない彼女だが、驚いたロックマンを好機と思ってきたのかウィングシュートを放ちながらライトニングソードを構えてこちらに向かってきた。

 

『スバル!! 来るぞ!!』

「う、うん!!」

 

 ウィンド・シータの放ったウィングシュートがロックマンに複数の数で襲い掛かる。

 ロックマンは動揺がまだ完全に収まっていないのかちょっとふらつく左腕でワイドショットの銃口をウィングシュートに定めて水の衝撃波を発射させる。ワイドショットは確実にウィングシュートの羽を撃墜させた。

 だが、まだだ。ウィンド・シータがこちらに向かってくる。ロックマンはワイドショットを消してナイトソードと目の前の敵に集中する。ロックマンのナイトソード、ウィンド・シータのライトニングソードがぶつかり合った時、ノイズと火花が飛び散り合う。

 ギチギチと刃と刃が擦れる奇妙な音を出しながら二人は鍔迫り合いになった。

 鍔迫り合いとなった二人は集中する。

 ロックマンは両手を使ってウィンド・シータの攻撃を凌いでいる。対して、ウィンド・シータはロックマンに対して片手で優勢の位置に立っている。

 一人は両手で防いで、一人は片手。片手空いているウィンド・シータは攻撃可能となる。

 

「ハァッ!!」

 

 ウィンド・シータは空いている左手を使ってロックマンの顔面を狙う。

 

「うわっ!!」

 

 ロックマンは間一髪回避した。今のは反射が働いたため意識して動いたんじゃなく危険を感じて身体が咄嗟に動いた。反射が働いた直後は何故か心の隙というのが生れてしまう。それは当たらなかったという安心感に浸ってしまうからだ。

 ウィンド・シータはその隙を見逃さなかった。反射で回避したロックマンとの距離を素早く埋めてライトニングソードでロックマンを打ち上げた。そしてウィングシュートを使い、宙に吹っ飛ばされたロックマンを全方向あらゆる視点からウィングシュートがロックマンに向かって一直線に飛んでくる。

 

 右から、左から、上から、下から、斜めからとあらゆる方向から襲い掛かってくるウィングシュートに対してロックマンはなす術がなかった。

 無数の攻撃を受けたロックマンは宙から地面に叩き付けワンバウンドしてしまう。傷だらけの流星は立ち上がることはなかった。

 

『スバル!! スバル!!』

「…………………」

 

 相棒、ウォーロックが必死で叫ぶが彼の返事がない。地面に転がる襤褸雑巾のようになってしまったロックマンはウィンド・シータの攻撃によって再び吹き飛ばされる。ふっ飛ばされた場所はコダマタウンの屋上の少し下にある広場から、屋上の展望台まで。

 受け身もとれない彼は人の手によって作られた堅甲な鉄の道に叩き付けられた。

 そして、ウィンド・シータはゆっくりとライトニングソードを構えてこちらにゆっくりと歩いてくる。

 

「うぅ………………」

『スバル!? おい、大丈夫か!?』

「大丈夫じゃ……ないね……。体があんまりいう事きか……」

 

 二人が死に際の話をしてたらいつの間にかウィンド・シータが目の前にいた。

 

「アナタタチヲ……コロス……」

「うっ……ウィンド・シータ……。君は完全に僕の事を忘れてしまったのか……」

 

 一瞬、ウィンド・シータの眉間がピクリと動いた。けど、それは僅かなほんの一瞬であった。だが、それでも彼女の表情と顔色は少しだが変わった。

 彼女の表情は殺意をもった表情から何かの記憶を抱いているような表情に移り変わった。

 

「ワタシハアナタタチナド知ラナイ………。タダ危険ナ存在を倒ス……」

「それじゃ、なんでそんなに悲しそうな顔をしているんだ……。君は僕の事を忘れていないんだろ……?」

「ウッ!? ソンナ事!!」

「君は僕が守る!! 思い出すんだ!! 君と僕が電波体で出会ったあの日の事を!!」

「!!!?」

 

 その時、声にならないような声がウィンド・シータから聞こえた。彼女は自我を失っても、完全にロックマンを忘れたわけではなかった。直後、ウィンド・シータが顔面に手を当てて、体をよろつかせる。彼女の瞳は異常な動きをしていた。記憶の改ざんか、構築なのか分からないが、彼女の記憶の中で何かが起きていることは確実だ。

 ウィンド・シータの脳裏にはわずかだが、彼と一緒に奮闘した記憶がよぎった。そして、彼女は瞳に涙を浮かべる。

 と同時に黒い瘴気もどんどん効力を失い、小さくなっていく。

 

「ウィンド・シータ!! 君はこの力に飲まれちゃだめだ!! 大丈夫、僕がついてるから安心するんだ!!」

「ロ、ロックマン…………」 

 

 一瞬、ウィンド・シータ本人の声が小さく聞こえた。彼女が見えない闇の迷宮から出口へとさしかかっている。

 

『スバル!! 今のうちにとどめを刺すんだ!!』

「で、でも!! ウィンド・シータは戻りかけているんだよ!!」

『ここで奴が戻ったらお前に完全な勝機は消えるぞ!! それでもいいのか!?』

 

 珍しくウォーロックが罵声を上げた。それに対し、ロックマンはとどめをさすかささないかで何度も躊躇した。ナイトソードは右手に構えてある。 

 だがここからが本番だ。 

 ――――僕は彼女を刺すのか。

 ――――それとも刺さないで死ぬのかもしれない言葉で彼女を闇の混沌から引きずり出すのか。

 

『スバル!!!!』

「うっ……出来ないよ………そんな…こと……」

 

 ロックマンはナイトソードを降ろしてしまった。

 

『チッ!!』

 

 突如、ウォーロックがウィザードオンする。 

 そして大きく息を吸い込んで、一拍置いた後、ウォーロックの口からブレスがウィンド・シータに向かって吐き出された。

 ウィンド・シータはウォーロックの攻撃には反応せず、意識が混濁しているのか額に手を当てて喋っていたいた。大量の涙を流して。

 そして、ビーストブレスがウィンド・シータを取り込もうとした瞬間―――――

笑顔と涙を浮かべて――――

 

「―――ロックマン……悲しいね……人との思い出を忘れるなんて……」

「ウィンド・シータ!?まさか――――!!」

 

 ロックマンが言葉を言い終える前にウォーロックのビーストブレスが確実にウィンド・シータを取り囲み吹き飛ばした。

 ロックマンはその光景に目を大きく見開いて呆然としてしまう。彼の意識があったのはそこまでだった。 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。