流星のロックマン Crystal Crest   作:Dylandy

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星河家の物語

 

 時はゴールデンウィーク。 

 つい先ほど、彼女――響ミソラが星河家に遊びに来たのだった。背が大きくなったと指摘された超人気急上昇中の響ミソラはテンションが若干上がっていた。はしゃぐ子供を見て大人のあかねは子供って可愛いわねという認識をしていた。

 うちの子供は褒めても純粋に喜んだりしない子であったためあんまりミソラのように純粋に喜んでいるとこをあんまり見たことはない

 

「ささ、お菓子とかあんまりないけどゆっくりしていきなさい。スバル、くれぐれも女の子に変な事しないようにね」

「僕はなんにもしないよ!! なんで変な事考えてるの母さん!!もう……」

「もうスバル君ったら!!」

「これは冗談よ、冗談」

「母さんの表情からしてその言葉は冗談には全く見えないよ………」

「あらそうかしら? まあ信じるのも疑うの貴方次第だけどね、スバル」

 

 母親の発言した言葉にスバルは思わず目を丸くして驚いてしまう。スバルは思いもかけない言葉に戦慄してしまい、大きなため息を吐いてしまう。ため息をすると幸せが逃げていくという話を聞いたことがあるか、それが真実か偽物なのかは分からない。だが、確実に言えることは今、この状況で更に不幸な出来事が起きるということは間違いはないだろう。

 あれが僕の母親か……と思いスバルは落ち込む。そもそも彼女に変なことをやらかす気はない。

 それに対し、彼女、響ミソラは僕の親、星河あかねが僕にとっては不謹慎な言葉を喋ったのにも関わらず、何故かあかねの言葉に対して微妙に便乗していたようだ。その上、その言葉に思わず彼女は笑いながら、右手でスバルの背中をポンポンと叩いてくる。

 

「あれ? ということはここにもハープがいるということだよね? ミソラちゃん」

「うん、いるよ。おいでハープ」

『ポロロン………久しぶりねスバル君。私に何か御用かしら?』

 

 閑話休題。母親の変な発言から脱線させるためにスバルは相棒のとった行動についてもしかしたら『彼女(ハープ)』が原因じゃないかと思い、彼女に尋ねてハープの所在を確かめてもらった。

 予想的中。彼女の放出する周波数は独特だ。スバルの相棒は苦手はほとんどないが、唯一苦手なのがこのFM星人、ハープだった。毎回遭遇するたびに喧嘩や暴言などの小規模の睨み合いが発生している。喧嘩っぱやいウォーロックならすぐに手を出しているだろう。だがその手綱を握っているスバルのせいで暴力の喧嘩は怒ってはいない。

 結論、また口喧嘩になると予想したウォーロックは姿を消した。

 

「いや、あのねウォーロックが5分ぐらい前に急にでて行っちゃったから……もしかしたらハープの周波数が原因じゃないかって………」

『あぁ、あのバカ、私の周波数を感知したからって逃走したのね………。全く、毎回会うたびに口喧嘩になるからってもう……。調子にのる割にはへっぴり腰ね』

 

 ハープは両手を動かしてやれやれとため息をつく。

 まあ、ウォーロックも気持ちも分からなくはない。スバルも似たような少女に毎日、というほどではないがそれに近い限りの日常を送っている。

 でもそれは日常茶飯事になってしまったためこれぐらいの事は大したことはないのだが。

 女の子はよく分からないと思ったスバル。

 

「じゃ、じゃあ僕の部屋………行こうか」

「う、うん……」

 

 スバルは自分の部屋に招待する。だが問題が浮かんだ。

 自分の部屋が若干だが荒れているということに。自分の部屋は自分の性格が現れてしまう場所。部屋が散らかっていればめんどくさがりや、大雑把な性格として見られてしまう、それに対し、部屋を常に綺麗にしている人は几帳面な性格の人として見られるであろう。

 スバルはリビングの部屋の戸を開いて二階の階段へと移動する。

 その後続にミソラがいるが、母親のあかねが小さな声でミソラを呼んだ。

 

「――な、なんですか?」

 

 小さく、可愛さが乗った声でミソラはあかねに話しかける。

 

「ミソラちゃん、目的があって星河家(うち)に来たんでしょ?」

「え、え!? な、何にも目的はないですよ。ただ、仕事の休暇が入ったからスバル君の家に遊びに行こうかなってだけですよ………」

「じゃあ何故、スバルと遊ぼうとしたのかしら? 他にもいるんじゃないのかしら? 女の子と言ったらルナちゃんと遊ぶとか」

「い、いや…ただ単にスバル君の顔が見たいなあ~~ってそれだけで……」

「へぇ~~。そういう感情を『恋』っていうんじゃないのかしら?」

『おばさま、ミソラの感情を読み取るなんてすごい読心術ですね……。その的中率の高さに感服いたしますわ……』

 

