流星のロックマン Crystal Crest 作:Dylandy
先程から星河スバルは異常な程までに萎えている。
それはなぜか――。
それはついさっき、あの超話題沸騰中の大人気シンガー、響ミソラが星河家(うち)にきたのだ。当初はただ遊びに来ただけだったのだが、彼女のちょっとした疲労感なのか何なのかは分からないが彼女の様子がほんの少し変であったため、たまたま居合わせたスバルの母親、あかねが星河家(うち)に泊まっていきなさいという大胆発言をしたのだ。
そのうえ、スバルは散々、あかねの冗談なのか本気の発言なのかよく分からない言葉を飛ばされまくってしまった。
スバルの相棒であるウォーロックはこの危険を察知したのか、一人だけ退散してしまった。無論、理由はただ一つだけである。
「それじゃミソラちゃん、スバルと一緒にごゆっくりしていってね~」
「へ!?」
「……………はぁ……。あれが僕の母さんの真の姿か……」
あかねはお盆の上に置いたお菓子やジュースをスバルたちの近くに置いた。そして屈託のない笑顔でスバルの部屋の戸を開いてでて行こうとする。
早く部屋から出て行ってよとスバルは願うばかりだ。
「そうそう、二人っきりになったからって変なことはするんじゃないのよスバル」
「だから、何にもしないって!!」
「もう、スバル君ったら!!」
「ところでミソラちゃん、晩御飯とか要望あるかしら?」
「あ、いえ何にもないです。スバル君のお母さんの自慢の手料理で!!」
「フフ、任せなさい。おいしいお料理作ってあげるわよ」
あかねは去り際にまた変な一言を発して部屋から退散した。いわゆる逃げ台詞。変な言葉を言って、いい逃げする母親なんてこの世にいるのだろうか。いるとしたら星河あかねただ一人ということになる。
あかねの発した言葉にミソラは便乗してスバルの背中を強く2回叩く。照れ隠しのように見えるが実際のところはきっとあかねの発言に乗っただけだろう。
女の子は本当怖いと思うスバル。
こうして最強の天敵は消えて行った。
「………………………」
「………………………」
いざ二人きりになると会話することがない。閑話休題になってしまった。ミソラもただ遊びに行きたいという心境でスバルの家に来ただけだし、スバルと何がしたくて来たという理由がない。
何故か二人はカーペットの上で正座してしまっている。この空間が非常に気まずいのだろう。普段なら彼らは違和感なく会話をすることが可能なのだが今回だけは違った。場所がその雰囲気を作っているのかもしれない。
視線を合わす度、二人は気まずそうに視線を逸らしてあさっての方向へ顔を向けてしまう。
「――ね、スバル君」
「な、何? ミソラちゃん」
「あのささっきから気になってたんだけど、その右足と左頬、そして右手の傷は何なの? 一体何があったのか教えてくれないかな?」
ミソラが会話を開始させてくれたため、スバルの緊張感は一気に消滅した。心も平常心を保ち始めていく。
先程までミソラはスバルの体の所々にある傷が気になったようだ。スバルの体はPM星人との戦いの影響で怪我してしまった。だが切り傷程度で済んでいる。怪我した場所は出血した場所に細菌や空気中に浮遊している粉塵などを容易に侵入させないために即効治療剤のジェルを使っている。
切り傷などの負傷した部位に軽く手に取って塗るだけでそこの部位に塗られたジェルはすぐに固まり、傷のさらなる出血や細菌の侵入をシャットアウトするのだ。その上にスバルは包帯を軽く2、3回巻いている。
スバルは切り傷程度で済んでいると思ってはいない。運がいいだけで下手したら肋骨の一本や二本持っていかれてるかもしれないと思っているのだ。
