お昼にカルマの作った牛丼に3人で舌鼓を打ちつつ、取り合えず三分の一を消費することに成功した、いよいよ蒼天海に行こうというときだが、肝心の蒼天海の鍵を使う場所が分からない。まぁ、困ったらカルマに聞こうというわけで何時も道理頼りに来たのだが……。
「んー?あぁ、あそこの場所ねぇ、んと、とりあえずあっちに帰って地下通路に行かないとかなぁ」
との回答をもらったのでサンクトゥム様とアリアさんが、さっき整備してくれたおかげで行きより快適になった船内でアリアさん厳選の映画を見ながら過ごし無事、オリヴィアの港に帰ってきた。
「うわーこの景色も久しぶりだなぁ」
「三日?四日?位いたもんね、おっと」
船から降りたはいいものの少しふらついてしまいカルマに支えられる。
「船上生活に慣れちゃったかなぁ?そこのベンチで安もっか」
「ごめん、ありがと」
休憩~と、私の隣に座ったカルマは膝をポンポンと叩き膝枕をしようとしてくるが、周りには何人か人もいる。それを気にして少しためらっているとカルマの方から強制的に寝かせられる。枕としてちょうどいい高さであるカルマの膝枕、先日は起きてからすぐに起き上がってしまったためにゆっくり感じることのできなかったそれは、程よい柔らかさ、弾力を兼ね備えている。
「二人が荷物を降ろしてくれてるから、その間だけでも揺れないことに慣れようね」
ずっと程よいペースで頭をなで続けてくるカルマ、昼の太陽の温かさも加われば眠くなってしまうのは当然で……。
「すーすー」
「ありゃ、寝ちゃったかな?ならばこの角度から見るレノヴァをゆーっくり堪能しちゃおっかな!」
「んぅ、あれ、寝ちゃって……何してるんですか」
少しの眠りから覚めるとこちらを覗き込む三人が目に入る、人の寝顔をわざわざのぞき込んで何をしていたのかを問うと。
「すみません、レノヴァさん寝顔がかわいらしいとカルマ様が熱弁なさるので」
じろっとカルマの方に目をやるとそっぽを向いて
「何のことか知らないな~」
としらを切られる。
「まぁまぁ、聞いたのは私だ、カルマを攻めてくれるなレノヴァ」
「……サンクトゥム様、三日間料理作りませんのでご自分で何とかしてくださいね」
ささやかな仕返しをすると少し驚いた様子のサンクトゥム様は
「なにか機嫌を取るものを…いや、アリア「作りませんよ」…どうしたものか」
と独り言を並べている
「とりあえず起きたことだし扉にいこっか、わたしが先動するからついてきてね」
「いやとりあえずじゃないんだけどっ!」
と、そんなこともありカルマに先導されながら私たちは地下通路に入る
「それで、どこにあるの?前に探索してた時にはそんな場所見当たらなかったけど?」
「そうなんだよねー普段は隠してあるんだ、今居るのはちょうど城の大広間の真下あたり、ここの壁に触れば……」
カルマの伸ばした手が壁に触れると波紋が広がり、大きな扉が姿を現した。その中心にかぎ穴が3つある、ここにかぎを刺せば開くのだろう。
「左から蒼、天、海の順番で刺せば開くはずだよ!」
言われた通り1つ1つ鍵穴に刺していく。
蒼の鍵は渡してくれた見知らぬ誰かへの感謝を込めて。
天の鍵はサンクトゥム様の圧倒的な力を思い出して。
海の鍵は隣にいるカルマとお揃いの力を思い出して。
解錠音と共に扉が開くと、そこにあったのは前来た通りの一面に浅く広がる海、一歩踏み出せばそれがはるかかなたまで広がる波紋になる。そしてその波紋がさらに2つ増えて、靴にあたる波紋の来た左側を見るとそこにはゼラニムがいた。
「はいはい、入ってくる人なんてどうせレノヴァさんなんだろうなと思ってましたよ、ティオさんはあちらですよ…?なんですか?あっ」
「ちょっ、ちょっとちょっと、なんでゼラニムがいるの?」
まぁ当然ではあるのだが私以外の三人はゼラニムが蒼天海の管理者の一人であることを知らない、アリアさんはともかくカルマとサンクトゥム様に無理やり奪ったなんて知られたらどんなバツというかなんというかがあるか分からない。どう言い訳をしようか考えていると。
「ああ、レノヴァよ、きおったか、この日を待ちわびていたぞ!む?あぁ、こ奴か?我のアシスタント的なあれじゃ、前、ここにこれが迷い込んできての、いろいろ話されるとあれじゃし眷属にしたのじゃ」
「まぁ確かに莫大な情報を扱うお前にそういう存在がいるのはわかるがそれならこちらに行ってくれればよかったものを…」
ティオが考えていたのか説明する言い訳を離してくれる、だがこの二人の神の疑いは薄まっただけで晴れることはなさそうな様子だ。
「まぁ、いずれ話はするが信頼には足るやつだ、疑う必要はない。そんな事よりもこれじゃこれ、レノヴァの甘味!これが食べたかったのじゃ!」
