檻の近くまで来るとその女の子はこちらに気づいたようでこちらを、特に横のアリスを警戒したような表情を見せるアリスの話どうりならこの人が蒼天海の本来の管理者ということになる
「ああ、久しいなレノヴァ、とお前か。なぜ奴と共に居るのだ、レノヴァ?」
どうやら私を知っているらしい女の子は見た目にそぐわぬ口調で檻の中から語りかけてきた
「ここに来た時に隣にアリスがいたんです、そちらは私をご存じなのですか?」
「そうか、その隣の者、アリスといったか、それがしたことは知っているのだろう?」
「ええ、まぁ軽く聞いた程度ですが」
「なら、やることはわかっておろう?」
「やること、ですか?」
「アリスを殺せ、そうすれば我は力を取り戻すことができる」
「…」
さっきから黙りっぱなしのアリスをちらりと見れば優しいほほえみの彼女が目に入る確かに力を取られた側からすれば完全なる悪だが二人をよく知らない目線からするとここで殺してしまうのは少し違和感というか、罪悪感のようなものを抱いてしまうそれに
「殺す殺さない以前に、私は実体をここにもってきていませんのであなた方への直接介入ができないのです」
元より歩いている時からアリスにあって私にはないものがあった、そう、波紋だいくら歩いてアリス以外の波紋がこの浅く広がる海に現れないそれが故に今の私は直視できる幽霊のような状態だと仮定している
「そうなんですかぁ?ちょっとおてて失礼しますねぇ」
そう言って私の手に触れたアルスは私の予想どうりすり抜けて貫通した自分の手と私の手を交互に見て驚いている
「本当ですねぇ、道理で侵入を感知できなかったわけです」
「ふむ、なら仕方ない、とはならぬ、どうにかして力を取り戻さねばならぬのだ」
「私はこのままでもいいですよ?貴方みたいな古臭い管理よりもっといい方法がありますし、そもそも管理が雑だからちょっとがんばったらできるような呪文で権限とられるんですよ」
と、なぜか喧嘩しだした二人をとりあえず置いておいて私が帰る方法とよさげな折衷案を探す
「ちなみに私のことを体に戻せる方法とかってあったりは?」
一番何とかしないといけないことを一か八かで二人に問いかけてみる、ここで知らなかったらいったん終わりではあるのだが…
「私は知らないですねぇ」「我ならできるぞ」
…よかったアリスは知らないようだが女の子は知っているらしい
「あ、よかった、どうすればいいですか、えーと」
そう言えばこの女の子の名前を聞いていないことを思い出し、なんと呼ぼうか迷ってしまう
「ああ、ティオでよいぞレノヴァ、力の5割でもあればできるはずだが、こいつが6割持って行ったせいでできぬな」
「アリア、1割だけ返してあげたりは「いやです」だよねぇ」
「何で返したら殺されるってわかっている相手に帰さなきゃいけないんですか、いやですよ」
いつもの気が抜けたような声ではなくちょっと怒ったような声が相当いやなのだとわからせてくれるだがかといってこのまま帰れないのはカルマたちを心配させるのでなるべく避けたいところだ
「レノヴァ、お前が我の頼みを聞いてくれるならこいつを殺しはしないと誓ってもいいぞ」
顎に手を当てたティオが仕方がないと言わんばかりに妥協案を出してくれるこれはありがたいがお願いの内容によっては考えなければならない
「お願いって?」
「いやなに、いつかここに実体を持ってこれた時でいいのでな、その、甘味を持ってきてくれんかの?」
てっきり結構大きいおねがいかと思っていたので少し拍子抜けだがそれだけで妥協してくれるのならこんなにありがたいことはない
「いいですよ、たっくさんもって来ますね!」
「ならよい、ほれそこの、さっさと返さんか!」
「いや、返したところで私のメリットがないじゃないですかぁ、私にも明確なメリットがないと公正じゃないですよ?」
「好きな甘いものなんでも買ってあげる」
「レノヴァさんの手作りでお願いします」
「別にそれでいいならいいけど」
「じゃあ乗りました、返しましょうか」
…この二人結構似てるのかもしれないというか甘いものに弱すぎる
何はともあれしっかり帰れそうでよかった
「じゃあ返してもらっても?」
「うむ、甘味、楽しみにしておるぞ!」
「私も、帰ったら覚悟してくださいねぇ」
その言葉を最後に私の意識は再び落ちるのだった
「ところでじゃがなアリスとやら」
「なんですかぁ?今更無しとかはないですよ?」
「それはないが、ここの管理権限があるものは管理権限を持たない侵入者に敏感になるのでの、今みたいな思念体でも本人は感じられなくとも蒼天海が感知できれば即座に呼び戻されるのがネックなのだ」
「ああ、だから引きずり込まれるみたいにここに飛ばされたんですねぇ。始めてきたから蒼天海ってことに気づくまでのちょっと時間かかりましたし…結構めんどくさいんですねぇ」
「そうだな、まぁ権限を分割したのだし、なるべく仲よくしようではないか?」
「…考えときます」