怪我の心配をしたミソラは尋ね始める。彼女も一応電波変換できる一人の少女。実力はロックマンほどではないが十分に相対できる実力はある。彼女も過去にはWAXAニホン支部で活動した遊撃隊員の一人。けど、彼女を巻き込みたくないと思うが逆にそれでは彼女の反論を買ってしまうだけであろう。
真実を隠すことなく先程あった出来事、そして現在のとこ味方の位置についている彼女(ウィンド・シータ)の事について話した。
「ふうん、それでスバル君はまた戦いに巻き込まれてそんな怪我を負っていると。だからそんな身体の状態なんだね。何かあったら私たちにも連絡くれたっていいじゃない!! なんで連絡をくれなかったの!? どうして私に相談してくれなかったの!? スバル君!! 私たち友達でしょ!!」
『PM星人………かつて過去に滅んだと謳われたあの宇宙人達か……。まだ末裔がいたのね……』
ミソラはスバルの口からとんでもない真実を伝えられ思わず立ち上がって怒りかけてしまう。それも無理はないだろう。自分だけ平和に過ごして、隣にいる彼は戦いに巻き込まれて怪我をして、悲鳴をあげる体に鞭打って戦っている彼に対して、なんで何にも私に言ってくれないということに。
同じ電波変換をもっているのに。
最初にブラザーバンドを結んだ大切な友達であり親友なのに。
何度も何度も苦難や挫折を乗り越えたのに。
一度はあんな事言って酷い別れをしても再び分かり合えたのに。
同じ境遇を持った二人なのに。
自分だけ苦しい思いをしないで、反面、親友は苦しい思いをしている。
そんなのずるすぎる。何かあったら伝えてほしかった。自分にもロックマンほどの実力ではないが同じ能力が自分のそばにある。なら、大切な人と一緒に共闘したかった。自分も貴方と同じ皆を守りたいと思っている。
それだけなのに。
友達のたった一つの音信不通の出来事で。
ミソラは怒ってしまった。
「ご、ごめん………」
「……いや、こちらこそごめんね……、急に怒鳴ったりして………。で、でもね!! 私はスバル君の力になりたくて……」
「うん……」
沈黙が空間を突き抜ける。
この行動は自分のせいでもある。彼女も一応戦えるのだ。
「それで、次にいつ襲い掛かってるとか目途はたっているの?」
「いや……それが分からないんだ。全くの不定期な時間と日にちによって現れるし……。今までの敵のように何かにサイバー攻撃してきたりしないんだ。こう…いきなり襲いかかってくる感じ?」
確かに今までで相対した敵は何かにサイバー攻撃を仕掛けてそのシステム上の管理権を支配し、全て支配下に置くことであった。
例えば、シーサーアイランド島の管理システムをハッキングし、支配下におくことで時間ごとに大きな大地震を連続的に発生させる。そうすることで自分はただ指示するだけでプログラムは動いてくれる。そのうえ、それを止めようとする敵がこちらに向かってくるため自分は動く必要がない。
だが今回は相手から襲い掛かってくる。そちらの状況を優位に立たせるわけでもなく、かつ何かのサーバーを支配下におくこともなく無差別に攻撃してきた。
まるで部外者を真っ先に処理するように直接手を加えていくのだ。
「だったら次に何かあったら私にすぐ連絡してね!! スバル君の力になりたいからさ!!」
「う、うん。分かったよ」
ミソラは笑顔で指をたてて言った。スバルはその彼女の優しい思いが素直にうれしかった。けど表には出さずとも、裏では内心、彼女の実力では彼らに相対するのは難しいと思えているスバル。
心の中で優しい笑顔で一人の少年の為に思ってくれている少女を、スバルは心の奥底で彼女の優しい振舞いに感謝しつつ、自分の心の中で彼女の謝っていた。
行間1
何十分が経過した。東の空はうっすらとだが闇色に色づき、西の空は夕焼けの空に色づいていた。