「まぁ、そう言うことならいいんじゃない?サンクトゥム、とりあえず置く机的なのが欲しいんだけども、出してもらっていい?」
はい、とゼラニムが指をはじくと扉は遠のき少し大きい楕円形の机とそれを囲むように人数分の椅子が現れる
とりあえず皆そこに座りお菓子と場に合わなさすぎる牛丼を並べ、話を始める。
「まず初めに皆の武器など戦いになりそうなものを一時使えなくさせてもらうぞ」
「戦いになりそうな話がある、というのですか?」
アリアさんがまさかと怪訝そうな声色で尋ねる。
「一応でな、何かあってからでは遅いだろう?」
「話す前にいったん食べたら?ティオすんごい目きらっきらだし」
「コホン、では失礼して、!これは!うんまいのう!うんうん!」
「わたしもしつれいしますねぇ、あら、うん、美味しいです、とても」
ニコニコしながら食べ続けるゼラニムといつもと違い静かに黙々と食べるゼラニムあまりにも二人がおいしそうに食べるのでなぜか恥ずかしくなる。
「それで、レノヴァ、アリアここにきて何をしたかったの?」
「レノヴァさん、私が話しましょう」
そう言ってアリアさんが熾天使のアリスによって世界と記憶を書き換えられたこと、アリアさんと私だけがなぜかその状態から抜け出せたこと、それを何とかするために蒼天海へ行くようにエクスに言われたことを話した。
「へぇ、やってくれたね、熾天使」
「あらぁ?お褒め頂けるなんて光栄ですねぇ」
二人の間で何やらバチバチとした空気が漂い始める。
「武器がなくてよかったね?その体がまだ在ることに感謝しておきなよ?」
「武器があってもそんなことはできませんよ?私は此処の管理者、なんですからねぇ」
「やめておけカルマ、それをしたところでどうせ熾天使のことだ、何か罠があるのだろう?」
普段の底のない明るさは消え神として目の前の事象と向き合い、怒りをあらわにするカルマをサンクトゥム様が止めに入る、確かに、権限を分割している以上ゼラニム個人としてできることはないが、熾天使という組織全体で言えば、失敗したときの手段のない方がおかしい。
「どうでしょうかぁ?というより、もとより書き直せない、っていう方が正しいですよぉ?」
「あぁ、ゼラニムと我は権能を完全に5・5で分けておる、どちらかが上回らない限り書き換えは不能じゃな」
目標地点に着いたはいいものの、その目標が達成できないという事実が頭を悩ませる。
「残念ですけど、このまま過ごしてもらうしかないですねぇ、私も一応計画のためにやってますし…まぁ、私もあの計画はあんまり好きじゃないんですよねぇ、だからこうしたんですし」
「あんまり好きじゃないっていうのは?」
「私、無理やり参加させられてるだけなんですよ、理由は皆さんに言えるほど信頼していないので言いませんけども」
「信頼してない人をお姉様呼びしてたってわけなの?」
「ふふ、それは別、ですよぉお姉様はお姉様ですのでねぇ」
どうやらゼラニムとアリスには何か特別な関係があるらしい、とはいえ書き換わる前の世界でもアリスの両親はゼラニムについて何も話していなかったのでおそらく身内や近い関係ではないのだろう。だが今は行き詰ったこの状況を何とかしなければならない。
「何もないなら次に行動するときまでゆっくりするのはどうだ?ここ数日動きっぱなし戦いっぱなしだっただろう?休息も1つのやるべきことだと思うぞ?」
「確かに、ならそれでいいかもですね、お母様の言う通りしばらくお互い様子見と行きましょうか、ゼラニムさん?」
「ふふっ、熾天使を代表してここにいるわけではないので熾天使としては何も言えませんが、蒼天海の管理者の一人として言うならそれが一番いいと思いますよぉ、疲れたまま行動するのは得策ではないでしょう?」
「なら、それでいいんじゃない?私、レノヴァと行きたいところあったんだ、休みがてらそこ行こ?」
「なら我の用事が終わった後でいいかの?レノヴァに用事があるでな」
「じゃあ終わったら声かけて、折角だしもうちょっと久しぶりの蒼天海を味わいたいからね。はい、じゃあ解散ってことで」
特にやりたかったことを成せないままその場は解散になり、用事があるらしいティオについていく。
「それで、用事って何なの?」
「ナチュラルにため口じゃのお主は、いやまぁ姉弟としてそれは許してやろう、それで、呼びだした理由じゃが」
「ちょっ、ちょっと待って?姉弟?誰と誰が?」
「ん?あー、我が姉、お主が弟じゃな、今日呼んだのもそれが理由じゃ」
「ティオが、姉!?」
「うむ、いい反応じゃな、そうじゃそうじゃ、我が姉ぞ」
「はぁああああああああああああああああああ!?」
その日のレノヴァの叫び声は後のカルマ曰く、後にも先のもない最大音量だったそうだ……。