「これ、そんな大声を出す出ないわ、我の耳が吹き飛んでしまうわ」
「いや、驚かずにはいられないでしょ、ティオが、私の姉?」
先ほど明かされたそれは、探し求めていた家族についての情報が家族本人から飛び込んできたようなものというかそのものだった。
「いやだって、だってさ」
「うむ、まぁ何時言おうかは悩んだが、誰かわからんものを探すよりもとりあえず言ってやったほうが良いと思うてな、お前が記憶を失う前、宇宙を漂う前の話で言えば、我らは確かに家族であった。お前が知りたくば父と母についても教えてやれるが、なんじゃ…仕方のないやつじゃな、ほれ、来い」
最近は涙もろくなった、というより本来泣くべき場面で泣くことができるようになった、というのが正しいのだろうか、カルマと付き合って。新しい力を得てようやく対等になったと思えた時。そして、目覚めてから誰もが求める家族を、見つけた時。
両手を広げたティオに少しづつ近づく、すると背中に手が回り抱きしめられる、それはカルマとする恋人としての、スキンシップのような甘いものではなく、感じたことのない温かさのあるものだった。
「……久しぶりじゃの、よく、よく戻ってきてくれた、生きてくれれば、と思ったが。本当に、よかった」
少し水が入ったような声で優しく頭をなでるティオの手に感化されなお涙があふれる。
「もう、こんなに湿っぽくすると森ではなかったのだがの、お前が泣くからだぞ?ほーら、何時まで泣いておる、?カルマでも呼ぶか?」
「いい、今は…おねえと居たい」
「!?ず、随分とかわいらしい呼び方をしてくれるではないか」
「昔の私は、おねえを何て呼んだの?どんな話をしたの?」
知りたいこと、聞きたいことが山のようにあふれてくる
「昔かぁ、姉さん、だったかのありふれた日常会話だった、仲もよかったしな。ほれ、お前の彼女が心配しておるぞ?我からの話はそれだけじゃから、行ってこい」
「おねえは家に来ないの?」
「我は此処から出られなくての、カルマたちが出る方法を探してくれている所だ、まぁ、出たらいろいろやろう、それまでに考えておいてくれ」
「うん、会いに来る、また」
「ふふ、急に可愛くなりおっていつでもおるでな、またおいで」
そう言われた後その場を振り返りカルマを探す、奥の方でサンクトゥム様と話しているカルマが目に入る、ちょうど話が終わったようで、こちらに近づいてきたカルマ、どうやら心配してみていてくれたらしいのでいろいろと聞かれるだろう、と思ったのだが。
「レノヴァ、よかったね」
後ろに手を回した彼女は小さく笑ってそう言った、そう言えば、、一番最初に話しかけてくれた時の話題は家族がいないことへの心配だった。ならせめて、そんな優しい、大好きな人に、恩返しも込めていい返事を聞かせねば。
「うん、カルマ、ありがとね!」
そんな思いを込めて言うと、カルマは少し驚いて様な顔をした後、さっきの私のように涙を流してしまう。
「ちょっ!何でそっちがなくのさっ!もー!」
あまりにも泣くのでもはや声すら出せなくなってしまったカルマをなでながら泣き止む気配もしない彼女を抱きしめる。
「な?言っただろうカルマ。話すべきだと」
「まっ……」
「待たない、レノヴァ、怒っていいぞ、こいつはな?」
それからサンクトゥムから私が驚きの声を上げた時は少し驚いたような、そして心配したような顔をしていたこと。泣いてしまっていたときは、同じようにと前ではいかないが少し目を潤して喜んでくれたこと、それを邪魔しまいと立ち去ろうとしてサンクトゥムに止められたこと。
「どうやらこいつ曰く、こいつはお前の幸せな瞬間には必要ないらしい、違うなら私の分も怒こっておいてくれ。」
そう言って言い切ったと立ち去るサンクトゥム様。
「……カルマさん?」
「ちっ、ちがっ!その、家族の時間だしさ?私が居たら、邪魔かなって、ね?だってウムッ」
