「まぁ寝るなんて事あるはずも無く作戦会議なんですけど」
「でもマスター、これからどうするんですか?」
「いくら姉さんでも万全とは言えない状態でどうにか出来るとは思いませんが…」
「まぁ解決するってなれば私1人でならせいぜい1人抑えるのが関の山だな……でも」
「「???」」
「ここに突撃してくる奴らが居るなら基本はそいつらに任せて裏で動くとなれば私らは得意だろ?」
「そんな人達が居ますかね?」
「それにGPS情報から見てもここはキヴォトスの上空約75000mの高さにあります…キヴォトスでここまでの高さを飛べる飛行船なんて…」
「それに私の間違いではなければ姉さんが居るここは…」
「アトラ・ハシースの箱舟」
「!!!…どうして…」
「まぁ…知ってるとしか言えないね」
「それにケイも心当たりはあるでしょ?このアトラ・ハシース以外にもこの高度まで飛んでこれる船を」
「…………まさか、確かにあれなら箱舟に対しても…」
「???何の話ですか?」
「まぁルナは知らなくても無理ないよ」
「そうだよケイ……ウトナピシュティムの本船」
「おそらく……いや確実にそれに先生達が乗ってる」
「先生達が……ですか?」
「あぁ、ルナもアビドスの時にカイザーがアビドス砂漠で宝探しをしているって話は覚えてるだろ?」
「はい」
「そしてそのお宝ってのが今言ったウトナピシュティムの本船……『名も無き神々』の時代のオーパーツだよ」
「………そして対箱舟用の『決戦兵器』」
「決戦兵器ですか?」
「だからこそ先生達はこの箱舟の周りに展開されてる多次元バリアを越える為に本船に乗ってるはずだよ」
「それにケイも分かってるんじゃない?アリスが今どこにいるか分かるんだし」
「………」
「でもマスター、それなら私達は何をするんですか?」
「破壊工作なんてしたら75000mからの落下で無事でいれるはずもないですよ?」
「それだけどルナ達にはアトラハシースにバレない程度にこっそりハッキングして欲しいんだ」
「ハッキングですか?」
「そう、エリドゥの時みたいにこっそりね」
「でもどうしてですか?」
「先生達が箱舟に到着したら、おそらくすぐに箱舟の主導権を握る為に本船の演算能力をフルに使ってハッキングをするはずなんだ」
「そしてルナにはそのタイミングで本船の方に入り込んであるものをコピーしてきて欲しい」
「あるものですか?」
「うん、私達が帰る為にも大事なものをね…」
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「姉さん……寝てる?」
ここに連れてきた時と部屋が少し変わっているから1度目を覚ましたのだろう、だがそれなら何故目の前にいる自分が姉と慕っている人はこうも穏やかに寝ているのだろうか?
誰しも突撃後ろから気絶させられ知らない場所に連れてこられたのなら出ようと画策するものだろうに、姉は軽く物色したであろう痕跡以外なにかした様子もなく寝ている
「……相変わらず何を考えてるか分からない」
自分たちがいた世界でもそうだった
普段からお面をつけているからどんな表情をしているか分からなかったが顔を隠しても言動で喜んでいるや悲しんでいるのは分かりやすかったが頭の中では何を考えているのかは一度も当てられたことがなかった
のんびりお茶を飲んでいるかと思えば突然どこかに焦って行ったり仕事をしているかと思えば全く違う事をしていたり…
だが自分の知る姉は目の前の姉とは違い常になにかに怯えてる、もしくは常に焦っているようには感じていた
だからこそ目の前で穏やかにすやすや寝ている姉を見て、世界が違えば姉はこんなにも変わるものなのかと驚いてもいる
だからこそ姉には申し訳ない気持ちが湧いてくる
こんなにも穏やかな姉がいる世界を滅ぼさなければいけないのだから
「………」
そしてひとつ気になっている事がある
自分の世界の姉は最後どこに行ったのだろう…
世界を渡る数日前に姉は突然姿を消した
最後に見つけたのは姉が持っていた銃と大事そうにしていた羽織り…
姿を消す前に初めて姉は本当の姿と名前を私に教えてくれた
今目の前にいる灰色の毛色からは想像できない綺麗な白に空色のグラデーションがかかった髪と尻尾を見せてもらった
だがそんな綺麗な空のような髪や尻尾とは裏腹に姉の表情は曇っていた…
絶望が充満したような世界だ…おそらく姉の大事なものも壊れてしまったのだろう
それなのに姉はお面をつけて表情を隠し私のそばに居てくれた
だから私も何とか持ち堪える事ができたのだ
姉は私の中で心を支えてくれる柱だったのだ
なのに姉は姿を消してしまった…
だから銃と羽織りを見つけた時私の心はもう折れてしまいそうだった
今も先生がいなければ私は絶望に染まって廃人になっていただろう
「姉さん…なんで…」
なんで私を置いて行ったの?
目の前の姉はこんな事言われても困惑するだけだろう…
姉の銃と羽織りを見つける直前、光の柱が立っていた
姉が何かをしたのか、何かに巻き込まれたのかは分からない
もしかしたら今寝ている姉なら何か知っているかもしれない
だがそんな事を聞いて…もし同じように姿を消してしまったら…
今度こそ何も考えることもなくただの人形のようになるかもしれない
だからこそ私には聞く勇気が無い…
だがもし、許されるのなら…
「もう…置いてかないで……」
自分でも声に出した事を気づかないほど小さい声…
「……姉さん、もう行くね」
恨まれるかもしれない…だがそれでも
もう止まることができない…止まれないのだから…
「………置いてかないで…か」