「…………」
気づけば地上に居た…気づいた時には少し驚いたがすぐにこの世界の先生がこの世界のみんなを脱出シーケンスとやらで転送していたことを思い出してそれを私にも使ったのだろう…
「どの世界でも…先生は先生なんだね」
自分の知る先生ならば自分の事より生徒のことを優先する、それが私の知る先生だった
「だけど……私は、もう……」
ガサッ
「…………」
「…………」
「……ついてきたんだ」
「うん」
「……そっか」
「私がここにいたら、大きな歪みができてしまう。「シロコ」は一つの世界に1人しか存在できない」
「……マフラー」
「……?」
「このマフラーも羽織りも…あげられない。大切なものだから」
「……」
「……でも」
「代わりに、これをあげる」
「それは……」
「見覚えが、ある」
それは忘れるはずがない…いつもバッグに入れていた大事な…
「……大事なものでしょ……?それを、私に……?」
「どうして……私に……」
「……私にとって、マフラーと同じくらい、大切……」
「対策委員会のみんなと繋がっている証であり……みんなとの思い出が詰まった、大切なものだけど──」
「……あげる」
「どう、して……?」
「ん、それがいい気がしたから」
それは青の……額に2のワッペンがついた目出し帽…
「……すごく、大切なものなのに?」
「ん、これがあれば、どんな銀行だって襲える」
「………うん……分かるよ。私もよくやってたから……」
「そっか、そうだよね」
「……まさか、これを……こんな所で、目にするなんて思わなかった……」
「ホシノ先輩……ノノミ、セリカ、アヤネ……みんなと、一緒に」
(………ん?)
「暗黒銀行に、連邦生徒会の秘密金庫……大切な思い出たち……」
(秘密金庫……?)
「ありがとう……大切に、するね」
「……ありがとう」
「その……心配しないで」
「?」
「ここは、きっと……シロコが二人いても、大丈夫だと思う」
「………」
「それで何か問題が起きたとしても……きっと先生がなんとかしてくれる」
「先生が……」
「うん。ここは……
「………」
「それにお姉ちゃんもいる」
「お姉ちゃんなら…いつも何かしてくれる信頼があるから」
「うん……そうだね、姉さんな……ら………………………………あっ」
「ん?」
「姉さん……箱舟にいる……」
「ん!?」
「どうしよう……箱舟……戻れない……」
「だだだだ大丈夫……お姉ちゃんなら……多分……」
「そ……そうだよね?大丈夫だよね?」
ふたりで慌ててお互いを大丈夫だと落ち着かせるように宥めていると……
「私を勝手に殺すな?」
「!!!!お姉ちゃん!?!?」
「!!!姉さん!?!?」
「名シーンを台無しにするのは申し訳ないけどさすがに私もあそこに置いてけぼりで何もできてなかったらくたばるぞ」
「ご、ごめんなさい……」
「お姉ちゃん……どうやって帰ってこれたの?」
「ん?脱出シーケンスをコピった」
「「ん?」」
「ん?」
「お姉ちゃん…コピーしたって…」
「まぁそんな事は置いといて……ほら、出てこいよ」
「姉さん…出てこいって誰……に……」
「”や、やぁシロコ”」
「……誰?」
「あれねぇ……プレナパテス」
「ん?……ん!?」
「せん……せい……?」
「”うん、私だよ……シロコ”」
「先生……先生!!!」
幻では無いことを頭が理解したのかシロコはプレナパテスの方へと駆け寄って抱きつきお互いが体温を感じようとするかのように抱きしめ合った
「でも、どうして……プレナパテスって死んでいたはずじゃ……」
「不思議だよなぁ…」
「お姉ちゃん……本当は知ってるよね?」
「ん?ナンノコトダカサッパリ」
「(눈‸눈)」
「まぁ…奇跡の感動の再会って事でいいじゃないの」
実際成功したのはほぼ奇跡と言ってもいい
ミメシスによる肉体の生成、そして私の大人のカードによる奇跡でもまだプレナパテス復活にはピースが足りなかった
奇跡をおこせたのはプレ先の世界の私が最後に大人のカードを使い私の予想通りの結果を残しておいてくれたからだ
それが『魂の保護』だ
例えミメシスで完璧に肉体を創造したとしても、大人のカードを使ったとしても異なる世界線で死んだ人間を完璧に蘇生させるのはほぼ不可能だ
だからこそ向こうの私は先生がまだ生きているうちに大人のカードを使い色彩に侵食される前のプレナパテスの『魂の保護』をしたのだ
保護された魂がそのままプレナパテスにくっついていた事であの時奇跡を起こすことができたのだ
なぜなら…肉体、魂、奇跡、この三つが揃ってやっと蘇生という奇跡が実現する
肉体と魂があっても奇跡がなければ蘇生のきっかけがなく、魂と奇跡があっても肉体がなければ亡霊となるだけで、肉体と奇跡があっても魂がなければそれが目覚める事はなく眠り続けるだけであり、ミメシスによる肉体、向こうの私が保護した魂、私の大人のカードによる奇跡、全てが揃ったことによって今、目の前にプレナパテスが生きているのだ
だからこそ向こうの私はシロコの前からいなくなる直前に大人のカードを……おそらくはカードだけでは代償が足りず自身の全てを使って先生の魂を護ったのだろう
「良かったな……シロコ」
「ん?」
「いやあっちの方ね」
「ん…」
「シロコも無事で良かったよ」
「ん♪」
────────────────────
あれから数週間後…キヴォトスは復興作業で賑やかになっていた
プレナパテスはもう1人の先生としてシャーレへと配属される事になりシロコも普段はアビドスを中心に放浪しているらしいが所属はアビドスの生徒として登録された
あの後話を聞くと予想通り向こうの世界ではユメ先輩は居なかったらしい…それにプレナパテスも元々女先生だったらしく特に問題も無いようだ。これは世界線が違うから先生の性別も違う……のかもしれない。そしてヘイローに関してはおそらく私が大人のカードを使った時に神秘を流した事で本来神秘を持たないものに神秘を与える奇跡を起こしてしまった………のかもしれない
何はともあれこれで最終編はおわりいつもの情報屋暮しに戻った
はずなのだが…
「ん、でかシロコは離れるべき」
「ん、よわシロコの方が離れるべき」
「うへ〜じゃあおじさんが失礼して…」
「いや暑いから全員離れて?」
「「「それはやだ」」」
「どうして……」
シロコは事務所に度々顔を出すようになってたまに珍しいものがあったら見せに来る犬のようになってしまった…
「だけど……そうだな」
最終編が終わったということは…私にとっても大事な時期になるという事だ…
「ん?お姉ちゃんどうしたの?」
「妖狐ちゃん?」
「いや…なんでもない」
「…………」
そうと来ればあそこへ行くべきなのかもしれないな……
「黄昏の寺院に……」