「あ、え、っと」
言い淀みうつむいてしまった彼女、流石に出過ぎた真似をしてしまっただろうか
「レノヴァのやつ、それを聞く胆力がすごいな」
「ねぇ、一周回って冷静なんでしょうか?」
サンクトゥムとアリアをはじめとした6人は木陰で談笑する振りをしながらこの広場に訪れた祭りの参加者に申し訳なく帰ってもらったり二人の様子を眺めていた
「にしてもあのカルマが恋とはなぁ、意外なものだよ」
昔は違ったのだがなぁと頷くクレメンタイン
「どんな子だったんですか?カルマは」
「いや、そもそも感情なんてものはない子だったよそれこそレノヴァに出会うまではな」
と、母と娘、王と配下、恋人、それぞれ違った6組が二人の新しい始まりを見守って居た
「気は使わないでいいですよ、それだけが、気になっているので」
家族愛だ、ともしくは友達としてだ、と言ってくれればいい、変にごまかされるよりそう言われるだけであきらめがつく、のだが
「す、好き、だよレノヴァのことが、その、一人の、男の子として、だよ…?」
「え…」
その言葉の一つ一つが今にも消えてしまいそうな小ささなのに、隣に座っているその姿はひどく美しくその顔はうっすらと、だがその存在を知らしめるかのように朱に染まっている
「そう、ですか」
一瞬冗談はやめてと言いかけたその口は隣の彼女の顔を見て引っ込んだ
「それは、それを言ってくださったということは」
「うん、だからいつか絶対にレノヴァを落として、付き合う、その時を覚悟しててよね!」
少し涙目になって震えつつ強がった声色で彼女がそう宣言する、こういう時、なんというべきか、考えるより先に、体は彼女の方を向いていた
「カルマ様」
「ん、やっと目が合った、なぁに?いいよ、レノヴァの言葉なら、んーん、レノヴァのやることならなんでも受け入れる、嫌いって言われても、この気持ちを伝えられて、ちょっとすっきりしてるくらい」
そうだ、私はこの女の子に恋をした、ただ、
「あいにく、私はこのような状況で貴方に渡す言葉をうまく紡げないのです」
そういうと彼女は寂しがるような、ただいつもの寂しがる時とは違う、そんな表情をした
「ですが一つ、言わせてもらいます、受け入れるといったのだから、今からやること、しっかりと受け入れてね、カルマ」
「なにを、」そこまで言葉にした彼女の何よりも柔らかそうな唇に、そっと、静かに自分の唇を重ねる
酷く火照っていて熱いそしてとても柔らかいそれから口を離し、目を目一杯見開いた彼女に言わなくてはいけない、自分も、あなたに恋をしたと
「ふぇ…?」
「もう、とっくに落とされてしまったよ」
「あ、え、レノヴァ、いま」
彼女の真っ赤な目に一瞬月光が線を描いた、かと思うとその線は涙となってあふれ出す
「ちょっ、泣かないで、もう、お姉さんぶる割にそういうところは子供なんですから」
「う、うるさいっ、レノヴァが!悪いんだから!」
嗚咽を漏らしながら泣きじゃくる彼女にこうなったからには伝えなければならないことがある
「じゃあもう一つ言わせて、カルマ、私、貴方のことがどうしようもないくらい好き、独り占めしちゃいたいくらいに、だから」
「私と、付き合ってくれませんか?」
折角おめかしした袖をべしゃべしゃに濡らしながら、それでも彼女はこちらの目をしっかりと見てこういった
「はい!」
その笑顔は、間違いなくとびっきりの可愛さだった
そんな一歩を踏み出した二人を見守る後方腕組保護者面六人衆は
「…アリア、ハンカチはないか」
「…わたしのでべしゃべしゃです、自分の服でも使っててください」
「ふーくん、どうしよう、友達の恋が実った瞬間って、こんなにもきれいなんだね…!」
「うん、本当に、今はただ新しい一歩を踏み出せた二人に感動してる」
「ズビッ、グズッ、ズズッ」
「クレメンタイン、お前が一番泣いてどうするんだ」
6者6様の祝福を送るまさしく今日という日で一番美しい時間だった
場面を戻して、境界線を踏み越え晴れて恋人となった二人、恋人となったからには聞きたいことがお互いにいっぱいある
「カルマは何時から好きだったの?」
泣き止みはしたものの、両目を赤くはらしたカルマは恥ずかしがりながら答える
「あの、初めてビーフシチューを作ってきてくれた時、かな」
彼女にとってその時の事は忘れてしまっただろうと思っていたが、まさかそこから好きだったとは、でもその場合言いたいことがある
「あの時のカルマ、めっちゃ冷たかったのに?」
そう、その時のカルマは「そう、いつか食べるからそこに置いといて」、と言ってきた
レノヴァがカルマの研究に無理やり邪魔をして「食べないと研究させません!」と言って無理やり食べてもらったのだ、後から食べて焦げた味がして後悔したのは別の話だが
「そ、それは忘れてよ、いろいろ、あったの知ってるでしょ!そんなこと言うならこの話をしよう。にっこにこで持ってきたビーフシチューが焦げててあとで陰で悩んでたこと知ってるよ?」
こいつっ!何時から見てたんだ!?
「そのあといろいろな神様のとこ行ったりーうっかり迷い込んだ洞窟でえっちなモンスターにあんなことやこんなことをされてたのを助けたのを誰だと思って」
「まって、それ以上は本当にダメ!」
口を塞ぐつもりだったが勢い余って抱き着く形になってしまった
「んふふ、レノヴァあったかーい、これからはこのあったかさをいつでも感じられるんだね!」
そう無邪気に笑われればその可愛さに文句は引っ込んでしまう
「せっかくだしさ、結構遅くなっちゃったけどまだやってるみたいだしお祭りの屋台とか回ろうよ、前行ったお肉屋さんとかも出してるらしいよ?」
そういうと彼女はぱぁぁ!とかわいらしい表情をして椅子を立ちあがった
「そうと決まれば行こ!」
そう言って伸ばしてきた彼女の手に指を絡め、歩き出す
時計がさすのは深夜一時、まだ眠ることを知らないオリヴィアに昨日までとは違う関係性になった私たちは、その一歩を踏み出した
二人に飛び切りの祝福を