もうすぐ日の入りの時間を迎える。
「スバル~、ミソラちゃん~。晩御飯ができたから降りてきなさい~~」
「は~い」
「は~い」
下のリビングから聞こえてきた母の声に反応したスバルとミソラは部屋からでて降りてきた。
ちなみに彼らは真剣な話のあと、談笑していた。笑い声が聞こえたり、何の話なのか悲鳴も聞こえてきた。嫌らしい悲鳴ではない。恥ずかしい話を聞かされた時の悲鳴に感じ取れた。
――リビングテーブルの上に置かれた晩御飯は贅沢だった。久々のお客さんなのだろう。きっとあかねは腕を存分に振るったのだろう。明らかに料理の質が違って見えた。
まずは盛り付けの時点から質が違う。
当たり前の事だが皿の縁に食べ物の跡がついていない。これは常識範囲なのだが意識していても付着することはある。全ての料理に対して、綺麗かつ上品な盛り付けの仕方。そしてかつ、人が座った時に見える盛られた料理の皿の位置。
そして更にもられた料理から美味しそうな匂いが1階を包み込み、スバルとミソラの空腹になったお腹の中に食欲がそそられる。
料理の決め手であるスパイスなどが効いているのがあってどれもおいしそうだった。
「「いただきま~~す!!」」
スバルとミソラは声高らかに箸を右手にとって晩御飯を食べ始めたのだった。今日は料理の量も質も違う。こんなにあってもスバルは基本、小食だ。腹八分というか腹六分ぐらいしか食べないためこれだけの料理、三分の二も食べれないだろう。
その反面、スバルの隣の席に座っているミソラはスバルの倍を食べるであろう。
彼女の食欲は尋常じゃない。かつてはTKタワーの名物、ジャンボパフェを食い尽くす胃袋はブラックホールという異名を持つ彼女である。
きっとこれぐらいなら、その上、料理はお上手のあかねが存分に実力を発揮したものだ。
美味しいに違いない。ミソラのブラックホールは最大限に活躍してくれるであろう。
「うっ……もうげ、限界だよ………」
「えっ!? もう食べれないのスバル君。 まだ三分の二も食べてないじゃない」
と言いつつ、ミソラは余裕そうな表情で次々と口の中へと料理を運んでいく。その表情に苦痛は見られない。まだ余裕そうだ。それに対してスバルは完全にノックアウトした。空腹の腹に食欲がそそられたとはいえ小食のスバルにとっては意味もなかった。
全然食べれてない。その上、食べるペースがミソラよりも圧倒的に遅い。
あかねはやっぱりね…という呆れ顔でそう思っていた。親と息子は似るものって思っていたがここだけは似てないのかと思ってしまった。
この家の大黒柱、星河大吾は食事の際、ガッツリと食べる。きっと仕事先で体や集中力を使うためエネルギーを存分に補給しておきたいのだろう。
それに比べてうちの息子ときたら……。だから華奢な肉体なんだよと思ってしまう。
美味しそうに食べるミソラを見てあかねはこちらまでお腹が膨れた気分になってしまう。
「――ただいま――。あかねー、スバルー、いるかー?」
「あら、お帰りなさい大吾さん。仕事はどうしたの?」
「いや~、仕事が早く仕上がってね。更に少しの間、休暇をもらったんだ。だからゴールデンウィークはゆっくりできるぞ」
「フフ、それはよかったわね。大吾さん、ミソラちゃんが来てるけど気にしないでね」
「あぁ、スバルのお友達だろ? なら歓迎してやらないとな」
玄関先で話し合う夫婦の会話。あかねは大吾の夫として仕事から疲れて帰ってきた大吾のバックを受け取って部屋へと持っていく。
大吾もそれに続くようにリビングへと入っていく。
「あ、スバル君のお父さん。お邪魔してます」
「父さん、お帰り~」
「ただいまスバル。えっと……ミソラちゃんだね。あかねから聞いているよ。今日はあかねの自慢の手料理を存分に堪能してってくれな。うちの嫁の料理は天下一品だからな!!」