「お黙り、カルマ、私の今の記憶はカルマから始まったの、私的には家族が見つかったその瞬間にカルマは居てほしい、どんな嬉しいことがあってもカルマと一緒じゃなきゃ意味がないの、だからさ、そんな邪魔だなんて言わないで。」
途中から段々顔を赤くした彼女に今までもこれからも一緒にいたい、そう伝える
「なんか、付き合った時より告白みたいなこと言ってる。ふふっレノヴァがそう言うなら、仕方ないから一緒にいてあげちゃう!」
「私もできればこういう告白をしたかったよ、誰かさんが酔ってなきゃ…」
「あ…それはなかったことにっ」
「まぁ、考えておきましょうかねーとりあえず、行きたいって言ってたところ連れてってよ」
「あ…そだった、手、握ってほしいな。ん、そうそう、えへへ、温かいねそしたらここに来た時みたいに目を閉じて…」
そう言われ目を閉じれば肌に触れる空気の流れが変わり水の…いや、もっと大きい、波の音が聞こえてくる。
「はい、もう目を開けていいよ!」
目を開けるとそこは見覚えのあるというか昼くらいまでいた海の神殿、ここで一体何をしようというのか。
「不思議そうな顔だね、神殿って言うんだから私のお家みたいなものだからさー、お家デート的な?」
「ほー、部屋とかある感じなの?」
「一応あるよ、そんな大したものでもないけどもね生活に使う場所ーキッチンとか、お風呂場とかはそろえてある。お泊りとかも、できはする、よ?」
「…したいの?」
「…久しぶりにどうかな、と。駄目かな」
「船でも二人きりだったでしょうに」
「あれはアリアもいたじゃん、いなかったように扱っただけでさ?」
「サンクトゥム様とかに言った?」
「ちょうどさっき言ったところ楽しめよ、だって」
「ならいいやちょうど、一番の家族としての自覚をお持ちいただきたかったので」
「うっ、いや、そんなに大事にされてると思ってなくて。だってさ!?ひゃうっ」
何かごねようとしたカルマの足元をいじりバランスを崩させてお姫様抱っこの形に持ち込む。
「そう言う権能の使い方はいただけませんよレノヴァさんや」
「言い訳を並べられるよりかはそう言う小言貰った方がマシですよー」
「はーいはい、あ、そっちの壁際行ってーそうそう、そこを下から上にクイっていじれば部屋出てくるはず、私より空間の扱いはうまいからいけるでしょ?」
「ええもちろん、やり方の教えが雑すぎて私じゃなかったら理解できないと思うけど」
「抱っこされてなければね、私がやったのにな~」
「抱っこされてるんだから、手空いてるでしょうが」
「仕方ないから私がやってあーげる、それクイっと」
カルマの指が壁の方を指し、ドアノブを開けるような動きをすると目の前の壁も併せて回転し部屋が現れる。
「座りたーい!レノヴァーソファ行ってよ」
「はいはい…部屋なんかきれいじゃない?」
部屋は所々趣味と思われる小物などが点在しているが、それは一般的な部屋の範疇を超えない。気になるのは少なくとも数か月は神殿に来ていないはずなのにほこりやごみが全くないことだ。
「…いや、コンナモノジャナイカナ…?」
「ふぅん、わざわざ準備してくれたってことねぇ、うれしいな」
「っ!いやその、鍵取りに来たとき一人だったらそのまま雑談でもしてパパっと渡しちゃおうかなって思ってたから…」
「それでいいんか鍵の管理は…」
「レノヴァだしいいかなーとか思ったりして」
抱いていた彼女をソファに降ろし、隣に座る
「もともと鍵狙いでカルマと関わったとかあるかもしれないじゃん?」
「私の彼氏そんなことしないもん!」
「…なんか恥ずかしっ」
「ふふ、そういう所!今日は正真正銘二人っきりだし、いろいろやろ!ゲームとか!」
「今日こそ夜更かしは絶対しないから!」
波の音の響く海の真ん中、少しだけ騒がしい夜の始まり。