百花繚乱のお狐様   作:お狐コンコン

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変わる物語、されど変わらぬもの

 

「検査の結果が出ましたよ」

 

「それで……どうだったんだ?」

 

「結果としてですが…」

 

「あなたがなぜ神秘と恐怖の共存が出来ているかは分かりませんでした」

 

「それでも神秘の研究者かよ」

 

「あなたからも聞いた変化が起きた状況的にマダムのヘイロー破壊爆弾が当たりあなたの神秘の1部が削られた事でその部分をあなたの恐怖が埋めることで今の状態になったのでしょう」

 

「ですがヘイロー破壊爆弾とは放射能のように本来直撃しなくてもかすりでもすればキヴォトスの住民には十分効果があります」

 

「あなたのようにかすったから何とか耐えた。なんて事は普通は有り得ません」

 

「………」

 

「これは根性論で片付けれる話ではありません。さらには本来はコインの表裏、水と油のような神秘と恐怖があなたの中では混ざり融合している」

 

「そして神秘と恐怖の割合が普段の状態なら8:2に対して妖狐さんが見せてくれた能力を使っている時が7:3、6:4と徐々に恐怖の割合が増えていきました」

 

「あなたの持っている能力の威力が上がっているのも恐怖が底上げをしているのは間違いないでしょう。ですが最終的には5:5で完全に止まっていました」

 

「おそらくはここが共存している上での限界なのでしょう。それ以上に恐怖が増えれば妖狐さん自身が完全に恐怖で塗り替えられるのかは予測でしかありませんが…」

 

「妖狐さんがおそらくは無意識下で引き出せる限界ギリギリでリミッターを掛けていると思われます」

 

「……ここまでが検査をして分かったことです」

 

「…………」

 

黒服でも分かるのはここまでか…

 

神秘と恐怖が5:5で止まるって言うのはおそらくそこがテラー化しないギリギリか

 

なら私は無意識下で抑えてるリミッターを解除したらテラー化するのだろうか…

 

テラー化してもホシノのように元に戻る事はあるのか…それともシロコのように戻らないのか…

 

シロコは色彩によるものだったから戻らないって事だったしホシノは不完全だったから戻れた訳だし…

 

テラー化するかどうか自分で選べる子は今にも先にも私だけだろう…

 

「私にも今現在出来る検査はここまでです。妖狐さんの要望に添える結果では無かったかもしれませんが…」

 

「いや十分だ」

 

「それとこちらがミメシスを使う上で必要なものになります」

 

「………本か?」

 

「はい、本です」

 

「…………………どうやって使うんだ?」

 

「ミメシスを使うのに必要なのはその原本とミメシスにするに足りうる何(・)か(・)がある事です」

 

「ミメシスにするに足りうる何か?」

 

「はい、ミメシスとはなんでもミメシスに出来るわけではありません。ミメシスにするにはマエストロ曰く強(・)い(・)感(・)情(・)やミメシスになり得る歴(・)史(・)や(・)武(・)勇(・)伝(・)などがあればミメシスにする事が出来るそうです。」

 

「強い感情…それに歴史や武勇伝か…」

 

「はい、そして条件を満たした上でその原本に記す事でミメシスは顕現します」

 

「………まるで怪談だな」

 

花鳥風月部の怪談も綴られたものを人々が恐れという感情により具現化する…

 

もしかするとミメシスも花鳥風月部の怪談も原理は一緒なのかもしれないな…

 

「その点でいえば妖狐さんも十分ミメシスを顕現させる条件は満たされていますよ」

 

「私なんかミメシスにした所でたかが知れてるだろ」

 

「……それでは私はこの後会議があるので失礼します。お気を付けて」

 

「あぁ…」

 

会議……おそらくベアトリーチェを追放したあれだろう…となると既に先生を除いた最初の学園トップ達の会議は終わってる頃か…

 

「………私も動くとするか」

 

────────────────────

 

カイザーに占拠されたシャーレを先生達が奪還したのを千里眼で遠くから確認してから少し経った頃…

 

それはまるでこの世の終わりのようにキヴォトスの空を赤く染めていた

 

「………来たんだな」

 

「マスター…」

 

「姉さん…」

 

クロノスもサンクトゥムタワーが崩壊した事を報道しておりキヴォトス中大騒ぎとなっていた

 

「ならここからは虚妄のサンクトゥム攻略が始まる…いやその前にもう一度会議があったな」

 

少し高いビルの屋上から遠目からでも確認できる数本の空へと禍々しく立つ赤い光の筋を見ながら己が動く計画を立てていた

 

「なるほど…ようやく理解に至った」

 

「!!!………フランシスだな?」

 

「いかにも」

 