「た、大吾さんったら!!」
いくら二人に強いあかねであっても夫の大吾には勝てないようだ。大吾の発した言葉に「あかねは顔を赤に染めてしまう。大吾はその仕草を見て笑ってしまう。この風景はつい最近まで絶対的にみられなかった。
だが、あるきっかけで星河家は明るさを呼び戻したのだ。
「そうそう、スバル」
「何? 父さん」
「ミソラちゃんに変なことをするんじゃないぞ。女の子を泣かせる行為や悲しませることをしちゃだめだぞ!!」
「だから何にもしないって僕は!!」
再び言われた星河の親から息子へと卑劣な言葉。スバルはまさか信頼している父親にまで言われると思っていなかったのか不意をつかれたように目をまんまるにしてしまう。
スバルの過剰的な反応にスバルを除く3人が笑顔で笑った。笑顔が絶えなくなった星河家。明るく、楽しく、優しい星河家の日常はいつまで続くのだろうか。
――一方その頃。
『ったく……めんどくさい奴がうちにきたもんだ。俺は何処で何をして時間を潰せばいいのやら……』
場所はコダマタウンのマンションの屋上だ。このマンションには白金ルナという少女が住んでいる。屋上の隅にはパラボラアンテナという世界の番組やニュースをリアルタイムにみれるようになるアンテナがついている。
屋上で呟いた声の主はウォーロック。スバルの相棒だ。自宅にミソラとハープが訪問しに来たためウォーロックは先の事を予想して逃れたのだ。
個人的に嫌いなハープと出くわせば口喧嘩になってしまう。それにより何度もぶん殴りたい時があった。実力で勝負すれば簡単に首なんて落とせるだろう。けど色々な事情に降り手が出せないのだ。
『アンタ……ここで何してるのよ……』
『……チッ、その不愉快な周波数はハープか…なんだ? 俺を馬鹿にしに来たのか?』
『そんなことはどうでもいいの。 ――聞かせてもらったわ貴方たちが今回絡んでいる事件の事をね……』
『スバルの野郎……喋りやがったか……』
「まあ正確に言えば無理矢理白状させられたってとこかしらね。ミソラがスバルの身体の傷が気になって違和感を感じたらしく単刀直入に話したら事件の話を教えてくれたわ』
『――女の勘は怖いな……』
ウォーロックは呆れたような表情で空をみつめている。
『今回の事件こそ貴方たちでどうこうできる問題じゃないわ……これは地球だけじゃない。FM星にも関わる問題なのかもしれないのよ……』
『それぐらい俺にも分かってる。奴らは別格だ。俺らを圧倒するほどの力、技、知識、技術をもっている……』
『だからこそ協力するべきじゃないのかしら? ウォーロック?』
『お前たちが俺たちの力になりたいのは分かる。だがいいのか死ぬかもしれないんだぞ?』
『フフッ、死ぬ覚悟がなきゃここにはこないわよ。その気持ちはあたしもハープも同じなのよウォーロック』
『フン、勝手にしろ……。ったくこれだから女は好きじゃないんだ……』
ハープはやれやれという表情で両手を横に振り、呆れた表情になる。そこの部分は変わっていないのねと落胆してしまう。
『これだけは言っておくが絶対に死ぬなよ』
『フ~ン、その台詞は貴方にも当てはまると思うのだけれど。いつも無茶して死にかけてるんだから』
『それは俺とスバルがやりたいようにやってるだけだ』
『無茶は体に毒よ。これからは注意しなさい。今まで貴方たちが無茶をして助かったのはあくまでも運のおかげっていうことを頭に入れておきなさい』
『ヘッ、運も実力のうちだろ』
『それが世界を3度も救った英雄が放つ言葉なのかしら………』
ハープは若干呆れていた。でもこの災害と呼ぶに等しい事件を解決しなければ真の平和というのは訪れない。