 ミソラはそれを聞いた瞬間、顔を真っ赤にした。子供であるミソラを振り回すのは大人のあかねにとっては非常に容易なことだ。捻りを加えていく必要もない。

 ここまで反応するなんて白なんだとあかねはミソラの精神状態に確信する。やはり子供ねえ、と思ったあかね。そういえば、大吾さんも私にプロポーズをするとき、今のミソラみたいに顔を真っ赤にさせて声を震えさせていたなとあかねは懐かしい過去を思い出す。

 親子って非常に似てしまうものなんだなって思ってしまった。

 ――星河あかね、ミソラとスバルにとって最大の敵となるであろう。勿論、別の意味で。

 

「ミソラちゃん~~。どうかしたの~~?」

「い、い、い、いや!! な、なんでもないよスバル君!!」

「さ、行きなさい。頑張って恋愛の謳歌しなさいミソラちゃん」

 

 スバルの言葉を聞いてミソラはますます顔を真っ赤にしてしまう。ハープはその様子を見て、ここまで焦ってしまうミソラを見て顔が引きつりかけていた。

 もう足をつついたら崩れ落ちそうなミソラの背中をあかねはポンポンと叩いた。

 ミソラは両手を自分の胸の前にあて手を組む。そして震え上がる足を押さえつけてスバルの部屋へと一段一段、落ち着いて、自分の不安定な感情を抑え込むように自分の心の中で念じる。

 すぅーはぁーと深呼吸をして落ち着きを取り戻させる。

 

「お、おじゃましま~~す………」

「さ、入って、入って。ちょっと散らかってるけど気にしないでね。もし気にするようだったらすぐに片づけるけど……」

「う、ううん大丈夫、大丈夫。別に気にするほどじゃないから……」

「そう?」

 

 スバルの部屋は案外落ち着いていた。過去にもミソラはスバルの家の部屋に上がったことがある。勿論、スバルにとっても、ミソラにとってもマンツーマンでスバルは一人の少女を部屋に招き入れるのを、ミソラは男の子の部屋に一人で入るのが初めてだったのであのときはかなり緊張した。

 スバルの部屋は無論、宇宙関係の本がばっかりだ。宇宙に関しての知識が全くない初見の人にとっては目が痛くなるだろう。当然の如く、分厚い専門家が読みそうな本の中は宇宙の事に関する専門用語がびっしりと書いてあった。

 だが、その中にもスバルが幼いころ読んだ本であろう子供向けの『宇宙の神秘』という本があった。視点は子供向けに作られているため簡単に理解できる。こんな科学の本が絶壁のように並んでいるのをミソラはよほど、将来宇宙関係の仕事に就きたいと思っているんだなとスバルの今後の心境について感じ取っていた。

 ミソラは再び、前来たように宇宙の本をとる。無論、中身は写真と画像でページが隅々まで埋め尽くされている。これをみると消沈してしまうそうなほどである。

 

「ホント、スバル君って宇宙の事が好きなのね。将来は何になるの?」

「う~~ん、今のとこは宇宙関係の仕事かな。確かに僕は宇宙や星の事が好きだよ。まだ人類が見たことのない神秘の世界がこの広大で無限に広がる宇宙のどこかにあるだろうし、それに新たな惑星を探してみたいんだ」

「へぇ~~、男のロマンっていうヤツ? 私にはさっぱりだよ」

「そういうミソラちゃんは将来は何になるつもり?」

「私かぁ~~。将来って言われると考えたことないなあ~。ほらだってさ、私たちまだ11歳でしょ。仕事やら将来やらってそんなこと考えるのはかなり先でしょ。私はまあできたらニホンで一番有名なシンガーに………」

「ミソラちゃん………? どうしたの?」

「…………………………………ハッ!!」

 

 ミソラは突然、うつむいた目で下を見始めていた。少女の言葉が突然、まるで滝のように溢れる水がふさがれたように黙り込んだ仕草を心配した。黙り込んでいたミソラを心配したスバルが話しかける。

 その直後、彼女は我に返ったような表情で周りを見回してしまう。そしてミソラは右手で後頭部を触って「ごめん、昔の事思い出してたよ……」と言っていた。

 

「大丈夫? 体の調子が悪かったら遠慮しないで言ってよ」

「う、ううん。大丈夫だよ」

『仕事の疲れが出たんじゃないかしら? 最近、仕事がつまってハードスケジュールだったからね』

 