「この世界は歪である。この物語は1つのジャンルを掲げていたが故に、「先生」が主人公でいる事ができた」

 

「物語であったからこそ「先生」は無敵だった──これはそ(・)う(・)い(・)う(・)物語だった」

 

「しかし、物語は覆された」

 

「本来あるはずの無い存在により「先生」以外の主人公が誕生した。有るべき未来を変え既存から未知の物語へと書き換える特異点とも言える主人公が」

 

「……それが私だって言いたいのか?」

 

「そうだ」

 

「だがそれも今となってはどうでもいい」

 

「脈絡、構成、ジャンル、意図、解釈……全てが破壊され──」

 

「その意味は絡み合い、混ざり、攪拌され──統制できないほどに褪せてしまった」

 

「妖狐よ」

 

「これまでの物語は全て忘れるがいい」

 

「これからお前たちの身に起こることは、もはやそのような物語(モノ)ですらないのだから──」

 

「主人公も、悪役も、事件も、葛藤も無く──」

 

「全てが分解され、縫れあい──」

 

「脈絡も、構成も、必然性も無くなってしまった……作為的に作られた世界」

 

「そうして──果ては意味を失い、力が暴れ回るだけの──理解不能で不条理な世界へと」

 

「嗚呼、そうだ──元よりこの世界はそのように存在していた」

 

「我々は皆、それを忘れていただけ」

 

「これが——もう物語では無くなったとするならば、お前たちはもう何者でもない」

 

「学園と青春の物語は、幕を下ろした」

 

「覆され、解体されてしまったジャンルで、お前たちの価値は揺らぎ、地に落ち、無に等しいものとなる!」

 

「しかして始めるのだ。物語ではない——」

 

「………長ったらしい語りは終わったか?」

 

「なに?」

 

「元からキヴォトスは無法地帯なのはとうの昔からの周知の事実だ」

 

「それに私は私を主人公だなんて思っていないし悪役にだってなりきれない半端者だ」

 

「それに私たちは生きている。ならこれは全て決められた物語じゃない」

 

「みんなが自由に生き自由に考え自由に過ごす……お前が私たちの役割を勝手に決めていいものではなく私たちの思考は誰にも決められない」

 

「マフラーをたなびかせる狼(シロコ)も、魔王にもなりえた勇者(アリス)も、聖歌を歌うお姫様(ミカ)も、籠に閉じ込められていた鳥達(アリウススクワッド)も、己の正義を貫く兎達(Rabbit小隊)も」

 

「誰一人として誰かに決められた生き方なんてものはしていない」

 

「自分達で選び、悩み、苦しみ、怒り、笑い、そして繋がっていく」

 

「あいつらの物語はあいつらのものだ……それだけは絶対変わらない」

 

「あの子達なら何があろうとも必ず乗り越えていく。」

 

「それに学園と青春の物語は終わっちゃいない…」

 

「今この瞬間も先生と生徒達はハッピーエンドへ向かおうとしている」

 

「お前が勝手にジャンルを決め思い込もうとしても私たちはどんな未来であろうとも向き合って進むだけだ!」

 

「………であれば、それを見届けるとしよう。妖狐──いや、主人公よ」

 

「絶望を——破局を迎え——そうして、結末へと走り出すエンディングを!」

 

「………だから主人公じゃねぇって言ってるだろあの3回見たら死ぬ絵画モドキめ」

 

────────────────────

 

「……なるほど」

 

「『色彩』は、既に『名もなき神』と接触した後でしたか……これは完全に私の不手際です」

 

「嗚呼、狼の神の裏側は──そういうことだったのですね」

 

「命ある全てを常世へと導く、死の神(アヌビス)……」

 

「それがあなたの神秘の裏側、恐怖(TERROR)であった、と」

 

「であるならば彼女の半分姿を見せた裏側は……」

 

「世界さえも騙し揶揄う狐の妖 ……と言ったところでしょうか」

 

 

 

「──これで、役者は揃いました」

 

「これより相対するは──」

 

「──死の神『アヌビス』が引き寄せた、『色彩』の嚮導者」

 

「迎え撃つはシャーレの先生──そして」

 

「人々を翻弄し影から導く妖の狐」

 

「この行く末を知るのは……」

 

「いえ…誰にも分かりませんね」

 

 




ちなみにリンドウのゲマトリアにつけたあだ名は
黒服:顔面ひび割れ黒たまご
マエストロ:ダブルマラカス木偶の坊
ベアトリーチェ:多眼赤肌イキリクソババア
ゴルコンダ:抱えられ背面謎絵画
デカルコマニー:そういうこった!
フランシス:3回見たら死ぬ絵画モドキ
地下生活者:時計目猫背イキリカス
となります
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