7月6日の朝、私は彼の部屋を訪れていた、今日は私の夫であるゼーヴェンの誕生日だ
「ゼーヴェン、おはよう」
いつものように部屋にはいるとそこには珍しくまだ寝ているゼーヴェンの姿があった、いつもならすでに着替えて爽やかにおはようを返してくる彼は無防備な姿を晒している。いつもなら色々としてやるが、最近は熾天使に潜り込むための準備をしているため疲労が溜まっているのだろう、と彼の隣に潜り添い寝をするに済ませる。潜入は確か9月上旬のはずだ、そこからしばらく会えないのは寂しいが我慢するしかない
「んんっ!?」
突然、寝返りを打った彼にまるで抱き枕かのように抱きしめられて思わず声が漏れてしまう、こちらももぞもぞと体の向きを変えて彼の寝顔を観察する微妙に彼が上にいるのでおさまりのいい胸元にぴったりはまって目覚めるのを待っていると
「ふはっ、なにいいように収まってるんだサンクトゥム」
目覚めたらしい彼にそう茶化される、どうやら自分からここに入ったと思っているらしいが、私がここに入ったのは彼がそうせざるを得なくしたからだ。
「違うぞ、お前が私を抱き枕にしただけで自分から潜ったわけじゃないぞ?」
「お前が入って来た時から起きてたさ、それよりお前ともあろう神が寝ている俺に何もしないというのはどういう風の吹き回しだ?」
「最近、準備であまり眠れていないのだろう?それに、誕生日くらいはゆっくり眠ってほしいと思ってな」
「?お前の誕生日は前祝わなかったか?」
「ばか、何を忘れているんだ、今日はお前の誕生日だぞ」
忙しさからか自分を優先することを忘れているらしい彼は行くところまで行ったようで誕生日すら忘れたらしい、こればっかりは倒れてもらっては困るので少し怒ると、申し訳なさそうにするのをこつんと小突く
「まぁなんだ、大切にするよ、お前と、アリアのためにもな、」
「そうしてくれな、熾天使になろうが倒れれば真っ先に助けに行くぞ」
そんな会話をしていればドアが軽くノックされ開く
「父様…と母様。はぁ、誕生日を祝いに来たらこれなの何とかならないかな…まぁいいや、父様誕生日おめでとう、さっきまで母様と一緒に好きなもの沢山作っておいたから食べにおいで、待ってるから」
そう言ってそこそこ大きめに音を立てて扉が締められる
「行こうか、私たちの娘がお怒りだ」
「あれを鎮めるのにどれだけなだめるものか、ゼーヴェン、今日は任せるぞ」
とりあえず丸投げにしてゼーヴェンがあたふたする様子を楽しく眺めていたあの日からもう一年がたったのかと驚きを隠せない今日は7月6日、今日も彼の誕生日、だが前私のところに来てくれたのが特例なだけで気軽に会える立場ではなくなってしまった。なので今日は私から彼のところに行こうと思う
「母様行きましょうか、プレゼントは持ちました?」
「ああ、持った、なんだ、ちょっと緊張するな」
感じる必要のない緊張で心臓がどきどきしているが以前来た際に教えてくれた彼が住んでいるという家の戸を叩く
「ちょっと待ってくれ今開けるからなっと、なんだ、お前たちか」
余所行きのテンションで出てきた彼は安心したというか拍子抜けした様子で何時ものテンションに戻って入ってくれと招き入れてくれる
「ゼーヴェン誕生日おめでとう」
「父様誕生日おめでとうございます」
入った瞬間有無を言わさず彼にお祝いの言葉とそれぞれが用意したプレゼントを渡す。
「ああ、ありがとうな、今年はお預けかと思っていたところだ嬉しいよ」
いつもよりにこにこで喜んでくれた様子のゼーヴェンがプレゼントを開封していく、私からは剣を、アリアはどうやら腕時計をプレゼントしたらしい
「ほう!これは、まさか神匠の剣か!今度頼もうと思っていたところなんだ、さすが、俺をよくわかっているな、この時計もメリュジーヌの最新版か、だがなぜ俺にかわいい耳が付いた時計を?」
「時計を見ればいやでも私を思い出さざるを得ないでしょう?ですからなるべくかわいいものを選びました、いつでも私たちを思い出してくださいね」
発想が少々分からないがまぁ、いつでも私たちを思い出してくれるのはうれしいことだし、私から言うことは何もない
「あ、ああ、分かった、だが俺がお前らを忘れる瞬間はないから安心してくれよ?どちらも、大切に使わせてもらうよ」
「終わったと思っているところ悪いが、他のみんなからのものもあるぞ」
そう言ってレノヴァからの料理本、カルマから私と合わせたもう一本の剣、クレメンタインとフェルニルからのクレメンタインの詰め合わせ、ファントムとアリスからのネクタイを渡す
「…こればっかりは想定外だな、皆に、ありがとうと伝えてくれ、今日はいい日になった」
「まぁ、もうしばらくはいろいろに付き合ってもらうぞ、お前の望みも聞かせてくれ」
こうやってこの先もこの幸せな時間が続けば、と思うのだった