 相棒であるハープはしっかりとミソラの事を管理しているようだ。どうやら彼女の言う限り、仕事が大変で身体、精神的に疲労が積み重なっているのかもしれない。

 幾ら芸能界で働いていると言っても子供と大人の体力と筋力の差は愕然だ。

 

「スバル~~、お菓子もってきたわよ~~」

 

 刹那、情緒不安定になっているミソラのとこに大きなお盆の上にお菓子とジュースを持ってきたあかねが現れる。おそらく、遊びの為に来たミソラをもてなそうとしたのだろう。

 だが、廊下と部屋の空気の違いにあかねの表情は引き締まる。床に座って壁に寄りかかっているミソラにあかねはお盆をスバルの机の上においてミソラに接近する。

 

「ミソラちゃん、どうにかしたの?」

「あ、スバル君のお母さん。――ちょっと仕事のせいで体に疲れが来たのかな……。何か急に心と体が落ちるようになって……」

「なんだ、ちょっと重症かと思ってびっくりしちゃった。いわゆる仕事に詰めすぎたのね。なら、話は簡単よ」

「それってどういうこと母さん?」

 

「ミソラちゃん、今日星河家(うち)に泊まっていってゆっくり休みなさい」

「……………………………………………」

「えっ……でも悪いですよ……スバル君にも、スバル君のお父さんにも」

 

 一人の男の子による沈黙の時間と、一人の少女による謙虚の時間が同時に流れた。刹那、スバルは意識を取り戻す。

 

「か、母さん何言ってるんだよ!! 冗談はほどほどにしてよ!! ミソラちゃんが困ってるみたいじゃないか!!」

「あ~ら? 私は冗談で言ってるんじゃないわよ。大人気歌手であるミソラちゃんの体の調子を気遣って私はこんな提案をしているのよ~。それとも何? 星河家(私たちの家)に女の子一人一泊させるだけなのに都合の悪いことでもあるのかしら?」

「う………。そういわれると……別に悪いことはないけど………」

「それにね、私たちの家はいつも静かだし、こんな可愛い女の子を今日ぐらい泊まらせてあげたっていいじゃない」

「……………分かったよ……」

 

 スバルは大きく萎えてしまう。別にミソラがスバルの家自体に来て遊ぶのは自分的には問題ない。

 だが、女の子が、しかも国民的有名な女の子がこんな一般市民の存在である僕の家に泊まるなんてなんか嫌だったのだ。こんな出来事が社会のマスコミにでも知れたらもう外へ出歩けないだろう。

 あかねの言うとおり星河家は少人数の家族構成でできているため食事の時間などかなり静かだったりする。家族4人(ウォーロック含めて)食事でいることなんて滅多にない。この家の柱を支えている大吾はWAXAでの宇宙管理担当部門の仕事を務めており、24時間宇宙の監視を続けているのだ。

 別にコンピューター搭載のAI機器に任せるものありかもしれないが、コンピューターの機械処理能力と人間の情報処理能力では違いがある。機械に任せっきりになると緊急事態の時に動けなくなるため、あえて機械構成6割、人間の役割4割と分けてある。

 だから日々、地球を監視続けている大吾はあまり帰ってこれないのだ。

 

「スバル君、ごめんね……。泊まっちゃったら邪魔だったかな?」

「い、いやそういう訳じゃないよ!! ただ、女の子が僕の家に泊まりに来るなんて夢みたいな現実で……」

「わ、私もだよ……。まさか男の子の家にお泊りすることになるなんて……。なんか夢みたいだね……」

 

 二人はちょっと小刻みに笑う。

 それでも情緒不安定になっていた。いい仲じゃない、と後ろで見ていたあかねは笑顔でみている。

 

「あ、でも私の着替えとかどうしよう……」

「大丈夫、大丈夫。スバルの服を使いなさい!!」

「それは洒落にならないよ!! 母さん!!」

「そ、それはちょっとカミングアウトすぎるかも……」

「これは冗談よ、冗談。さすがに男の子が着た服を女の子に着させるわけにはいかないもの。私が小さいころ使っていた服とかあるからそれを貸してあげるわね」

「もう………母さんの冗談は本当にしか聞こえないよ………えらい迷惑すぎる……」

 

 とあかねは本当の冗談をいいつつもスバルはあかねの思惑通り率直に反応してしまった。隣では何故かミソラが顔をあからめて手首を口元に当てて視線をちらちらとそらしている。スバルはミソラの視線には気付いたが何にも言わなかった。

 視線があまりにも不自然すぎたため、まさかと思った。ミソラは頭の中ではきっとちょっと愉快な妄想を広げていたに違いない。

 スバルは思わずため息をついてしまったのだった。

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